お戯れを…。 「累ヶ淵」

日本怪談名作劇場。
第1話は「累ヶ淵」。
怖い、怖い、もう書いてるだけで怖い。

日本人のDNAが怖がらせる。
あんまり怖いので、話が詳しく書けないという情けなさ。
ですが、改めて見ると、私にはうれしいキャスティングがされてるんですね。

雪の夜、まだ15になったばかりの娘に手を引かれて歩く按摩。
ピー。
笛の音が、寒い夜の中、響く。
深見という旗本屋敷の前で中間が按摩を呼び止め、殿様をほぐすように中に招き入れる。

娘は寒々しい廊下で、父親を待っている。
美しい。
粗末な着物、薄汚れた顔、乱れた結い髪でも、美しい。
その美しさに、酒を飲んでいた殿が目を留める。

お前の娘かと聞かれ、按摩はまだ子供ですと答える。
殿は息子が1人いたが、家を嫌って出て行ってしまった。
飯をかきこみ、酒を飲んでいる座敷から、布団を敷いた寝所が見える。

「娘、寒いであろう。ここに来て、火に当たれ」。
だが娘は答えない。
「入れ」。
殿は娘の手を引っ張り、中に引き入れる。

「不調法ものですから!」と按摩が許しを請う。
「いや、かまわん。この娘が気に入った!」
「お戯れを!」

抵抗する娘の右肩を、殿がすっと刀で撫でる。
血がにじむ。
娘が気絶する。

懸命に娘を逃がそうとする按摩を、殿は斬った。
そして殿はそのまま、娘を手篭めにした。
中間を呼びつけ、按摩の死体を捨ててくるように命ずる。

殿が哂う。
行李に按摩を押し込め、中間はおびえながら、雪の中、累ヶ淵へ行李を引っ張っていく。
雪の上に、赤く血の跡がつく。

屋敷では殿が飲んだくれていた。
よろけて立ち上がった拍子に、行灯が倒れた。
油が畳にこぼれる。
火がつく。

「殿様」。
誰かが呼んでいる。
ふと、斬ったはずの按摩が見える。

「お戯れはおやめくださいませ…」。
「そうか!按摩ぁ!どこからでも出て来い!」
仰天した殿は、再び斬りつける。

按摩は倒れない。
床に、障子に火がつく。
屋敷は炎上する。

庭に出た殿は、刀を振り回す。
刀の柄が庭の敷石に、はまる。
鋭利に上を向いた刀に、殿が突き刺さる。

口を開け、殿は逃れようとする。
抜けない。
ひいいいと、言葉にならない声を上げ、殿は後ろ向きにひっくり返る。
血は、刀をつたって、地面に吸い込まれる…。

中間は、淵に沈める前、行李の蓋を開けた。
頭から血を流し、按摩は冷たくなっている。
中間は、按摩の持っていた煙草入れを手に持つ。

人の顔をした、変わった煙草入れだった。
中間は、按摩を沈める。
氷が割れ、その下の水が真っ赤に変わる。
中間は腰を抜かした。

5年後。
焼けた屋敷跡に、1人の遊び人風の男がたたずむ。
ピー。

暑い夏の日だった。
どこかで、按摩が吹く笛の音がする。
ぼうっと、按摩の姿が浮かび上がる。

お豊、豊志賀師匠のところにお久という娘が助けを求めて転がり込んでくる。
義理の母親に売られ、ある大店の隠居に妾奉公させられる。
お豊はかばうが、義理の母親はヤクザを連れてきている。

そこに助けに入ったのが、屋敷跡にいた遊び人風の男。
男が負ったかすり傷を手当てしたお豊と、男の目が合う。
お豊の頬が染まる。

階段を下りていくお豊が暗闇をふと見ると、頭から血を流した男がこちらを見ている。
絶叫し、お豊は持っていた湯飲みを落とす。
驚いて降りてきた男に、お豊がしがみつく。
男は煙草売りで、あの深見の殿の息子・新五郎だった。

