こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
2017年07月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年09月
TOP映画・時代劇 ≫ 磐城の土を殺してはならぬ 「超高速!参勤交代」

磐城の土を殺してはならぬ 「超高速!参勤交代」

参勤交代。
「下に~、下に!」の声がかかり、大名行列が通る。
庶民は殿に顔を向ける失礼をしないよう、顔を下に向け、行列が去るまで、お辞儀をし続ける。
土下座し続ける。

長い行列なら、通り過ぎるまで時間が掛かる。
顔を上げようものなら、「頭(ず)が高い!」と言われ、行列を横切ろうものなら無礼討ちにされる。
またはお駕籠に向かって「おねげえでごぜえますだ~!」と直訴に走ってくる人がいる。
時代劇ではおなじみのシーンであります。

徳川幕府は、大名の妻子を江戸に住まわせた。
いうなれば、謀反を起こさないための人質。
そのため大名は1年おきに江戸と、故郷を行き来する。
参勤交代ですね。

江戸と故郷を旅するのには何日も、何十日もかかった。
そうなるとこの日数に行列を形成する人々を連れての旅の費用は、莫大なもの。
経費節減のため、1日のうち、相当な距離を歩いたらしい。

2つの家に家来を滞在させるのにも、かなりの費用が掛かる。
これは大名の力をそぐのに、かなり有効な手立てだったのでしょう。
徳川幕府の政策は、もちろん今はこんなの無理だけど、施政者にとってはかなり効果的なものだったんだなと思います。

参勤交代の人数は、石高によって決められていたらしいですね。
20万石以上の大名は、馬上20騎、足軽130人、仲間・人足300人、全部で450人。
馬の面倒を見る人間も必要だったでしょうし、相当な人数が移動する。
おかげでこの道中も栄えたし、交通網も整備されたみたいですけど、大人数だから、これに遭遇した旅の庶民はろくに宿も食事も取れなかったでしょうね。


無敵の徳川幕府対たった7人の弱小藩。
「超高速!参勤交代」。
享保20年。
8代将軍・徳川吉宗の世。

磐城国の湯長谷藩の藩主・内藤政醇は、1年間の江戸の滞在を終え、参勤交代して帰国。
湯長谷藩は石高わずか、1万5千石。
しかも、天候による飢饉もあった。
さらに内藤本家の磐城平藩が飢饉にあったため、備蓄米を送ってしまっていたため、蔵は空っぽだった。

だが藩主の政醇は、年貢の引き上げをしない。
すれば民が死んでしまう。
政醇は百姓に慕われており、百姓も殿の姿を見ると収穫された大根を持って駆け寄る。
すると政醇は大根の泥を落としてかぶりつき、そのうまさを誉めるのだった。

ところが老中・松平信祝が隠密からの報告で、湯長谷藩で金山が見つかったことを知った。
信祝はそれを我が物にするため、湯長谷藩の取り潰しを謀る。
それは帰ったばかりの湯長谷藩をもう一度、江戸に出仕させることだった。

しかも8日から10日かかる道中を、5日で江戸に来いというものだった。
参勤交代で江戸に期限どおり来ないということは、徳川幕府に対して忠誠心がないということになる。
藩は取り潰し、藩主は切腹ものである。

だがもはや、湯長谷藩には参勤するための費用がない。
「幕府に直訴」「賄賂を贈って勘弁してもらう」
家臣たちの意見もさまざまであった。

江戸では信祝に参勤交代を考え直してもらうため、家臣が信祝が差し出した鳥の餌を食べていた。
この姿を信祝は大笑いし、もはや決まったことだとはねつけた。
それを知った政醇は家臣と民を守り、弱小藩の意地のため、参勤交代を決行する決心をする。
家老の知恵者・相馬兼嗣の策は、少人数で山中を走り抜け、幕府の役人のいる宿場だけは渡りの中間を雇って行列の体裁を整えるというものだった。

