こたつねこカフェ

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誰もあの館には住めない 「チェンジリング」(1)

1968年。
アメリカのコロラド州デンバーで、作曲家が格安の豪邸に入居。
しかし屋敷では毎日、何かを叩くような音が響き、ドアが勝手に開閉する。

調べたら、2階の部屋の壁がおかしい。
壁を壊すと、階段が現れた。
その先には部屋が現れ、少年の日記があった。

隠された部屋。
そこに子供がいた形跡がある。
怖い話だ。

この映画は、本当にあったこの話からできたらしい。
それを知ると、本当に怖い。
「チェンジリング」。

雪のある日、音楽の教授のジョン・ラッセルは家族と外出していた。
車が止まってしまい、ラッセルは電話をかけに電話ボックスへ入った。
外では、妻と娘が雪合戦をしてはしゃいでいた。

やってくる一台の車。
雪道で突然、スリップした。
対向車がそれを避けようと、ハンドルを切る。

ラッセルが事態を把握し、電話ボックスを飛び出そうとしたが遅かった。
妻は娘をかばうように抱きかかえ、後ろに倒れた。
そこに車は容赦なく、突っ込んだ。
ラッセルの車が、グシャリと潰れる…。

雨の中、ラッセルは仕事から家に戻ってきた。
門番が優しく声をかける。
「ありがとう」と言って、ラッセルは部屋に戻る。

箱に詰められ、片付けられた荷物。
家政婦が声をかける。
ラッセルは過去に戻る。

「パパ」と娘が笑い、ボールを投げてくる。
ラッセルの目の前に、娘とキャッチボールしたボールが転がっている。
シアトルに向かう荷物に、このボールも入れるよう、ラッセルは指示する。

事故から4ヶ月。
友人がラッセルを気遣い、シアトルの大学に呼んだのだ。
卒業生で、有名な作曲家となったラッセルは歓迎された。
友人の家では、兄弟が先を争って帰って来た。

ラッセルはそれを見る。
家はどうするのか聞いた友人の妻に、ピアノを弾いても苦情がこないよう、家を借りたいと言った。
クレア・ノーマンという女性が翌日、ラッセルを連れて古い立派な屋敷を案内しにやってきた。

広い庭。
石造りの屋敷。
12年前に歴史保存教会の手に移ったという、豪奢な古い館だった。
「すごいな」。

館は、チェスマンハウスといった。
博物館にする計画まであったのだが、住むために建てられた家なのでとクレアは言った。
ではなぜ、今まで人が住まなかったのだろう?
管理が大変だったのではないか。

家具はついている。
今は協会のほうで、手入れをする人間が来るとクレアは言った。
大きなグランドピアノがあり、調律すれば使えた。
ラッセルは館を借りることにした。

ラッセルがピアノを弾いている。
一箇所、鳴らないキーがある。
手入れの職人が人が来ているのを知らせて、ラッセルは出て行く。
誰もいない部屋。

ピアノがある。
ポン。
さっき鳴らなかったキーが、音を立てて沈んだ。

ラッセルの授業が始まった。
授業はラッセルの講義を聞きたい学生で溢れた。
夜には、チャリティーのコンサートに出席した。
ラッセルの曲が、演奏される。

地元の名士が集まっていた。
クレアから、チェスマンハウスを借りている人だと紹介された夫人は、少し怯えた表情を見せた。
「あそこ、広いでしょ」と、とってつけたようなことを言う。

上院議員のジョセフ・カーマイケルが演説を始めた。
30年も議員を務めた、実力者だ。
小柄だが、攻撃的な風貌の男で、歴史保存協会の理事も勤めている。

館に戻ったラッセルが眠りにつく。
朝、6時。
ごーん、ごーん、ごおおおんという音が館中に響く。
「タスケテ…」。

「助けてえ…」。
確かに子供の声がした。
ラッセルは部屋中を見回した。
誰もいない。

その日、ラッセルはピアノを弾いていた。
ギイイと音がする。
背後でドアが開く。

ドアは、こちら側に向かって開く。
廊下から、誰かが押さないと開かないはずだった。
だが、開いたドアの無効には廊下が見えるだけ。
誰もいない。

ラッセルが振り向く。
外をのぞく。
「誰かいるのか?タトルさん?」

「お呼びですか?」
呼ばれたと思ったタトルが、庭から声をかける。
掃除の人でも来ているのだろうか。

いや、今日はタトル1人しか来ていない。
気のせいか、とラッセルはピアノを弾き始めた。
前には録音機がある。

ラッセルは今、録音したピアノを録音する。
録音機が回りだす。
流れるような、ピアノの音。

約束した版画を持って、クレアがやってきた。
館の前で写した、古い写真もあった。
クレアが素敵な小物入れに目を留めた。

中には娘のキャシーが遊んでいた、ボールがあった。
クレアが気まずそうに、ボールを元に戻す。
乗馬服を着ているクレアに、ラッセルは一緒に乗馬に出かける。
ラッセルはつい、娘のことを思い出した。

馬が大好きだった。
事故のことが、ラッセルに蘇る。
その朝、眠りながら、ラッセルは泣いていた。

朝、6時。
ごーん、ごーん。
またあの音が、館中に響きだす。

ラッセルは目を見張った。
涙が止まった。
何だ?
この音は。

タトルはボイラーが詰まったのだろうと言って、パイプを叩いた。
だが2日続けて、朝6時きっかりに鳴ったのだ。
30秒鳴って、これもまたキッカリ終わる。
古い館だから、いろんな音が出るでしょうとタトルは言った。

その夜、館では学生たちが演奏をした。
雨が降っていた。
学生たちが帰って行く。

見送ったラッセルが家に入ると、水音がする。
雨の音ではない。
ラッセルはキッチンの蛇口が開いて、水が出ているのを見つけた。

「やめて…」。
声がした気がした。
ラッセルは階段を上がる。
また、水音がしている。

きゅっと蛇口が閉まる音がして、水音がやんだ。
上だ。
3階だ。
いぶかしげに、ラッセルは階段の上を見る。

暗い階段を上がっていく。
廊下には誰にもいない。
声がする。

水音が舌。
ラッセルがドアを開けると、バスルームの蛇口から水が出ていた。
浴槽に水が溜まっている。

ラッセルは蛇口をひねって、水を止めた。
その瞬間だった。
水の中に、何かがいた。

あぶくが、ひとつ、ふたつ、立ち上ってくる。
はっと、ラッセルが息を呑む。
水面にぼんやりと、顔が浮かぶ。

目が見えた。
こちらを見た。
あぶくと目が重なり、まるで目玉が水に浮いてくるように見えた。

子供だ。
男の子だ。
ラッセルは後ずさりして、部屋を出た。
声も出なかった。

ラッセルはクレアを訪ね、館でこういうことが起きたことはないのか聞いた。
クレアは自分がここに来た時はもう、空き家だったと言った。
ラッセルは根を詰めて仕事をしているのではないか。
事故のことで、精神もやられているし…。

電話で呼ばれたクレアが席を外すと、事務員の初老の女性がやってきた。
あの家は貸すべきではなかったのに、クレアが勝手に話を進めたのだと女性は言った。
「人が住むのに向いてないからです」。

「誰もあの館には住めないわ。人間が近寄るのを嫌っているから」。
「じゃあ、やっぱり以前に何かあったんですね?」
女性は無言で去っていく。

ラッセルは館に戻って、再び外出した。
その時、ラッセルの前にガラスが落ちてきた。
赤いステンドグラスだった。

しかし、どこの窓も割れていない。
ラッセルは館をじっと見る。
気が付かなかったが、屋根裏に窓がある。

赤いステンドグラスがはめこまれていた。
あそこだろう。
ラッセルは館の中に戻り、屋根裏に向かった。

ひとつ、ひとつ、ドアを開けて、確かめる。
だが庭に面した窓のある部屋はない。
奥の突き当たりに、部屋がある。
開けると、そこは物置だった。

古い壷やら、道具が棚に置かれている。
だがよく見ると、壁がおかしい。
ラッセルは棚をどかした。

壁の板を外すと、ドアが現れた。
鍵がかかっている。
ラッセルは鍵を叩き始めた。
壊れない。

その時、あの音が館に響き始めた。
ごおおん、ごおおん。
音が反響する。

ラッセルが再び、鍵を壊し始めた。
音がやんだ。
ドアを押すが、開かない。

体当たりする。
しかし開かない。
もう一度、と思ったとき、ドアはすうっと開いた。

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