こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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満開の桜の木の下

この桜の季節になると、思い出します。
桜が美しいドラマ。
そして、時代劇。

何と言っても思い出すのは、「必殺仕置人」の第2話「牢屋で残す血の願い」。
ものすごくギラギラした山崎努さんの鉄。
すがすがしい沖雅也さんの錠。
若さが抜け切らない藤田まことさんの主水。

抜け荷の罪を着せられて一家を滅ぼされ、女1人で身を張って復讐に望んだおしん。
おしんは最後の標的を前に復讐を果たせず、用心棒たちに辱められ、屈辱のうちに磔にされる。
血を吐くようなおしんの訴えに真実があることを確信しつつ、主水は奉行所では無力であった。

「何?」
主水から話を聞いた鉄は、目を丸くした。
「磔に決まった?おめえがついててそりゃ、どういうことだ」。
「どうしてあの女、助けてやらなかった。どうして、山城屋なんかに渡したんだ」。

「いや…、俺にはとても無理だ」。
主水の表情は、苦渋に満ちていた。
錠は怒っていた。

「まったく、奉行所ってのは、どいつもこいつも!」
「そうだ」。
主水は、錠の怒りを肯定した。
「だからおめえたちが、必要なんだ」。

殺しの現場に残った髪の毛から、鉄は件の殺しはおしんの仕業であることを見抜いていた。
それを危険に思ったおしんは鉄を誘惑し、殺そうと試みたが失敗した。
鉄はおしんに協力を申し出たが、おしんは鉄を信用し切れなかった。

確かに2人の殺しはおしんがやったが、越後屋殺しは自分ではない。
おしんの最後の標的・山城屋が越後屋を殺し、その罪をおしんになすりつけたのだ。
2人の同業者をおしんが殺し、越後屋も山城屋が殺したため、山城屋は1人、残って大もうけできる。

おしんはもはや、復讐を果たすことができない。
できることは、鉄に頼むことだけだった。
刑場に向かうおしんと、道にいる鉄の目があった。

おしんの家の桜の木の下に埋められていた仕置料は、鉄に渡される。
「おめえにはその意味が、よくわかるな?」
鉄は小判を握り締めた。

「どうする?どうするんだよぉ!何をもたもたしてるんだ!」
苛立つ錠に鉄は言う。
「騒ぐなって。くそお。おしんが一番、気が済むにはどうしたらいいか」。
「どう、山城屋を仕置きにかければ、思いが晴れるか」。

「うあああ」と、鉄は声をあげた。
「ちきしょう!ぞくぞくしてきやがった!」
そう言うと、鉄は首をすくめる。

桜の宴に、おきんが京都から呼ばれた芸者を装い、潜入する。
宴の中、用心棒に向かって主水は、越後屋の殺しについて、あれはおしんの仕業ではないことをほのめかす。

ばっさり袈裟懸けに斬られていた越後屋。
おしんに協力していた、元・おしんの店にいた使用人を、用心棒が斬った。
彼を斬った時の斬り口と、越後屋の斬り口は似ていた。

花札の勝負を挑んだおきん。
おきんがめくった花札は、桜だった。
これで桐が出たら、おきんの勝ちだ。

めくった花札は桐だった。
大豆の買占めと値上げを仕掛けていた商人4人は、花札の桜、桐、月、鶴に例えられていた。
おきんは、そのことを言っているのだ。

山城屋が叫ぶ。
「誰だお前は!」
おきんが山城屋の手をふりほどく。
「てやんでえ!」

「おうっ、山城屋!今夜は桐が消える番。おまえさん、死ぬ番だよ」。
「あばよっ!」
「誰だ、あれは!」
他の芸者は「あら、旦那が京都から呼んだんじゃないんですか!」と驚く。

棺桶を担ぎ、闇の中、半次が走っていた。
半次を鉄と錠が追い越して走る。
逃げるおきん。

走る錠。
走る鉄。
用心棒たちとともに、おきんを追う主水。

錠が先頭に出る。
用心棒の刃が、おきんの帯を切り裂く。
おきんが振り向きざま、桐の花札を投げる。
それが合図だった。

満開の桜の花びらが、雪のように降り注ぐ。
その闇と桜の中、錠が宙に舞う。
同時に用心棒の首を、錠の手槍が貫く。
鉄の指が、もう1人の用心棒にめり込む。

振り向いたままの、おきんが止まっている。
桜が狂ったように散り、降り注ぐ。
それ以外のすべてが、止まっている。
用心棒2人が、バタバタと倒れる。

やってきた山城屋が、鉄と錠を見て目を細める。
鉄が口を開く。
「おしんの恨み、晴らす」。

闇の中、浮かび上がった鉄の顔が笑っている。
こちらをにらんでいる錠がギリギリと、手槍を締め直して鳴らす。
「山城屋。おめえは抜け荷の罪を和泉屋に着せただけじゃねえ」。

「おしんが元締めたちを狙っているのを良いことに、残る越後屋源八を殺し、そいつをおしんの罪になすりつけた」。
「やることがちょっと、悪どすぎるようだな」。
「俺たちも頼まれなければ見逃したかもしれねえが、頼まれちまった以上、こっちも商売なんでね」。