策を話し合っている政醇と相馬の屋敷の屋根裏に、雲隠段蔵という忍びが現れた。
素人に山道を行くのは、無理だ。
段蔵はかつて日本一と言われた忍びだったが、今は抜け忍となっていた。
10両と酒飲み放題を条件に、段蔵は道案内を買って出た。

金なし
人なし
時間なし
湯長谷藩の、必死の超高速!参勤交代が始まった。

政醇の参勤交代を知った信祝は、湯長谷藩が江戸にたどり着けないよう、忍びを使って妨害する。
忍びの頭領は、夜叉丸。
宿場には、政醇の家紋をお尋ね者として配布した。

山中で野宿する政醇に忍びが襲い掛かる。
忍びと退治した段蔵は、礼金を受け取ったら政醇を放り出す計画であることを告げ、自分が離れた後は政醇を好きにするが良いと言う。
そんなことを知らない政醇は段蔵に感謝し、家宝の小刀を与える。

1人、浪人姿となった政醇は、牛久の宿に到着する。
そこでは客の取り合いでもめた宿場女郎のお咲が、折檻のために縛り付けられていた。
政醇はお咲を解放するために指名し、お咲が部屋にやってくる。

まだ子供のお咲は人買いに手篭めにされ、この宿屋に売られた。
苦労をしたんだな…と、政醇がつぶやく。
その思いやりのこもった言い方に、お咲の心が開く。

政醇もまた、自分の子供の頃の境遇を話す。
幼い頃の乳母の折檻で蔵に閉じ込められたことが原因で、政醇は用を足すにも扉を開けなくてはならない閉所恐怖症になったのだった。
まだ子供に、バカなことをするとお咲はつぶやく。

お咲のけがを見た政醇は、持っている薬を塗ってやる。
初めて、人の優しさに触れたお咲は、役人の調べから政醇を匿ってしまう。
布団の入った押入れに、2人がこもる。

閉所恐怖症の政醇は、平気なのかと指摘されて「あっ」と気づく。
お咲と一緒なら、閉所も怖くない。
政醇を逃がしたことを知られたお咲は、再び折檻されそうになる。
そこに政醇が現れ、お咲を奪って逃げた。

家臣の荒木源八郎たちは廃寺に滞在しているところを、夜叉丸たちに襲われる。
武芸の達人である荒木源八郎たちであったが、走るために少しでも負担を軽くしようと、刀は竹光になっていた。
段蔵も逃げた後で荒木源八郎たちは、大ピンチ。

逃げた先で、谷から転落。
川に流されるが、全員無事であった。
唯一、相馬が見当たらなく、水死したと思われたが、相馬はうたた寝をして井戸に落ちていた。

段蔵は礼金の10両で芸者を呼び、派手に遊んでいた。
その様子に不安を持った宿の者が会計を頼んだので、段蔵は礼金の巾着を取り出す。
巾着から出した銭は、古銭。
そんな銭はいつのものだと笑った芸者が、さらに金をさわって泥がついたと言う。

段蔵が受け取った礼金は、小銭や古銭が丁寧にまとめてある束だった。
そしてその銭には、泥がついていた。
段蔵は絶句する。

お咲を連れて道中を急いでいた政醇だが、山中で忍びに囲まれる。
政醇は居合いの達人であったが、忍びたちはお咲を人質に取った。
自ら刀に身を投げ出そうとしたお咲のため、政醇は刀を捨てる。

お咲もろとも政醇を斬ろうとした忍びの小太郎が倒れた。
ぎょっとする虎之助の前に、段蔵が現れる。
段蔵と政醇の前に、忍びは全滅する。


途中、伊達藩の行列に遭遇する相馬たち。
伊達55万石の前に、自分たち1万5千石は道を譲らなくてはならない。
さらには伊達の行列は壮大であり、これを避けていたら取手宿に到着するのが遅れる。

そこに相馬が知恵を出した。
産婆と飛脚は行列を前にしても、通過が許される。
相馬たちは着物を脱ぎ、ふんどしになって飛脚として走りぬけた。

取手宿に到着した相馬たちだったが、渡りの中間たちは約束の期日を過ぎたと言って帰ってしまった。
行列を維持できない相馬たちは途方にくれた。
相馬は切腹の体勢を取るが、刀は竹光であった。
情けなさに相馬が泣いていると、またしても行列がやってくる。

