こたつねこカフェ

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犯罪再現ドラマ 「吉展ちゃん事件」

Mr.サンデー特別編。
1964年に、東京にオリンピックが来る事が決まった時。
その時に起きた事件。

オリンピックに湧く日本中とはまた別の顔のように、継続し、解決した3つの事件を取り上げていました。
全部の事件で当時、事件に関係した人のインタビューも放送。
なかなか、興味深い特集でした。

まず、吉展ちゃん誘拐事件。
これは渡辺謙さんが演じた平塚八兵衛のドラマでも、メインで取り上げられた事件でした。
文化放送のインタビューによる小原の声と、脅迫電話の声を流して聞かせました。

犯人・小原保。
日本中を敵に回した男。
彼は貧しい福島の農家の出身であり、1時間も歩いて学校に通っていた。

その時履いていたわらぞうりと、あかぎれが原因で菌が入り、足が不自由になった。
足を引きずって歩く小原保は、子供たちにからかわれた。
からかわれている小原をいつもかばったのは、母親だった。

1963年3月31日。
その日、吉展ちゃんが良い靴を履いていたのは偶然に過ぎなかった。
だがその良い靴がすべてを狂わせた。

小原は後に、高そうな靴を見て、誘拐する子を決めたと語った。
その日、吉展ちゃんは帰ってこなかった。
身代金を要求する電話が、吉展ちゃんの家にかかった。

両親は当時、高額だった録音機を買った。
それを見た警察は、まだ誘拐と決まったわけじゃないと言った。
しかし父親は4歳の子が、2日も家に帰らず遊ぶわけがないと反論した。

やがて、脅迫電話がかかってきた。
50万円。
現在の800万に相当するが、なまりがひどい音声だった。

子供は無事かと聞く母親に、犯人は「ああ」と答えた。
身代金と子供を交換できないかと、切羽詰った声で聞く母親に小原は「できない」と答えた。
だが本当に、子供の居場所を知っているのはこの電話の男なのか。
母親は聞いた。

「間違いない?」
「まつがいねえ」。
「まつがいねえ」。
間違いない、が、なまっていた。

「子供は無事に帰すことは、約束しますからね」。
小原は何度も身代金を受け渡す場所をうかがっては、警察を確認していた。
犯人は身代金を取りに来なかった。

脅迫電話に出た母親は「坊やは元気ですか?」と聞いた。
「元気です」。
「子供、好きなんでしょ?おたくさん」。
「ええ、好きです」。

何度も、身代金の受け渡し場所の指定はされたが、小原は現れなかった。
そしてついに、最後の脅迫電話がかかってきた。
「もしもし」と出た母親の声は弱々しく、憔悴しきっていることがわかる。
受け渡し場所の「品川自動車」という場所が、「スナガワ自動車」に聞こえた。

警察は中が新聞紙の50万を用意したが、両親は本物を持って生きたいと懇願した。
偽物とわかれば、吉展ちゃんの命がないと思ったのだ。
その場所に、吉展ちゃんのものを置いておくと小原は伝えた。
指定された場所に行った母親の目に、あの、吉展ちゃんのぴかぴかの靴が入って来た。

「吉展」と、母親は靴を抱きしめる。
警察は身代金引渡しに3分送れて到着した。
すべては終わっていた。
小原は身代金を奪って、逃げていた。

受け渡し場所に近い飲み屋で飲んでいて、少し席を外し、身代金を取ってきたのだ。
そして良い儲け話があったからと言って、金をつかむと女将にすぐにツケを払った。
残りの金も、あっという間に借金を返して消えた。

吉展ちゃんは、戻ってこなかった。
戻ってきたのは、あの靴だけだった。
母親は子供には罪がないから、わからないところに子供を置いていってくれと訴えた。

日本中で、母親たちが吉展ちゃんについての情報を提供してくれるよう、街角に立って呼びかけた。
当時の人気双子デュエットは、「かえしておくれ」と言う曲を発表して訴えた。
脅迫電話は、全国に公開された。

街角で、ラジオで、テレビで、脅迫電話の声は繰り返し流された。
「この声、あんたに似てるね」。
小原は行きつけの飲み屋の女将に言われた。
全国から、声の主について警察に情報がもたらされていた。

その中には、小原の情報も入っていた。
だが警察は、足の悪い小原には3分で身代金を奪って逃げるようなことは無理だと判断した。
小原は、捜査対象から外れていた。

文化放送は小原の情報を手に入れ、小原を待ち伏せし、インタビューすることに成功した。
刑事と間違えて、文化放送の社員から逃げた小原の足の速さ。
とんでもない、すばやさであった。

Mr.サンデーで、このインタビューを聞いた小原の知人は小原がまったく方言を出していない、なまっていないことを指摘した。
だが、無理をしているのだろう。
小原は咳き込んでいると、知人は指摘している。

インタビューをした文化放送の社員たちは、小原に違和感を持った。
「ああいった残酷な」と、吉展ちゃん事件のことを小原は語った。
「残酷なこと」?

