仲代さんの著書には、自分が知っている俳優さん、女優さんの話が出てきて、非常におもしろい。
「鬼龍院花子の生涯」は私も好きな映画ですが、そうです、仲代さんは鬼龍院政五郎役でしたね!
養女の松江が、夏目雅子さん。

いやもう、夏目さんは美しかった。
凛々しかった。
仲代さんも夏目さんを、絶賛しています。
あの撮影の時、もう夏目さんは病気だったそうです。

夏目さんは仲代さんに、「私、病気持ちなんです」と言ってきた。
「仲代さんとは、ラブシーンがありますから。驚かれると思いますので、先にお見せしておきます」。
夏目さんはそう言って、ぱっと胸元をはだけ、手術跡を見せた。

この時、仲代さんは夏目さんを、すごい女優だなと思った。
女優なのに、自分の傷跡を見せた。
それも仲代さんがビックリしないようにと仲代さんを気遣って。
心打たれた仲代さんは、夏目さんに精一杯の演技指導をした。

「なめたらいかんぜよ!」
あの言い回しも、教えた。
「こういう時にヤクザはこう振る舞い、こう声を出す」。
仲代さんの演技指導に夏目さんは、一生懸命応えた。

原作者の宮尾登美子さんは自分の小説の映像化に対して、非常に厳しい人だった。
でも「鬼龍院花子の生涯」は、すごく良かったと誉めてくれた。
あの映画は、女優たちがすごく良かったと仲代さんは言います。

女房役の岩下志麻さん。
「仲代さん、ヤクザの女房ってどんな歩き方するんでしょうね」と聞いてきた。
でも仲代さんだって、その世界のことをそこまで良く知っているわけじゃない。

仲代さんは「用心棒」の時の、山田五十鈴さんを考えた。
昔のヤクザの女房っていうのは大概、女郎あがりなんじゃないかと思った。
それを教えると岩下さんは、撮影所に入ってくる時も赤線地帯にいた女性たちみたいな歩き方をして入ってきた。

敵方のヤクザの女房は、夏木マリさんが演じた。
夏木さんも良かったと、仲代さんは言う。
私もあの夏木さんは、すごいと思う。
夏木さんのあの啖呵の切り方には、女優としてやっていく決心が出ていたと仲代さんは言う。

仲代さんはというと、自分が演じる鬼政という男は、愚劣であるがストレートな人間だと思った。
インテリの役は、自分の思いをあまり出せない。
でもこのヤクザは、自分の思うままだ。
思うまま生きている。

だからこの役は思いっきり、感情を出して良い。
子供っぽい男でもある。
荒っぽさと弱さと、両方ある。

無法者。
だから、妻と妾を何人も同じ家に住まわせている。
どっちが嘘をついたか、殴り合って証明してみろ!なんて言って、子供と大人の女性に殴り合いをさせる。

やっていて非常におもしろかったそうです。
それはやっぱり、監督の五社さんがすごかったから。
五社さんの父親って言うのは、テキヤだった。

そのせいか、五社さんのアウトローの描写はすごかった。
世の中からはみ出した、すねた人間を描くことにかけては名人だった。
…いやいや、仲代さんの個性豊かな監督たちの話は、本当に興味深く、おもしろいです。


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2015.07.29 / Top↑
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