日本階段名作劇場。
第2話は「怪談 大奥開かずの間」。

慶応4年5月3日。
江戸城に、官軍の兵士が入ってきた。
隊長を先頭に3名の兵士が、大奥へ通じる廊下を行く。

戸を叩く。
空いた扉の向こうには、大奥総取締の滝山がいた。
「ご検分、ご苦労に存じます」。
かつては通った男は将軍だけの、お鈴廊下を4人が行く。

ひとつの鍵のかかった部屋の前で、隊長が足を止めた。
「なりませぬ!この部屋を開けてはなりませぬ!」
滝山が血相を変えて止める。

5代将軍綱吉の頃から、何があっても開けてはならぬと言われている開かずの間なのだ。
開ければ必ず、たたりがある。
「構わぬ。開けい!」

鍵が壊され、封印が解かれた。
中には豪華絢爛な駕籠。
美しい女性が描かれた掛け軸が、かかっている。
「お雪の方さま」。

滝山が呼びかけた途端に部屋中が揺れ、掛け軸の前に置かれたつづみが転がる。
駕籠が揺れる。
部屋中のものが、鳴動している。

さすがの隊長も、顔色を失った。
内掛けが落ちてくる。
背後から隊長の首を、誰かが絞める。

それは、能面をかぶった女性の手だった。
思わず隊長が、刀を振りかざす。
だが床に落ちた内掛けは、空気が抜けたようにぺしゃんこになる。

滝山は話し出す。
今から2百年前のこと。
綱吉が存命の時。

大奥に、1人の女性が入ってきた。
名はお妙。
綱吉の側室・お雪の方が亡くなって3年が経っていた。

お雪の方は、つづみの名手だった。
綱吉はよく、お雪につづみを打たせ、聴いていた。
お雪の方は、この開かずの間となっている部屋で、亡くなったのだ。

綱吉に無礼討ちにあった、いや、自害したと、奥女中たちはそれぞれ噂していた。
新入りのお妙が、挨拶回りに開かずの間の前を通った時だった。
鍵のかかった扉から、血が滴り落ちてくる。
お妙の管理者である毬乃小路が、衝撃のあまり、胸を押さえる。

その夜、見回りの奥女中たちは、お雪の方についていた尼・浦野が廊下に座り込んでいるのを発見する。
彼女は今は口も利けず、白く濁った目は、見えなくなっていた。
浦野はやって来た毬乃小路の手を引き、開かずの間の前に案内する。

開かずの間から、「出しておくれ」という小さな声がする。
「お雪の方さま!」
毬乃小路は倒れ、その日から高熱にうなされるようになる。

井戸からくみ上げた水の中からも、お雪の方の銀のかんざしが発見される。
お雪の方は生きていると、お妙は言った。
大奥全体が、怯え始める。

正室・信子と総取締役であり側室である右衛門佐は、お雪の墓を掘り返すことにした。
棺桶の中、お雪の方の遺体はなかった。
毬乃小路が倒れ、そのまま息を引き取る。

信子の方が、右衛門佐に心情を吐露する。
自分は右衛門佐を信頼しながらも、嫉妬を抑えることができない。
右衛門佐だけではない。

綱吉の側室、みんなに信子は嫉妬している。
自分にとって、上様は唯一の存在。
だが綱吉にとって、自分はただのお飾りの正室だ。
綱吉に寵愛された、お雪も憎かった。

そんなある日、綱吉がお妙に目を留める。
お妙は、綱吉の側室になった。
だがそれと同時に、大奥には開かずの間から流れるつづみの音が響くようになる。
それを聴いた綱吉は、真っ青になる。

開かずの間に入り、つづみを手にした綱吉は、つづみに残ったぬくもりにおびえる。
誰かが叩いていたのだ。
「お雪、許してくれ…」。

綱吉は、お雪を手討ちにした。
なぜか。
それはお雪が、寺の坊主と密通したためだ。

お雪は何一つ弁解せず、綱吉に討たれた。
綱吉がお妙と寝所にいる時、またしてもつづみの音が響く。
刀を手に、錯乱した綱吉が開かずの間に入る。

お雪は、密通などしていなかった。
将軍の子を身ごもったために嫉妬した信子が、毬乃小路たちとともにお雪を陥れた陰謀だった。
開かずの間で、綱吉が刀を振り回す。
それは信子に刺さった。

驚いた綱吉の腕の中で、信子は上様に刺されて幸せだと言った。
そして、綱吉を刺した。
2人が倒れた。

すると、お妙と浦野が現れた。
お妙は浦野の協力で、呉服問屋の幼女となり、この大奥に入ってきた。
だがお妙は、お雪の妹だったのだ。

浦野の口が利けないのは芝居であり、目も魚のうろこで覆われたために濁っていただけであった。
復讐を終えたと思った浦野とお妙の前に、右衛門佐が現れる。
すべては、右衛門佐の計画通りだったのだ。

それを聞いた綱吉は、力尽きる。
今度はお妙と浦野を、右衛門佐が殺してしまえば終わる。
右衛門佐が襲いかかる。
お妙を浦野が守ろうとする。

懐剣を構え、突進してきた右衛門佐はふいに足元に転がってきたつづみにつまずき、自らを刺した。
信子の方、綱吉、右衛門佐は病死ということになった。
以来、この部屋は開かずの間となったのだ。

滝山が語り終えた。
「怖ろしい話だ」。
官軍の隊長がつぶやく。

「しかし滝山殿、あなたはどうしてその話を?」
「大奥の中で語り継がれてきたとは思えぬ」。
すると、滝山が振り返る。

「わたくしが、そのお妙でございます」。
「バカな。2百年前の話ですぞ」。
隊長が薄く笑う。

雷鳴が轟いた。
滝山の顔が、白く浮かび上がる。
「バカな」。
隊長がもう一度、言う。

次の瞬間、女は消えた。
「滝山殿!」
隊長は、たった今まで目の前にいた滝山の名を呼ぶ。

「滝山殿!」
床に転がっていた能面が、密かに起き上がった。
隊長は、廊下に出た。
誰もいない。

廊下を歩いていく隊長は、気づかない。
足元に、お雪の銀のかんざしが落ちていることを。
そのかんざしに、髪の毛がまとわりついていることを。
大奥は、静まりかえっていた。


官軍隊長は、藤田まことさん!
顔は中村主水ですが、中身は官軍隊長です。
官軍の格好も、お似合い!
お元気な藤田さんの姿が、うれしい。

でも、隊長の部下3人は、どこに行っちゃったの?
最初のポルターガイストで、逃げちゃったの?
隊長も、気にならなかったの?

魚の鱗をコンタクトレンズのようにはめてごまかすのは、「必殺仕置人」で神田隆さんの検校もやってました。
痛そう。
目が乾きそう。

綱吉を信子が刺したとか、二人がほとんど一緒に亡くなってるとか、他の大奥ものにもありましたね。
柳沢に払い下げた染子が生んだ子が、自分の子ではないかと言う綱吉。
それを6代の後の7代将軍にしたい。

世継ぎ問題と、愛憎。
嫉妬と陰謀。
「大奥」の怖さは開かずの間ではなく、人間にあったのだ。

確かに大奥は怖い。
そう思った瞬間に、やって来た恐怖。
大奥に亡霊は、いたのだった。


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2015.03.13 / Top↑
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