確かに誘拐は、残酷だ。
だがどうして今、吉展ちゃんの生死がまだわからない時点で、「残酷」とこの男は言い切ったのだろう?
しかしこのインタビューは、小原が犯人でなかったときのことを考え、放送に至らなかった。

事件から1年。
声を頼りの捜査は行き詰まり、やがて半年後。
国家の威信をかけて、東京オリンピックが開幕された。
警察は、オリンピックの警護に総動員された。

人々の記憶から、誘拐事件は消えていった。
だがインタビューをした文化放送の社員には、小原への違和感が残っていた。
もうひとつ、電話越しの小原の録音した声を、刑事たちに聞かせた。

「さんじゅう、ご、ろく」と、小原の電話の声は言った。
「ごじゅうまんー」と、脅迫電話の声は言った。
「さんじゅう、ご、ろく」「ごじゅうまんー」。
二つの声は重なった。

警察は、小原逮捕に踏み切った。
小原は逮捕されてからも、自供しなかった。
それは故郷の母や兄弟を思うと、できなかったのだと後に小原は語った。
だが刑事が福島の実家に行った時、小原の母が言った言葉は小原に突き刺さった。

帰っていく刑事を、裏山まで小原の母親は追いかけてきた。
そして、言った。
「保を悪いことする子に育てた覚えはねえ。でももし、犯人なら」。
刑事は、体を小さく折りたたんで、土下座の格好をした。

「なんとも申し訳ねえ」。
刑事は床に額をこすりつけた。
「何度も、何度も申し訳ねえと言っていたんだ」。
母親は何度も、地面に額を押し付けて土下座した。

「母ちゃん」。
小原が目を閉じた。
「こっちをようく見ろ!」

小原の顔が、ゆがんだ。
「うううっ」と、声が漏れる。
小原は自供した。
日本中の願いもむなしく、吉展ちゃんの遺体は発見された。

小原が福島を出て、東京に来た。
世間は冷たかった。
時計職人になった小原だが、オリンピックの好景気からは取り残されていた。

これは、好景気から取り残された男が犯した犯罪だった。
時計を修理する小原を「この仕事は足が悪くてもできるもんな」と、同僚が笑った。
小原の生活は、荒れた。

ギャンブルに溺れた。
借金ができた。
そして借金取りに追われた。

1人、公園でぼんやりしている小原の目に遊んでいる子供が目に入った。
子供の1人は、綺麗な子供靴を履いていた。
履いていた綺麗な靴に、心が奪われた。
小原が履けなかった、ぴかぴかの子供靴。

金持ちの子に見えた。
小原はその子供に声をかけた。
それが、吉展ちゃんだった。
借金を返せれば、それで良かったはずだった。

水鉄砲を直してあげる。
おじちゃんのところに、道具があるよ。
小原はそう言うと、「ほんとう?」と目を輝かせた吉展ちゃんを連れて行く。

途中で、吉展ちゃんにキャラメルを買ってやった。
子供は、うれしそうだった。
「おじちゃん、ありがとう」。
「ちゃんとお礼を言えて、坊やは良い子だな」。

手をつないで歩いた。
だが、吉展ちゃんの一言が、小原の心に突き刺さった。
「おじちゃんは、足が痛いんだね?」

小原は足を引きずって歩いていたのだ。
「…そうだね」。
小原の顔は、ひきつった。

やがて吉展ちゃんは夕方になると、家に帰りたいと泣いた。
泣いて、泣き疲れて眠った。
おそらく、小原をいたわってのことだろう。
優しい、吉展ちゃんの一言だった。

これが小原を本物の、鬼にした。
「おじちゃん、足が痛いの?」
…この子は、自分の特長を記憶した。
もう、返すに返せない。

小原はベルトをズボンから抜き、手に取った。
吉展ちゃんを、地面に横たえる。
…827日後、1965年7月5日、事件は最悪の展開となって、解決を見た。
告別式の朝、小原の母親は遺体発見現場で手を合わせ、記者になけなしの2百円(今で言う320万円ほどか?)という貯金を渡した。

「保よ。吉展ちゃんのお母さんが吉展ちゃんをかわいがっていたように、お前をかわいがったつもりだ。
お前は、それを考えたことがなかったのか。
保よ、お前は地獄へ行け。
わしも一緒に、行ってやるから」。

貧しさと豊かさの狭間で、自分を見失った男。
死刑確定。
独房で、ひたすら手を合わせている小原。
その朝、看守の足音が小原の房の前で止まった。

「小原保。出房だ」。
出房が何を意味するか。
死刑執行の朝なのだ。

「今度生まれてくる時は、真人間になって生まれてくるって」。
小原は看守に伝えてくれと言った。
看守はうなづいた。
1971年、12月23日、小原の刑は執行された。

やったことは絶対に許されないことだけど、今回も見ていて小原の境遇も悲惨だと思いました。
それでも、母親の愛情はあったのに。
小原の母親の愛情に、胸がつらくなります。
さぞ、肩身が狭かったでありましょう。

今回の小原保役は、柄本時生さん。
なかなか良かったです。
上等な靴に目が釘付けになり、吸い寄せられるように近づいていく視線。
大きな感情の動きはもちろんですが、そういう小さな細かい演技までなりきっているところが良かったです。

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