内藤本家の磐城平藩・内藤政樹の行列だった。
理由を聞いた内藤政樹は「飢饉の時に援助してもらった」と言って、行列を貸してくれた。
取手宿を通り抜けた相馬たちに内藤政樹は、言った。
「磐岩の気骨、見せてやれ!」

江戸に入った相馬たちは、湯長谷藩江戸屋敷に向かう。
だがまだ、政醇が来ていない。
刻限は暮れ六つ。

相馬たちはとりあえず、江戸城に向かった。
お咲を連れた政醇が追いつき、江戸城に向かう。
だが橋では、信祝の「全員斬れ」との命令を受けた隠密たちが待ち受けていた。

武芸の達人たちの湯長谷藩の藩士たちと、忍び達が斬りあう。
段蔵と夜叉丸も、因縁の対決となる。
暮れ六つの鐘が鳴り終わり、間に合わなかったと信祝が笑う。
しかしその時、鐘がまた鳴り響いた。

ばかな!と信祝は言うが、老中首座の松平輝貞は鐘が鳴り終わるまでは有効と判断。
実は鐘は家臣の鈴木吉之丞が、弓を当てて鳴らしていた。
行列は無事、江戸城大手門に滑り込んだ。

輝貞の前で、政醇は金山から出た金を見せる。
それは金ではなく、黒い塊、石炭であった。
発見された時は表面が光っているので、良くわからない隠密が金だ、隠し金山だと報告したのであろう。

隠し金山を我が物にしようとしていた信祝の策略が発覚。
以前から賂を受け取り、私服を肥やしていた信祝の尻尾をつかもうとしていた輝貞によって、信祝は失脚した。
実は吉宗と輝貞は以前より信祝を疑っており、今度の湯長谷藩の参勤交代によりそれを暴こうとしたのだった。

「このたびの参勤は、上様の策でありましたか」。
「ずいぶんと襲われたであろう。不服か?余は弱い家来などいらぬ」。
「いえ、我らは良いのです。しかし…民のことを考えると肝が冷えました」。

「どういうことじゃ?」
「もし、上様がまごとに、愚かであれば、民が苦しみますゆえ」。
吉宗の顔色が変わった。
ぱちん、と扇を締める。

「はははは、そちの申す通りじゃ」。
「なぜ上様、我が藩が金山をごまかしておらぬと信じられましたか。ご老中が正しい思われたのでは」。
吉宗は、皿の上の大根の漬物を出した。

「おぬしの大根の漬物じゃ。先の参勤で、大根の漬物を献上したであろう」。
「あれは良かった。良く耕した土の味がした。あのような大根を持ってくるものに、悪い奴はおらん」。
「はっ!それがしもこの、大根が大好物なのでございます!」

政醇が笑顔になった。
「政(まつりごと)をおろそかにして、磐城の土を殺してはならぬ。この先、とこしえにな」。
「だいぜつに、いたしまする!」

政醇が頭を下げる。
「湯長谷半の参勤、しかと見届けた!その心意気、値千金なるぞ!」
「ははっ!」

こうして、湯長谷藩の超高速!参勤交代は終わった。
お咲は何と、側室に迎えられた。
『今さらながら、参勤交代の効果で幕府は長く安泰であった。
平和を維持するための仕組みだったのかなあ…』。



いやいや、おもしろかった。
最初から、大根。
参勤交代の始まりに、水戸の幼君にバッタリ遭遇しますが、かわいい幼君も大根の漬物のおいしさに礼を言う。

内藤政醇に佐々木蔵之介さん。
なまるところがまた、温かみがあって良い。
民と大根を齧って話すお殿様は、実は居合いの達人!

