こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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破滅させてやるよ 「嘘の戦争」第1話(1/1)

プールサイドのパーティー。
仁科コーポレーションのパーティーだ。
顔面蒼白の我を失った五十嵐という男が、会長の興三に刃物を抜く。
左右にいる長男と次男が、父親である会長をかばおうとする。

だが五十嵐は、突進してきた。
そこに一人の男が立ちはだかった。
五十嵐のナイフは、その男に突き刺さった。
悲鳴が上がる。

事の起こりは1ヶ月前。
タイ、バンコクの夜。
ネオンの中、一ノ瀬浩一という男が歩いてくる。
女たちが笑いかけてくる。

猥雑さを漂わせる街の中、浩一は三枝という男を迎えに行く。
浩一は三枝を一軒の店に連れて行き、ここが今日から三枝の店になると言った。
店の中では、最小限の衣装を身にまとった女たちが腰をくねらせている。
その中の一人が三枝をじっと見つめている。

三枝に惚れたのではないかと、浩一が言う。
否定しながらも三枝は、ほおに浮かんでくる笑みを押さえられない。
浩一はキッパリと言い切った。
「俺、嘘は嫌いなんで」。

三枝はその女性を隣に座らせ、上機嫌で飲んでいた。
そこに警察が乱入してきた。
手入れだ!

警官は女たち、従業員を押さえつける。
浩一は三枝を裏口に連れ、走る。
公然と営業はしているが、一応、この店は非合法の売春をやっている。

三枝のことは絶対守ると言って、浩一は窓から三枝を逃がした。
後ろを振り返った三枝が見たのは、警察官に押さえつけられる浩一だった。
浩一は連行されていく。

レストランで三枝に「大変な目に遭いましたね」と言ったのは十倉ハルカという女性だった。
ハルカは、三枝が詐欺に遭ったのではないかと忠告する。
だが三枝は強く否定する。
浩一は良い人だと言う。

正直、800万円は痛かったが、良い投資をしたと思っている。
捕まったであろう浩一を三枝は心配している。
先ほどの店で、浩一が警察官たちといる。

そこに入ってきたのはハルカだった。
「成功!」
その言葉に、警察官も従業員も女性たちも歓声を上げる。

札束を警察官、女性たち、従業員に分ける。
そして「もっとおもしろそうなカモを探す」と言って、浩一は出て行った。
毒々しいネオンの中、浮かび上がる浩一瀬の顔。

突然、画面は青みを帯びたものに変わる。
「お父さん」。
子供が部屋に入ってくる。

お父さん、と呼ばれた男性は、口から血を流している。
目は宙を見つめたまま、動かない。
父親を押さえつけていたのは、黒装束に身を固めた2人の男だった。

1人は子供を押さえつけた。
その手には変わったアザがあった。
「ああああーっ!」
ナイフが、子供の胸の下に刺さる。

響き渡る悲鳴。
カッと見開いた目。
荒い息づかい。
浩一は、部屋で目を覚ました。

その胸の下には、傷があった。
窓に駆け寄る。
外はバンコクの街。
車の警笛が響く。

浩一はあるホテルのロビーにいた。
ハルカからLINEが入る。
「カモは、いた?」

浩一は辺りを見回す。
「カモだらけだ」。
そうLINEを返す。

一人の男とすれ違う。
何かが、浩一の足を止めた。
信じられないと言った表情で、振り返る。

たった今、歩いて行った男の手。
アザがあった。
変わったアザだった。
浩一が凝視する。

何かが浩一の中で、動き出す。
我を忘れ、まっすぐに男の方へ歩き出す。
「すみません」。
その男が立ち上がって歩いたので、浩一とぶつかった。

浩一は我を取り戻すことができた。
そして、男が落としたボールペンを拾って渡した。
すばやく、そのボールペンを見る。
ボールペンには慶明大学病院と、印字されていた。

「カモは見つけたの」。
ハルカのLINEに浩一は「ああ、見つけた」と返した。
外に出る。

たった今、自分とぶつかった男の背中を見送る。
男は雑踏の中、歩いて行く。
戻った浩一はハルカに「タイには戻らない」と日本に行くことを告げる。

日本は、捨てたつもりだった。
ハルカは驚く。
浩一は言う。

「全部忘れて、捨てたつもりだった」。
「でも違った」。
「30年たっても、はっきりと」。

押さえつけられる子供の浩一。
「あいつの手」。
「あいつの声」。
「楽しそうな顔して」。

ハルカが「誰の話?」と言う。
浩一は言う。
絞り出すような声で。

「取り返す」。
目に憎悪が満ちてくる。
「30年分の利息つけて」。
「あいつらにも地獄、見せてやる」。

一ノ瀬浩一、旧姓・千葉陽一。
子供の時、自分を除く家族、父母、弟を何者かに殺害され、本人も刺されて重傷を負った。
だが警察は一家心中と断定。
犯人を見て、刺されたという陽一に刑事は「嘘はいけないよ!」と言った。

陽一は30年後、一ノ瀬浩一という凄腕の詐欺師となっていた。
相棒は十倉ハルカという、妖艶な美女。
日本に戻った浩一には仲間に百田ユウジという詐欺師仲間がいた。
そして百田に紹介された、詐欺師修行中の八尋カズキという青年がいる。

子供の浩一、いや、陽一に、父親は言った。
「お父さん、嘘は嫌いだ」。
「だから陽一にも、嘘だけはつかないでほしい」。
「うん、約束する」。

父親は微笑んだ。
「良い子だ!」
「誕生日おめでとう」。

陽一の誕生日だった。
家族全員で、写真を撮った。
幸せな瞬間の写真。
それを見る陽一、いや、浩一。

ある日、浩一がまだ、陽一という子供だった時。
家に帰ってくると、家の中で父親が2人の黒装束の男に押さえつけられていた。
父親は口から血を流し、すでに目は宙を見つめたまま動かなくなっていた。
浩一が呆然としていると、男の1人が浩一を押さえつけた。

そこに「陽一、お父さんは」と言って母親が入ってきた。
「来ちゃダメだ!」
とっさに陽一は声を上げた。
部屋に入った母親は、声を上げるまもなく刺された。

続いて弟も。
「やれ!」
陽一を押さえている男に向かって、もう1人の男が命令した。
声にならない声を出しながら、五十嵐は浩一を刺した

30年前、浩一の家族を殺害した2人組の1人は手のアザから、間違いなく五十嵐だろう。
だがなぜ、浩一の家族は殺されなければならなかったのか。
五十嵐を調べていくと、仁科興三という男が浮かび上がってきた。

仁科興三は、30年前、瀕死の状態の会社を奇跡のように建て直し、今は仁科コーポレーションの会長となっている。
長男の二科晃は、子会社の社長。
本社を継いでいるのは、次男の二科隆。

母親が違う妹の二科楓は、慶明大学病院の医師だ。
浩一は、ハルカと組んだ芝居でケガをし、楓に近づく。
さらに病院の外から電話をし、楓を待っていると告げた。
だが楓はその時、患者の容態が急変したため、何時になるかわからないので浩一には会えないと言った。

患者の状態が安定した楓は、浩一が気になる。
雨が降っていた。
外を傘を持って出た楓は、浩一がぬれながら自分を待っていたことを知る。
慌てて病院に引き入れた浩一に、タオルを渡した。

このままでは、風邪を引く。
処置をされた浩一が、横になる。
浩一は眠ったように見えた。

その時、「嘘つきって言われた」と浩一が言う。
「一ノ瀬さん?」
楓が声をかける。

浩一は寝言を言っているのだろうか?
「本当の話をするたびに」。
浩一の顔は、悲しみに満ちていた。

楓は戸惑う。
「どうすれば良かった?俺は」。
「嘘をつく以外」。

浩一は経営コンサルタントとして、晃にも近づく。
そして300万円の儲けをさせてやった。
だが次男の隆だけは、浩一を信用しない。

ハーバード大学の卒業名簿を見て、一ノ瀬浩一という名があることを確認する。
一ノ瀬浩一とは、ハーバード大学の卒業生に実際にいる人物だったのだ。
陽一はその名前を名乗っているのだ。

