「うばすて山」。
高齢化社会と言われる現在に見ると、子供の頃とは違う感情がわきあがる。
自分も年齢を重ねていくと、ほんとにジンと来るものがある。
60歳になった親を、山に捨てなくてはならない村があった。
そむけば、殿様からきつい罰を受ける。
この村にある、母親と息子2人で暮らしている家も、ついに母親が60歳になった。
うばすて山に母親を連れて行かなければならない。
毎日、毎日、息子は1日延ばしにしてきた。
だが母親は、明日行くと言う。
このまま延ばしていても、しかたがない。
その夜、最後の食事を2人でとった。
息子の頭に母親を背負って山を登る途中、息子に母親と過ごした小さい頃の思い出が蘇ってくる。
母親に甘える自分。
いたずら盛りには、怒られたこともある。
息子の目に、涙がにじむ。
すると母親を背負った背中から、パキパキという音がする。
息子が見ると、母親が枝を追っている。
帰りは、暗くなるだろう。
山から戻る息子が迷わないよう、枝を折っていたのだった。
ついにその場所に着いた。
母親はむしろを敷いて、その上に座った。
早く帰れと言われ、息子は山を降りる。
しかしたまらなくなった息子は、母親の元へ戻る。
母親はむしろの上で手を合わせていた。
そのまま、死ぬのを待つつもりだったのだ。
だが息子は母親を背負って山を駆け下りる。
とがめられても良い。
息子は家に戻り、床に穴を掘って母親を匿う。
辛抱してくれと言う息子に、母親は微笑んだ。
翌日から息子は、何食わぬ顔で畑仕事をした。
それからしばらくして、この村に大変なことが起きた。
隣の大きな領主が、ここの殿様に無理難題を吹っかけてきた。
灰で縄を結んでみろ。
それができなければ、この国を攻める。
困った殿は、村にもこの難題を高札にして知らせた。
息子は困った顔をして、床下の母親に戦が始まるかもしれないと言った。
すると母親は、塩水に濡らした縄を焼いてみろと言う。
果たして、縄は灰になったがそのままの形で残った。
それを殿に持っていった息子は、たいそう誉められ、褒美を得た。
床下の母親に、息子はそれを見せた。
しかし隣国の殿は、さらなる難題を吹っかけてきた。
曲がりくねった節のある竹に、糸を通してみろ。
今度も息子は母親に相談した。
すると母親は、竹の片方の口に砂糖を置けと言う。
そして糸を結んだアリを竹に向かって放す。
アリは砂糖がほしくて、竹の中を抜ける。
同時に、糸は曲がりくねった竹の中に通るだろう。
その通りに竹に糸を通したものを、息子は殿に献上する。
息子はまたまた、褒美をもらった。
だが隣国の殿はまた、難題を吹っかけてきた。
手を触れず、鳴る太鼓を作ってみろ。
今度も母親は蜂を入れて、太鼓の皮を張れと教える。
蜂は暴れて、手も触れないのに太鼓が鳴った。
またしても息子は、殿にその太鼓を献上する。
殿は感心するが、ふと、これは息子1人で考えたことかと聞く。
息子はお咎めを承知で、殿に本当のことを話す。
年寄りの知恵はたいしたものだ。
それがなければ、この国は戦となって、滅ぼされてしまったであろう。
反省した殿は、うばすての習慣をやめさせた。
孝行息子と母親は、村で幸せに暮らした。
母親を捨てに行くところは、かなり悲しい。
山の奥、母親が置いて行かれた場所には、他に古いむしろがある。
木にかかったむしろもある。
古い着物もある。
履物も。
ここに人がいた形跡がある。
そして、その人たちがどうなったかも…。
上空にはカラス。
ここで起きたことが、見ているこちらに伝わってくる。
でも「うばすて山」は最後は、めでたしで終わるから良いです。
こんなことは、あってはならない。
悲しいことが起きないよう、幸せに暮らせるよう。
国はそのために、豊かさを目指した。
技術も、医療もそのために、人が幸せになるために。
社会的に弱い立場になった人でも、ちゃんと暮らせるように。
そのために、発達発展してきたのだろうと思ったりする。
達成できているか、そのためのやり方が正しいか。
それは、わからないけど。
こういうことが起きないように。
人間らしく生きていけるように。
当時、これを見た時よりも、高齢化社会は深刻になっている。
だからか、今見ると胸に迫ってくる。
考えさせられる。
「昔ばなし」って、すごい教えや道徳が入っているんですねえ。
人の感情に、訴えて来る。
思いやり、優しさの大切さを知る。
これに泣けるのは、年のせいなのか。
日本人のDNAなのか。
このアニメが、情操教育にものすごく良いって言われる意味が、本当に良くわかる。
そして改めて見ると、2人の俳優さんの声の出演がすばらしい!
さらに話ごとに変わる画が、すばらしい!
話に合わせている、これはもう、芸術。
楽しい話、悲しい話、笑える話、泣ける話。
怖ろしい話、不思議な話。
バラエティに飛んだ話の数々。
日本の歴史、生活、人々の息遣いを感じさせる。
まさに日本の文化だと思いました。
今もテレビ東京でやっていますが、「まんが日本昔ばなし」は、やっぱりすごい。
好きだなあ。
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