こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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地獄に落ちる時は一緒 第1話「出たとこ勝負」

第1話、「出たとこ勝負」。

「いらっしゃい」。
小さな蕎麦屋。
半兵衛が営む、その名も「坊主そば」。

「せいろ一枚お調子一本」。
お春がかいがいしく、客の注文を取って働いている。
主人の半兵衛に、やってきた客が壷を振り、開けるのジェスチャーをする。
博打の誘いなのだ。

鋭く見咎めたお春が、「夕べすってんてんになって、3日ぶりに帰ってきたばかり」だと言う。
だがお春がちょっと目を放した隙に、半兵衛の姿は見えなくなっている。
あわてて売上金が入ったざるを見るが、半兵衛は売上金を持って姿を消していた。

半兵衛は賭場で、ついてなかった。
そこで妙についている若い男がいた。
名前は、政吉。
見るからに宿無しの博打打ち。

政吉が言う。
「知らぬ顔の半兵衛さんよ。いくら名前が半兵衛だからって、半目に張りゃあいいってもんじゃねえよな。上げ潮の木っ端だ。あっちにふらふら、こっちにふらふらだ!」
軽妙なからかいの口調に、笑いが起きる。

「やかましいやい!」
半兵衛が怒鳴る。
「勝負は下駄はいてみるまで、わかりゃしねえんだ!」
だが政吉は「冗談ぽっくり日和下駄。滑って転んでぽっくりだ!」と、からかう。

調子に乗った政吉は、「おい、誰か俺とサシで勝負するやつぁいねえのかい」と言う。
「よし俺が、相手だ」。
半兵衛が受けてたった。

「そこにいくらある」。
政吉の掛け金を聞く。
「ざっと、5両」。

「聞いての通りだ。代貸しさん、コマ回しておくんなさい」。
だが代貸しは、「カタがなくっちゃな」と断る。
「カタは俺の店だ」。

「あの店はせいぜい踏んで2両だな」。
「よし、かかあつける」。
「お春坊を?正気かよ、おめえ」。

「さあ、早いとこまわしておくんなさい」。
「はあ、見上げたもんだよ。屋根屋のおふんどし!」
また政吉が、からかう。

笑い声が起きる。
「へい、5両」。
半兵衛の前に、5両分の札が置かれる。

「まわりどこの3番勝負でどうだ」と半兵衛が言う。
「ああ、いいとも。亀の甲より何とかの功だ。そちらから振らせてやらあ」。
政吉は余裕だった。

半兵衛が壷を振る。
「入りました」。
さすがに、さっきまで政吉の軽口に笑っていた周りも静まり返る。

政吉が言う。
「ちょう」。
「勝負!」
半兵衛が壷を開ける。

2と6のチョウだった。
次は政吉が、壷を振る。
じっと見ている半兵衛。

「半」と言う。
「受けた」。
政吉が言った。

だが出たさいころの目は、2と3。
半だった。
政吉が、妙な顔をする。
薄ら笑いが消える。

再び、半兵衛が壷を振る。
「チョウ」。
政吉の声は、神妙になっていた。
誰も何も言わない。

「勝負」。
半兵衛の声だけが、響く。
さいころの目は、1と4。
「しっぴんの半」。

政吉の前の札が全部、半兵衛の前に来る。
「兄さん、俺にさしの勝負を挑むなんざ、おまえさん、10年早いよ」。
ちゃらちゃらと音をさせて、半兵衛が去っていく。

帰り際、札を一掴み、放り投げる。
「みなさん一杯飲んでおくんなさい。じゃあ、あがらせてもらいますよ」。
半兵衛の声は笑っていた。

政吉がふてくされ、出て行く。
外で政吉の腕にしがみついてきた女に「おい、坊主頭の男見かけなかったかい!」と言う。
政吉にしがみつく女が「知らぬ顔の半兵衛さんかい?」と応える。

