「新・仕置人」で一つの到達点に達した必殺シリーズ。
この後、しばらくの作品は仕置人の辿った道をなぞるだけではいけないと、試行錯誤しているように思えます。
「新・仕置人」の最終回は、それほどすごかった。

主水は上司・諸岡と対決。
この時、諸岡さまは主水を本当になめきっているんですね。
まず、主水が諸岡さまがどこにいるのか、わかって来ていることにピンと来ない。

頭を下げる主水をぞんざいに扱い、外に出てやっと、あれ?と気づく。
最初に主水が来た時の、諸岡さまの対応が違っていたら。
その後の主水を巡る展開は、もっと苦しいものになったのではないか。

辰蔵から諸岡さまは、聞いていたはずなんですよね。
鉄の一味に正体不明の3人目の殺し屋がいて、凄腕だということ。
あれは、ただの殺しではない。
一刀流の免許皆伝、剣豪のなせる技だということを。

その男が目の前にいる。
諸岡さまの最初の一撃は、はじかれている。
なのに諸岡さまは、そこに来てもまだ、主水がそんな腕の殺し屋だとはわかっていないように見えます。

徹底していたんでしょうね。
主水の昼行灯は。
第1話で「徹頭徹尾、手抜きで行きます!」宣言していましたが、本当にそうだったんだ。

あの、昼行灯宣言をして、主水は上司を斬った。
ここからまた、主水の仕置人人生が始まった。
そして最終回に、主水は再び上司を斬る。

剣之介は最後、滅多斬りとなったが、武士として剣を振るって死んだ。
「仕業人」の最後、主水は「仕業人」とは言わない。
武士である相手に対して、「中村主水だ」と名乗る。

これは、金をもらって恨みを晴らす「仕事」ではない。
私闘である。
個人的な果し合いである。

落とし前をつけに来たのだと。
あの名乗りは、そんな気持ちを表していたのかもしれない。
剣之介に自分を投影した主水は、殺しの世界から足を洗う。

「新・仕置人」の主水は、外道殺し屋の会を結成しようとする辰蔵のアジトに行く。
そして斬りまくる。
この間、主水は名乗らない。

人は最後に、大切な人のために動く。
最後に人は、お金や名誉のためには動かない。
人は人のために動く。

阪神や東日本の震災の時も思いました。
最後に、人は人のために動く。
正体はバレていない。
誰も主水のことは知らない。

なのに、主水は行く。
主水はただ、鉄のため、巳代松のために殴りこむ。
あれは主水の、仲間に対して辰蔵たちがしたことへの殴り込み。

そして今度こそ、すべてをなくす。
もう、自分を生かす場所もない。
自分の本当の姿をさらけ出せる仲間も、いない。

わかっていて主水は、せこい相手にせこい袖の下をせこくせしめて、もう誰も仲間のいない町を行く。
せしめた袖の下がいっぱいになったのを、主水はうれしそうに笑う。
この笑顔の下で主水はどれほどの無常感、虚無を抱えているのか。

それを抱えながら、退屈な日常に主水は戻っていく。
あれほど友人のために、壮絶な殺し合いをした主水が、それを微塵も感じさせない昼行灯に戻っていく。
だから、限りなく、「新・仕置人」の主水はカッコいい。
「新・仕置人」のラストは、胸に迫る。

ただ、死なせる。
斬りまくる。
それだけでは、あれほどのラストにはならない。


最終回前に死神の死、寅の会、仕置人世界の崩壊の序章を描いているだけに、最終回の世界の崩壊ぶりはすさまじい。
それに耐えて、日常に戻っていく昼行灯の主水の笑顔で、「仕置人」は幕を閉じる。
「仕置人」の鉄と主水の世界は、これで完結。
以降、鉄の話も巳代松の話も、全く出て来ないところが、大人の事情かもしれなくても、全く出て来ないところが!永遠のラストになっているのかも知れません。

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2016.04.14 / Top↑
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