第6話の最後、二科興三と浩一の対決は息詰まるシーンでした。
それは、市村さんと草なぎさんの演技の対決でもありました。
両者、一歩も引かず。
素晴らしい、草なぎさんの表情の変化。

興三が生まれ育った村に、浩一を連れて行く。
貧しいこの村で、一番貧しかったのが興三の家だった。
病気になっても、医者にもかかれない。

一日も早く、ここから逃げ出したい。
ここに住まなくて済むなら、どんなことでもやった。
必死に働き、勉強して小さな工場を持った。
夜も寝ずに働いて、働いて。

「そして二科コーポレーションができた」。
浩一が代わりに答えた。
ならば、この土地に投資すべきだ。

「それで?君の狙いはなんだ?一ノ瀬浩一、お前は一体何者なんだ」。
「お前の望みはなんだ!」
興三が浩一を睨む。

「俺の失脚か」。
「会社をつぶしたいのか」。
「そんなことさせてたまるか」。

「俺がここまで来るまでどんな思いをしてきたか、わかるか!」
ほんのり、笑みを浮かべ、しかし目には憎しみをたたえてじっと見つめる浩一。
『オマエコソ、オレノキモチガワカルカ』。
まるでそう心に呟いているようだった。

「お前の脅迫に、屈しない…」。
だが興三の語尾はもう、はっきりしなかった。
興三は大きく息をすると、足元から崩れていく。

浩一の前に手をつき、そしてすぐに横倒しになる。
「会長…、会長!」
驚いた浩一が呼びかける。
そして思い出す。

楓の「お父さん、薬置いておきますね」という言葉。
「いつまでも病人扱いか」と言った興三。
「心臓、完璧じゃないんだから」と返す楓。

興三が白目をむき、「きゅう、きゅう、しゃ」と言う。
遠のいていく意識。
驚いて見つめていた浩一が、体を起こす。

辺りを見回す。
誰もいない。
次に興三を見下ろした時の、ゾッとするような冷たい目。

浩一は言う。
「30年前の報いだよ」。
「父の分」。
「母の分」。

「弟の」。
「俺の」。
浩一は、フッと笑った。

笑って歩み去っていく。
すたすたと。
軽やかに。

興三は白目をむいたまま、口を開き、もう動かない。
浩一が遠ざかっていく。
辺り一面の枯れ野。
その奥には深い森。

さびて傾く、再開発予定地の鉄の看板。
歩みながら、浩一は嗤っていた。
口元がゆがむ。

浩一の記憶が蘇る。
『お父さん、嘘は嫌いだ』と言った父親。
『だから陽一にも、嘘だけはつかないでほしい』。

誕生日のケーキ。
ろうそくが立っている。
父の笑顔。

浩一の顔は、これ以上ないほど、晴れ晴れとしている。
顔中に、勝利の笑みが広がっていく。
浩一の記憶の中に焼きついて離れない、父の血を流して倒れている姿が浮かぶ。

『お父さん』。
凝視している幼い陽一。
それを思い出しながら、浩一は嗤っている。
楽しそうに。

記憶の中の、黒ずくめの男が母親を刺した。
『お母さん』。
続いて弟が刺された。
黒装束のもう一人の男に、がっちりと抑えられている陽一。

そこまで思い出した浩一は、立ち止まった。
笑みは消えた。
遠くを見ている。

その目には、さっきまでの勝利の笑みはなかった。
ひたすら、悲しみに満ちた目。
病室でベッドの上にいる陽一に、三輪刑事が近づく。
『嘘はいけないよ』。

鋭い声。
陽一の目から涙がこぼれる。
『お父さんです…』。
苦痛に耐えるように、陽一の手がシーツを握りしめた。

浩一は、立ち止まっていた。
目の前には、枯れた木々。
浩一が、振り向く。
その目には、何の感情もない。

倒れている興三を、浩一の目がとらえた。
浩一は、はじけたように走り出す。
戻っていく。
大きく手を振り、全速力で戻っていく。

倒れている興三の顔を、両手で覆う。
「会長!」
鼻に手をかざし、息を確かめる。
頬に手を当てて、浩一は言った。

「ダメだ。早過ぎる」。
「こんな簡単に死なせるか」。
浩一の顔が、悲痛にゆがむ。
先ほどのゆがんだ笑みとは違う、必死の形相。

浩一が、興三の胸に手を当てる。
「お前が苦しむのは、これからなんだよ!」
「これから俺が全部奪うんだよ!」

叫びながら、浩一が心臓マッサージを施し始める。
「お前の大事なもん、全部!」
「家族も!」
「会社も!」

「何もかも奪って!」
「ほんもんの絶望見せてやる!」
「泣き叫ぶお前に懺悔させてやるよ!」

「それまでは死なせるか!」
「お前の地獄はまだ、これからだ!」
「ふざけんな!」
浩一は泣いていた。

「こんなアッサリ死なせてたまるか!」
「生きろ!」
「生きてもっと苦しめ!」

「生きて俺の復讐を見届けろ!」
「死ぬな!」
「死ぬなああああ!」
誰もいない枯れ野に、浩一の絶叫がこだまする…。

その脳裏にあったものは、本当は何なのか。
復讐なのか。
それとも、誰かの顔なのだろうか。

わからない。
浩一にもわからないのかもしれない。
あるのはただ、助かってほしいと言う必死の思いだけなのではなかったか。
ストーリーも演技も、すごみを増していきます。


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2017.02.24 / Top↑
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