「お前、知ってんのかい!?」
「はいて捨てるほどいるよ、半兵衛なんて」。
女は「それより…」と、政吉を誘った。

だが政吉は、昼間っから冗談じゃねえよ!」と憤然と去っていく。
「何だい!いきがりやがって。すっとこどっこい!」
女が捨て台詞を吐いて引っ込む。

半兵衛は、坊主そばで働いていた。
「ちょっと、あんた、お客さん」と、お春が客にそばを持っていかせる。
「おまちどおさん」。

半兵衛はそばを持っていったが、その男は外を見てばかりで食わない。
おかしな男だ。
半兵衛は、その男を見ている。

そばをすすっていた男が、突然出て行く。
お春が「食い逃げ!」と叫んだ。
半兵衛が「ああ~、やっぱりか、あいつおかしいと思ったんだ」と言って後を追っていく。

男は1人の与力の後をつけていた。
与力は北町奉行所の、三村と言った。
男は材木の陰に潜み、針を取り出す。

半兵衛は食い逃げ犯人を追いかけて来た。
すると、叫び声が聞こえて、その男が殺されている。
驚いた半兵衛は、そこにいた三村に犯人として捕らえられてしまう。

奉行所に連れて行かれた半兵衛は、拷問される。
だがこの前も拷問で人を死なせていた三村は、奉行所でたしなめられ、しかたなく半兵衛を解放する。
開放された半兵衛を待っていたのは、一人の男。
この男が半兵衛に、なぜか小判を渡す。

男の名は、利助。
飛脚・嶋屋の番頭だった。
利助が女主人のおせいに、ちゃんと小判を渡したと伝えた時だった。

背後から、半兵衛が現れた。
ニコニコ笑っている。
「この人はまるで飛脚屋さんのように足が速くて、参った!」

よくまあ、その利助のあとを迷わずにつけてきたものだ。
利助がギョッとする。
茶をたてるおせいは半兵衛に、これは迷惑料だと言った。

だが半兵衛は、迷惑料は1両では安いと言う。
何しろ、散々打ちのめされたのだ。
顔には赤黒く晴れ上がった跡が、何ヶ所もある。
半兵衛はさらにはなぜ、見ず知らずのおせいが迷惑料などと言って、金を渡すのだと言う。

つまり、半兵衛はおせいが、三村を狙って失敗したのではないかと推測した。
10両。
これで手を打つと半兵衛は言った。

半兵衛の言葉に利助が「ふざけるな!」と叫ぶ。
「やっこぉ!下手動くとおかみさんの命はねえぞ!」
半兵衛は、おせいにかみそりを突きつけていた。

おせいは、10両を出すことにした。
だが「私はゆすられて出したんじゃ、ありませんよ」と言う。
「あなたの度胸に惚れて、ということにしておきましょう」。
嫣然と微笑むおせい。

半兵衛が去った後、おせいは茶室におみよという女性を呼んだ。
今日、おみよの父は四十九日だった。
四十九日には、おみよの父の恨みを晴らしたかったと言う。

だがおみよはもう、諦めていた。
相手は旗本。
自分たち町人がどうしても、どうにもならないと悟って、おみよは泣いた。

金ができた半兵衛は、町で密かに開帳の案内を買う。
物陰に入ると、半兵衛はそれを見ていた。
すると、「半ちゃん」と呼ぶ声がした。

「まじめにやってる?」
岡引きの源五郎だった。
ごつい、男っぽい風貌の源五郎だが、その口調と仕草はどこか女っぽい。

「うん」。
「本当?」
「ほんと、ほんと。仏様みたいな毎日」。

だが源五郎は「出せ!」と声を荒げる。
しかたなく、半兵衛は開帳の案内を渡す。
「あれだけ懲りたのに、まあだ、やめられないの?」

「博打ですか」。
「そうよ。博打で失敗して坊主になりそこなった」。
源五郎は半兵衛の頭をなでる。

「いいえ。やめてくださいよ、やっちゃいませんよ、博打なんか」。
「ただ、さあ」。
「ただ、なによ」。
「ただ。そんなもんでも見ていないと寂しいんだよ」。

「お春さんのおかげで、あのそば屋だってどうにかやってるんじゃない。あの人のためにも、まじめに暮らさなくっちゃだめよ」。
「わかってるよ、まじめに暮らしてるよ」。
「あたしゃ、おとっつぁんの後を継いで、こんな岡引きなんて嫌なものやってるけどさ。半ちゃん。幼なじみのお前のことは、とぉっても心配してるんだよ」。

「お前さんは小さい頃からガキ大将でさ。何となく、…お兄ちゃんみたい」。
源五郎は、半兵衛の襟を治す。
居心地悪そうに、半兵衛は自分で襟の前を閉める。
そして、そっぽを向く。

