パニックと人間ドラマ「タワーリング・インフェルノ」

昔、洋画を放送するテレビのロードショー番組で、前後編の2週に渡って放送された超大作がありました。
当時のハリウッド映画を代表する2大スター。
ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーンが主役のパニック映画超大作。
「タワーリング・インフェルノ」です。

138階建ての最新の超高層ビル・グラスタワー。
ビルの設計士のロバートが、ポール・ニューマン。
彼はビルの落成式のパーティの夜、ビルが自分が設計した通りに作られていないことに気づく。

経費を節約するため、ビルのオーナーの娘婿のロジャーが設備に手を抜いて建てていたのだ。
ロバートが抗議するも、今夜はパーティということで抗議は後回しになった。
しかしすでに、81階の倉庫の電気系統に異常が起きていた。

パーティ会場に集まった、今で言うセレブの男女。
タワーで暮らす住人。
秘密の密会をしている男女。
誰もその怖ろしさにまだ、気が付いていなかった。

やがて、ビルのあちこちで火の手が上がる。
パーティ会場のエレベーターのドアが開き、炎に包まれた男性が転がり出て来る。
会場に悲鳴が響き渡った。

火災の発生だ。
消防隊が、グラスタワーに到着した。
隊長のオハラはロバートに、ビルについて聞く。

オハラは言う。
「俺たち消防士が確実に消せるのは、5階までなんだ」。
「なのにあんたたち建築家は、どんどん高いビルを作りたがる」。
「バカと煙は、高いところに昇りたがる」。

…この映画を見て、高いところには、住みたくないな。
そう思ったお子さんは、多いんじゃないでしょうか。
オハラ隊とロバートによる、決死の救出が始まった。

ビル内にいる人々の、様々な人間模様。
極限状況で露わになる人間性。
ビルが炎上するスペクタクルもすごいですが、人間ドラマの部分が良く描けていた。


ロバートは子供2人と、女性を連れてとにかく炎を逃れ、パーティ会場のある上を目指す。
途中、ドアが閉鎖されていたり、階段が落ちていたりピンチの連続。
オハラ隊長はまだ、未熟な隊員が怯えるのを見て、一番最後に柱を登れと言う。
落ちる時、下にいて登ってくる仲間を巻き添えにしないで済む。

登っていくと誰かが炎に包まれて落下していく。
仲間の誰かだ。
途中、ロバートと合流し、ドアを爆破し、突破する。
ヘリによる救出は、屋上にヘリが着陸できずに不可能になった。

秘密の密会をしていた男女は、部屋に煙が充満してきたことに気づく。
隣の部屋を見た男性は、思わず、電話をする。
だが密会を邪魔されたくなかった男性は、電話線を切っていた。

しかし女性を不安にさせないため、電話で救助を要請する振りをした。
救助が来ると思っていたが、やがて煙が隣の部屋とのドアの隙間からこの部屋に入ってくる。
謝る男性に女性は言う。

素敵ね、永遠に2人の秘密だわ。
それを聞いた男性は上着をかぶって、炎の中を行く決心をする。
消防隊を百人、連れて帰ってくるよ。

でもそれは無理なことだった。
部屋の半ばまで行く前に、炎の中、男性は倒れる。
女性はそれを見て、悲鳴を上げてドアを閉める。
炎が迫る。

追い立てられるようにして女性は炎から逃げ、窓ガラスを突き破って落下していく。
この密室での追い詰められ方も、怖かった。
男性は当時を代表する美形俳優、ロバート・ワグナー。
この最期に、絶句。

パーティ会場では、展望エレベーターで脱出する順番を決めるくじ引きが行われる。
展望エレベーターと言うだけあって、景色を楽しむためのエレベーター。
したがって、ガラス張りである。
こういう時には、頼りないことこの上ない。

会場には、金持ちの振りをして、タワーの住人の女性に近づいた詐欺師もいた。
しかし彼は、彼女のことを本当に愛してしまっていた。
展望エレベーターで脱出する女性に、本当のことを言っておかなくては。
詐欺師は、すべてを打ち明ける。

だが女性は彼が金持ちではないことに、気づいていた。
微笑みながら、女性は言う。
「あなたは人をだますことができないわ。優しいから詐欺師にはなれない」。
2人は地上で会おうと約束する。

ロバートを愛している女性は、自分のくじを人に譲り、ロバートとできるだけ一緒にいようとする。
それに気づいたロバートは、彼女を行かせる。
娘を乗せる社長。

残るもの、行くもの。
展望エレベーターのドアが閉まる直前、隙間が開いている最後の瞬間。
全員が、お互いを見つめあう。
どちらも生きて再び、会えるとは言い切れない。

展望エレベーターの脱出中、ビル内で爆発が起きる。
バランスを崩したエレベーターから、子供が落ちそうになる。
それを助けた女性が、落ちていく。
老詐欺師と会おうと約束した女性だった。

無念の表情のオハラ。
エレベータを吊るしているワイヤーのため、屋根にいたオハラの部下もバランスを崩して落ちそうになる。
その手を必死につなぐオハラ。

隊長まで落ちます、離して下さい。
だがオハラは、手を離さない。
握った手から、隊員の手が滑り落ちる。

その時はもう、隊員は地上で広げたマットの上に落ちる。
あの、未熟な隊員だった。
修羅場を抜けた部下は、一人前の消防士になった。

隊長と部下との絆。
女性と、老詐欺師のドラマも忘れられない。
一緒になってほしかった2人だった。

娘婿の不正と、彼によってこの惨劇が引き起こされたのを知っている社長。
ロジャーのエレベーターの順番が来る。
得意気に順番を書いたくじを引きちぎり、エレベーターに乗り込もうとするロジャー。

社長はロジャーを殴り飛ばす。
「お前と俺は、一番最後だ!」
しかしそのエレベーターもついに、火災により使えなくなる。

最後の手段として、隣のビルからリフトをつるし、それによって脱出となる。
ひゃ、138階の屋上から隣のビルの屋上に、ワイヤーを張って。
そこに通されたリフトに乗って、脱出。

リフトといっても、椅子ですよ椅子。
椅子と言うより、骨組みだけのカゴ。
そりゃそうだ、重いものは無理。

生きた心地もしないと言うか、高所恐怖症の人は気絶する。
いや、乗れない。
考えただけで手足の先が、冷たくなる。

女性が全員、救出された時だった。
「俺が乗るんだ!」
耐え切れなくなったロジャーが、椅子に飛びつく。

ロジャーの行為に怒った人々が、飛びかかる。
理性が吹っ飛び、我先にと椅子にしがみつく人々。
ロジャーは彼らを突き飛ばし、しがみつく人を突き落とし、椅子に乗る。
そして重量オーバーにより、落下していく。

彼らは、上等なタキシードや、豪華なドレスと装飾品を身にまとった人たち。
今で言う、セレブ。
その彼らが極限状況で、我先にと争う姿が目に焼きつきます。

ついに、最後の手段もなくなった。
残る手は…。
屋上にあるビルのための給水タンクを爆破し、上から大量の水を降らせて消火するだけだった。
誰かが、爆破をしなければいけない。

そんな危険な任務、誰が?
ロバートの問いに「そんな奴は1人しかいない。お前も知っているバカだ」。
オハラ隊長だ。
渋すぎ。

爆破される前、会場に残った人々は水に流されないため、体を柱や置物に縛り付ける。
バーテンは大事な酒のビンを抱きしめる。
何かにすがっていないと、怖ろしくて耐えられない。

だが恐怖のあまり、爆破前にロープを解いて逃げようとする人もいた。
逃げる人は水に流され、ガラスを突き破って落ちていく。
倒れてきたものの下敷きになって、息絶える人もいた。

あんな大量の水が、屋上にあるの。
そんなことを思ったのは、後、後。
見ている間は息を止めるようにして、見ていました。

タンクの水が、嵐のようにビルに降り注ぐ。
猛烈な炎も勢いを失っていく。
あちらこちらで吹いていた炎が、沈下して行く。
地上にも豪雨のように、水が降り注ぐ。

無事、生還した人々が地上に戻った。
戻った老詐欺師の手に、女性が飼っていた猫が消防士によって渡される。
この猫、「誰かいませんか!誰もいませんね?!」と消防隊が各部屋を回った時、ベッドの上にいたんです。
誰もいないことを確認した消防士が、立ち去ろうとした。

しかし消防隊員は、「お前も連れて行ってやるよ」と言って猫を連れてきた。
こんな時、猫なんて…と言わないアメリカの消防隊の余裕と言うか、男らしさと言うか。
そこに帰って優しさとプロを感じたものです。
今考えると、これだけの大惨事。

生きているものは、助けたい。
そんな思いもあったんでしょうね。
この猫が、詐欺師に渡される。

詐欺師は、フレッド・アステア。
この映画では、踊りません。
踊らないけれど、見事な演技です。
彼の話は、今でも覚えている人は多いのではないでしょうか。

猫を渡された彼は、消防士を見る。
彼女は…?
詐欺師は、消防士の表情ですべてを悟る。
地上で再会し、抱き合う人の中、彼は彼女の名を呼びながら、さ迷い歩いていく。

「だから見るなと言ったのに」と言っているのは、社長。
嗚咽しているのは、娘。
ロジャーを見たのでしょう。
彼に関しては、自業自得と言いたくなりました。

演じたのは、リチャード・チェンバレン。
「リチャード・チェンバレン様ぁ」と言って、巨大なポスターを貼っていたお姉さんがいました。
この方も、イケメンとして絶大な人気があった。

それがこの役、えらい!
最初から最期まで、同情するところがひとつもなかった。
そんな憎まれ役、ありがとう!

再会したロバートと恋人が、毛布にくるまれながら座っているところに通るオハラ。
死者が2百人以下に抑えられたのは、奇跡だ。
良かったと言う。
何と言う、シビアな言葉。

あれだけ尽力した彼が言うからこそ、ものすごく重い。
本当に、大惨事なんです。
しかもこれは、自然災害じゃない。
人災なんです。

良い人が助かって、悪い人が死ぬ。
そんな結末ではなかった。
苦い、苦い結末なんです。
現実はこの後、社長の責任が追及され、ロバートもいろいろと大変なんでしょうね。

人間の傲慢を象徴するものとして、このタワーは残した方が良い。
こんなことはきっとまた、繰り返される。
「誰かが、ビルの作り方について聞きに来るまでな」。

ロバートはオハラに、いつが良い?と聞く。
では来週。
渋い大人の男の2人は、こんな悲劇を繰り返さないことを胸に約束して、別れる。

我先にと逃げる人、自分のためではない、人を助けるために命を賭ける人。
技術と傲慢さ。
人間の本性とは、品格とは、勇気とは。
いろんなメッセージも読み取れる映画。

社長役は、ウイリアム・ホールデン。
ロバートの恋人は、フェイ・ダナウェイ。
みなさん、主役を張るスターです。

その中で主人公を演じたポール・ニューマン、スティーブ・マックイーンがいかにすごいか。
彼らのスター性ってすごかったんですね。
いつも思うんですが、この時も彼らの無言の演技がすごい。

1974年の作品。
子供だった自分が、ハリウッドのすごさを知った作品です。
今のように特撮技術はなかったけど、迫り来る火災は十分リアルで怖かった。

この8年ほど後、日本でも有名ホテルの火災が起きます。
オハラ隊長の言葉が、蘇ります。
時は流れて、阪神大震災、東日本大震災、アメリカでは9.11が起きます。
映画は「消防士たちにこの映画を捧げる」と書いてあった記憶も蘇りました。

そういうことも含めて、忘れられない映画です。
スペクタクル映画、パニック映画、人間ドラマ。
ハリウッドが誇る、名作じゃないでしょうか。


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Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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