こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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地獄だわ 「鬼畜」(2/3)

出入りの業者にもお梅は、「見てよ、あの3匹」と言った。
「あれがうちの亭主が、よそでこさえてきた、こ・ど・も!」
小さな庄二が泣いた。

お梅が「うるさいね、泣かすんじゃないよ!ぐずぐず食べてないで2階行きな!」と怒鳴る。
歩いて行く利一が、お梅にぶつかった。
「こら、どこ見て歩いてんだよ!」

お梅が手をあげると、利一がさっと顔をかばった。
顔をかばった手の間から、お梅を見る。
「何だよその目は」。

そう言うと、お梅は利一の耳を引っ張った。
「いたあい」。
「どうしたんだ」。
宗吉が飛んでくる。

「性悪だよ、こいつ!見て、この目つき!あの女にそっくりだ!」
庄二の泣き声が響く。
「まったくうるさいったら、ありゃしない!」
「じゃあ、あたしはこれで」と、業者が腰を上げた。

「新規の、とってきてよ」と、お梅が言う。
「良いのかね、あんな値段で」。
「うちはね、今は際どい値段じゃなきゃ、おっつかないの!」

業者が帰った後、利一と良子は2階で絵を描いていた。
それを見たお梅は「商売用の大事なケント紙!」と言って、利一をバシッと叩いた。
「いたぁい、いたぁい」。
階段下に利一の声と、お梅の叩く音が聞こえてくる。

「いたぁい、いたい」。
「こんちくしょう!」
宗吉と阿久津が、階段下から上を見ている。
阿久津が「地獄だねえ」とつぶやいて、仕事に戻る。

この日から、子供たちの地獄が始まる。
長い付き合いの得意先を失って不機嫌なお梅が、家の中に入ってくる。
座敷の奥には、ちゃぶ台が置かれていた。

赤ん坊の庄二が、味噌汁が入っていた椀を炊飯器にむけてあけている。
無邪気な、いたずらだった。
だが、それを見たお梅の形相はものすごいものに変わった。

宗吉が銀行から融資を断られて戻ってくると、お梅のヒステリックな声と庄二の泣き声がする。
「早く食べたきゃ食べろよ!ええ!食べたいんだろう!食べりゃいいだろう!」
お梅が正二を抱きかかえ、口の中にご飯を詰め込んでいる。

宗吉がかばんを落とし、「どうしたんだ」と駆け寄る。
「甘やかすからいけないんだ!」
お梅はまた、ご飯を手に取る。
「こうやらなきゃ、骨身に堪えないんだ!」

そう言うと、ぐいと子供の口に、手につかんだご飯を詰め込む。
「やめろよ、お梅。よせ、よせったらよせよ」。
「食べたいんだろう、もっと。食べりゃいいんだ、ほれほれ」。
庄二が、泣き声をあげる。

宗吉はただ、お梅にすがるようにオロオロとするだけだった。
「よせよ」。
子供の口には、すでに白いご飯がいっぱいになっている。
髪にも、ご飯がついている。

阿久津が飛んできて、お梅の手から庄二を奪う。
「何しやがんだ!」
「しっかりしろよ!旦那の子だろ!」

そう言うと、庄二を宗吉に手渡す。
「あたしに、あてこすりかい」。
睨むお梅から目をそらすと、阿久津は仕事に戻る。

この時から、宗吉は赤ん坊の庄二は背負って仕事に出ることにした。
自転車で戻ってきた宗吉はお梅の「こら、まちな!」という声を聞いた。
「またか、どうしたんだよ」。
「どうしたんじゃないよ!」

お梅は紙を、宗吉の前にかざした。
「試し刷りのやり紙だよ、俺がやったんだよ」。
「このガキ、何にも言わないのに、あたしが寄ってったら、いきなりこうなんだよ!」

利一がお梅の前に、紙を遮るようにかざしたと言うのだ。
「どうだろう、あの女そっくりだよ!」
「利一!おばちゃんに謝れ!」

だが、利一は逃げた。
「言うこと聞けないのか!」
宗吉が追いかける。
利一は逃げ出す。

いつか父親と行った遊園地の前の鏡に、利一は自分を映している。
後から良子が来て、2人で遊ぶ。
公園に行き、2人は遊ぶ。
利一は、裸足だ。

その夜。
宗吉が寝ているところに、利一がやってくる。
「父ちゃん、起きてえ」。
「何してんだ。夜中だぞ」。

「庄二が」。
「あぶく吹いてる」。
「うるさいねえ」と、お梅が寝返りを打つ。
「いっそ首でも絞めてきたら。何とかしておくれよ」。

宗吉は、医者に駆け込んだ。
医者はいつからこうなのか、と宗吉に聞いた。
「さあ?は、困るね。昨日今日じゃない。栄養状態も悪いね。慢性の胸郭炎」と医者は言った。
「小さい子には、命取りになる」。

診察室から出た宗吉と庄二を見た利一と良子は、「庄ちゃん」「庄ちゃん」と駆け寄ってきた。
宗吉は庄二のミルクを温め、哺乳瓶に入れた。
庄二に飲ませているとお梅が来て、「ワッペンのあがり持ってかなきゃ」と言う。
「わかってるよわかってる」。

庄二に飲ませ続ける宗吉に「今、回してるカレンダー、赤が強いんじゃないの」と言う。
「阿久津は?」
「どっかに引っかかってんだよ」。
それでも庄二から離れない宗吉に「面倒なったって知らないよ!」と怒鳴って、お梅は出ていく。

宗吉が風呂場で、洗い物をしている。
お梅が邪険に、良子を引っ張ってきた。
「全くこの子の頭ったら臭いったら、ありゃしないよ!」

「洗濯機の中に放り込んでやりな!」と言って、頭から洗剤をかけていった。
宗吉は洗ってやるよと言って、泣きべそをかいている良子の頭から洗剤を払う。
「おばちゃんのそばに行っちゃ、ダメだって言っただろう」。

利一は焼け跡に座り込み、がれきでアニメソングを歌って遊んでいる。
「お兄ちゃん」。
良子がやってくる。
2人で、がれきの中に座る。

公園でがれきから出した印刷に使う石板を投げ、2人は遊ぶ。
夕方になり、母親たちが子供たちを迎えに来る。
次々、子供がいなくなる。
それでも2人は遊んでいる。

洗濯物を干し終わった宗吉が、家の中に入る。
宗吉はなぜか、2階が気になる。
カタンカタン、機械の音が響く。

宗吉が、階段下から上を見る。
お梅がいない。
宗吉は、階段を上っていく。

お梅が、2階の棚をごそごそ探り、探し物をしている。
ばさばさ。
下に物が落ちる。

その下で、庄二が寝ている。
庄二の上にビニールシートが乗っている。
お梅がシートを、拾い上げた。

宗吉が、じっと見ている。
「何よ」。
お梅が睨む。
庄二が、えっえっと泣いた。

「何さ!」
お梅にすごまれた宗吉が、去る。
宗吉がいなくなった後、お梅はじっとシートを見る。

「大将、ちょっといいですか。俺、いろいろ考えたんだけど」と、阿久津が宗吉に声をかけた。
言いにくそうに「やっぱり、やめさせてもらおうかと…。災難続きの時に、申し訳ないんだけど」と言う。
だが宗吉は、聞いていない。
「どうしたんだよ、大将」。

「え?」
「どうしたんだよ、聞いてくれないの?」
阿久津は、困ったような声を出した。
「ううん、いや」。

宗吉は、菊代を探しに行った。
だが探し当てたアパートにももう、菊代はいなかった。
近所の人の話では、男が来ていたようだった。

家に戻った宗吉は、暗い部屋に灯りをつける。
部屋には、シートがあった。
その下から、庄二の足が出ていた。
シートをめくる。

庄二は、眠っているように見えた。
オルゴールが鳴る。
宗吉は庄二を、じっと見る。

庄二は動いていない。
宗吉は庄二を抱きかかえ、階段を駆け下りる。
医者に走る。

夜半過ぎ。
戻ってきた宗吉は、水道で頭から水をかぶる。
寝ていたお梅が、振り返る。

「ちびは置いてきたのかい」。
「死んだ」。
「消化不良による衰弱死」。

「医者に怒鳴られた。一週間も、どうして診せに来なかったのかって」。
「火葬場などの手続きがあるんだ」。
お梅は「助かったろう!」と怒鳴った。
「一つだけ気が楽になって」。