しかし、それだけではまだ、隆の浩一への疑いは晴れない。
NYの浩一の会社に電話をして、会社が実際に存在することを確認する。
間一髪、その電話には渡米したハルカが出ることができた。
ペーパーカンパニーと疑っている弟に、兄は軽蔑のまなざしを送った。

浩一は手始めに、五十嵐を破滅させることにした。
病院に巧みに入り込み、五十嵐の部屋に忍び込む。
パソコンのデータを盗み、盗聴器を仕掛ける。
そこでわかったことは、五十嵐がタイで未成年を買春していることだった。

さらには業者からリベートの受け取りもあり、ヤミ金からの借金もあった。
五十嵐の自宅に、五十嵐が未成年を買春していると書かれたファックスが入る。
教授選に関わる嫌がらせだと、五十嵐はごまかした。
ついに浩一が、五十嵐の前に現れる。

浩一が現れたことに、五十嵐は動揺した。
30年前、五十嵐は仁科興三の言うとおりに動いた。
五十嵐は、興三の秘書の七尾伸二に浩一が現れたと知らせた。
だが七尾は、千葉陽一が今、オーストラリアにいる、証拠を突きつけてきた。

七尾は「教授選のために、資金が必要なようですね」と言う。
「昔のことを楯に、会長に…」。
「違う!」
興三は昔のことを楯に、五十嵐が脅してきたと思っているのだった。

五十嵐が病院の自分の執務室に戻ると、買春の写真が壁一面に貼ってあった。
追い詰められた五十嵐が浩一の呼び出しに応じて、屋上にやってきた。
「君は一体誰だ」。
隠し口座を含む、リベートの受け取りまで浩一は握っていた。

「何が望みなんだ!」
「この口座は何?」
隠し口座の証拠を突きつけられた五十嵐の顔色が変わる。

浩一の口調が変わる。
「認めろよ」。
ほとんど、凶悪犯のような口調だった。

「俺は嘘なんかついていなかった」。
「嘘で騙したのは、お前らの方だ」。
「認めて謝れ」。

「俺の親父に」。
「家族に!」
全身から憎悪と、憤怒と、残忍さが噴出してくる。

五十嵐は浩一の前に膝を折り、悪かったと詫びた。
「借金があったんだ」。
「全部チャラにしてくれるって言ったんだ」。

「仁科興三か。やっぱりあいつか」。
「何で俺の家族を」。
「知らない」。
「そんなはずないだろう」。

「ただ、君のお父さんは気づいてはいけないことに、気づいてしまったんだ」。
「気づいた。何に」。
「みんなにとって都合の悪いことだ」。
「みんなって誰だ」。

「わからないんだよ」。
「おとなしく彼らに従っていれば良かったんだ」。
「君のお父さんは」。
「だから、君たちがいない時を狙って僕がお父さんを訪ねて」。

陽一の父親に、ドアを開けさせたのは、同じ病院にいた五十嵐だった。
しかしそこに、浩一たちが帰ってきてしまった。
「だから殺したのか」。
「弟まで」。

「違う!殺したのは私じゃない!もう一人の男だ」。
「名前は!」
「仁科会長の部下としか」。

「すまない。本当にすまない」。
「嘘をついたのは君じゃない。我々の方だ」。
「許してくれ。頼む。この通りだ」。

五十嵐は土下座をしていた。
這いつくばって、浩一に許しを請う。
「もう、遅いよ」。
「業者からの不正献金の記録、病院と税務署に送った」。

五十嵐は絶望の叫びを上げた。
破滅だ。
次期教授どころか、全てを失うのだ。

「だからなんだ」。
浩一の声はあくまで冷徹だった。
「俺は30年前、嘘をつくまで病院からも出られなかった」。

「本当のことを言うたびに嘘つきと呼ばれて。
「何度も何度も刑事に呼ばれた」。
「親戚たちからも繰り返し、本当のことを言えって」。

「嘘はいけないよ、陽一君」と刑事は言った。
「君を刺したのはお父さんだよね」。
「そうなんだよね」。

子供の陽一は、ベッドに横たわっていた。
「はい」。
そう言うしか、なかった。
「お父さんでした」。

その時、彼の心の中で歯車が止まった。
「あの日、俺は悔しくて泣いた。泣きながら思った」。
「どうせ嘘ばかりつくのなら、騙す側の方になってやるって」。
「騙して騙して徹底的に騙し抜く」。

