でなきゃお前を殺す 第4話「逆転勝負」

第4話、「逆転勝負」。

半兵衛とお春は出前に行って、岡引き・閻魔の弥三が島帰りの閻魔の弥三を脅して金を取っているところに居合わせた。
弥三は半兵衛とお春も脅す。
その直後、仕事屋に依頼が来た。

島帰りだが、今はまじめに勤める小間物屋の吉五郎が、弥三の十手を取り上げてほしいと言うのだ。
殺せば厄介なことになる。
だからくれぐれも殺さず、十手を取り上げてくれ。

吉五郎の依頼で半兵衛と政吉は、弥三の娘のおすみに接近することになる。
あんな弥三でも、娘は目の中に入れても痛くないほどかわいいらしい。
利助の話では、おすみは閻魔の弥三が父親のため、浮いた話のひとつもないらしい。
いつだったか、おすみに近づいた男を弥三は十手に物を言わせて百叩きの刑にした。

おすみを見た半兵衛は、「いいなあ。若くってかわいくって」と言う。
だが政吉も譲らない。
半兵衛と政吉が賭けをした結果、おすみに接近するのは政吉になった。

かんざしを買って、おすみに言い寄った政吉だが、弥三に見つかり散々な目にあう。
しかしその直後、うずくまる政吉に声をかけたのは、おすみの方だった。
おすみは政吉を家に誘い、自ら帯を解いた。
天女のように見えたおすみが、妖艶な笑みを浮かべて政吉を誘う。

戸惑う政吉は、おすみに告げる。
自分の父親が、何をしているか。
どういう人間か、知っているか。
だが、おすみは父親への愛情と父親の所業の間で苦悩していたのだった。

自暴自棄になるおすみと、政吉の間にやがて、本当の愛情が芽生える。
そんな矢先、弥三が殺される。
土間に倒れた弥三を抱き起こすおすみ。
政吉は、表に出た。

しかしその時、捕り方が迫ってきた。
やむを得ず逃げる政吉。
その影でそっと路地から出て行くのは、吉五郎だった。

だが弥三を殺したのは、吉五郎だった。
吉五郎はもう一度、盗みに手を染めるつもりでいた。
そのためには、つきまとう弥三が邪魔だった。
吉五郎は弥三のめかけのおくらと共謀し、弥三を殺したのだ。

仕事屋への依頼は、罪を仕事屋になすりつけるためだった。
吉五郎はおせいを尋ね、苦情を言い立てる。
十手を取り上げてくれとは言ったが、殺してくれとは言っていない。
しかしおせいは利助にもう一度、吉五郎を調べるように命じる。

奉行所では、政吉を犯人と断定した。
政吉にはおすみとのことで、弥三を殺す動機がある。
近所の人間も、おすみと政吉が親しくしていたことを証言した。

おすみは政吉ではないと言うが、奉行所では政吉を好きなおすみがかばっていると判断している。
出会い茶屋に潜む政吉を訪ねたおすみは、父親の着物をたたむ。
「たとえ閻魔だろうが鬼だろうが、あたしにとっては大事なおとっつあんです」。

おすみは、そう言った。
父親を殺した相手が憎い。
そう言いながら、おすみはおくらに父親の形見分けをしに出かけた。

こんなことがあった後だからと心配した政吉が、後をつけていく。
そこに利助が現れ、今度の仕事は半兵衛だけにやらせると告げた。
激昂する政吉は、おせいのもとへ走る。
その間におすみは一人、おくらを訪ねていく。

神社の敷地内で、おせいは半兵衛に今度の仕事は半兵衛だけに依頼すると告げていた。
それは政吉が奉行所に追われているからなのか。
聞いた半兵衛におせいは、半兵衛も政吉が下手人だと思うのか聞いた。

違う。
おせいも違うと思っていた。
そこに利助の「いけません、政吉さん!」という声が響いた。

「おかみさん、これはどういうことなんだ。どうしてこの仕事から俺をはずさなきゃいけねえ」。
政吉がおせいに詰め寄る。
「それは私が決めることです」。

おせいの声は冷静だった。
「そうかい。おかみさん、俺が奉行所に引っ張られて、この裏稼業がばれるのが怖いんじゃねえのか。俺はとにかく、てめえに降りかかった火の粉はてめえで払う!」
おせいは静かに言った。
「あなたは、仕事屋の掟を破ると言うのですか」。

「掟え?」
政吉は斜めに構えた。
「何言ってんだよ、その掟ってのは、おかみさんが決めたんじゃねえか」。
「私が決めた掟なら、どうでもいいと言うのですね」。

「とにかく俺は好きなようにやらせてもらうよ。俺は父親を殺されて泣いている、一人の娘の恨みをどうしてもはらしてやりてえんだよ!勝手にやらせてもらうよ!」
そう言うと政吉は去ろうとした。
「政吉!」
突然、おせいが声を張り上げた。

政吉の肩をつかむ。
その勢いに、政吉が体の体勢を崩す。
「勝手な真似は許さないよ!」

おせいが、政吉の頬を張る。
2回、3回。
「でなきゃお前を殺す!」

その剣幕に思わず、政吉が懐剣を抜く。
「おかみさん!」
利助が走り寄ろうとする。
半兵衛がすっと、止める。

おせいは政吉が抜いた懐剣を、手でつかんでいた。
政吉の動きが止まっていた。
おせいの手から血が流れ落ちる。
政吉が、おせいの顔を見上げた。

「政吉さん」。
おせいの目は今にも涙を流しそうな、哀しい目だった。
声も哀しく、つらそうだった。

政吉がおせいを見る。
だが次の瞬間、おせいはすっと、政吉から懐剣を取り上げ、鞘に収める。
いつもの冷静なおせいだった。

「政吉さん。あなたが地獄へ落ちる時は、私も一緒です」。
おせいは取り上げた懐剣を、政吉に差し出す。
政吉は無言でそれを受け取る。

おせいが去っていく。
政吉が去っていくおせいの後姿を見ている。
視線が地面に落ちた。

だが、もう一度、政吉はおせいを見る。
おせいが遠ざかっていく。
政吉は遠ざかるおせいの背中を、ずっと見ている。
見つめている。

その頃、おすみはおくらの下を訪ねていた。
湯上りのおくらの様子が、おかしい。
吉五郎が座敷に来ていた。
おすみを、吉五郎が捕らえる。

半兵衛は、おくらの家に急ぐ。
誰もいない。
水音がする。

風呂場で半兵衛は、何かに気づく。
湯の中で手に取ったのは、長い髪の毛だった。
長い髪の毛が、湯に浮いている。

風呂場からずっと、水が滴り落ちる後が続いている。
廊下へ。
半兵衛はそれをたどっていく。

水は座敷まで続いていた。
半兵衛が戸を開ける。
そこには、政吉がいた。
政吉の前には、息絶えたおすみがいた。

何が起きたのか。
2人にはその様子が、目に浮かぶ。
おすみの顔が、湯につけられて目を見開いていた。
政吉の手には、おすみにやったかんざしがあった。

「この仕事は私がお2人にお願いします」。
半兵衛と政吉に、おせいが金を積む。
利助が調べてきた。
吉五郎の昔の盗人仲間が、仲間に再び引き込まれるのをおそれてすべてを話した。

奉行所の手が回るのを怖れた吉五郎とおくらは、今夜、江戸を発つ。
「じゃ、江戸を発つ前に」。
半兵衛の言葉が、合図のようになる。

夜半、半兵衛と政吉が吉五郎とおくらが潜む水茶屋の前に立つ。
半兵衛が、なめし皮でかみそりをなめす。
政吉は、懐剣に油をたらす。
手ぬぐいで、それをぬぐう。

吉五郎とおくらが茶屋から、出て来る。
辺りをうかがいながら、逃げていく。
半兵衛と政吉が、後を追う。

吉五郎とおくらは鳥居が並ぶ場所に差し掛かった。
半兵衛がおくらの肩を抱いている吉五郎を、闇の中に引きずり込む。
吉五郎がいないことに、おくらが気づく。

「お前さん」と吉五郎を呼ぶ。
吉五郎の返事がない。
姿もない。

「お前さん」。
「どこにいるんだよ?」
「お前さん!」
おくらの声が鬼気迫ってくる。。

半兵衛が、吉五郎の口を押さえていた。
羽交い絞めにされた吉五郎に向かって、政吉が突進してくる。
懐剣を吉五郎に向かって刺す。

深く刺す。
さらに深く刺す。
深く、深く刺す。

半兵衛が出て行く。
「お前さん」。
おくらはやってきた半兵衛に声をかけようとするが、半兵衛は知らん顔で去っていく。

「お前さん」。
「どこへ行ったのさ」。
「お前さん!」
「お前さん!」

闇の中、1人残されたおくらは必死に声を張り上げた。
だが誰も答えない。
誰もいない。

その夜、政吉は女郎屋にいた。
おせいからもらった仕事両の小判を、派手に投げる。
女郎たちが群がる。

政吉が倒れる。
「あんたぁ、もうないの?」
「俺、政吉ってんだ!」
政吉が女郎たちに囲まれ、自暴自棄の笑いを浮かべる。



どっちがおすみに近づくか、半兵衛と政吉の賭けは何と、自分の脇の下の毛を抜いた長さ比べ。
政吉が半兵衛の倍の長さ。
「馬並みだな」と呆れる半兵衛に「毛並みが良いんだよ!」と言う政吉。
く、くだらないけど、笑っちゃう。

閻魔の弥三は、今井健二さん。
殺さないでくれの依頼が、結局殺すことになると予想がつく。
ところが弥三が殺されてしまう。

何と、今井さんが被害者に!
今井さんの岡引き、閻魔の弥三と設定があれば、「仕置人」の鉄と錠を相手に張り合った岡引きを思い出す。
もう、今井さんらしくない展開。
どんでん返しの「仕事屋」らしい。

父親への愛情と、父親の所業と、友達も恋人もいない孤独に苦しむおすみ。
弥三のためにおすみに近づいた政吉が、おすみに本気になっていく。
「たとえ閻魔だろうが鬼だろうが、あたしにとっては大事なおとっつあんです」。
奉行所に追われる政吉は、おせいの言うことも聞かず、暴走しようとする。

それまで冷たく、事務的だったおせいが突然、感情を爆発させる。
「政吉!」の声は元締めではなく、母親の声。
誰よりも大切と思いながら、「お前を殺す」と口走るおせい。
プロとして生きるおせいには、そうとしか言えない。

だがこれは、普通なら暴走する息子を諌める母親の図。
利助が止めようとするのを、黙って押しとどめる半兵衛。
半兵衛には、すべてわかっている。

政吉を手にかけたなら、おそらくおせいも死ぬであろうことが。
半兵衛には、すべてが見えている。
おせいの哀しみは、第2話より深い。

しかしこの政吉とおせいの立ち位置が、最終回では逆転してしまうんですから。
「仕事屋」は全編を通して見た時、すごさがわかる。
おせいの様子に、さすがに政吉も察する。

こうまでして自分を止める。
それは元締めの行動ではない。
政吉のおせいを見送る目。
その目が「おふくろ…」と言っている。

半兵衛、政吉、おせい。
緒形拳さん、林隆三さん、草笛光子さんの無言の演技。
目が、すべてを語っている演技。

おすみは、菊容子さん。
かわいらしい娘と、政吉を誘う妖艶さ。
天女と悪女が同居する様。
父親への愛情と憎しみで、苦悩する様。

そして殺されるシーンが、あまりにも痛ましい。
目をそむけたくなる。
改めて、菊容子さんのご冥福をお祈りします。

さらに今回は源五郎がパワーアップ。
半兵衛が弥三に家を突き止められ、叩けば誇りが出そうな奴、出ないなら出すってこともできるぜと脅されているところに登場。
うっかり、博打が見つかったのね?と口走り、弥三に口止めのネタを提供してしまう。

弥三が去った後、半兵衛にベタベタ、ベタベタすると、お春がもう、不愉快この上ないと言う顔をしてみる。
「なめくじっ!」と叫んで、お春が源五郎に塩をぶちまける。
「なめくじ、怖いっ!」と源五郎が叫んでいるところがおかしい。

「何よ、なめくじなんかいないじゃない」と気づいた源五郎が「ねえ、半ちゃん、うちに遊びにおいでよ」と再び誘う。
お春が間に割って入る。
すると源五郎。
「女の嫉妬って嫌ねえっ!だから女は嫌いよっ!」と言って出て行く。

源ちゃんはおくらの家に急ぐ半兵衛の前にも、もう一度、登場する。
「ねえ、半ちゃん、家においでよ」と言って、半兵衛の邪魔をするんですね。
いやいや、たまらなくおかしい。
この話は菊容子さんを襲った悲劇を知ると、見るのがとてもつらい話なのですが、源ちゃんは救いになっているかも…。


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静と動と林隆三さん

現在、仕事屋を1話から全部見てってるんですが、
仕事屋は「セリフがないのにドラマが続く演技」が多くて目が離せません。
(放映当初はトイレに行く間ももったいなかったんだろうな)

「裏番組の木枯し紋二郎に勝つために重厚なドラマ~」なんでしょうけど、
見てて「お金払わないといけないんじゃないか」くらい思います。
特に「静から動への移行」。役者さんの演技もシナリオ上の展開も、この「メリハリ」の効き方が凄く印象に残ります。

そして林隆三さんの演技。「陰影」が凄く印象に残ります。明るくはしゃいでいるのに「陰」が見える。役柄によらず(たとえ「噂の刑事トミーとマツ」でも)にじみ出てくるのは「役者さんの色」なんでしょうね。

そこで「ザ・ハングマン」でのブラックの演技を見るためこちらも第一話から見始めました。昔の役者さんは、本当に「役者」さんですよね。痛感しています。
それだけに、ほとんどの方が天に召されてしまいました。残念です・・・

いまだに中尾ミエさんはバラエティ(MX「五時に夢中:金曜日」)の中でも、「必殺」に出演していたことをお話しされています。一生の中でも凄く心に残ってるんでしょうね。

※菊容子さんってヤモゲラスによって~の女優さんですよね。この女優さんだったんですね。「好き好き魔女先生」を見たことがなかったので。

地味JAM尊さん

>地味JAM尊さん

こんにちは。

>現在、仕事屋を1話から全部見てってるんですが、

仕事屋は名作ですよね!

>仕事屋は「セリフがないのにドラマが続く演技」が多くて目が離せません。
>(放映当初はトイレに行く間ももったいなかったんだろうな)

言葉にしない部分、言葉とは違う気持ち。
全てのシーンに意味があるぐらいの濃密さ。
行間を読み取る作業が必要で、大人のドラマだなあと思います。
どんでん返しもあり、本当に目が離せません。

>「裏番組の木枯し紋二郎に勝つために重厚なドラマ~」なんでしょうけど、
>見てて「お金払わないといけないんじゃないか」くらい思います。

これ、思いましたね。
こんなレベルのドラマがタダで見られたなんて、すごい。
映画並みの力が注がれてると思います。

>特に「静から動への移行」。役者さんの演技もシナリオ上の展開も、この「メリハリ」の効き方が凄く印象に残ります。

見事ですよね。
コミカルさと切なさも印象に残ります。

>そして林隆三さんの演技。「陰影」が凄く印象に残ります。明るくはしゃいでいるのに「陰」が見える。役柄によらず(たとえ「噂の刑事トミーとマツ」でも)にじみ出てくるのは「役者さんの色」なんでしょうね。

俳優さん自身が背負っている人生が投影されているような気がしてしまいます。
こういうのは俳優さんももちろん、うまいんですが、生かすスタッフさんたち、製作陣の優秀さを感じます。
当時の年齢を知ると、その成熟の度合いにも驚きます。

>そこで「ザ・ハングマン」でのブラックの演技を見るためこちらも第一話から見始めました。昔の役者さんは、本当に「役者」さんですよね。痛感しています。

わかります、他も見たくなりますよね。
それほど、魅力的です。
林さん、本当に良いです。

緒形さんもすごく、良い。
それだけに最終回は衝撃です。

プロの俳優、演じることのプロ。
この時代の演者さんを見ていると、そのすごさを感じます。

>それだけに、ほとんどの方が天に召されてしまいました。残念です・・・

半兵衛も政吉もいないなんて、思いもしませんでした。
確かに年月を考えると、かなり経っていますが。

>いまだに中尾ミエさんはバラエティ(MX「五時に夢中:金曜日」)の中でも、「必殺」に出演していたことをお話しされています。一生の中でも凄く心に残ってるんでしょうね。

そうなんですか!
中村敦夫さんが中尾さんのことを、音楽をやっている人らしい、勘の良い演技をするとおっしゃっていました。
仕事屋のお春、仕業人のお歌、新仕置人のおてい。
それぞれ違うキャラクターですが、ハマってます。

草笛光子さんも仕事屋の時の着物を、未だに持っていらっしゃるそうです。
「私、まだ持っているんですよ」とおっしゃっていました。

>※菊容子さんってヤモゲラスによって~の女優さんですよね。この女優さんだったんですね。「好き好き魔女先生」を見たことがなかったので。

繊細な演技をする、綺麗で良い女優さんですよね…。
残念です。
後で知ったんですが、そうなるとあのシーンが生々し過ぎます。

コメントありがとうございました。
プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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