「捕まえろ!」
山城屋が主水に、命令する。
主水は。おもしろそうな顔をしている。

ニヤニヤと笑い、頭をかいているが、動かない。
「捕まえんか!」
山城屋が苛立った声を出す。

「うわはははあ」。
鉄の哄笑が、闇に響く。
桜の花だけが、闇に白い。

「ははははは」。
主水も笑う。
鉄と主水の笑い声が響く。
主水が笑いながら言った。

「おめえを、な」。
「何い?!」
うわはははは。
鉄が笑う。

用心棒が動く。
おしんを陵辱した男だ。
主水が一太刀で斬り捨てる。

錠がジャンプし、残りの用心棒を相手に立ち回る。
手槍を突き刺され、用心棒が絶命する。
その怖ろしい光景を前に、棺桶を担いだ半次とおきんが身を寄せ合っている。
2人の顔は、やや、不安そうだった。

一仕事終えた主水が、息を吐きながら刀を収める。
山城屋が悲鳴を上げながら、逃げようとする。
笑い顔の鉄が、近づいてくる。

逃げる山城屋の背中に乗った鉄が、山城屋を膝まつかせる。
倒れた山城屋の背中を、鉄の革袋の指がなぞっていく。
ボキリ。
山城屋の背骨が、曲がった。


この一連の仕置きの場面の、桜の美しいこと。
鉄と主水の笑いの怖ろしいこと。
黒い笑いというが、まさにこの笑いが黒い。

笑い声に色がある。
黒い。
鉄と主水の笑い顔が、闇に浮かび上がる。

邪悪な笑顔。
後の「仕事人」シリーズでは見られない、主水の笑い。
怖さ。
不気味さ。

光と影の陰影のすばらしさ。
とても正義側の人間の描写では、ないです。
その中で、怒りの錠の清廉さが際立つ。

おきんが宴にすんなりと、潜入している。
これは、主水の手引きあればこそでしょう。
そのおきんの啖呵の勇ましいこと。
野川さんのおきんが大好きなのは、この啖呵です。

おきんが元締めになるシリーズって、見たかったな。
野川さん自身も言ってましたが、きっと周りを屈強な用心棒に守られ、本人は済ました顔でお茶なんか立ててる。
しかしいざとなると啖呵を切って、理不尽なことには怒りを露わにする。
見たかったな、おきんの元締め。


さて、不自由な体にされた山城屋は、飯を食べられない。
飢えた状態で放置され、目の前で飯をこぼされる。
耐え切れなくなった山城屋は、すべてを白状し、磔にされる。

ただ殺すより、エグイ復讐。
初期の「必殺」の、「仕置人」の中でもさらに初期の話。
荒削りで、洗練はされていない。
しかしパワーに満ちている。

桜の美しさと共に、この季節、必ず見たくなる。
白い桜と黒い笑い。
桜の嵐が彩る凄惨な仕置き。
永遠の名作。

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Comment

主水の青春
編集
こうやって後年に振り返ると、確かに初期仕置人には若さがみなぎってますね。
桜の下の主水の笑いは本当に印象的でした。
洗練される以前の豪快さ、善悪の狭間を愉しんでる怪しさがありました。
先々のことを見通したりしない、今目の前にある仕置きに熱中する高揚感。
まさに、主水の鉄の青春ドラマだったのですね。錠だけが若かった訳じゃない。

正義の実践という理想に破れた若き主水が、こんな裏キャリアがあったんだ、と発見した喜び。
鉄のゾクゾクと似てるが違う、主水なりのゾクゾクが、あの桜の下の笑いなんだと思ってます。

必殺も青春ドラマと呼べる時期があったのでしょうね。ちゃーすけさんの文章で再発見しました。
2016年04月13日(Wed) 19:46
kaoru1107さん
編集
>kaoru1107さん

こんにちは。

>こうやって後年に振り返ると、確かに初期仕置人には若さがみなぎってますね。

もう、ギラギラです。

>桜の下の主水の笑いは本当に印象的でした。
>洗練される以前の豪快さ、善悪の狭間を愉しんでる怪しさがありました。

すごく禍々しい笑いじゃないですか。

>先々のことを見通したりしない、今目の前にある仕置きに熱中する高揚感。

そうそう、もう、突っ走ってるところがあります。
主水は特によくわかりますが、この時は後の主水なら、やらないだろうと言うようなこともしてる。
若いなあ…と思います。

>まさに、主水の鉄の青春ドラマだったのですね。錠だけが若かった訳じゃない。

錠の真っ直ぐさは良く出ますが、主水も若い。
鋭いご指摘!
仕置人って、主水の青春だったんですね。

>正義の実践という理想に破れた若き主水が、こんな裏キャリアがあったんだ、と発見した喜び。
>鉄のゾクゾクと似てるが違う、主水なりのゾクゾクが、あの桜の下の笑いなんだと思ってます。

奉行所に正義はなかった。
婿に入った家でも、自分を活かせない。
でもこれがあった。
剣の腕も振るえるし、自分の正義も達成できる。
殺しだとしても、主水が自分の道を見つけた人間の喜びに満ちてます。
すごく楽しそう。

>必殺も青春ドラマと呼べる時期があったのでしょうね。ちゃーすけさんの文章で再発見しました。

おお、そうですね。
必殺にも青春期があったんですね。
仕置人はまさに、必殺の青春だった。
見ていて楽しいわけです。

コメントありがとうございました!
2016年04月16日(Sat) 23:53












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