反発し理解しあう 「男たちの旅路」

鶴田浩二さん主演「男たちの旅路」。
NHK総合テレビ「土曜ドラマ」で、1975年から放送されました。
共演は水谷豊さん、桃井かおりさん、現在私が見ている第2部では柴俊夫さん、第1部では森田健作さん。

鶴田浩二さん演じる吉岡は、主任ガードマン。
そこに水谷豊さんと森田健作さんが演じる杉本と柴田新人が、入社。
研修中に吉岡は、新人たちを叩きのめした。

それは吉岡が必ずやることで、このことで研修中に辞めてしまう新人も多くいる。
一番いい加減に見えた杉本だったが、投げ飛ばした吉岡への反発から残る。
吉岡は柴田の名前を目にした時、なぜか柴田に母親は元気かと尋ねた。

柴田の父親は早くに亡くなっていたが、母は父親を愛していなかったと息子の柴田は感じていた。
それが母への反発にもなっていた。
吉岡は、母を知っているのではないか。
柴田は疑問を抱いた。

かみ合わない主任と部下たち。
そんなある日、吉岡たちが警備しているビルで、飛び降り自殺が相次ぐ。
自殺の名所になってしまうと感じた会社は、警備の強化を命じた。

何事もなく過ぎた数日後、若い女性が自殺目的でビルに忍び込む。
窓掃除のゴンドラから飛び降りようとしていた悦子を吉岡は、すんでのところで抑えた。
吉岡は悦子を何度も、平手打ちする。

甘ったれるな!
生きたくても生きられなかった人間もいるんだ!と言って。
見かねた杉本と柴田が止めに入る。

杉本は、そんな、昔の奴の論理で今の人間の悩みが解決できるかと言うが、吉岡は言う。
俺は若い奴らが、嫌いなんだ…。
杉本は吉岡に対して、そういう人とはやりにくいですねと言い放つ。

一方、早くに父親を亡くした悦子は、自分を叩いた吉岡が気になってしまう。
悦子は吉岡を慕って、警備会社に就職してしまった。
だが万引犯の女性の寂しさに共感して逃がした悦子と、連行してしまった吉岡は対立する。
犯人に共感した悦子の優しさはわかるが、それは犯人のためにならない。

だんだんと明らかになっていく、吉岡の人生。
吉岡は、特攻隊の生き残りであった。
そして、柴田の母親は特攻隊員となった学生たちの、いわばマドンナ的な存在であった。

吉岡は親友と、柴田の母親を巡って競い合った。
しかし親友は一足先に、特攻で散ってしまった。
機の故障で結局、吉岡は戦後まで生き延びてしまった。

柴田の母は実は吉岡に思いを寄せており、吉岡が迎えに来るのを待っていた。
だが吉岡は、自分は生きていたからとおめおめ、柴田の母親と一緒になることはできなかった。
吉岡は結婚も恋愛も拒絶し、生きてきたのだ。

そんな吉岡を杉本は、単に柴田の母親への思いがさめただけだと言う。
吉岡の言うことは、綺麗事だ。
人間、そんな綺麗事で生きているわけじゃない、と杉本は言う。

やがて、吉岡のいる警備会社がガードする建物ばかりを狙った発砲事件が起きる。
そして犯人を取り押さえる時に吉岡は負傷し、杉本と柴田と悦子は協力する。
吉岡の見舞いに行った杉本たちは、柴田の母親も見舞いに来ているのを見た。

すると杉本は、親父さんもとっくにいないんだし、もういいんじゃないのと意外なことを言った。
だが柴田は結局、母親が吉岡を慕っている以上、吉岡と同じ職場にはいられないと判断。
警備会社を辞めて、トラック運転手の助手として働き始める。
しかしもう、最初に感じた吉岡へのわだかまりは解消していた。

柴俊夫さん演じる鮫島は、会社の言うままに動いて小さい会社を潰してしまった青年。
彼はこれまでの会社を辞め、警備会社に就職する、
その時、鮫島は、自分が要求する職場に行かせてくれと願い出る。

吉岡はそれを承知するが、特別扱いされたと感じたほかの社員と鮫島は険悪になる。
しかし吉岡は、他の社員からの不満に対して、鮫島は採用されないかもしれないリスクを侵しても主張した。
主張できなかった者が、主張をした者が成功したからと言ってねたむのは筋違いだと言った。

ある夜、鮫島と杉本が警備する会社の近くで、女性が暴行される事件が起きた。
鮫島も杉本も、その時、悲鳴らしき声を聞いていた。
だが、管轄外の敷地であったために調べに向かわなかった。

吉岡は鮫島を殴った。
自分たちの仕事以外のことなんだから、しかたがないと言う杉本に吉岡は、自分の仕事以外できないような奴は最低だと言った。
鮫島は、仕事以外からはみ出させる勇気と気概を持った男ではなかったのか。
吉岡の言っていることは無茶だと言う杉本だが、鮫島は休みを利用して独自に暴行犯を探し始める。


千葉県知事・森田健作さんは、ちょっと屈折した青年役ですが、この人の持つ健全性のため、暗くはなりません。
水谷さんはこの頃は、いい加減な若者役をやらせたら、この人にかなう人はいなかった。
相変わらず、うまい。
こういう青年、今でもいるだろうなと言う感じです。

いい加減でお調子者だけど、決して悪人じゃない。
だから最初はこずきあっていた柴田ともお泊りするような仲になってしまう。
生意気だと言っていた鮫島とも協力して、犯人探しをするようになる。

桃井さんは綺麗!
おしゃれで、いい加減なようでいて、一生懸命。
吉岡のことを、本当に正しいかどうかはわかんないと言う。
けど、自分の信じているところからズバッとそれは違う!とか言い切ってしまう吉岡は今の若い子にいなくて良いと言う。