「聞いてんの?」
「聞いてますよ。まじめにやってますよ」。
「どうしたの、その顔」。

源五郎は、半兵衛の顔の傷について、聞いて来た。
「ああ、これ。すべっちゃった」。
「うっそお~」。
「ほんと~ぉ。材木置き場で」。

すると源五郎の口調が、ガラリと変わる。
「知ってるんだぜ、昨日、三村さまに引っ張られたこと」。
「ああ」。

半兵衛の顔が、不愉快な表情に変わる。
「どうしたのあれ」。
「あれは間違いだったんだ。疑いは晴れたよ」。

半兵衛の口調までが、不愉快に変わる。
「いやな野郎だ、蛇みたいで!」
半兵衛が、吐き捨てるような口調になる。
「お上にそういうことがあるかい!」と源五郎が怒る。

しかし半兵衛は「ぶっ殺してやりてえくらいだ!」と言う。
「半ちゃん~!」
源五郎が半兵衛の手を取る。

「すぐそれだから、はらはらしちゃう。小さい頃と少しも変わらないんだから」。
「小さい頃…」。
源五郎は夢見る目をして、十手を握り締め、うっとりと首をかしげた。
「あたしは歌舞伎役者に、なりたかった」。

「今からでも遅くねえよ。いい女形になるぜえ」。
「半ちゃん」。
その言葉に、源五郎が振り向く。

「うん?」
「そう言ってくれるのは半ちゃんだけよ。好きよ」。
源五郎が目をうるませた。

「お役目ご苦労様!」
半兵衛が逃げていく。
その背中に向かって、源五郎が言う。
「淡白!」

その頃、政吉が道を歩いていると、ふと、目の前の橋の下から女の足が見える。
女がぞうりを脱ぐ。
川に飛び込むつもりだ。

「おい、俺の目の前で目障りな真似すんなよ」。
政吉の声に、女が顔を上げた。
うっすらと、憂いを含んだ顔は美しかった。

「みすみす死のうとしてるのを、見ぬふりもできねえしな。行こ行こ。この寒いさなかに水浴びなんてのは、はやらねえぜ」。
だが、女は動かなかった。
「ばかやろう!」
政吉は怒鳴る。

「吐き出しちまいな」と、政吉は女に酒を飲ませた。
だが女は自分と勝負をしてくれと言った。
もし、勝ったら、言うことを聞く。
女は手の中でさいころを振る。

その目を見て、政吉が顔をしかめる。
「おめえの勝ちだ」。
半兵衛に負けてから、政吉はついていない。

半兵衛を利助が呼びに来た。
いつのまにか、半兵衛の店を調べていたのだ。
連れられて行った先は、飛脚の嶋屋だった。

奥座敷に通された半兵衛。
待っていたのは、おせいだった。
「半兵衛さん、あたくしはあなたに伊之の代わりをしていただきたいのです」。

やはり、殺された男はおせいの手の者だった。
おせいの命令で、三村を狙っていたのだが、失敗したのだ。
そして、三村に殺された。

おせいは半兵衛に、その男の代わりをしてもらいたいと言う。
半兵衛の度胸の良さ、身体能力の高さ。
おせいは半兵衛にこれから「仕事屋」の仕事を請け負わないかと持ちかけるのだった。

そう言って、おせいは手箱から金を出す。
5両。
半兵衛は、そっぽを向く。
おせいはさらに小判を積む。

にやりと笑って、半兵衛は受け取る。
ジャラリと、重い音がする。
「で、さしあたりあたしは、何をすりゃ良いんです?」と半兵衛が聞く。
「北町与力、三村敬十郎を殺してほしいのです」。

その日から、半兵衛は三村をつけた。
三村をつけていた半兵衛と政吉が、鉢合わせする。
「なんだ、おめえか」と政吉。
「泡くってどこいくんだ、ドジ」と半兵衛。

「おい、忘れるなよ、勝負はこれからだ!」
「あれほどやられたのに、まだ懲りねえのか」。
「やられた、誰が!改めて勝負と言いてえところだが、今日はそんな暇じゃねえんだよ。助かったな?」

「へっ。どっちが…、ちょっと待て、お前あっち行くのか?」と半兵衛が聞く。
行く方向が同じだったからだ。
「いけねえか」。
「いけなかねえよ、行け、勝手に」。

結局、2人は時間差で三村が入った料亭に忍び込んだ。
そこで三村は、島帰りの弟を持つ料亭のおかみをおどして、3百両持って来いと言っていた。
3百両などという金はできないと泣くおかみに対して、1日だけ待ってやると言って三村は手篭めにしようとした。

