こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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あんたみたいな女、嫌いよ 「疑惑」(2/2)

それが最高潮になるのが、球磨子の元・情夫の豊崎が出廷した時。
ヒモだろうか。
鹿賀丈史さんが実にうまい!

球磨子に不利な証言をしたため、球磨子が「言わないわよ、そんなこと!」とわめく。
「チンコロが」。
豊崎の目が丸くなる。
「チンコロお?!」

「あんたみたいな嘘つきを刑務所じゃチンコロって言うんでしょ。あんた、良く知ってんじゃない。懲役太郎なんだから」。
周りをにらみつけ「この男はね、シャバより刑務所のほうが長いのよ!」
そして、法廷で取っ組み合いのケンカを始める。
この2人はこうしてケンカをして、それで一緒に暮らしていたんだろうと想像がつく。

だけどこの男、佐原が球磨子の無実を信じていると知ると、佐原に会いに来る。
佐原は「あの人のことは、あなたが一番良く知ってる」と言う。
「あの人、人が殺せる人?」
だが豊崎にも、よくわからない。

球磨子は店のホステスに火をつけて懲役をくらったことはあるが、計画的に人を殺すようなことができる女だろうか?
豊崎は球磨子が懲役を終えて出所してきたときのことを語る。
誰も迎えに来ない球磨子は、1人、刑務所の外の長い壁に沿った道を歩いていく。

すると、仕事先だろうか、おしぼり屋の車を運転してきた豊崎が球磨子を迎えに来た。
乗れよと言われた球磨子が、豊崎を凝視する。
目に涙がたまってくる。
あの時の球磨子はまるで少女のようで、かわいかったと豊崎は言う。

豊崎は、ほかの誰も知らない球磨子を知っている。
球磨子は本当に、うれしかったんだろう。
だから球磨子にとって、豊崎は特別なんだ。

3億円入ったら5千万分け前をやってもいいというのは、調子に乗ったにせよ、豊崎が球磨子には特別であるからだと思う。
豊崎も刑務所と外を行ったり来たりしているような男だが、どこか妙に優しいところがある。
突然、豊崎は証言を翻す。

「んもう、どうしてそういうこと早く言わないのよぉ、しゃらくさいわねえ~!」
顔をしかめながらもうれしそうな球磨子。
「ごめん、新聞社に世話になっちゃったから」。
球磨子と豊崎は、相性が良いんだと思う。

豊崎の答えに球磨子は、鼻にしわを寄せて手を振る。
退廷時には「がんばれよっ!」と、豊崎はこぶしを握って見せる。
球磨子も、下から救い上げるようにVサインを見せる。
何じゃ、この2人は。

結局、球磨子は保険金殺人はしていなかったと認められ、無罪となる。
鹿賀丈史に便宜を図って、球磨子に不利な証言をさせた新聞記者・秋山は離島に飛ばされる。
これが柄本明さん。
やっぱりうまい。

法廷で、豊崎に「あそこにいるから聞いてみろ」と言われ、目が左右に動く。
秋山は佐原に電話をしてきて、離島に飛ばされたけど後悔していないと言う。
あんな女、罪に問われれば良い。

だが佐原は重要なのは、真実だと言う。
真実やっていないのなら、それは罰するべきじゃない。
それに対して、弁護士さんと自分たちの正義は違うようだと秋山は言う。
疑わしきは罰せず。

初めて見た時、球磨子みたいな女は罰せられれば良いと思う感情は、理解できた。
しかしそんな感情で罰して良いのかとも思った。
裁判員制度の今だったら、球磨子はどう判断されるのだろう。

佐原は球磨子が祝杯をあげるクラブに向かう前、離婚した夫が引き取った娘と会う。
そこで再婚相手に、もう娘と会わないでほしいと頼まれる。
これが真野響子さん。

だが、権利が認められていると佐原は言う。
それに対して、自分は子供を作らないと彼女は宣言する。
佐原の娘を自分の娘として、彼女だけを見て育てていく。

だから…。
佐原は答えない。
答えずに立ち上がり、娘に持ってきたプレゼントを渡した。

そして振り返りもせず、去っていく。
白いスーツ。
彼女の潔癖さとプライドを象徴しているかのような、白いスーツ。
最後の球磨子と佐原とのシーンは、圧巻。

「せんせ!」と、球磨子が佐原を見て声をあげる。
球磨子はバーで、佐原を待っていた。
佐原を待って乾杯をした球磨子だが、「あたしね出所祝いどころじゃないの。相談乗って」と切り出す。

福太郎氏は結局、球磨子と無理心中を図った。
つまり自殺なのだが、保険加入後1年以内の自殺では保険金が下りない。
須磨子は言う。

「3億円ね、出ないって言うの。保険会社じゃね、掛けてから1年以内の自殺はダメだっていうの」。
「別に保険金目当てにあの人、自殺したわけじゃないんだからさ。そこんとこどうにかしてえ、あんた、弁護士でしょ」。
「これで3億円取れなかったら、何で富山来たんだかわかりゃしない。踏んだり蹴ったりよ」。

「何とかして」と言う球磨子に佐原は「無理ね、あきらめなさい」と突き放す。
すると須磨子は「ね、そしたらさぁ、白河家から慰謝料取れない?」と言い出した。
「だいたいあたし、被害者なんだからさ、あいつらちょっと、シメてやんなきゃいけないっしょ」。

佐原は冷然と「何言ってんのよ、お互い様じゃないの」と言った。
「向こうだってあなたのこと、恨んでるのよ。福太郎さんの自殺は、あなたが追い込んだせいよ」。
須磨子は平然と「追い込んじゃいけなかった?」と言った。

「いいじゃない男の一人や二人死んだって。ねえ?」
周りにいるホステスに同意を求めるように、球磨子はちらりとホステスたちを見る。
それから球磨子は、吐き捨てるように言った。
「何が愛してるよ」。

タバコを持った手で髪をかき上げながら「あたしに逃げられるのが嫌で、つかまえときたかっただけじゃない」と言った。
その物の言い方に、さすがにホステス2人が、席を立つ。
残っていた1人も立ち上がって、出て行く。
「無理心中なんて、ふざけたこと言っちゃ困るのよ」。

タバコを持った手を佐原に向け球磨子は「大体、せんせ、まずいわよぉお」と言った。
「無理心中なんて下手な弁護するから、保険金入らなくなっちゃうのよぉお」。
「入ったらさぁ、せんせに5千万ぐらいやろうかと思ってたのよ」と、5本の指を佐原に向けながら言う。
「トチるんだもん。3億円パァよパア!」

佐原はタバコを手に球磨子を見下ろしながら、「あなた、福太郎さんが無理心中仕掛けなかったらどうしてた?」と聞いた。
球磨子もタバコをふかしながら「ええ?」と笑いの混ざった声で、聞き返す。
「殺してた?」

佐原は、球磨子を見下しながら聞く。
「それとも殺せなかった?どっち?」
「度胸もないくせに。じたばたすんの、およしなさいよ、みっともないから」。

球磨子はタバコを持った右の手のひらに顎を乗せながら「そうだねえ…」と、言う。
「時間があったら、殺ってたね」。
そして佐原をちらりと、見る。
佐原も、球磨子も見る。

球磨子はl今度はニヤニヤ笑いながら、「あんたってさぁ、ほんとにヤな目つきしてるわねぇ」と言った。
次に顔をしかめながら「いつでも人を、モルモットみたいに見てんのね」と言った。
佐原も「私ね、あなたみたいにエゴイストで自分に甘ったれてる人間って、大っ嫌いなの」と言った。
冷たく、軽蔑しきっている目だった。

球磨子はフフッと笑って「あたしだってあんたみたいな女、嫌いよぉ」と言う。
タバコの煙を吐き、ワインを注ぎながら「あたしはねぇ、どんな悪くたってねえ、みっともなくたって人になんか構ってらんないのよ」と言う。
「だけど、あたしはあたしが好きよ」。

そして、ワインのボトルを佐原のスーツの上に持ってくる。
「あんた、ねえ、あんた」。
球磨子は佐原を、ワインでつつく。

赤いワインの液体が、佐原のスーツの袖に落ちていく。
「自分のこと、好きだって言える?」
ワインの瓶の口からどんどん、赤い液体が佐原の白いスーツに落ちていく。

「言えないっしょ?」
球磨子は、佐原のスーツにワインをこぼし続ける。
「かわいそうな人ねえ」。

須磨子はにやりと笑って、今度は佐原の白いスカートに向かってワインをこぼし続ける。
「あんたみたいな女、みんな、大っ嫌いよ」。
ワインの中身を全部こぼし終わると、球磨子はボトルを下げる。
下を向いて、ニヤニヤ楽しそうに笑う。

佐原は白いスーツの前を赤く染めながら、タバコをぎゅっと、もみ消す。
その手で、グラスに入ったワインをパシャッ!
勢いよく、球磨子の顔に叩きつける。
球磨子が目を反射的に閉じる。

「あなたって最低ね!」
佐原はそう鋭く言うと、トン!と音を立ててグラスを置く。
「命が助かっただけでも、めっけもんでしょ?」

球磨子が佐原を見て、「あたし懲りてるわけじゃないのよ」と言う。
「今度のことで自信持っちゃってさ、あたし。あんたみたいな女にだけはほんと、ならなくて良かったと思って」。
そして球磨子は真顔になって「あたしは今まで通り、あたしのやり方で生きてくわよ」と言う。
「男たらして、死ぬまでしっかり生きて見せるわよ」。

そう言ってグラスを口に運ぶ。
佐原も言う。
「あなたは、それでしか生きられないでしょうね」。

佐原はいかにも須磨子をバカにしたように、ふっと笑う。
そして真顔になって言う。
「私は私のやり方で生きていくわ」。
佐原は須磨子にそう言うと、バッグを手に立ち上がる。

須磨子も「ま、せいぜいがんばってね」と返す。
佐原はバッグを肩にかけ、「またしくじったら弁護したげるわよ」と言う。
そのピシリとした背中に向かって球磨子は、「頼むわ」と言った。
階段を上がって行く佐原に、ホステスたちが頭を下げる。

翌日、球磨子は富山を出ていく。
階段を上る球磨子に、すれ違ったアベックが視線を注ぐ。
列車に乗り込んだ球磨子に気付いた人々は露骨に、または密かに見る。

窓の前にいる人たちに球磨子は舌を出し、手を振った。
列車は発車した。
球磨子の左の窓の景色が流れていく。

たばこを吸う球磨子。
顔に嗤いが浮かぶ。
列車はどんどん、加速していく。


2大女優が最初から最後まで、気の抜けない対決を見せる。
球磨子と佐原は、全く違う女性。
全く違う相手に惹かれることは、ある。
でもこの2人は仕事を離れたら、お互い大嫌いなタイプ。

聡明で冷静なエリート女性、女であることに頼らない佐原。
こういう女性を、球磨子は大嫌い。
だらしなくて、感情的で自分を抑えられず、男を渡り歩くことで生きてきた球磨子。
佐原はこういう女性が、大嫌い。

それでもどこかで、2人は似ているのかもしれない。
同族嫌悪のようなところがあるのかも、しれない。
ああなりたくないとお互い、言っている。
自分の中にある、大嫌いなものを見せてくるから、嫌いなのか。

それとも自分にないものを持っているから、自分ができないことをやるから嫌いなのか。
いろいろな思いが浮かんでくる。
球磨子の口調、表情は「ザ・桃井かおり!」
これ、ほんとに桃井さんしかできない球磨子。

佐原の冷徹さ、聡明さは岩下さんの冷たく切れる美貌にぴったり。
「鬼畜」の感情的なお梅とは、似ても似つかない女性。
どちらも素晴らしい女優の演技。
何時見ても、引き込まれる。

全く違う個性の女優を、ここまで生かしたのもすごい。
球磨子は桃井さんだから、佐原さんは岩下さんだからここまでできた。
でももしかしたら、2人の役を入れ替えても、この2人ならできるかもしれない。


ものすごい女性同士の対決ですが、実際の撮影は楽しかったと、岩下さんはおっしゃってました。
最後の息詰まる、赤ワインのシーン。
終わった途端、緊張が解けた2人は、「あはははは」って、笑ってしまったそうです。

TVのCMでは岩下さんが桃井さんに「ジタバタするの、およしなさい!」って言い放つシーンが流れていました。
本編では、ありませんでした。
そうしたら、あれはCM用の映像だったみたいです。

球磨子が列車に乗って、富山を離れていくラストシーン。
息を吸い込み、煙を吐き出しながら球磨子は嗤う。
思い出し笑いのようにも、見える。
ほくそ笑んでいるようにも、見える。

無罪なのだろうか。
この人を解き放して、良かったのだろうか。
じんわり、広がっていくような音楽。
疑惑がむくむくと湧いてくる。


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