殿に従う7人の藩士たち。
7人ってところが、「七人の侍」のオマージュっぽくて良い。
知恵者の家老に西村雅彦さん。

荒木源八郎は、寺脇康文さん。
剣の達人。
秋山平吾は上地雄輔さん。
上地さんを、初めて良いと思いました…、ってすみません。

弓の達人・鈴木吉之丞を知念侑李さん。
良かったですよ。
増田弘忠を柄本時生さん。
とぼけているようで、彼も強い。

今村清右衛門を六角精児さん。
槍の達人。
徳川吉宗を市川猿之助さん。

松平輝貞は石橋蓮司さん。
もう、この重厚感ったらないです。
すばらしい。

松平信祝を陣内孝則さん。
「とどのつまりは、生まれがすべてよ」。
嫌ですね~。
傲慢ですね~。

何、この選民意識。
徹底して嫌な官僚って感じを出してくれます。
これがひっくり返される快感。
時代劇の悪は、こうでなくちゃ!

知恵者の家老・相馬兼嗣は西村雅彦さん。
もう、落ち武者のような姿になって熱演。
西村さんの熱演で、本当に見ごたえある映画になってます。

内藤政樹を甲本雅裕さん。
情けは人のためならず、のエピソードが泣けます。
磐城の意地、見せたれ!の言葉が、カッコいい。

夜叉丸は忍成修吾さん。
この俳優さん、どんどん良くなりますね。
夜叉丸、良かったなあ。
好きな俳優さん。

雲隠段蔵は、伊原剛志さん。
見せ場がたっぷりの役でした。
小銭の束を見た時の、後悔。
最後は去って行きましたが、一生、政醇に仕えてしまいそう。

政醇の人柄。
本家の飢饉に備蓄米を差し出す。
案内役の忍びに、家宝の小刀を惜しみなく与える。
お咲の手当てをする。

政醇の人柄が、結局は藩を救うという設定も良かった。
閉所恐怖症で気さくな殿さまという設定は、昼行灯の中村主水が剣の達人であるような設定で、非常に魅力的。

伊達藩も出てくる。
大藩らしい、壮大な行列。
その横をふんどしで、飛脚を装って走る。
時代劇好きなら、この設定には笑わずにはいられません。

男ばかりで展開する中、すれた飯盛り女・お咲は深田恭子さん。
いくらなんでも、側室になるというのはありえないでしょうが、そこはもう、いいじゃないですか~。
徹底した時代考証のもと、作られる文芸作品も良いけど、こういうところも許せないとチャンバラ楽しくない。
側室になったときは、さすがに美しい。

そして、この藩は東北にある。
「政(まつりごと)をおろそかにして、磐城の土を殺してはならぬ。この先、とこしえにな」。
「だいぜつに(この訛りが良い)、いたしまする!」
「湯長谷半の参勤、しかと見届けた!その心意気、値千金なるぞ!」

「晴れれば、それは良い日」。
絶体絶命の中にあって、そう言える強さ。
「よく耕した土の味がする」。
この映画、東北への応援のように感じました。

決してエリートではないし、良い血統ではないけれど、意地とプライドと義を通す武士たち。
その彼らが上の理不尽な命令に、金なし、人なし、時間なしのピンチを乗り越える。
天下無敵の徳川幕府の幕僚に、対抗する。
時代劇のこの世界に、自分の世界を重ね合わせて見て、つかの間の夢を見て、希望を持つ。

良い時代劇。
良い脚本。
悪は徹底して悪。
最後に悪が滅ぶ。

やっぱり、こういうチャンバラおもしろい。
好き。
俳優さんたちも良かった。

隠密が「我ら、死して屍、拾う者なし!」と何度か言うのも爆笑!
時代劇好きなら、クスッとはしてしまうはず。
あっという間に見てしまった。

とんでも時代劇、笑える映画と思わせて、実は深いメッセージがこめられている。
強さと優しさに満ちている。
いやいや、作れるじゃないですか、こういう時代劇。

「磐城の気骨、見せてやれ!」
このセリフ、心に残りました。
磐城だけじゃなくて、日本人の、という感じに受け取りました。
良い映画、見ました。

スポンサーサイト

Comment













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL