全く、何の予備知識もなく映画を見ることがあります。
これはその一つ。
「縞模様のパジャマの少年」。
全てネタバレしていますので、未見の方、ご注意願います。


無邪気に走る子供。
名前はブルーノ。
時は、第2次世界大戦中。
場所は、ベルリン。

ブルーノの父は、ナチスの将校。
パーティが開かれ、ブルーノは恵まれた生活を送るお坊ちゃまだった。
まだ子供であって、戦争のこと、ナチスのこと、何一つ知らない。
友達との遊びは、戦争ごっこだ。

ある夜、父が昇進することを聞かされたブルーノは、父の転勤でベルリンから田舎に引っ越す。
不満なブルーノは不機嫌なまま、引っ越しをするが新居の近くには学校もなかった。
ブルーノには、家庭教師がつく。

それにたまに、妙なにおいが風に乗ってやってくる。
「奴らは焼かれても臭いですね」と、父の部下が言う。
母親は父親に、こんなところに子供を連れてこないほうが良いと抗議する。

窓の外に見えるのは、農場。
農場だと、ブルーノは思った。
そこにいる人たちは全員、縞模様のパジャマを着ていた…。

ブルーノの家に、ジャガイモの皮をむきに来る人がいる。
下にはあの、縞模様のパジャマを着ている。
家で下働きしている人は、みんな必ず、縞模様のパジャマを着ている。

ブルーノは、傷を作ってしまう。
すると、その皮むきの人はテキパキと手当てをしてくれた。
その人は、お医者さんだったらしい。
だが今は、キッチンの隅で、ジャガイモの皮をむいている。

どうしてなの。
腕が悪かったの?
こんなにテキパキしているのに。
すると、その人は泣いた。

その夜、ブルーノは父親になぜかと聞いてみた。
父親は言った。
ユダヤ人になど、気安く手当させるなと。

独りぼっちのブルーノは、友達が欲しかった。
「農場」に行けば、友達ができるかもしれない。
ブルーノはある日、「農場」に行ってみる。

「農場」は、鉄条網で囲まれていた。
家畜が逃げないようにだと、ブルーノは思った。
鉄条網の中には、8歳の少年がいた。

ブルーノは彼に話しかける。
彼の名は、シュムエル。
同じ年だった。

家族みんなで、この「農場」に来ているのだと言う。
縞模様のパジャマを着て、頭は丸刈りだった。
パジャマに、数字のワッペンをつけていた。

「それ、何のゲーム?」
聞かれても、シュムエルにもわからない。
わかっているのは、自分はここにユダヤ人だから入れられていること。

ブルーノはこの日から、「農場」に通う。
「シュムエルのパパは何してる人?」
「ボクのパパは時計職人だったよ。今は大工」。

「僕のパパは、軍人さんだよ」。
「軍人嫌いだ。僕たちの服をとっちゃったんだ」。
「僕のパパは、そんなことしないよ!」

家庭教師は、ブルーノに教育を施す。
ドイツは世界一である。
また、ドイツ人は最も優秀な種族である。
それに害を及ぼす者がいる。

ユダヤ人がどれほど、ドイツに損害をもたらす害悪なのか、家庭教師は教える。
だが、ブルーノにはわからない。
シュムエルはユダヤ人だが、友達だ。
彼が自分に害を与えることなど、全くない。

しかしある日、ブルーノは家にシュムエルがいるのを見つける。
シュムエルは、グラスを磨いていた。
その小さな手が、小さなグラスを磨くのに必要だったのだ。

シュムエルは、お腹を空かせていた。
だからブルーノは、お菓子をあげた。
すると、父の部下のナチス軍人がやってきた。

彼はブルーノの父の信頼が厚く、熱心なナチス党員だった。
紳士的で優しくて、姉は彼にあこがれていた。
彼はシュムエルの口に、お菓子の食べかすがついているのを見つけた。

