こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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私たちは未来のあなたです 「男たちの旅路」

鶴田浩二さん主演「男たちの旅路」。
第3部の1話「シルバーシート」。
出演者の豪華さに、驚きました。

志村喬さん、笠智衆さん、加藤嘉さん、藤原釜足さん、殿山泰司さん。
杉本たちが警備する羽田空港に、志村喬さん演じる本木が現れ、警備員に話しかけるとしつこくてしょうがない老人だと言う噂が流れる。
それを聞いた杉本と悦子は、本木を見ると避けるようになる。
すると本木は杉本と悦子に、逃げなくても良いと言う。

まだ昼休みは終わっていないんだろう?
そんなに嫌なら、話しかけない。
ただ、自分はここに来て、外国で仕事をしていた時の匂いを思い出しているだけだと。

突然、本木が倒れる。
そのまま、本木は亡くなってしまった。
吉岡に勧められて、悦子と杉本は本木がいた住所を尋ねていく。
するとそこは老人ホームだった。

同じホームにいる老人たちによると、本木の息子は金目のものだけを持つと、後はすべて捨ててくれと言ったらしい。
他に言うことはないのか。
何の感慨もないのか。

すぐに帰ろうとした悦子と杉本だが、彼らに酒をおごられて上機嫌に一緒に騒ぎ出す。
それが気になった他の入居者は、昼間からの酒が違反だと院長に訴えた。
しかしそれは酒ではなく、水だった。

驚いた悦子と杉本は、老人たちに小遣いをやって帰って行った。
それから悦子と杉本は、老人たちに小遣いをやるようになる。
だがある日、この老人たちは都電に乗り込み、電車ジャックをする。

悦子と杉本が説得に来るが、老人たちは応じない。
吉岡なら何とかなるのではないか。
杉本は吉岡を連れて行き、吉岡は老人たちのジャックする車内に入っていく。

そこで老人たちは吉岡に、あんたも同じになると言う。
自分たちだってこうなるまで、年を取るのがどういうことかわからなかった。
人事だった。
だが、わかった。

老人たちは一人一人を指して、こいつは優秀な技術者だった。
そいつは職人。
だがもう、そんなことは誰も思わないし、彼らに求めない。

自分たちはただの老人。
世間のお荷物。
だけどこの年寄りはあんたが子供だった頃、電車を動かしていた人間だ。
学校を作ったり、お米を作っていた人間だ。

しかしもう、年を取って力がなくなってしまった。
そうしたら、誰も敬意を示してくれないんだ。
これでは人間の使い捨てじゃないか。

普通のおばあさんだって、子供を何人も育てた。
それだけで敬意を表されて良い。
人はやってきたことで評価されて良いじゃないか!

税金で世話になっている、人の世話になっている人間はおとなしくしていろ。
わかってるよ。
でも時々、うわーってやりたくなるんだよ。
無茶でもしたくなるんだよ。

そんな年寄りの気持ちなんて、あんたにはわからないよ。
本木さんが死んだのを見て悲しかった、くやしかった。
このまま、大人しくしんでたまるもんかと思ったんだ。
私たちは、あなたの20年後です。

吉岡は言う。
あなたたちは、甘えている。
自分はそうなる覚悟は出来ていると。

あなたたちのしていることは、子供がすねて閉じこもっているのと同じだ。
こんなところにいないで、外に出て声を出すべきだ。
しかし、吉岡の言葉は、老人たちの心に響かない。

年を取ればわかる。
あんたも同じだ。
使い捨てにされるんだよ。

このままでは警察に逮捕されると危惧する杉本。
だが、逮捕して欲しいと老人たちは言う。
普通に逮捕して欲しい…。
そして彼らは、逮捕されて出てきた。

バーで、杉本に吉岡は何を話し合ったか聞かれた。
だが吉岡は、「あんたも年を取る。年を取ったらわかると言われた」としか言えなかった。
いつも若い世代と真っ向から対立し、自分の考えを堂々と述べ、理解しあってきた吉岡。
しかし、今度の吉岡には語るべき言葉がなかった…。

あなたも年を取る。
年を取ったら、わかるよ。
私たちは、20年後のあなたです。

この時代にすでに、今日問題になっている老人問題を取り上げた作品。
あんた、シルバーシートが本当に思いやりだと思っているのか?
かわいそうな弱った老人に、席を譲りましょうというあのシルバーシート。

そんな考えが、そんな扱いが、本当に老人を幸せにすると思っているのか。
老人が何を求めているのか、何を幸せに思っているのか。
いや、老人じゃない。
これまで人生を積み重ねてきた、1人の人間だ。

もう何もできない。
衰えた。
そうかもしれない。
だが、だからといって、尊重されないのはつらい。

誰だって年を取る。
あんただって、そうだ。
その時、俺たちの気持ちがわかるだろうよ。

ベテラン俳優さんたちが演じる、老人たちの気持ちがひしひし伝わってきました。
いつも堂々と人とぶつかりあってきた吉岡が、言葉を失う。
生死の境を経験した特攻隊帰りの吉岡が。
鶴田浩二さんを絶句させるのは、ベテラン俳優さんたち。

