梢はいつも、優しくて正しい。
でもわかったよ。
その優しさは、金を持ってる余裕だ。
でもそういうのって、金を持ってない人間をみじめにするんだ。

知ってたぁ?
俺は自分のこと、結構良い奴だと思ってた。
でも違う。

金に心底困って、初めて人の本性がわかる。
金と女、どっちを選ぶか?
そう言われたら、俺は金を選ぶ。

本当の俺は、そういう奴だった。
ほんとに良かったよ。
金持ってる女と、つきあってて。


外資系証券会社で、巨額の金を動かすエリートサラリーマンの白石富生。
これは富生が、恋人の青池梢に向かって言った言葉。
梢は、巨大企業の会長の孫娘。

富生の前途は洋々。
部長も富生には目をかけていた。
それが、パーティー中にかかった1本の電話で崩れて行く。

電話は母の三保子からで、実家の工場が不渡りを出し、父の孝夫が行方不明だと言う。
銀行への5千万は、富生の貯金をはたいて返済した。
しかし、孝夫はヤミ金にも多額の借金をしていたのだ。

連帯保証人になっていた富生に、ヤミ金からの取り立てが始まり、会社にも迷惑がかかり始める。
富生は銀行に借金を打診するも断られ、友達からも断られ、母の三保子は脳出血で倒れてしまう。
会社からは退社に追い込むための、無理なノルマを課せられた。

富生は梢の祖母で会長の早和子に呼び出され、1千万円で梢と別れてほしいと言われる。
断った富生に、弟の光太郎から電話が入る。
金があれば、母親の手術ができる医者に頼めると言う。
引き返した富生は1千万を受け取り、梢と別れる誓約書にサインしたが、帰り道にヤミ金に拉致され、ぼこぼこにされた挙げ句に1千万を奪われる。
金を取るなら殺せと叫ぶ富生にヤミ金は、殺す価値もないと嘲笑った。

立ち上がる気力も失せて寝転がっていた富生を見つけたのは、恩師の紺野だった。
紺野も赤松金融の赤松から、妹夫婦の借金を肩代わりさせられ、一人娘・未央にもそのことを言えずにいた。
紺野の家で傷の手当てを受けて戻った富生を、梢が待っていた。
冒頭の言葉は、お金を差し出した梢に向かって、富生が言った言葉。

泣きながら去る梢に、「金は置いてけよ。気持ちなんていらないから」の一言。
梢に叩きつけられた金を拾い集める富生。
ここまで、息苦しいまでに、富生が追い詰められて行く。
何ひとつ、救いの手は差しのべられない。

これでもか!
今度はこうだ。
これならどうだ!
どこでコイツは、諦める?

まるで運命が、こんな風にイジメでもしているかのよう。
ほんとに、こういう時ってあるんですよね…。
「自分が何かしたか?こんな目にあうような、何か悪いことしたか?」って言いたくなる時。

さて、失踪していた富生の父親が自殺し、葬儀の夜。
部長、社員、取引先の罵倒の声。
借金を回収に来たヤミ金の、父親への侮辱。

ついに富生は、叫ぶ。
「確かに親父はバカだ。あんな金を借りた親父が一番悪い。でも、ここまで手のひら返されるほど、親父は悪い人間だったのか?
金がないだけで、借金残しただけで、親父は悪人か?」

富生は従業員たちに向かって叫ぶ。
「あんたたちを失業させたくなくて、親父は無理したんじゃないのかよ!」
「金なんかな…、俺が作ってやるよ!」
富生は一人一人を指差す。

「あんたにも、あんたにもあんたにも。あんたにもあんたにも、あんたにも!」
「お前ら全員の前に札束の山、積み上げてやるよ!」
「お前らが親父のせいで損した分、残らず全部、俺が返してやるよ!」

「お前らが見たことのないような大金、目の前に積み上げてやるからな!」
「俺の人生と親父の人生。金でなくしたもの、全て!金で取り戻す!」
富生はそう叫び、抹香を父親の遺影に叩きつけた。


最後の「倍返し宣言」の草なぎさんの叫びはさすが。
溜めの叫びです。
途中に、♪貸した金返せよ♪の「帝国金融」がいたような。
しかし富生は、誰に倍返しするんでしょうか。

ヤミ金。
もとの上司。
会社。
銀行。

屈辱を与えた友達。
金を貸さなかった友達。
従業員たち。
いや、世の中にでしょうか。

富生は、母親が通っていた神社で言います。
「母は結婚以来、ここに通うのが日課でした。毎朝、母が来られない時は家族が代わりにお賽銭を。『真面目に生きてればきっと守ってくれる』って」。

「なのに…。何見てたんだよ。神様って奴は」。
「返して!」
「1日5円、365日、1825円。40年分で7万3千円。初詣の1万かける40年分。合計して、47万3千円。まとめて返してくれよ!」

「毎日たった5円じゃあ、御利益なかったんですかね。なあ、母ちゃんに何か言ってやってくれよ!なあ!氏神様、氏神様って、毎日どんだけ祈ってたか。わかってんのかよ!なあ!」
行き場のない怒りが、ここで爆発。
富生の特殊な才能は、一度見聞きした数字を完全に記憶してしまうことらしい。

たぶん、これからはこれを活かして行くんでしょう。
同じように、ヤミ金の赤松は、世の中に復讐しているように見えます。
富生はおそらく、彼の下で働くんでしょうね。
これに紺野が絡むと、どうなるのか。

紺野の家を出た富生のポケットから、畳まれた1万円札が出て来る。
富生が、紺野の家に向かって、深く頭を下げる。
つらい時に受けた優しさは、忘れない。
これは、結構な伏線なんじゃないかと思ったんですが、どうでしょうね。

富生の様子を見て、これは財産放棄するべきじゃ?とか。
銀行よりヤミ金の借金のがまずいんだから、違法とか言ってないでこっちを何とかしないと、とか。
父親は普通、保険入ってるでしょう、とか。
証券マンが連帯保証人になれるのかな?とか。

中小企業がヤミ金ってこと事態が、もう無理ってことでしょう、とか。
世界的な特許取れそうなら、融資が受けられるんじゃないの?とか。
それならベンチャーに工場売りなさい!とか。

いろんなこと考えましたが、結局、突っ込む前に草なぎさんの演技に引き込まれてました。
迫真の演技。
それだけに、リアルでつらかった。

遠藤周作先生が、日本人の優しさやモラルの高さを賞賛されるたび、「本当にそうかな」と思ってしまったそうです。
それは、戦争の時の極限状態の人間を見ているから。
人間がとことん、利己的に、残酷に、卑怯にもなる。
だから、そんな極限状態を作ってはいけないのだ。

遠藤先生は、そう思ったそうです。
戦争は、まさにそれだった。
そういう意味でも、「銭の戦争」は戦争なんでしょう。
途中、私は「翼彦一」を思い出しもしました、たはは。

渡部篤郎さんが、「たまんない」と言って、お金の匂いを嗅いでました。
ちょっと怖い話になるんですが、高校生の時、死臭がする人がわかるという人の話を聞きました。
死臭は、お金の匂いに似てるんだそうです。

それを聞いてからしばらく、お金の匂いが怖かったです。
「銭の戦争」で、この話を思い出しました。
何だか、「銭の戦争」らしい話だなと思いましたよ。

渡部篤郎さんのキャラが、強烈。
日本で一番良い女は、樋口一葉だとか。
渡部さんと富生の戦いが、楽しみです。


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2015.01.11 / Top↑
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