その時、奉行所から三村に呼び出しが来た。
あちこちでせびったお金を貢いだおかげで、三村は長崎に栄転が決まったのだった。
3日後の出発の日までに、三村を片付けなければならない。

利助が「長崎赴任の祝いに」と、ある大店の名前を使って三村を料亭に招く。
三村は供の者として、仲間を2人連れてきた。
駕籠は、一軒の料亭についた。
だがその料亭、よく見ると名前がない。

おせいが仕掛けた罠だ。
利助に案内され、三村を先頭に廊下を歩いていく3人。
その一番最後尾の男が、姿を現さない。
いつの間にか、最後の男は半兵衛になっている。

誰もそれに気づかず、角を曲がる。
その時、半兵衛が2人目の男の口を背後からふさぐ。
部屋に着いた時、三村が異変に気づく。

「供の者はどうした!」
利助がぽかんとして、辺りを見渡し「ただいま、お呼びしてまいります。しばらくお待ちくださいまし」と言って立ち上がる。
部屋に三村は一人で待つ。
ぽつんとした、静まり返った部屋。

半兵衛が、部屋の外でかみそりを持つ。
自分の頬に当てる。
手ぬぐいに、かみそりを何度か押し付ける。
丁寧に手ぬぐいをたたむ。

「ちっ」。
イライラした三村が、舌打ちをする。
立ち上がる。

「おうい、やっこぉ!」と利助を呼んだ時だった。
庭に潜んでいた政吉が飛び出す。
懐剣で三村を刺す。
同時に半兵衛のかみそりが、三村の首筋を切り裂く。

2人が、三村から離れる。
お互いに、ギョッとしていた。
「ぎゃあああああ」。
三村が絶叫して倒れる。

だがもう、2人は三村を見ていなかった。
半兵衛は政吉を。
政吉は半兵衛を見ていた。

2人は黙って、表に歩いていく。
「見たな」。
「死ね」。

政吉は懐剣を、半兵衛に向かって突き出す。
半兵衛はかみそりを、政吉に向かって閃かせる。
政吉が懐剣を、振り回す。
半兵衛もかみそりを、振り回す。

お互いの刃物が、お互いをかすめる。
すんでのところで避ける。
かみそりが光る。
懐剣が光る。

2人は右に飛び、左に飛ぶ。
右と左で、交差する。
互いが互いに狙いをつけた時。

「おやめなさい!」
利助の声が響いた。
「そんなことして、何になるんですよ!」

2人が振り向くとおせいが、おみよを連れてきていた。
「政吉さん、ありがとうございます」。
おみよが政吉に、礼を言う。

そして半兵衛の前に進み出て、頭を下げた。
「皆さん、本当にありがとうございました」。
「あんたも頼まれてたのか」。
政吉が、ぽかんとして言った。

「じゃあ、お前さんも」。
「危ねえところだったぜえ」。
政吉が、赤い懐剣を懐にしまう。

それを見た、おせいの顔色が変わる。
赤い懐剣。
政吉の懐にしまわれる、赤い懐剣。

赤い懐剣。
おせいの脳裏にある、赤ん坊の前に置かれた赤い懐剣。
『この子が生きていた』。

おせいが心の中で、つぶやく。
『あたしの子が』。
『あたしの子が!』
動揺するおせい。

おせい、利助、半兵衛、政吉の4人が立っている。
「おい、どうなんだい。俺を仲間に入れるのか、入れねえのか。はっきりしろい!」
内心の動揺を見せず、おせいが言う。

「こうして会ったのも何かの縁でしょう」。
「仕事をしていただきましょう」。
政吉が、ぱちんと指を鳴らした。
「そう来なくっちゃあ!」

「厳しくつらい稼業ですが。これだけはお約束します」。
「政吉さん。あなたが地獄に落ちるときは、私も一緒です」。
4人の影が、長く伸びる。

『どうせあの世も地獄と決めた。命ぎりぎり勝負にかけて燃えてみようか仕事屋稼業。ようござんすね?ようござんすね?勝負!」



仕事屋稼業の、すばらしい滑り出し。
半兵衛と言う男が、どういう男か。
博打では見境なく、お春をつける!と言ってしまう。
ろくでなし。

しかし半兵衛は、政吉との勝負に勝つ。
余裕で半兵衛をからかっていた政吉。
この軽妙な口調。

ドスの効いた半兵衛の口調。
余裕だった政吉の口調が、変わる。
しん、となる。

神妙な声で、「チョウ」。
そして半兵衛がどたんばで勝つ。
「どたんば勝負」。
これは最終回のタイトル。

半兵衛の、土壇場で発揮される運の強さ。
対して負ける政吉。
さらに政吉はこの後、おみよとのさいころ勝負にも負ける。
そして負けたために、半兵衛と同じ三村を狙うことになる。

2人のこの明暗は、運命を暗示していた。
最終回を見たからわかったことですが。
スタートからこの着地点を作っていたのだとしたら、見事としかいえない。

半兵衛と政吉は、殺しのプロではない。
政吉は宿無しの博打打ちだから、ケンカで人を刺したことぐらいはあるかもしれない。
だが殺しのプロではない。

引き受けた半兵衛だが、内心は怖い。
ちょうど、人の顔の高さに、こねたそばで人の顔と首を作り、かみそりで切り裂いてみる。
お春に迫って、怖さを紛らわせようとする。
「怖いんだ」。

だが、2人は見事に三村を仕留める。
半兵衛には、予想もしなかった政吉の出現。
政吉にも、予想していなかった半兵衛の出現だった。
半兵衛が、額の汗を指でぬぐう。

殺し合いになる2人。
腕は互角。
勝負はつかない。

ばさっ、ばさっ、と音をさせ、半兵衛がかみそりを右に出せば、政吉は左に懐剣を出す。
お互いの刃物を、お互いが避ける。
避けて、お互いがお互いを狙う。

右に飛び、左に飛ぶ。
交差して、飛び交う。
この時の2人のひら、ひら、という動き。

息もピッタリ、見とれる動き。
動きだけじゃない。
2人のやりとり、ケンカ口調がまた、息もピッタリ。

おせいの草笛光子さんは、美しい。
利助の岡本信人さんは、本当にきまじめさ、丁寧さが出している。
政吉は、林隆三さんのベストワークのひとつじゃないかと思ってしまう。

緒形さんの軽やかさ、凄み。
お春の中尾ミエさんも、とてもかわいらしいです。
悪党・三村は、石橋蓮司さん。
料亭の女将をいびるやり方など、実に嫌な感じでうまい!

そしてここではまだ、「目明かし」としか名前がない源五郎。
大塚吾郎さんがものすごく似合っていて、ものすごくおかしい。
男っぽい風貌。
凄みの利かせ方。

岡引きとして有能で、お上に忠実であろう源五郎。
だけど…、女形になりたかったとウットリ夢見る表情に変わる。
大塚さんは男っぽいのに、何で女っぽいのが似合っちゃうんだろう?
落差が、毎回楽しくてたまらないんです。

この軽妙さ。
おかしさ。
迫力。
全然、私では伝わらないと思います。

キャスティングが絶妙、俳優さんたちの演技も絶品。
そして、映像のすばらしさ。
半兵衛がお春をつけて臨んだ勝負。
壷を開けると、影で見えないさいころの目が現れ、半兵衛が勝っている。

白い光の中、赤い懐剣が置かれている。
その手前に赤ん坊。
しまわれる政吉の赤い懐剣。

音楽も良い。
仕事屋のテーマに乗って、三村までを仕留める。
その後、半兵衛と政吉の緊張感を表すような音楽。
そして、おせいの驚愕を表すような音楽。

ラストに並んでいる4人の影が、長く伸びている。
この影が、おせいの心情を表しているかのよう。
静かに、しかし断固とした口調で「一緒に地獄に落ちる」と宣言するおせい。

そこにかぶる、藤田まことさんのナレーション。
すべてが見事。
まるで映画のようです。
仕事屋は見返したかったし、書きたかったので、突然に書いてしまいました。


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Comment

最高傑作
編集
長きにわたる必殺の中でも、これが最高のシリーズだったと思ってます。
もちろん、完全無欠という意味でなく。たまらない名シーンや名キャラ、名エピソードは他シリーズの方が多かったかもしれません。必殺から目が離せなくなったきっかけは、仕置人に始まる中村主水ものだったという方が多いでしょうし、私自身もそうでした。