私は枯れた魅力の笠智衆さんと、正反対のギラギラエネルギッシュな加藤嘉さんは正反対の魅力を持った同世代の俳優さんだと思っていました。
だからこの2人の共演に驚き、喜んでしまいました。
みなさん、自分の持ち味を殺すことなく、見事に調和していたからすごい。
志村喬さんの品格と口調で、「やっぱり良いなあ、この俳優さん」と思いました。

そしてこれは…、今日、問題になっていることですね。
さらにこれは、介護保険制度と言うものが成立した今でも、解決できていない領域の問題。
人の幸せの問題。
心の問題。

だから現在も共通の問題なんでしょうね。
この時代にこの問題を扱ったドラマを見せていたとは。
いや、本当にテレビドラマを見る意味があった時代なんだなと思いました。
そしてこの彼らの言った言葉は…、心に突き刺さったままになるなあ。


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Comment

悲劇の予言
編集
吉岡≒鶴田氏が、最も歯が立たなかったエピソードでしたね。
シリーズとしての醍醐味は見劣りますがテーマは重量級。さすがにあの豪華老俳優陣から迫られたら、往年の二枚目だけでは拮抗しがたいですね(笑)。

人間にとって、その個人の過去の価値とは何か?
70年代でもビビッドだったテーマ、35年以上経過して一層重みを増した気がします。
要するに今現在の活用価値として人間を評価する姿勢、ということですよね。より厳しい時代に入ってやしないでしょうか。
例えば、ITに対応できない高齢者を尊重する社会の余地は今後どうなのでしょうね。

当時と違って、高齢者向けサービスが産業化し、「ご利用者は必ずお名前でお呼びする」というマニュアル的常識は普及しました。どんな老人ホームでも、固有名詞をはく奪し「おじいちゃん・おばあちゃん」と属性のみで扱うことはほぼなくなりました。
それは良いことですが、本当にその方の過去の人生を尊重しようという文化があるのかは、また別の話だと思います。

「シルバーシート」、山田太一が切り込んだテーマはいまだに光を放ちます。
昔、ある脚本家と演出家が語った言葉に「ドラマの使命は来るべき悲劇を予言すること」というものがありました。このエピソードもその一例だと思います。
2015年08月25日(Tue) 21:55
kaoru1107さん
編集
>kaoru1107さん

>吉岡≒鶴田氏が、最も歯が立たなかったエピソードでしたね。

受け入れられなかろうが、堂々と自分の主張をし、相手を動かす吉岡の声が届かない。
拒絶というより、吉岡の言葉がさらさらと上だけを流れていくような無力感。
あんたも年を取ればわかる。
この言葉の重さに、打ちのめされたような吉岡が印象的でした。

>シリーズとしての醍醐味は見劣りますがテーマは重量級。さすがにあの豪華老俳優陣から迫られたら、往年の二枚目だけでは拮抗しがたいですね(笑)。

最低でももう1人、助っ人がほしかった。
池部良さんが必要でした。
池部さんがいても、彼らには届かなかったと思いますが…。

>人間にとって、その個人の過去の価値とは何か?
>70年代でもビビッドだったテーマ、35年以上経過して一層重みを増した気がします。

どんな人でも年を取り、やれていたことができなくなる。
するともう、その人の価値はなくなるのか?
人はお荷物になるのだろうか。
見ながら考えていました。
あの頃よりさらに高齢化が進んでいて、深刻で身近な話になりました。

>要するに今現在の活用価値として人間を評価する姿勢、ということですよね。より厳しい時代に入ってやしないでしょうか。

本当に。
おっしゃるとおりだと思います。
長生きの分、現役でいられない時間を長く生きていくことになる。
その時、人生を賭けて来たものが自分にとってどういう意味を持ってくるのか。
厳しい時代になりましたよね。

>例えば、ITに対応できない高齢者を尊重する社会の余地は今後どうなのでしょうね。

これはありますよね。
今でさえ、実績を積んできた上の人が、ITについていけないという理由で置いてきぼりのようになる。

>当時と違って、高齢者向けサービスが産業化し、「ご利用者は必ずお名前でお呼びする」というマニュアル的常識は普及しました。どんな老人ホームでも、固有名詞をはく奪し「おじいちゃん・おばあちゃん」と属性のみで扱うことはほぼなくなりました。

自分の身内が、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と言われると、何かすごい違和感があるんですよね。
その人自身が、その人の人生がそこにないような気がして。
こういうところがなくなってきたのは良いことなのでしょうが…。

>それは良いことですが、本当にその方の過去の人生を尊重しようという文化があるのかは、また別の話だと思います。

高齢者サービスを受けるはずの人が「子ども扱いされている」と言ったのを聞いて、要するに尊重尊敬されていないと感じてしまうんだなと思いました。
本人のプライドの問題もあるし、本当に難しい…。

>「シルバーシート」、山田太一が切り込んだテーマはいまだに光を放ちます。

これをすでに70年代に作っていたことに、驚きを感じました。

>昔、ある脚本家と演出家が語った言葉に「ドラマの使命は来るべき悲劇を予言すること」というものがありました。このエピソードもその一例だと思います。

ああ、本当にそうですね。
このドラマは、まさにこれです。
本当に優れたドラマなのだと思います。

返事が遅くてすみません。
深いコメント、ありがとうございました。
2015年08月29日(Sat) 23:05












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