こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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疲れるんです。ただ、もう。 「大都会 闘いの日々」

第15話、「前科者」。
室田日出男さんゲスト回です。
話が飛んで、すみません。


東南アジア製のST3型と呼ばれる拳銃が見つかり、関東連合系の暴力団が所持しているものと見られた。
関西系の暴力団が東上してくるための、本格的に武闘の準備だと思われた。
そんなある朝、黒岩の妹の恵子が腹痛を訴えていた。

医者に行くことを勧めて出勤してきた黒岩だが、恵子が会社を休んでいることを知った。
恵子は医者に行くことを渋ったが、黒岩は急遽、病院に電話をした。
あいにく、知り合いの白川医師はいなかったが、黒岩は診療の予約をして電話を切った。
黒岩が電話をした白川医師は、何と、天然痘の発生で走り回っていた。

発症まで3日あったので、患者は3日間、結構な行動範囲でいろんな人間と接触していた。
消毒に向かった保健所は、患者の部屋で拳銃を発見した。
東南アジア製のST3型だった。

患者の名前は菊池。
菊池は、拳銃の密輸に関わっていたのだ。
黒岩からの電話を受けた白川は、恵子の診療どころではない状態を説明し、患者の部屋から拳銃が発見されたことを知らせる。
それを知った黒岩は恵子からの連絡の電話も受けずに急遽、患者の部屋に向かった。

一色と加賀見が菊池に話を聞きに向かったが、菊池の容態は急変。
菊池と接触したと判明した者は隔離したが、リストの中の「津山順吉」という名前に黒岩は目を留めた。
白川に話を聞いたが、この男は患者の勘違いで、津山は患者とは会っていないと言ったらしい。

津山は元荒竜会の構成員だったが、黒岩が更生させた。
今は女房と子供を持ち、堅気な生活を送っているはずだ。
だがもし、津山とこの拳銃を持っていた男が接触していたなら、更生はしていなかったことになる。

黒岩に恵子が急性盲腸で入院した知らせが入ったが、津山を追う黒岩とは連絡が付かない。
津山の勤め先の自動車の中古販売店に、黒岩が向かった。
黒岩がいるのを見た津山は、一瞬、動きを止めた。

喫茶店で黒岩は津山と話をした。
津山は以前の工場は、首になってしまったのだと言う。
「連中今でもたかりに来るのかい?」
津山は、あきらめたように笑った。

「はあ、たまですけど」。
「言ってくれよ、いつでも。縛ってやるぜ」。
「ありがとうございます」。
「都の衛生局の、防疫課が来ただろう」。

津山の顔色が変わった。
「手帳かなんか、見て来たんじゃないですか。俺の名前、書いてあったはずですから」。
「どういう知り合いだい」。
「客ですよ、車の。この前、新車と取替えてくれたんで」。

「なるほど、誰に紹介されたんだい」。
「所長ですよ、ここの」。
「ビックリしたよ。都の衛生局でさ。接触者のリストに、あんたの名前があったんでな。まあ、良かったよ。で、奥さん元気かい?」
「ありがとうございます。なんとか」。

「孝子ちゃんは?」
「元気です」。
「大きくなったろう」。

「4年ですよもう」。
「4年か」。
「いやになりますよ」。

「今度の、ここではうまくいってるかい?」
「まあ」。
「連中、来んのかい?」
「…2度ほど来ました」。

「まあ、とにかく、会ってなくてよかったよ」。
「その、天然痘の…、菊池さんですか?」
「会ってたら今頃大変だよ。隔離されてなきゃなんないからな」。

「…怖いんでしょうね。天然痘ってのは」。
「怖いよ」。
「でも今は助かるんでしょう?」

「そりゃ早くわかればな。しかし遅れると…」。
「菊池さん、さっきなくなったよ」。
津山の顔が、こわばった。
「テレビでやってるよ。怖い話だよな。じゃあ」。

黒岩が去った後、丸山がすぐ近くの席で新聞を読んでいる。
丸山は黒岩たちが座っていた席に移り、黒岩と別れて去っていく津山の姿を見送っていた。
津山は呆然としたように前を向いて、歩いていく。
そのすぐ背後を、丸山が尾行していく。

津山は丸山に、気づかない。
電話ボックスに入る。
誰かに電話をした後、会社に戻るが、足を止め、1台の売り物の車の中に入る。
運転席に座ったまま、津山は思いつめたようにタバコを口にしていた。

黒岩と丸山は、岡医院の岡四郎に会いに行く。
津山の身元引受人だった。
岡は津山は、完全に更生していると言った。

ただ、生活は楽じゃない。
何をやってもうまくいかない。
「ま、ひとつには世間にも問題がありますね。前科者っていうともう、色(眼鏡)で見る」。

「一番最近はいつ、来ましたか」。
「先月ですかね」。
「電話は?」
「ないですよ。なぜ?」

津山は、どこか加減が悪い時は必ず、岡医師のところに来る。
なぜなら、アレルギー体質なので、岡の専門外については岡が他の医師を紹介をすることにしている。
丸山は岡に、津山が来るかもしれないと言った。
そして、もしかしたら、天然痘に感染しているかもしれないと言った。

「例のあれです」。
「患者に接触したんですか?」
「本人は否定しています。しかし患者は会ったと言っています。しかもその患者はさっき、死にました」。
「どうして本人と患者の言い分が?」
「わかりません、どっちかの記憶が違っているのか。どっちかが嘘をついているのか」。

もしかしたらその患者に接触したことを、津山は知られたくないのではないか。
それというのも、最近、関東の暴力団に流れている拳銃が患者の部屋から見つかったからだ。
津山は、その拳銃の密輸に関わっているのかもしれない。
それならば、会ったのに会っていないと言い張るだろう。

「自分は津山を信じています。ただ…、そういう疑いが、一方にもあるわけです」。
黒岩は、そう言うしかなかった。
帰りのバスを待ちながら、黒岩は丸山に「丸さん。津山のことですがね」と話しかけた。

「うん?」
「自分はまだあいつを、…信じてるんですがね」。
「うん」。

「そりゃ確かに疑われる要素はあるけど、あれがもし、前科のない男だったら…、疑ってますかね?ぼくたち、あいつを」。
「うん…」。
「もしもですよ、本当に患者に会ったんなら、あいつだって病気の方が怖いんじゃないですかね?ぱくられることより、病気で死ぬほうが」。

その後、黒岩が恵子の入院した病室に急ぐと、バクさんと九条がいた。
黒岩はバクに、津山順吉のところに行ったのかと、聞かれる。
津山のことが、既に新聞社にわかっているのか?

更正した津山が、マスコミに追い回され、報道されてしまったら…。
津山は、津山の家族は…。
顔色を変えた黒岩にバクは、このことはまだ、自分の東洋新聞しか知らないと言った。

バクの情報によると、津山は夕方、家に電話してしばらく帰らないと伝えたらしい。
もし患者と接触していたなら、自分もそうするだろうと言う。
家族に感染させる危険があるなら、家には帰らない。
では津山はやはり、菊池と接触しているのか。

黒岩はその夜、恵子の病室で夜を明かした。
丸山が朝方、黒岩を起こしに来た。
「寝てらっしゃんないんでしょ?」と、丸山の妻が聞いた。
丸山の妻が今日は1日、恵子についてくれると言う。

廊下に出た丸山は黒岩に、深町課長は津山をはっきり、クロと断定したと話した。
すでに津山には、尾行がついている。
加賀見もまた、津山の身辺を洗い出した。

だが加賀見は津山の方は、シロだと言う。
津山の会社での信用は、非常に良い。
まじめで裏表がない。
「裏表なしか」。

津山は、セールスの成績は良くはないが、コツコツやっている。
会社は津山に前科があるのは社長が知っているし、チンピラがたかりにきたのも2度ほどあるが、追い返している。
確かに津山は昨夜は、会社に泊まっている。

だがそれは天然痘を家族に感染させるのを怖れたのではなく、セールスの成績が良くないので当直手当目当てだろうと大内は言った。
さらに大内は、毎朝新聞がこの件をかぎつけたことを伝えてきた。
「ちょっとまずいんじゃないんですか。前があるってだけで疑われてんのは。我々はともかく、新聞まで動くと、彼ここに居づらいですからね」。

恵子の病室に、津山の妻が見舞いにやってきた。
黒岩は恵子を丸山の妻に頼んで、向かいの喫茶店に行った。
「あの人、何を調べられているんですか?」と、津山の妻が聞いた。

犯罪ではなくて、車を売った客が天然痘で死んだ患者だった。
それと接触したかもしれないことだろうと黒岩は言うが、津山の妻はその患者が拳銃の密輸に関わっていたことを知っていた。
「どうしてあの人、そんなことで疑われなくてはならないんでしょうか。あの人、あんまりかわいそうです」。

「あの人、今はほんとにまじめです。それを…。刑を終えたということことは、償いをしたってことじゃないでしょうか。そうでしょう?本当は。そういうことでしょう」。
「でも世間は全然違いますね。昔の仲間がたかりに来ても、あの人、絶対受け付けませんよ。おいしい話持ってきても、あの人決して乗りませんよ。徹底的に避けとおしてます」。
「生活は…ほんっとに苦しいですけど」。

「みなさん。少しひどいと思います。あの人、かわいそうです…」。
妻はそう言うと、目頭を押さえた。
「奥さん」。
「すみません」。

「コーヒー冷めますよ」と、黒岩は暖かい声で妻にコーヒーを勧めた。
「はい」。
「黒岩さん。あたし人間ってほんとに汚いと思いました」。

黒岩が、妻の顔を見る。
「私も含めてです。夕べ、新聞社の方が訪ねてみえて、漠然と事情が私にもわかって…。ほんとは私。ほんとは私までもしかしたら、って。そう思いました」。
「…」。

黒岩は黙っていた。
「…」。
妻も、黙っていた。

「つまり、私も主人を疑ったの…」。
「…」。
「…」。

「ですけどね。私、思いました。もしもそうとしたら、しかたのないことだって」。
「主人が。あの人がいくら懸命にまじめにやろうとしても、世間は前科者に本当に冷たくて。それだけでまともな職にもつけず、何かが起こるとすぐに疑われて」。
「そしてまた職を変えなければならず。そうやって6年間一生懸命やってそれでもダメで、何かをしたのなら、それは私、もう責められない」。

もう、妻は黒岩に話しているというより、自分に話しているようだった。
「それどころか私、一緒に罪を背負ってあげる」。
「ほんとに、ほんとに苦しいんですからね」。

「6年。我慢してそれでもダメで。あたしたちのために罪を犯したなら、それで…」。
「あるいは天然痘背負って、それでもそれは私たちにうつすまいと家に帰ってこられないんだったら、私」。
「奥さん」。
黒岩の声で、妻はハッと我にかえった。

「何を言おうとしたんでしょうね、私。あの人、何もしてませんよね」。
「信じてますよ!」
黒岩は力強く言った。
妻がうなづく。

「実は…ついさっき、署から電話がありましてね。話が良い方に動いているんです。彼の嫌疑は晴れつつあります。だから奥さん、心配しないで。本当にみんな、見直しつつありますからね」。
その時、丸山から電話があった。

岡医師から、連絡があったらしい。
津山が、診察してほしいと言ってきた…。
席に戻った黒岩は、タバコを口に押し込むようにして吸った。
言葉がなかった。

岡医師に紹介された医者の診療室で、医師が津山と向かい合っていた。
「どうなさいました?」
「実はお願いがあるんです。岡先生には伏せていただけませんでしょうか。実は…天然痘の予防注射をしてほしいんです」。
黒岩は丸山と、隣の部屋から会話を聞いていた。

「種痘ですか」。
「はい」。
「どなたか、そういう方と接触なさいましたか」。

「はい。最近、バンコクから帰ってきた人です」。
「その人は発病したんですか」。
「はい」。

黒岩の耳に、妻の言葉が響いてくる。
『ほんとに苦しいんですからね。それはもう責められない。それどころかあたし、一緒に罪を背負ってあげる』。
医者に種痘なら保健所に連絡すると言われ、津山は「ここではダメなんですか」と聞いていた。
「ここには、ないんです」。