でも、仕事屋稼業に満ちている何とも魅惑される空気。
定番シリーズとして基礎が固まりつつある自信と自負、その上でもっと新しいものを切り開こうとする瑞々しさ、緒形さん林さんが若き旬だった時期の勢いと円熟…。定番人気番組の枠にしばられ過ぎない丁度よいタイミングでもあったでしょう、作り手たちが適度な安定と緊張と冒険をした作品だったと思います。

主要な5人の配役が見事。
特に草笛さんと中尾さん、このダブルヒロインが半兵衛と政吉のバックボーンとなっているからドラマとしての厚みが出ています。二人の女優さんの佇まいがこの世界を見事に支えていたから、緒形さん林さんの繊細な演技が際立っていきました。必殺史上最弱の仕事人二人なのに、紛れもない必殺シリーズの醍醐味を描いてくれました。

林隆三氏のベストワークでは、というちゃーすけさんの慧眼コメントに、私も賛成です。
彼の魅力のひとつはあの声だと思うのですが、拗ねた少年の気配も、若くして達観した人間の落ち着きも共に醸し出していて、実在する青年のようにリアルな仕事人像は全シリーズでもトップレベル。彼の演ずる政吉がいなければ、最終話近くの展開があれほど心を打つものにはならなかったでしょう。

毎度印象深い津川雅彦氏出演作も、仕事屋稼業でのエピソードが最も印象的だったと思います。それほどに、円熟と冒険の狭間の時期らしい魅力に溢れていました。
2015年11月01日(Sun) 16:40
kaoru1107さん
編集
>kaoru1107さん

こんばんわ。

>長きにわたる必殺の中でも、これが最高のシリーズだったと思ってます。

実は私もそう思っています!
「新・仕置人」はそれまでの「必殺」の集大成であり、これも最高傑作の呼び声高い作品。
でも「仕事屋」は、実はそれに匹敵する作品だと思うのです。

>もちろん、完全無欠という意味でなく。たまらない名シーンや名キャラ、名エピソードは他シリーズの方が多かったかもしれません。必殺から目が離せなくなったきっかけは、仕置人に始まる中村主水ものだったという方が多いでしょうし、私自身もそうでした。

それぞれに名シーンがあり、名エピソードがあって、それを見るとどれも最高だと思えます。
しかし「仕事屋」は見れば見るほど、初期の雰囲気と冒険心に中期の円熟味が程よく合わさっているなあと思うのです。

>でも、仕事屋稼業に満ちている何とも魅惑される空気。
>定番シリーズとして基礎が固まりつつある自信と自負、その上でもっと新しいものを切り開こうとする瑞々しさ、緒形さん林さんが若き旬だった時期の勢いと円熟…。定番人気番組の枠にしばられ過ぎない丁度よいタイミングでもあったでしょう、作り手たちが適度な安定と緊張と冒険をした作品だったと思います。

そうなんですよね!
何とすばらしい分析でしょうか。
私の思っていることを言い当ててくださいました。

人気シリーズとして固まった地位を獲得した安心感と、それでもまだ開拓する精神がある。
主人公2人が素人であるということ、元締めが女性であることなど、まだまだ定番の設定に対して挑戦する気持ちがありますよね。
「仕置人」の怒り、「助け人」の人助け、「仕留人」にあった素人とプロの狭間が描かれる設定がここでも生きている。
俳優陣の演技に絶妙のカメラワークが冴え渡り、アクションと切なさと笑いがブレンドされた味わい。
実に見事なんですね。

>主要な5人の配役が見事。
>特に草笛さんと中尾さん、このダブルヒロインが半兵衛と政吉のバックボーンとなっているからドラマとしての厚みが出ています。二人の女優さんの佇まいがこの世界を見事に支えていたから、緒形さん林さんの繊細な演技が際立っていきました。必殺史上最弱の仕事人二人なのに、紛れもない必殺シリーズの醍醐味を描いてくれました。

はい!
おっしゃるとおりだと思います。

この2人の女性の存在が、本当にすばらしかった。
政吉に対して、母であり元締めであるおせい。
半兵衛に対して、待つ女であり半兵衛を父親というものにするかもしれなかったお春。
人間ドラマとして、ものすごく優れていると思います。

