根性の曲がった隠密廻り 第9話「一筆啓上偽善が見えた」。

主水の優しさが見える第9話、「一筆啓上偽善が見えた」。

大奥をモデルにした滑稽本を書き、お上の怒りに触れた作家・文蝶は手鎖の刑にされた。
手鎖で動けない文蝶の家に、2人組が押入る。
女房のおきくは乱暴されてしまうが、文蝶はこれを筆を折らない自分に対しての奉行所の仕業と考えた。
そしておこうに、この犯人の仕置きの依頼をしてくる。

文蝶に筆を折らせることを命じられている主水はこの依頼に渋い顔をするが、引き受ける。
女房のおきくは文蝶の本の挿絵を描いていたが、そのモデルが市松であった。
捨三が調べたところ、おきくの家に押入ったのは清太と三次というヤクザ者と判明。

だが再びおきくの前に現れた清太がおきくを誘うと、おきくはなんとその誘いに乗ってついて行ってしまった。
呆れた捨三が帰ろうとした時、おきくが殺される。
おきくは清太を自分の手で刺すつもりで、誘いに乗った振りをしていたのだった。
実は清太と三次に指図していたのは、文蝶に再び本を書かせようと尽力していた貸し本屋・孫兵衛だった。

孫兵衛は文蝶ら、お上にとって都合の悪い人間を見張る隠密廻りだったのだ。
しかし孫兵衛は隠密廻りの一方、売れっ子になった作家が増長しないようにひどい目に遇わせ、版元から金をもらっていた。
仕置屋たちが、動き出す。

三次は印玄が屋根から突き落とした。
そして、孫兵衛が文蝶に本を書かせている現場に、主水が踏み込む。
「その目つきや身のこなしは、只者じゃねえと踏んでたんだ」。

孫兵衛が、ため息をつきながら言う。
「文蝶さん、諦めましょう。運がなかった」。
孫兵衛に累が及ぶのを怖れた文蝶が言う。
「中村はん、わいが悪いんですわ。わいがこの人に頼んで、書いてもらいましたんや」。

「うるせえ!」
主水は孫兵衛に「立て!」と言う。
そして孫兵衛の懐から、十手を出す。
「何だ、こりゃ」。

文蝶が目を丸くする。
「ま、孫兵衛さん?!」
「文蝶、おめえも人が良すぎるぜ」。

主水はそう言うと「番所で訳、聞かせてもらおうか」と孫兵衛を連れて出て行く。
人気のない路地に来た孫兵衛は「てめえ、やっぱり昼行灯だな」と言った。
「俺を誰だと思ってやがんだ」。
「誰とも思っちゃいねえ。根性の曲がった隠密廻りだ」。

「何い!」
「やり過ぎ」。
主水は言った。
「やり過ぎだよ!」

孫兵衛は隠密の使う道具の紐を出すと、主水の刀の柄にかけ、刀を奪った。
その刀で主水を斬ろうとしたが、主水がそれより早く小刀を抜いた。
主水が孫兵衛を刺す。
取り返した刀で、今度は孫兵衛を上から斬り降ろす。

清太は孫兵衛に匿われた部屋で、文蝶の本を読んでいた。
「お、おもしれええ~!」
もう、夢中だった。
次々、ページをめくる。

「文蝶の奴、書きやがったなぁ!」
忍び寄る市松に、清太は気がつかない。
清太が見ているページに挿絵がある。
それはおきくが市松をモデルに描いた挿絵だった。

市松は清太の首筋に向かって、竹串を降ろす。
深く、首に刺す。
清太は文蝶の本に顔を押し付けて、息絶えた。

翌日、主水は与力の村野に今度の件を丸く治めたことで誉められていた。
だが、報奨を期待する主水に村野は「文蝶は筆を折ったのか」と聞いた。
「それまでお預けだ!」

褒美をお預けにされた主水は、女房の墓参りをしている文蝶に会う。
「町方にも、ええ人はおるんやな」。
主水を見た文蝶はそう言った。

今度の件は、文蝶に被害が及ばないよう、主水が収めた。
それを聞いた文蝶は「すんませんな。おおきにおおきに」と礼を言う。
「じゃあおめえ、筆折ってくれるんだな!」
「へい」。

「世の中は持ちつ持たれつだ!」と、主水が喜んだ。
だが次の瞬間、文蝶は「折らしまへん!」とキッパリと答えた。
「ええーっ」。
主水が思わず、顔をしかめる。


仲間同士の集まりといった感じから始まった「仕置人」、義兄弟の「仕留人」。
しかし「仕置屋稼業」の主水には、おこうという仲介役がいる。
だからプロとして、依頼人に感情を動かされながらも、立ち入ることをしないようにする。

さらには、市松という存在がある。
市松に対して、馴れ合いは許されない。
若い市松に対しては、大人としての対応をすることもあります。

確かに捨三とは旧知の仲のようですが、仕置屋としてかなり厳しく接することもある。
たまに捨三はぶっ飛ばされてますから。
この中で、印玄は潤滑油みたいなところがありますね。
そして主水は、依頼人に対して感情は動くが、立ち入りはしない。

文蝶は寺田農さん。
寺田さんが珍しく、コミカルな被害者役です。
この後、寺田さんは25話で今度は仕置きされる側を演じます。
同じ人とは思えないほど、軽く、飄々として悲しい。

孫兵衛は、長谷川明男さん。
隠密廻りとして、文蝶を懲らしめるために罠を仕掛けたんでしょう。
しかし版元からもお金をもらっていた。

これが単にずるい男…というより、文蝶という男を苦しめてやりたいからやったように見えます。
文蝶が嫌いなんじゃない。
成功した男が嫌い、憎い。

仲の良い女房との暮らしを壊してやりたい。
何だか、そんな風に見えるんです。
だから主水が「根性の曲がった隠密廻り」と言ったんじゃないでしょうか。
長谷川さんの不気味な演技が良いです。

主水の「やり過ぎ!やり過ぎだよ!」が、まるで「飲み過ぎ!」と言っているような軽さ。
その口調と「根性の曲がった隠密廻り」に軽蔑と怒りが見えます。
主水だって、ちょいちょいと袖の下を要求します。

でも役目を使って、人を苦しめるようなことはしません。
それは主水が最も嫌い、軽蔑する行為。
だからこの隠密廻りを、軽く扱ってやるんでしょう。
それでいて主水は、隠密廻りの技など通用しない腕を見せる。

自信満々の隠密廻りが、あっさり斬られる快感。
中村主水の情け深さ、それでいてそれを見せないところも含めて、カッコいい。
最後に筆を折らないと言われ、ガックリ来るところまで、緩急がきいています。

そして市松。
こりゃ、モデルにもなりますよ。
どういう人物のモデルかな。
隣に美女が描かれてるけど、やっぱり色男なんだろうな。


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