こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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一番怖ろしい 「鬼畜」(1/3)

「太陽にほえろ」という刑事ドラマの、何の回だったかはわかりません。
怖ろしい犯罪を犯すのは怖ろしい男とは限らないという話になります。
露口茂さん演じる山さんが言ったのかな?

石原裕次郎さんが演じるボスの、一番怖ろしい犯罪は、とても気の弱い男が犯した事件だった…。
そう言うんです。
この「鬼畜」という映画を見た時、この言葉が浮かびました。
タイトルの「鬼畜」という文字がもう、怖いです。

岩下志麻さんと小川真由美さんの対決が、すさまじいです。
78年の作品ですが、岩下志麻さんはこの後、「疑惑」で桃井かおりさんともバチバチに対決します。
極妻なんかより、怖いです。

昭和の家。
縁側があって、引き戸がある。
そこで楽しそうに遊ぶ小さな兄妹。
座敷には赤ん坊がいる。

だが母親は、イライラしている。
母親の名前は、菊代。
小川真由美さん。
やがて「利一!良子!出かけるよ!」と声をかけると、菊代は赤ん坊の庄二を背負って出ていく。

緑の小さな木がずらりと生い茂る道を通っていくと、男衾という駅に着く。
子供が「電車」「電車」「お母ちゃん、電車だよ」とはしゃぐが、菊代の硬い表情は崩れない。
4人は川越駅に到着する。

昭和の駅前。
電話ボックスが2つ並んだ駅を通ると、昔の面影を残す立派な瓦屋根といった日本家屋の商店がつらなる。
畳屋の前で、職人が畳みを縫っている。
人に道を聞いてやってきた先には、小さな間に合わせのプレハブ小屋が建っていて、「竹下印刷」という看板が出ていた。

利一が「だれんち?」と聞く。
「ここ、火事になったんだね」。
その言葉通り、印刷機が回っているプレハブ小屋の隣の土地には、炭のようになった柱が無残にも残っている。

着物姿で汗ばむ首筋を手ぬぐいでぬぐう菊代。
ラーメン屋で食事をした菊代は、竹下印刷へ向かった。
菊代を見てぎょっとした顔をしたのは、従業員の阿久津だった。
蟹江恵三さん。

「います?」
仕事をしていたお梅が、「どなた?」と聞く。
階段から主人の宗吉が、降りてくる。
緒形拳さん。

利一が「父ちゃん!」と言って抱きつく。
うろたえた宗吉は、菊代を表に連れ出した。
お梅の目が鋭くなる。

阿久津に「誰?」と聞くと阿久津は「さあ」と首をかしげる。
「とぼけてるね!さあって顔じゃなかったよ!」
外では、宗吉と菊代がもめていた。

「お金の都合がつかない?それでほっとくんですか!」
「明日。明日必ず出かけていくから。金の都合のつく当ても、あるんだ」
「今までほっといて、どうして急に当てができるのよ!いい加減なこと言わないでよ!」

子供が菊代に「帰ろうよ」と言う。
だが菊代は「どうすりゃいいのよ~!」と言って、泣き崩れた。
するとお梅が来て、腕組みをしながら「あんた、みっともないよ、ご近所に。うちの中入ってもらいな。泥棒猫じゃあるまいし、台所じゃなくたってかまわないだろ」と言って引っ込む。

キッとなった菊代は「利一、良子いらっしゃい」と言って、中に入る。
「よせよ。よせよ!」
宗吉が止める。
「はっきり話つけんのよ!」

家に入った菊代は「宗吉のお世話になっている菊代と申します」と言った。
「こちらのお世話になって7年になります」。
お梅はジロリとみると「鳥料理屋でだって?」と言った。
「ええ。女中してました」。

「歌がうまくて良い声だったってねえ?」
「ばかばかしい、何の話してんだ」と宗吉が気弱に笑って言おうとすると、「黙ってなよ!」とお梅が怒鳴る。
「人を7年もだまくらかしてて。ちゃんと聞かせてもらおうじゃないの!」

子供の母親は菊代と言って、千鳥という料理屋で女中をしていた時、宗吉の愛人となった。
宗吉の接待の手際の悪さを見ていられなくて、いろいろと世話を焼いたのがきっかけだった。
料理屋はちゃんとした料理屋だと言う菊代に、お梅は「どうだか」といかにもバカにしたように言う。
すると菊代は、先に手を出したのは宗吉だと、なれそめを語った。

菊代を押し倒した宗吉に菊代は「本気なの?真剣なの?私、誰ともこういうことしていないのよ」と言った。
「真剣、真剣。お前のこと考えてる」。
菊代が店をやめたのは、利一ができたからだった。
「どうしようかって相談したんだわ」。

相談された宗吉は「本当に!」と目を輝かせた。
「ここで働けないわぁ」。
「俺に、子供が」。

宗吉は目を輝かせ、「良いとも。生んでくれ!」と言った。
「俺、子供ほしかったんだ」。
喜びを隠せず、宗吉の体中が弾んでいた。

「そいじゃ、うちも持たせてくれんのよね?」
菊代が聞いた。
「良いとも、俺に、まかしてくれ!」

宗吉は確かにそう言ったのだ。
「子供が好きだ、できたなら生んでくれって。2番目の良子の時も庄(庄二)の時もそうでしたよ」。
でも菊代は、ぜいたくに囲われていたわけじゃない。
7年間、親子が食べる分しかもらってないと言う。

「それがこの頃、食べるのさえ苦労して」。
宗吉は、店が火事になり、大手の会社が機械を一斉に入れ、得意先もとられて一気に苦しくなったと言った。
「でもこうやって、ちゃんと所帯持ってるじゃないの。お腹すかせてる子供食わせるぐらいのもの、持ってこられないってことあるかしら!」

菊代の声は、悲鳴のようだった。
「子供生んでくれ、好きだって、一生面倒見るって言って。あれはみんな嘘だったのよね!」
お梅がいらいらして、うちわを使う音が響く。

「すまない。俺が、みんな悪かった」。
宗吉が頭を下げる。
「そんな簡単に謝んないでちょうだいよ!」
菊代が、ヒステリックに叫ぶ。

お梅がうちわを叩きつけ、立ち上がる。
宗吉を狂ったように、殴りつける。
3人の子供は、呆然と見ている。

「あんたなんか!あたしが一緒にならなかったら、ただの渡り歩きの職人だったんじゃないか!」
「ろくな給金取れなかったくせに!」
「この店だって、あたしが一緒になったから持てたんじゃないか!」
「よくもまあ、女を囲ったりできたもんだ!」

菊代のほうを向いたお梅は「7年間騙されてたのは、あたしの方なんだ!」と叫んだ。
「何だい!こんな女に大きな口叩かれることはないだろ!ええ!しっかりしなってばあ!」
宗吉がお梅に突き飛ばされて、菊代に当たる。

「こんな女って、どういうこと?」
菊代の目が吊り上がった。
「トルコにでも行って働けば、ピッタリだってこと!」
「奥さん!あたしは商売女じゃないよ!」

「どうかしらね、ほんとに、あんたの子かしら」。
「え?」と、宗吉が言う。
「3人とも、あんたの子かっての!」

「…何言うの」。
「うちの人に聞いてんのよ!」
宗吉は、呆然と黙っていた。

今度は目をむいたのは、菊代だった。
「あなた。何黙ってんのよ!ちゃんと言ってちょうだいよ、あんたの子が疑われてるのよ!」
「お、俺の子だよ…」。
宗吉はそう言って、弱々しく子供たちを指さした。

「へええ。月に三晩も泊まってないはずなのに、ほんとにあんたの子お?」
お梅の茶化すような口調に菊代が「それがどうしたのよ!」と怒鳴る。
「もうやめてくれよ!子供が聞いてるじゃないか!」