黒岩の耳に、妻の言葉が響く。
『昔の仲間がたかりに来ても、あの人、絶対受け付けませんよ。おいしい話持ってきても、あの人決して乗りませんよ。徹底的に避けとおしてます」。
『生活は…ほんっとに苦しいですけど』。

「で、今何か自覚症状は」。
「別にありません」。
「熱とか、頭痛とか、腹の痛みとか」。
「頭痛はしょっちゅうです」。

「疲れますか」。
「疲れます。最近特に」。
「いえ、ずっとです。2、3年前からどういうわけかずっと」。
赤ん坊の泣き声が、どこからか聞こえてくる。

「どんな具合の疲れですか」。
マジックミラーから黒岩が津山を見ている。
津山が顔を上げる。

「疲れるんです。ただもう、何もかも。疲れ果てて」。
津山がまっすぐ、黒岩を見る。
見えないはずの黒岩の姿を、津山がはっきりと捉える。

『あの人、何もしてませんよね?』
『信じてます』。
黒岩と妻の会話が蘇る。

津山の目が、うつろになった。
黒岩が手錠を手にする。
診察室に、黒岩と丸山が入ってくる。

津山は、うつむいている。
黒岩は黙っている。
辺りが、すうっと暗くなる…。



ああ~。
つらい話。
私は最後まで、津山が無実を証明される展開を待っていました。

やっていたなんて…。
ほんとに、接触していたなんて…。
むごい展開。

室田さんの、見事な演技。
黒岩を見て、ギョッとする。
あきらめたように、昔の仲間のことを聞かれると笑う。

その様子が、後ろ暗いのか、世間に痛めつけられてしまったからなのか、見ているこちらにはわからない。
やましさなのか、打ちのめされているのか。
わからない程度に目を伏せた室田さんの、微妙なる演技。

奥さんは、春川ますみさん。
肝っ玉かあさんみたいな役を演じると、非常にハマった女優さんでした。
ここでは出番は短いながら、夫を支え、信じ、それでも疑った自分に嫌気が差している様子がうかがえた。
だけど、それも無理はないと夫に理解を示し、自分たちを傷つけまいとする夫に寄り添う決意も伺えた。

春川さんの演技の後だから、津山の罪を見る黒岩がつらい。
見ているこちらも、つらい。
ぽつり、ぽつりと話す津山の魂が抜けたような、憔悴しきったような様子がすごい。

最後の、見えないはずの黒岩を見る津山の視線。
すまないような、もう人生あきらめきったような視線。
何ももう、残っていないような、空っぽな視線。

最後の診察室が、まるで拘置所か、取調室に見える。
灯りが暗くなり、黒岩と津山と丸山に光が当たっている。
その先に、黒く、縄が下がっているようにさえ見える。
まるで、津山の行く末を暗示しているような…。

これから彼はどうなるのか。
家族は…。
重い気持ちで、物語は終わる。

犯罪を犯すということは、被害者と被害者家族、関係者の人生を狂わせること。
それだけでは済まない。
加害者の家族や、関係者を苦しめるという罰もついてくるのだ。

加害者は、被害者や被害者家族はもちろん、加害者の家族、みんなを不幸にするという罪も背負うのだ。
きつい展開は、見てる視聴者に、それを知らせているように思える。
重い回。

唯一の救いは、丸山刑事の黒岩刑事に対する暖かさ。
妻を寄越して、黒岩に休みを勧める。
休まないと言い張る黒岩を少々叱るところが、年長者、苦労人の刑事と言う感じがする。
彼はたまに、非情に見えるけど、いろんなもの、いろんな人を見てきてしまっているんだろうなあ…。

しかし、室田さんはすばらしい俳優さん。
どんな夫で、どんな父親だったのか。
彼の人生がどんなだったのか。
彼の6年が、どんな6年だったのか。
津山の今までが伝わって来て、つらい。

物語の世界に、見ている者をしっかり入り込ませる。
主役の引き立て役じゃない。
そういうドラマは、すばらしい。


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