宗吉が、お梅を凝視する。
上から、はらはらと落ちてくるシート。
「ああああああ!」

お梅が叫ぶ。
宗吉にしがみついてくる。
「あの子たち見てると、あの女思い出して、先が狂いそうになんのよ!」

お梅が宗吉に抱き着く。
宗吉もお梅を押し倒す。
抱き合う2人。

病院で横たわる、白いシーツをかけられた庄二が映る。
暗い病室で、たった1人。
白いシーツの下の、小さな庄二。

お梅は甘い声で宗吉に「今日どこへ行ってたのよ」と聞いた。
「あの女と会えた?」
うふふふん、とお梅は笑った。
「ちゃあんとわかってんだから」。

「今日ね、運送屋から電話があったんだよ。旦那が見えたけど、あの女が残していった支払いがあるってさ」。
「断ってやったよ」。
「引っ越した後で、いねえんだ」。

「あんた、あの女にまだ、気があったんだろう。ねえ、白状しなよ」。
お梅が宗吉をつつく。
「よしてくれ!」

宗吉は、吐き捨てるように言う。
「あんな女!」
お梅と宗吉は、再び抱き合う。

庄二の墓は、粗末なものだった。
倒れた地蔵の前の、小さな土盛り。
「お兄ちゃん、お花」。
良子が花を持ってきて、利一に渡す。

「良子、これあげる」。
「お兄ちゃん、これあげる」。
「水取って来よう」。

翌日。
「よっこ、よっこ」。
利一が良子を探している。
お梅が掃除をしている。

「よっこお」。
だが良子は、どこにもいない。
押入れを開けてみる。
いない。

宗吉が、良子を連れていく。
川越の駅に着く。
その頃、利一は良子を探し続けていた。
「よっこお」。

良子は公園にもいない。
「よっこおー」と呼ぶ。
お梅が、良子の人形をゴミバケツに放り込んでいる。

「よっこは」。
お梅は答えず、バケツの蓋を乱暴にしめる。
利一は、お梅がいなくなると、人形を取り出す。

宗吉が良子を連れて行ったのは、新宿だった。
デパートのおもちゃ売り場に行く。
「ほら、良子、行ってみろ」。
宗吉が促すが、良子は行かない。

「行けよ」。
良子は、宗吉にしがみついて離れない。
宗吉は良子に、人形を見せる。
そっと離れようとすると良子は宗吉に駆け寄り、シャツの裾を握りしめる。

食堂。
2人の向かいでは、母親と子供が食べている。
良子はそれを、じっと見える。

「おにんぎょうと…、ままごとと…」。
良子が、つぶやく。
そして、今度は宗吉の耳に口を寄せる。
「あのね、あのね、よっこは父さん好きですよ」。

宗吉は良子に「お前、父ちゃんの名前知ってるか」と聞く。
「うん」。
「ほんとか」。
「うん」。

「何て言うんだ」。
「お父ちゃんの名前は、お父ちゃん」。
「じゃあ、おうちはどこだ。迷子になって、よその人に聞かれたらどうする」。

「あのね、よしこのおうちは紙がいっぱいあるおうち。いっぱいあるよね!」
「いっぱいだなあ」。
「いっぱいあるよ」。

隣に女性が座ってきて、良子にいくつ?と聞く。
「みっつ」と、良子が指を3本立てる。
「しっかりしたお子さんですね。今日はママはお留守番?」
宗吉は、逃げるように立ち去る。

東京タワーに行く。
展望台で宗吉は良子に「ほらあっちは銀座だ」と言った。
双眼鏡にコインを入れる。

「ほら、見てごらん」。
「何が見える」。
「びるがみえる」。

「それから」。
「あっ、じどうしゃ」。
「はしがみえた」。

「良く見えるな」。
「おふねが、たくさん」。
「それから?」
「ママのおうち」。

宗吉が、ぎょっとする。
「利一にいちゃんもいる、しょうちゃんもいる」。
「嘘言っちゃだめだ」。
「ほんとだもん。お父ちゃん見て」。

そこで、時間が切れた。
「もういい」。
良子はそういうが宗吉は「父ちゃんちょっと便所行ってくるから、もう一遍見てな」と言う。

「良いか」。
「うん」。
双眼鏡にコインを入れ、宗吉はそこから離れる。

エレベーターに乗る。
一番奥に、壁に頭を向けて立つ。
振り返る。

双眼鏡で外を見ている良子。
良子が双眼鏡から、目を離す。
こちらを、振り返る。
宗吉と、目が合った。

その瞬間、ドアが閉まる。
エレベーターは宗吉を乗せ、下降していく。
はあはあ、と宗吉があえぐ。

薄暗い中、宗吉が東京タワーから離れる。
そして振り向く。
すると、東京タワーに、ライトがつく。
宗吉は逃げていく。

電車の中、東京タワーは窓の外から宗吉を追いかけてきていた。
窓から、東京タワーが見えなくなる。
また見えるようになる。
宗吉は、目が離せなかった。


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