五十嵐に向かって、「お前は教授になれない」と浩一は言った。
「ヤミ金業者が金を回収に来るのも、時間の問題だ」。
「仁科に余計なことを言ったら」。

言わないと叫んだ五十嵐に浩一は言った。
「あの写真マスコミにばらまいてやるよ」。
「30年前何があったのか、仁科の口からじっくりと聞いてやる」。

「必ず、聞き出す。仁科興三本人の口からな」。
怒りと恨みが、浩一の瞳の奥に燃えていた。
「破滅させてやるよ」。

ゾッとするような、冷たく悪意に満ちた声だった。
「俺が味わった地獄を全員に見せてやる」。
感情が入れる隙間はなかった。
「お前らの地獄は、ここからだ」。

浩一を完全に信用した晃が、会長である父親の興三に紹介するため、浩一をパーティーに呼んだ。
パーティーで楓に挨拶する浩一を見て、隆は驚愕した。
妹の楓とも浩一は知り合いなのか。
巧みに兄の信用を得、妹にも近づいている浩一に対して、隆は警戒心をあらわにする。

浩一の耳元で、隆は囁く。
「いつか、お前の嘘を暴いてやる」。
すると浩一は、抑揚のない声でこう、返した。

「僕、嘘嫌いです」。
隆も言う。
「私もだ」。
2人は離れていく。

浩一は楓に向かって「先生、腕良いよね」と言った。
「こないだ処置早かったし」。
「それが何か」。

「ううん、別に。ただ、そばにいてくれたら心強いなと思って」。
「?」
楓が不思議そうな顔をする。

その時、弁護士を装ったハルカにつれられた五十嵐がやってくる。
このままでは、五十嵐は破滅させられる。
だが浩一が興三の前にいるのを見た五十嵐は、パニックを起こす。

「何であいつがここに」。
ハルカが眉をひそめる。
「嫌な予感がします。あの人、あなたに全ての罪を着せようとしている…」。

「あなたは完全に破滅する」。
「悪魔はこの世から消し去らないと…」。
「破滅」。

五十嵐が繰り返す。
「そう、破滅」。
ハルカの言葉に、五十嵐は錯乱した。
近くのテーブルにある果物ナイフを手に取る。

ハルカが、それを見つめる。
ふらふらと歩いて行く五十嵐。
ちらりと浩一が、周りを見る。

そして「一ノ瀬です」と興三に名刺を渡す。
「私はコンサルタントという連中に興味がない」。
興三が名刺を放り出すように置いた。
悲鳴が上がった。

魂が抜けたような、五十嵐がやってくる。
手にはナイフ。
楓が「五十嵐先生どうして」と驚く。

言葉にならない叫び声を上げて、五十嵐はナイフを振りかざした。
晃も隆も、興三の前に出て、かばおうとする。
その時、2人の前に浩一は出た。

五十嵐の突き出したナイフは、浩一に刺さった。
浩一は仰向けに、プールに落ちる。
水しぶきが上がる。

これには隆も、仰天した。
冷たい目をして、ハルカが去って行く。
浩一はプールに沈んでいく。
沈みながら、浩一は心の中でつぶやく。

「お前らにも」。
「見せてやる」。
「俺がいた地獄を」。
「今度は俺の嘘で」。

浩一は、目を見開いたまま沈んでいく。
その目には、何も映っていないようだった。
「俺の嘘で」。
「地獄を見せてやるよ」。

浩一の胸に、ナイフは刺さったままだ。
「誰か助けて!早く!」
楓の声で、人が助けに入る。

プールから浩一をあげる。
「一ノ瀬さん、わかります?」
意識がない浩一に、楓が呼びかける。

「救急車呼んで!早く!タオル持って来て!」
楓が叫ぶ。
興三が両脇を守られ、会場を出て行く。
「私をかばったのか」と言いながら。

浩一は意識を失っている。
だが、その時、隆は見た。
「なぜだ」。
隆は言う。

「なぜ笑う」。
浩一は、目を閉じていた。
そして、うっすらと笑みを浮かべていた。


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