反発しながらも信念を持って行動する吉岡に対して、杉本も柴田も悦子も次第に尊敬の念を抱き始める。
ちゃらちゃらした若者だと思っていた杉本たちの悩みを、吉岡もまた理解し、助けるようになる。
こうして、部下となった現代の若い世代と吉岡は反発しあいながらも事件を通して、お互いを理解し、尊敬していく。

この頃は戦争経験者が現役で社会にいた時代なんだな、と思いました。
苛烈な戦争を経験した世代。
そして学生運動も終焉しており、シラケ世代と言われた世代。
決して理解しあえないように見えるこの2つの世代が、現役で一緒にいた時代だからできたドラマ。

鶴田浩二さんは、これはもう適役。
本当にそれで良いか、ベストなのかは悦子の言う通り、わかんないけど、自分の信念をぶつけてくる強さ、頼もしさ。
杉本たちはいい加減に見えて、こういう大人を乗り越えた世代。

社長役で、池部良さんが何度か出演。
池部さんと鶴田さんと並んだ時は思わず、おお!と言ってしまいました。
昭和のイケメンNo.1・No.2のツーショット!

鶴田浩二さんは実際に特攻隊の生き残りだったという噂を聞いたことがあり、それはわからないとしても戦争経験者。
もちろん池部さんも戦争経験者。
当たり前のことですが、本物を知る同士の哀愁が漂います。

脚本は、山田太一さん。
70年代の若い、シラケ世代、戦争経験者世代。
どちらにも良い顔をしているのではなく、山田ドラマはどちらのことも拒絶せず、暖かく受け入れています。
山田太一さんは人間を描くのが、本当にうまいと思います。

事件が起こり、解決する。
しかし解決したかに見えた事件はまた、新たな問題を投げかけている。
そして自分たちのやったことは本当に正しいのかと、吉岡も杉本や柴田や鮫島、悦子も言い切れない思いを抱いて終わる。
世代が違うことによる反発はあるけど、まだまだ人間同士がぶつかり合うほど濃密に付き合っていくのが普通の時代だったんだなとも思いました。


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思春期に受けた影響

ちゃーすけさんが提示してこられる題材は、どうしてこう琴線に触れるものを的確に出されるのか(笑)。嬉しくわくわくしてまいります。

私の少年期から思春期後期までの5~6年間は、日本のTVドラマの黄金期でしたので、その影響をもろに受けていました。
「前期必殺」「前期太陽にほえろ」「早坂暁:天下御免」「山田太一:男たちの旅路」
これらは自分の内面に、何某かの影響を与えてくれました。

「男たちの旅路」は第2部が好きでした。「廃車置場」「冬の樹」は絶品でした。
第3部で事実上の最終回を迎えた後、変化球的な動機から生み出された第4部は、主要キャラクターの魅力こそ劣るものの、圧倒的な影響力を持つ「車輪の一歩」を輩出しました。
この「車輪の一歩」、障害者問題にかかわる方々の中では未だに伝説のドラマとして語り継がれています。来年から施行される障害者差別解消法の根幹となる概念、“合理的配慮”を、30年以上前のTVドラマで発信されていたのですから驚きです。

山田太一氏、天才監督木下惠介最後の直系の弟子にあたり、独自の人間ドラマを紡いでなお現役。繊細で偉大なTVドラマ作家は大切な宝ですね。

kaoru1170さん

>kaoru1170さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。
返信遅くて本当に申し訳ありません。

>ちゃーすけさんが提示してこられる題材は、どうしてこう琴線に触れるものを的確に出されるのか(笑)。嬉しくわくわくしてまいります。

ありがとうございます。
こちらこそ、反応していただいて、非常にうれしいです。

>私の少年期から思春期後期までの5~6年間は、日本のTVドラマの黄金期でしたので、その影響をもろに受けていました。

テレビが本当におもしろく、娯楽の中心だった時代。
今日はあの番組があると、思い出すと楽しくて、待ち遠しかった時代がありました。

>「前期必殺」「前期太陽にほえろ」「早坂暁:天下御免」「山田太一:男たちの旅路」
>これらは自分の内面に、何某かの影響を与えてくれました。

あ~、わかります。
私にも子供の頃から思春期に見た番組でいくつかに、とても大きな影響を受けていると思います。

>「男たちの旅路」は第2部が好きでした。「廃車置場」「冬の樹」は絶品でした。

山田太一さんは鶴田さんの口を借りて、当時の世の中に対して言いたいことを言ってると思いました。
自分の娘は悪くないのか!
私なら娘を叱る!って。
しかし、最後に、親は自分のことしか考えていないじゃないか。
かわいそうだ、と言う。
抱き締めてやってほしい。
自分の娘…、今からでも…と言う悦子。
無言。
余韻を残したラストでした。

>第3部で事実上の最終回を迎えた後、変化球的な動機から生み出された第4部は、主要キャラクターの魅力こそ劣るものの、圧倒的な影響力を持つ「車輪の一歩」を輩出しました。

この話は楽しみにしています。

>この「車輪の一歩」、障害者問題にかかわる方々の中では未だに伝説のドラマとして語り継がれています。来年から施行される障害者差別解消法の根幹となる概念、“合理的配慮”を、30年以上前のTVドラマで発信されていたのですから驚きです。

この頃のドラマは、実に物事の本質をついていたんですね。
楽しみです。

>山田太一氏、天才監督木下惠介最後の直系の弟子にあたり、独自の人間ドラマを紡いでなお現役。繊細で偉大なTVドラマ作家は大切な宝ですね。

見直して、その力量に感嘆しています。
すごい才能がテレビで見られていたものです。
見られることに感謝です。

コメントありがとうございました。
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ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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