お豊と新五郎は深い仲になる。
しかし自分を捨てて、今度はお久に乗り換えるのではないかと思い込んだお豊は、お久を追い出す。
頼るところもないお久を、もう一度置いてやってくれと新五郎が頼みに来る。

断ったお豊に、腹を立てた新五郎。
師匠の弟子が少なくなり、仕事がおろそかになったのも自分のせいだと言う。
別れを口にして出て行く。
追いかけるお豊は、顔に怪我をする。

絶望したお豊は、自分の顔を白く、白く塗りこめる。
そこにお久の義理の母親が、ヤクザを連れてくる。
白い顔をして、白い装束を着て、ぽつんと階段に座っているお豊を見て、母親もヤクザもゾッとする。
「あの人はいないよ」。

それでも仕事を果たそうとするヤクザは、お豊を刺してしまう。
お豊の顔の傷口から、血が滴り落ちる。
白い顔、赤い血、その目、形相にヤクザも悲鳴を上げる。
母親も、腰を抜かす。

その頃、かつての中間だった爺やの家に、お豊が来る。
新五郎を待ちたいと言って、お豊は家に上がる。
やがて、新五郎がお久を連れて戻る。

すると、待っていたはずのお豊はいない。
中間に、お豊との因縁を聞かされた新五郎は、「江戸から逃げろ」と言われる。
お久と一緒に逃げていく新五郎。
だが、累ヶ淵まで来た時だった。

お久が足を滑らせ、淵に転落。
助けようとする新五郎は、落ちていた杖を拾う。
その杖は、お豊の父親が持っていた杖。

杖を伸ばし、お久を救う。
だが、しがみついてきたのは、怖ろしい形相のお豊だった。
思わず、手を離し、お久を突き落とす新五郎。

もみ合った新五郎の胸に、地面にはまった杖が突き刺さる。
父親の姿と、新五郎の姿が重なる。
逃れられない。

新五郎は倒れる。
累ヶ淵が、静かになる…。
ピー。
どこかで、按摩の笛の音が聞こえる…。



殿が、菅貫太郎さん!
うれしいキャスティングじゃないですか!
娘・お豊は、片桐夕子さん。
もう、これだけで時代劇ファンは喜んでしまいました。

新五郎は林与一さん。
色男!
旗本の息子だから、強い。
でもお豊の父親が、「その男はダメだ」と言わんばかりに現れる。

お久は新五郎に憧れたでしょうが、ここでの新五郎はお豊から乗りかえるような人じゃない。
しかし、お豊は嫉妬にかられる。
やがて、顔に傷を負うお豊。
もう、定番です。

ううう、来たよ。
傷はいっこうに、良くならない。
ならないどころか、傷口は腫れあがり、紫色に裂け、広がっていく。
あああ、怖い。

昔、「累ヶ淵は、怖ろしい話」と言われましたが、だんだんわかってくる。
お豊と新五郎は、敵同士。
それなのに2人は出会って、惹かれて恋仲になる。
2人のまったく知らないところで、つながっている。

累ヶ淵は、この「因縁」が延々と続く話。
知らないところで因縁がつながっていて、お互いが最後は殺し合い、不幸にし合っていくお話なんです。
本人たちが何も知らない、していないのに…。
わかった時、ゾッとしました。

霊感があるという人が、夫婦で殺しあった事件のニュースを見て、言ったことがあります。
「この2人は前世は、敵同士。一緒になっちゃいけない2人なのに、一緒になっちゃったからなのよ」って。
いやいや、本当かどうかは確かめようがないんですが、累ヶ淵を思い出しました。

「八つ墓村」だって、最後、犯人と主人公が実は尼子の落武者の系譜の上にいることがわかる。
金田一耕輔は、ここでもう、調査をやめる。
怖い。
確かにもう、知りたくない…。


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癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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