>林隆三氏のベストワークでは、というちゃーすけさんの慧眼コメントに、私も賛成です。

ありがとうございます。
林さんがものすごく、いきいきとしていますよね。

>彼の魅力のひとつはあの声だと思うのですが、拗ねた少年の気配も、若くして達観した人間の落ち着きも共に醸し出していて、実在する青年のようにリアルな仕事人像は全シリーズでもトップレベル。彼の演ずる政吉がいなければ、最終話近くの展開があれほど心を打つものにはならなかったでしょう。

次に書く予定ですが、「一発勝負」ではおせいに対して「うん!」という、子供のようなかわいらしい一面を見せる。
かと思うと、「おふくろなんていなくてもやっていける」と遠い目をして言ったり。
政吉は実に魅力的な青年になっています。
林さんの力でもあり、周りとの呼吸の合い方がすごく良かったんだと思いますね。
政吉のかわいらしさ、切なさと言ったらないです。

>毎度印象深い津川雅彦氏出演作も、仕事屋稼業でのエピソードが最も印象的だったと思います。それほどに、円熟と冒険の狭間の時期らしい魅力に溢れていました。

これはもう、殺しがないからつまらないかと思ったら、殺しがなくてもここまで見せるのか!という作品ですよね!
津川さんの演じるあの悪党は、自分の情婦とは違う誠実さをお春だけには見せています。
お春の心も動きかけ、半兵衛とお春は自分達の関係を考え直し、より強く結びつく結果となった。
一味違う悪党で、一味も二味も違う仕事でしたね。
抜けた青年の振りをする政吉、最後に借用書を手にしてにこっと凄みのある笑いを見せるおせいといい、実におもしろい作品でした。

「仕事屋」はあまり知られていない作品なのかもしれませんが、今まで見たドラマの中で好きな作品、すばらしいと思ったものをいくつかあげろと言われたら、今でも「仕事屋」の名前を挙げますよ!

コメントありがとうございました!
「仕事屋」も語れる機会が少ないのですが、語れてうれしいです。
2015年11月01日(Sun) 21:30
音楽の魅力
編集
ちゃーすけさん、ありがとうございます。
必殺シリースのマイベストは、「仕事屋稼業」と「からくり人」が双璧で、「仕置人」「仕留人」「新・仕置人」という感じですね。もちろん僅差ですが(笑)。

仕事屋はBGMが最も見事だったと思っています。「仕事屋大勝負」の抒情と躍動感の巧みなミックス、「さすらいの歌」のインストのサックスが醸し出す切ない厳しさ、等々、他のシリーズでは多少違和感を覚えるような旋律が、ここでは殆ど感じられないのです。
そういう要素も完成度の高さとして心に残っているのかもしれません。
2015年11月03日(Tue) 10:01
kaoru1107さん
編集
>kaoru1107さん

こんばんは!

>ちゃーすけさん、ありがとうございます。

こちらこそ、ありがとうございます。

>必殺シリースのマイベストは、「仕事屋稼業」と「からくり人」が双璧で、「仕置人」「仕留人」「新・仕置人」という感じですね。もちろん僅差ですが(笑)。

おおっ、渋い!
と言いつつ、「必殺」シリーズのベストを考える時、緒形さんの出演の2作品、「仕事屋」「からくり人」は私もはずせないなあ…といつも思います。
「からくり人」も全編通じてのからくり人いる生きざまを描いたドラマが見事。

ベストを考える時、「仕置人」「新・仕置人」もはずせないし、貢の「仕留人」もはずせないし、と、この辺り悩みます。
結局、その時の自分の心境で、この辺りのランキングは変わります。

>仕事屋はBGMが最も見事だったと思っています。「仕事屋大勝負」の抒情と躍動感の巧みなミックス、「さすらいの歌」のインストのサックスが醸し出す切ない厳しさ、等々、他のシリーズでは多少違和感を覚えるような旋律が、ここでは殆ど感じられないのです。

特にあの、切ないコーラス!
あれが良いです。
博打の時流れる緊迫感溢れるメロディも。
仕事屋が仕事をする時の曲は、「茜雲」「仕掛人」と共に、私の好きなクライマックス曲なんです。

>そういう要素も完成度の高さとして心に残っているのかもしれません。

ですね!
おっしゃる通りだと思います!
半兵衛がやり込められる時のメロディまでが良い。
源ちゃんにも、ちゃんと役割があって、仕事屋って、実にすばらしい作り。
遊びはあっても無駄はありませんね。

コメントありがとうございました!
2015年11月03日(Tue) 22:44












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