遠藤周作著 「怪奇小説集 3つの幽霊」

もう、すごい前に読んだ遠藤周作先生の「怪奇小説集」という本。
引っ張り出して読んでみました。
あの頃はこわかったけど…となるかと思ったら、いや!
すごい怖い。

まず、最初の「3つの幽霊」が怖い。
これは遠藤先生の体験談。
遠藤先生がフランス留学した時の体験から、始まります。

学生の遠藤先生は、ルーアンを訪ねた。
理由は、ジャンヌ・ダルクが魔女として火炙りになった街、ルーアンを見たかったから。
遠藤先生は、粗末な料理屋に入る。
そこではルーアンの港で働く水夫が数人、トランプをしていた。

こういう小さな料理屋は、2階からワンルームの小さいホテルになっていることが多かった。
ここも同じで、遠藤先生は主人に部屋はあるかと聞いてみた。
すると、トランプに興じていた水夫たちが顔をこちらに向けた。

料理屋の主人が鍵を渡し、遠藤先生が2階に上がる。
水夫たちが何か言う。
その言葉がわかったなら、危険を察知できたかもしれない。
しかし当時の遠藤先生は、彼らの俗語が理解できるほどまでまだフランス語はできなかった。

遠藤先生が部屋に行ってみると、粗末なベッドに部屋備え付けのタンス、枕元に小さなタンスとその上に、はげちょろの水差しがあるだけの部屋だった。
窓があり、下は夏草が茂る空き地で、空き地の向こうは工場の灰色の塀。
ホテルは静まりかえっていて、他に泊まり客はいないようだった。

遠藤先生は下に降り、チーズとオムレツの食事をとった。
水夫たちは、チラチラこちらを見ている。
当時は珍しい、東洋人に対する好奇の視線だと、遠藤先生は思った。

食事の後、遠藤先生は部屋に帰った。
蒸し暑く、それでも遠藤先生は眠りについた。
数時間後、遠藤先生は息苦しくて目を覚ました。
何かに押さえつけられるような苦しさだった。

後に遠藤先生は、幽霊話で良く言う胸の苦しさは、これなんじゃないかと思った。
得体の知れない恐怖感に襲われ、遠藤先生は飛び起きた。
部屋に何かいる。

人間か動物か、わからない。
だがそれは、開け放しにした窓の外に立っていると思った。

遠藤先生は飛び起きて、灯りをつけた。
誰もいない。
タンスと、はげちょろの水差しがあるだけ。

灯りに誘われて、蛾が飛んできた。
蛾は遠藤先生の顔をかすめて飛び、また窓の外の闇の中に消えた。
窓に近寄ってみた。

その時、悪寒がひどくなった。
昼間の空き地の熱気が、工場の塀に当たって嫌な空気がこの部屋に入るのだろう。
遠藤先生は、そう思った。

夏の日差しが強い、朝になっていた。
帰る時、料理屋の主人は何も言わなかった。
水夫たちは、働きに出たのかいなかった。
外から空き地を見ると、夏草が茂り、その先に灰色の塀があった。

遠藤先生はパリに帰ってから、知人にルーアンは見たかと聞かれた。
なので、この不快な部屋の話もした。
すると知人は、そのホテルは新聞にも載ったホテルだと教えてくれた。

大戦時、ルーアンはアメリカ軍とドイツ軍が戦い、どちらにも空襲された。
あの空き地で、工場の労働者が多数死んだ。
以来、この辺りには不思議な話が聞かれるようになった。

怪談なんて、後からいろんな話がついてくるもの。
遠藤先生はそう言った。
だが、あの夜の不快な気持ちは甦って来た。
…これが、1つめの話です。

フランスの異邦人である遠藤先生。
暗いルーアンの、真っ暗な闇が感じられるような描写。
ゾッとさせる、得体の知れない気配。
さすが、引き込まれます。


スポンサーサイト

コメントの投稿

Secret

プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧

本も映画も文具も、いいものはいい!

LEVEL1 FX-BLOG
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード