「仕事屋稼業」を見返しているんですが、といっても、これまで何度も見返してはいるんですが。
やはりこれは、名作、傑作です。
私は、「必殺」シリーズでも1、2を争う名作だと思っています。
そしてやはり、1、2を争う好きな作品。

「仕掛人」は原作があるとはいえ、登場する仕掛人はプロ中のプロ。
裏稼業の世界を、悪役としてではなく描いた初めて描いた作品。
「仕置人」は身体能力はプロをしのぐアウトローが、怒りを武器に暴れる様を描いた作。

「助け人」は人助けがメイン。
殺しはそれを達成するための手段。
しかしその助け人が、仲間の死をきっかけに殺し屋として生きていく道を選び、別れて行く様子を描いた。

「仕留人」はプロの腕前を持つインテリだが、最後まで心は仕留人になれなかった男を主軸にすえた。
このインテリがたどる悲劇と、その男によって正義への夢を打ち砕かれる男の悲劇を描いた作品。
私は地味な作品なのかもしれませんが、この「仕留人」と貢という人物も相当好きなんです。
そして「仕事屋」は、実にこれらをうまく生かした設定なんですね。

私は、「新・仕置人」も「仕置人」も好きなんです。
念仏の鉄は仕事人ではなくて、仕置人という呼び名がピッタリな男だと思っています。
仕事人のような華麗さやスマートさはなくても、荒削りな野生を持つ、本能のみの力強さがある男。

彼にあるのは殺しの快楽。
しかし「外道にはなりたくない」。
この自分の最低限の信念と誇りを曲げずに、疑わずに、ぶれずに生きた無頼漢。
彼はこのために、最期は女郎屋で死体となる。

そして、鉄と限りなく魂が近いが、鉄のような自由に本能のままに生きることが許されない立場の主水。
この2人が、正義を遂行するために悪となったのが仕置人。
「仕置人」は主水と鉄の物語という面もあり、鉄という「ザ・仕置人」を描いた物語でもあると思うのです。
だから「仕置人」から始まった裏稼業の話は、「新・仕置人」で集大成を得た…と私なんかは思うんです。

そこに行くと「仕事屋稼業」の2人は、本当に度胸が良いだけの博打打ち。
武器だって、半兵衛は自分のひげを整えるためのかみそり。
刀やドスを持っている相手には、本当に頼りない。

政吉の武器はおせいの懐剣。
女が持つ懐剣だから、刃物と言えどもこれも頼りない。
くわえて2人は超人並みの体力や跳躍力があるわけでもなければ、剣術や武道の心得があるわけではない。
ちょっとけんかなれしている素人。

1話で政吉とおせいが、親子であることが描かれる。
さらに2話で、子供を旗本に奪われた母親を描き、旗本の養子に出したために生き別れになった政吉との関係を投影させる。
念入りに描いたところで、この次からも…と思ったら、これ以降、この設定は忘れられたように出て来ない。
そう思ったら、最終回間際でこの設定がものすごい生かされ方をしてくるという、仕事屋の構成がすごい。


ここから先、「仕事屋稼業」の展開、全てネタバレ。
いつも私がやる、悪いクセ、ネタバレ。
なのでここから先、未見の方は、ご注意ください。


お春が妊娠し、半兵衛が父親になるかもしれない23話。
殺しに手を染めた者が、人の親になること。
今度はお春と半兵衛が、政吉とおせいの殺し屋親子に重なってくる。
さらに24話で裏の顔を持つ夫と何も知らない妻が描かれ、半兵衛とお春の関係に重なる。

そして25話で、ついに半兵衛と政吉、おせいの関係のバランスが崩れる。
「あんたはそば屋だ!」
「あんたは飛脚屋!」

半兵衛とおせいに対し、指を指しながら叫ぶ政吉。
「いざという時には逃げ場がある」。
「殺し屋を表稼業にしているのは、私だけです」。
「もう、たくさんなんです」。

お春という家族がいても裏の顔はいえない半兵衛には半兵衛の苦悩がある。
しかし、一人ぼっちの政吉の気持ちは救えない。
痛いほどそれがわかるから、半兵衛は政吉に傷つけられても黙っている。

おせいも母親としての情があふれているが、政吉の指摘を否定しきれない。
どうにもできない。
そしてついに、お春に半兵衛の裏の稼業が知られてしまう。
半兵衛を傷つけたことを悔いながら、政吉は敵に捕らわれる。

クライマックスは、政吉の救出と外道殺し屋との対決。
そこで利助までが加わり、3人は強敵を力をあわせて倒す。
崩壊しかけた仕事屋稼業は、危うさを残しながらも再び結びつく。
しかし…、半兵衛とお春の仲は崩壊しかける。

23話の半兵衛の戸惑いと苦悩、喜びと落胆があるからこそ、突き刺さるお春の言葉。
生まれなくて良かった、あんたの子供なんて。
23話からこれまでの人間関係が動いて行きます。
そして迎える最終回で、それは収束して行きます。



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2015.11.14 / Top↑
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