偽物以外の何ものでもない 「スペシャリスト」第6話

ちょっと遅くなりましたが、「スペシャリスト」第6話。
今回は、ネタバレになります。
まだご覧になっていらっしゃらない方は、注意!


冒頭ガード下で、めちゃくちゃに刺されて絶命している被害者。
何度も刺されていることから、怨恨と思われた。
だが宅間は、おかしいという。

何度も何度も刺すほど恨んでいる相手。
なのに、刺し傷はすべて背中にある。
「強い恨みを持っている犯人が何より見たいのが、相手の苦しんでる顔なんだよね」。

「なのに、遺体はうつぶせのまま倒れている」。
「この状況見る限り、犯人は相手の苦しんでる顔、一度も見てないでしょ」。
宅間は軽い口調で、怖ろしいことをサラリと言っている。

「そうやって何でもかんでも犯罪者目線で考えるのは、どうかと思いますけど」。
反発した真里亜の言葉に、宅間は軽く言い返す。
「そう言われても、犯罪データ全部頭の中に入っちゃってるし~」。

現場写真を見た宅間は言う。
「事件現場に、楽譜か。何かおもしろそう」。
「例えて言うなら、ドレミファ殺人事件~?」


相変わらず、導入はバッチリ。
グン!と、引き込んでいく。
おもしろい遊びを見つけたような、宅間の楽しそうな口調。

不謹慎?
この楽しそうな口調が、宅間が見てきた闇を感じる。
宅間の天才的な頭脳が持つ、危うい側面も感じる。


「そんなこと、どうだって良いでしょう?!」と言われるような宅間の質問。
平謝りしてきた真里亜が、帰り道、宅間をにらむ。
「ギロリ」。
「何か俺、悪いこと言った?」

誰もが呆れるようなことをするが、実は宅間は無駄なことは何一つしていない。
それがわかるのは、後半。
見ていないようで、誰にも気がつかないところに気がついている。
しかしそれは、犯罪者でなければわからない目線だったりする。

刑務所内で、鬼っちと呼ばれた怖ろしい風貌の男。
だがそれは見かけだけで、本人は甘えん坊であった。
誰にも気づかせないため、鬼っちは彼女への手紙に暗号を忍ばせていた。

「あいしてましゅ」。
手紙を書き終えた鬼っちは、赤ちゃん言葉で繰り返す。
「あいしてましゅ!」

つまり…、現場に置かれた楽譜に暗号があった?!
皆、仰天する。
宅間、怖ろしい男。

これはストーカーを利用し、綿密に計画された犯罪だった。
「おかしいなと思ったんだよねえ」。
「現場に指紋残しちゃうような犯人が、楽譜に指紋残さないなんてさあ」。
「誰か別の人が置いてったんじゃないかって」。

今や日本に凱旋コンサートを開くほど、成功した雨宮薫。
しかし、その成功は盗作によるまやかしの成功だった。
15年前になくなった、麗香という女性。
薫の作品「聖者のセレナーデ」は、彼女の盗作だったのだ。

恩師は、それに気づいていたと思った。
だから薫は、ストーカーが自分の電話を盗聴しているのを承知で、待ち合わせをした。
ストーカーに彼を殺させるために。

次にしなけらばならなかったのは、麗香の息子の仁をおびき寄せることだった。
自分の盗作を知る人間は、すべて始末しておかなければならない。
薫が日本に帰ってきた目的は、自分の盗作を知る人間を消すため。
だが、滞在時間は短い。

自分で仁を探さずに済む方法は、事件をセンセーショナルに報道させること。
そして、仁にはわかるメッセージが暗号によって書かれた楽譜を、現場に置いておいた。
薫の狙い通り、仁は暗号を理解した。
そして、自ら薫に連絡を取ってきた。

完全犯罪のはずだった。
宅間さえ、いなければ…。
仁にナイフをつきつけているところを、宅間と姉小路につきとめられた薫。

本当なら、すべてストーカーにやらせれば良かった。
宅間は言う。
「でも、麗香さんの才能を受け継いだ仁くんは、どうしても自分の手で殺したかった」。

飄々としていた宅間の口調が、目つきが変わる。
「しかも、麗香さんと同じ場所でね」。
宅間の声にはもう、笑いが含まれていない。

しかし薫は、不敵な態度を崩さない。
「…そんなこと、何でわかるのよ」。
「わかるんですよ。だって俺、10年10ヶ月入ってましたから」。

自分の頭を指差した宅間の手が、怒りにかすかに震えている。
そしてその声は、怒りだけではない。
哀しみが混ざっていた。

「『聖者のレクイエム』には、もう一つ隠された暗号がありました」。
「それは何でしょうか。答えられるよね、自分で作ったなら」。
「ばかばかしい。そんな手に乗ると思ってるの?他に暗号があるなんてありえない」。
「ぶぶー、不正解!」

聖者のレクイエムで最大に評価されたのは、不協和音の部分だった。
そこを和名表記して、横に並べると一つの文字になる。
「仁」。
今、薫がナイフをつきつけている青年の名だ。

夫を亡くした被害者にとって、これは希望の曲だったんじゃないかと宅間は言う。
「だからまだ、3歳だった仁くんに、演奏して聞かせてたんだ」。
陽だまりの中。
ひざに乗せた仁を慈しむように、演奏する被害者。

「この曲の本当の意味を知らないあんたは、偽物以外の何ものでもない」。
宅間の声は鋭かった。
犯人の心を粉砕した。
薫の手から、ナイフが落ちた。

仁は、夕日を見つめている。
「何で母は、自分を置いて死んでしまったんだろう…、ってずっと、考えてました」。
「でも自殺じゃなかったんですね」。

「自殺なんてするわけないって、俺は最初から思ってたけどね」。
「幼い子供を残して、一人で死ぬ親なんていないよ」。
「そんなの親じゃないし」。

「わかるんだよね俺。こうみても人の親だから」。
仁が泣きそうな、笑顔になる。
「ありがとうございました」。

深く、宅間に頭を下げる。
夜が近づいている夕闇の中、宅間が歩いていく。
姉小路が近づく。
「もしかして、会いたくなった?のりひこくんと、みやこさんに」。

ピーピーと時計が鳴る。
「ん、時間なんで俺、帰ります」。
そんなこと、微塵も感じさせない軽い口調で宅間が言う。
「ちょっと、宅間!」


宅間の妻。
息子。
なくなった幸せな時間。
あったはずの時間。

平気なはずはない。
明るいはずはない。
宅間は、10年の服役で、すべてを失っているのだ。
すべてを。

そんな言葉が浮かんでくる。
犯罪に対する、宅間の怒り。
哀しみ。

薫に向かった宅間の表情、口調にそれが感じられる。
矢田亜希子さんの薫とのやりとりに、宅間の思いが込められている。
本当の宅間が見える。

草なぎさんは、繊細な演技をしていると思います。
ミステリーの部分ももちろん、おもしろい。
「スペシャリスト」は本当に見応えあるドラマになっています。


スポンサーサイト

コメントの投稿

Secret

プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧

本も映画も文具も、いいものはいい!

LEVEL1 FX-BLOG
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード