子供の頃見ていた番組なのに、大人になって、いろいろなことがわかるようになって見たらすごく切なかった。
そういう話は結構ありますが、これが「ウルトラマン」にあるから驚きです。
当時の製作者は子供の心に残って、考えてくれるきっかけになればいいと思って作ったんでしょうか。
子供と一緒に見ている大人に対して、作っていたんでしょうか。

以前にも書きましたが、「ジャミラ」という怪獣。
あれはほんと、大人になって、働くようになって見るとすごく切ない。
国際平和会議のために集まってきた世界のVIPが乗った飛行機が、次々襲われる。

見えない円盤による攻撃とわかった科学特捜隊によって、円盤が可視化される。
するとそこから現れたのは、ジャミラだった。
名は、国際平和会議にやってきたVIPの一人が、円盤から現れた怪獣を見て叫んだことからわかった。

ジャミラは怪獣ではなかった。
元は宇宙飛行士だったが事故により、水も空気もない惑星に放り出されたのだ。
各国による宇宙開発競争。

ジャミラは見捨てられた。
だがジャミラは生き延びた。
そのため、怪物化した。

自分を見捨てた国家に復讐するため、自分の宇宙船を改造し、地球にやってきたのだ。
ジャミラにとって、「故郷は地球」なのだ。
それを知った科学特捜隊のイデ隊員は叫ぶ。
「ジャミラは俺たちの仲間じゃないか」。

しかし「ジャミラの正体が知られないよう、怪獣として始末する」決定が下される。
ジャミラのやっていることは正当な復讐でも、巻き込まれるのは何も知らない、罪もない市民。
その市民生活が破壊され、犠牲が出る限り、ジャミラは排除されなければならない。

一般市民、それさえにも罪があると、ジャミラは言いたいかもしれない。
何も知らずに平穏に生活していることが、罪だと。
だがそれは現代の社会では、テロリストの論理に近い。

イデ隊員は叫ぶ。
人間の心を忘れたのかと。
それに反応したか、ジャミラは一度は去る。

しかし再び、国際平和会議の会場を襲う。
ウルトラマンがやって来る。
スペシウム光線ではなく、ジャミラはウルトラマンが放つ水流により倒れる。

命を育むための水は、怪物化したジャミラを溶かすものでしかなくなっていた。
水の惑星・地球。
故郷は地球なのに。
ジャミラはもう、水の惑星に住めない。

泥の中、溶けていくジャミラは泣き叫ぶ。
大地を叩き、足をばたつかせながら泣き叫ぶ。
そしてジャミラは溶けていく。
大地に拳を叩きつけ、足をバタバタさせて、溶けながら嘆き叫ぶジャミラ。

どこにも彼の行く場所はない。
ウルトラマンにも、科学特捜隊にも怪獣を倒した笑顔はなかった。
ジャミラの墓が建てられた。
墓碑には「人類の夢と科学の発展のために死んだ英雄ジャミラ」とあった。

イデ隊員は言う。
「いつでもそうだ」。
「文句だけは美しい」。

これはきつい話ですねえ…。
組織が個人を守らず、見捨てる時。
人はジャミラの気持ちがわかる。

会社のために、組織のために、やってきたのに。
いろんなものを犠牲にしてきたのに。
会社は、組織は、自分をあっさり捨てるのかと。

ジャミラは個人と国家の象徴でしたが。
誰かが泣き寝入りしなくてはならない時、それをどううまく収めるか。
納得させるか。
それが政治力だと聞きました。

自分を見捨てた国家に対する復讐、怨念でジャミラは生き延び、帰ってきた。
そして復讐を実行した。
結果、ジャミラは泥の中、泣き叫びながら溶けていった。
最期に、自分の国の国旗に手を伸ばそうとしながら。

逆らったら自分は怪獣で、ウルトラマンがやっつけに来る。
これを仕方のないことと、自分がジャミラになっても言えるだろうか。
納得できるだろうか。

自分は科学特捜隊じゃないし、ウルトラマンでもない。
ジャミラになる可能性は、誰にもある。
そう気づいた時、かつての子供はどうしたらいいか。
「子連れ狼」の拝一刀みたいに強くて、立ち向かって生き抜いていけたら良いんですけどね。


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2016.10.23 / Top↑
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