さすがに宗吉も、悲鳴を上げた。
良子が菊代の着物をつかんで、「おかあちゃん帰ろうよ」と言う。
「電車がないのよ、もう。歩いて帰れないでしょ」。
邪険な声だった。

「帰ろうよ」。
「帰れないのよ!わかんない子ね!」
菊代に怒鳴られて、良子が泣き始めた。

宗吉が「お腹すいてんじゃないのか」と言う。
「ラーメン食べたよ」と、利一が言う。
菊代が子供を凝視する。
その後、目が、左右に動く。

「わかりました…」。
「あんた、あたしを騙したんだ。こんな男にくっついたばっかりに、あたしはこんな目にあわされて」。
「今夜そのつもりじゃなかったけど、ちょうど良かった。奥さんにも聞いてもらえたし」。

「決まりをつけて、スカッとしようじゃありませんか!」
「スカッと…。スカッとって何?」と、宗吉が言うと菊代は「もう、たくさん!」と怒鳴る。
「責任とってもらいますからね。あたしはこの通り、子供3人抱えた働くにも身持ちつかないんだし」。
「貯金なんて1円もないんだし!そこんところを考えてくださいね!」

お梅が「うちだってね、火事からそっち、余分な金なんかありゃしないよ!」と言う。
宗吉に「あんた、人から借りてくるなり泥棒するなり片つけるんだね!」と言う。
「話つくまであたし、ここを動きませんからね」と菊代も言う。

「ああいいよ。その代わりね、うちは夫婦もんでね。蚊帳ひとつ貸したげられないよ!」
そう言うと、ちゃぶ台を片付け、布団を敷き始める。
放り出された布団は、菊代の膝の上に置かれる。

夜。
戸の向こうにいる菊代が、団扇で仰いでいる。
首をかく。
せわしない、パタパタという音が響く。

宗吉が寝床の中で、動く。
菊代のいるほうを見た時、首筋を抑えた。
お梅が宗吉を、にらんでいる。
その手には、カミソリ。

カミソリには、血がついている。
お梅は反対側に寝返りを打った。
戸の向こうから、くくく、ははははと笑い声がする

「あっははははは」。
ガラッと戸が開く。
「鬼畜生っ!」

菊代が怒鳴った。
「それでも人間か!」
「ちゃんとわかってんだよ」。

菊代の顔が、ゆがむ。
「何、あんたが頭来てんだか。言ってあげようか」。
いかにも意地悪そうな、残酷そうな表情が浮かんだ。
口調は楽しそうだった。

「あんた、自分じゃ生めなかった子が3人もできたんで、あったま来てんじゃないのぉ!」
「あーはははは」と、菊代がヒステリックに笑った。
そして「亭主は帰してやるよ!」と、野太い声で怒鳴った。

「大切に金庫にでも、しまっておきな!」
「その代わりこの子供たちは、この男の子供だからね」。
「このうちへ置いてくよっ!」

言った途端、菊代はものすごい勢いで出ていく。
思わず宗吉が跳ね起きる。
お梅が止めようとするが、振り切って宗吉は菊代を追う。

外に飛び出したが、菊代の姿はすでに見えない。
駅に走るが、終電が出た後の駅は明かりも消え、がらんとしている。
「子供。子供?」
ステテコ姿の宗吉は、無意識につぶやいていた。

呆然として戻ってくると、子供たちが疲れ切ったように眠っている。
利一、良子、庄二。
暗い家の中、お梅が手にライトを持ち、子供に当てる。

じっと、3人を見る。
宗吉を振り向く。
ライトに浮かびあがるお梅の形相。

「あんたの子だって?」
お梅の声は妙に静かだった。
「…似てないよ!」
そう言うと、お梅はライトを乱暴に置き、部屋に入った。

翌朝、宗吉は子供たちを連れて、男衾の家に行く。
蝉の声が、うるさいように響く。
良子が走って、縁側の戸を開ける。

「ママ、いないの」と言う。
「買い物行ってんじゃないのか」。
子供たちのおもちゃが、乱雑においてある。
利一と良子が、息を詰めて見つめている。

隣の主婦が預かってるものがあると、言いに来た。
近所の奥さんたちによると、今朝早く、菊代は運送屋を連れてきて、あっという間に荷物を運び出して、引っ越してしまったのだと言う。
菊代の実家は山形だが、もう誰もいないはずだし、どこに行ったのかわからない。
近所の人は、置いて行かれた子供が不憫だと気の毒がった。

利一が庄一に、オルゴールを持たせてやる。
庄二が宗吉の背中で、うれしそうな顔になる。
オルゴールが鳴る。

家まで戻った宗吉は窓から、働くお梅を見て中には入れなかった。
近所の小さな遊園地に行き、宗吉は利一と良子を小さな汽車ぽっぽに乗せる。
汗をぬぐう。

乗り物に乗せる。
父ちゃん、父ちゃんと、利一と良子はうれしそうに手を振る。
アイスキャンデーを買うと、宗吉はもういっぺん乗ってこいと言う。

「もう、良いよ。お金取られるよ」。
「おうちに帰ろうよ」。
宗吉はママは遠いところに行っちゃったと、説明した。

「3人で一緒に、父ちゃんの家で留守番だ」。
「ママ、帰って来るよね」と良子が言う。
「父ちゃんちの、おばさん、知ってるな?あのおばさんが、ご飯作ってくれたり、お洗濯してくれるから、みんな、良い子でおとなしくしていられるな?わかったな?」

レジャーランドの外に、鏡がある。
利一と良子が自分たちを映して、おもしろがる。
縦に長かったり、横に広がっていたりする姿を見て、2人は楽しそうに笑った。

「あんたの子だって?」
お梅の声が、よみがえった。
「似てないよ」。

家に戻った宗吉にお梅は「全くうまいこと、押しつけてったもんだね。他人様の子を3人も」と言った。
「お、俺の子だよ」。
お梅は鼻で笑って「あんたは全く人が良いねえ。今時、金で買われるような女が、1人の男で満足できると思ってんの?」と言う。
「あの女は、あんたより役者が上だわよ」。

「昨夜、3人連れて乗り込んできた時から、ちゃあんと、筋書きはできてたんだよ」。
「でなくて、こんな手はずができるもんか」。
そう言うと宗吉に向かって、「言っとくけどね、あたしは他人が生んだ子の面倒なんて金輪際見ませんからね。あんた勝手におしよ」と言った。

その時、庄二がおしっこをした。
宗吉はあわてて床を吹き、おむつを替える。
その姿を見たお梅は「お似合いだよ。写真でも撮っといたらどう?」と嘲笑った。


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「鬼畜」昔は意味も分からず息をのんで見ていました。大人になってからは妻の気持ちも愛人の気持ちも汲めるようになり、この記事の会話なんて空恐ろしいです。(笑)でももう一度見返してみたいですねえ。
2017年02月04日(Sat) 10:26
はらみさん
編集
>はらみさん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>「鬼畜」昔は意味も分からず息をのんで見ていました。

あの迫力で、嫌でも引き込まれていきますよね。

>大人になってからは妻の気持ちも愛人の気持ちも汲めるようになり、この記事の会話なんて空恐ろしいです。(笑)

ひたすら怖かった岩下さんのお梅の気持ちもわかるようになりました(笑)。
男性にとっては最悪ですよね(笑)、絶対こんな事態は避けたいですよね。
この修羅場。

>でももう一度見返してみたいですねえ。

さすがの俳優陣です。
でも精神状態が良い時に見るほうが良いと思います…。

コメントありがとうございました。
2017年02月05日(Sun) 01:30












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