「盗んだな!」
シュムエルは「友達にもらった」と言う。
「この嘘つきのユダヤ人め!」
ナチス軍人はブルーノに、本当か聞く。

本当に「こんな」ユダヤ人と友達なのか、と。
自分が知っている彼と、全く違う彼を初めて見たブルーノは恐怖した。
そんな様子は見たことがなかった。
思わず、ブルーノは「そんな子、知らない」と口走ってしまう。

姉が教えてくれた。
あれは「農場」ではない。
「強制収容所」というものなのだ、と。
父はそこの所長に栄転となったのだ、だから自分たちはここに来たのだ、と。

そう言われても、ブルーノにはよくわからない。
しかしブルーノは、後悔していた。
友達を裏切ったことを。

ブルーノはシュムエルに会いに「農場」へ行く。
お菓子やおもちゃを持って行く。
だが何日も何日も、シュムエルの姿はなかった。

やっと金網越しに見つけたシュムエルの顔には、ひどく殴られた跡があった。
「ごめんなさい」。
「僕は怖かった」。

シュムエルは「許してくれる。
ブルーノは決心する。
二度と、友達を裏切ったりしない。
2人はそれから、一層仲良くなった。

母親はこんなところに子供を連れてきたと父を責めるので、父はブルーノに収容所の映画を見せた。
そこではみんな、映画を見たり、作業をしたり伸び伸びと暮らしていた。
ではなぜ、シュムエルは殴られたのだろう?
なぜ、彼はいつも一人で座っているのだろう?

「シュムエルがいる場所は、良いところなんだろう?」
「わからない。でもお祖父ちゃんとお祖母ちゃんは死んじゃった。お葬式も出せなかった」。
「僕には友達は君しかいないよ、ブルーノ」
「僕も君しか友達がいないよ、シュムエル」。

そしてある日、シュムエルは父親がいなくなったと言う。
ブルーノは約束する。
一緒に探す、と。
ブルーノは二度と、友達を裏切らないのだ。

でも農場にいる人は、みんな縞模様のパジャマを着ている。
着ていないと、農場の人間じゃないってわかってしまう。
シュムエルは、持ってきてあげると言った。

いっぱい、いっぱい、あるんだよ。
子供用のも、たくさんあるんだ。
ねえ、ここ、土が柔らかいよ。
金網の下を子供が一人、通れるぐらいの穴を掘り、ブルーノは「農場」に入る。

縞模様のパジャマを着る。
2人は、シュムエルの父親を探す。
どこにもいない。
2人が入った小屋は、病人と老人ばかりがいた。

すると、音が鳴り響く。
父親と同じ制服を着た男たちが、やってきた。
行進しろ。

たまにあるんだ、とシュムエルは教えた。
シュムエルのいる場所の人はみんな、行進していく。
大人の列の中、子供2人は追い立てられていく。

出て行きたくても、列の横にはブルーノの父と同じ制服を着た軍人がいて、出られそうにない。
青い縞模様のパジャマを着たブルーノは、出られない。
追い立てられた先には、小さな部屋があった。

みんな、縞模様のパジャマを脱がされた。
ここはシャワー室だ。
そう、説明された。

説明した男たちは、出て行く。
大人たちが体をぶつけあうほどの小さな部屋に、ぎっしり詰められている。
ふっと、灯りが消えた。

おかしい。
ブルーノとシュムエルはしっかり、手をつなぐ。
固く、固く、つなぐ。

部屋の小窓が開く。
そこから顔が見えた男は、がっちりとしたマスクで顔を覆っていた。
何かが、黒い粉が降って来る。

部屋の鉄の扉が、ガタガタと振動する。
脱ぎ捨てられている、大量の縞模様のパジャマ。
その頃、母親はブルーノがいないことに気付いた。
姉とともに探す。

父親にも、ブルーノがいないことが知らされる。
犬を使って探す。
走る犬は、収容所に向かっていた。

ブルーノの服が、金網の前に脱ぎ捨てられている。
穴は、金網の向こうにつながっている。
母親と姉が絶叫する。

父親は真っ青になって、収容所を走る。
雨が激しく降って来る。
父も、父の部下たちもパニックを起こしていた。
ブルーノ!

返事はない。
静まり返った鉄の扉。
脱ぎ捨てられている、たくさんの青い縞模様のパジャマ。



もう、ねえ…。
見るんじゃなかったってぐらい、いや~な気分になりました。
でも、見て良かったとも思いました。

「軍人は嫌い」
「パパはそんなことしないよ」。
この会話の残酷さ、虚しさ。

当たり前ですが、軍人、ナチスの将校にもそれ以外の顔がある。
そして誰かが愛していたり、誰かの大事な人であったりする。
同じことがユダヤの人にも言える。

リミット」ではないですけど、どんなにしても嫌いな人、合わない人というのは出て来る。
だけど、その人にも別の面があって、誰かの大切な人だ。
それを思う気持ちがあれば、殺したりはしない。
だから人間は人間を殺さない、殺せない。

しかし、ここでは相手を同じ人間とは思っていない。
良い大人の間でも、いじめがあるんだから、戦争なんてなくならない。
でも、同じ人間。
同じではないと教育しても、少し離れて見ると、同じにしか見えない。

縞模様のパジャマを着ているドイツ人の子供と、ユダヤ人の子供の区別はつかない。
着ている服ひとつで、明確に区別できないぐらいのこと。
それが人を死に追いやる理由になるのか、と。

こんなことが「カフェに行って相談しようよ」。
「ここから出られないんだ」。
同じ年齢の子供をここまで隔たった環境に追いやるのか。

父親と同じ軍服の大人、優しい大人が耐えられないような別の顔を持つ。
この子供の目線で作った映画。
知らないということが、最後に怖ろしい結果をもたらす。

純粋無垢ということが、最後に怖ろしい悲劇となる。
こんな現実、子供に教えたくなかったんでしょうけどね。
知らないと言うことは、いろんな意味で罪。

教えないと言うことは、いろんな意味で罪。
教えると言うこともまた、やり方によっては罪。
ブルーノの姉は、時代の空気に染まっていきました。

「処理がスピードアップする」と言っていたブルーノの父親は、何を思ったでしょうか。
母親の抗議の通り、ここにつれて来るべきじゃなかった、でしょうか。
ちゃんと「教えて」おくべきだった、でしょうか。
自分のやってきたことを、どう思うでしょうか。

スピードアップの数字は、数字ではなくて人間だと思うんでしょうか。
思ったら、あの時代には生きていけないのかもしれない。
ユダヤの人から見たら、悲劇なんでしょうか。
因果応報、なんでしょうか。

自分の身に同じことが起きた時、それがどういうことか。
文字通り人は身をもって知る、ということでしょうか。
それまでは文字通り、他人事。
でも何も、この子が父親の因果応報であんなことにならなくても…と思って、とても気持ちが暗くなる。

ここまでナチスの将校の子供が、ドイツの現状やユダヤ人について知らないかどうかはわかりません。
実際に強制収容所の「監理者側」の家族は、自分たちの父親や夫が何をしていたか知らなかったらしいですね。
やっぱり、言えなかったんでしょうか。

この映画でも収容所について、ブルーノには嘘を教えていました。
大人になれば子供には見せられない顔を持つのは当たり前ではあるけど、子供に嘘を教えなきゃ成立しないようなことは…、。
彼女も一体、何を思ったでしょうか。
この家族は戦争をどう過ごし、そしてどういう戦後を送ったのでしょうか…。

誰もいない部屋の前に、たくさん、たくさんある縞模様のパジャマ。
静まり返った扉。
沈黙と、動くものがない画面のとてつもない哀しさ、残酷さ。

2008年のイギリス映画。
だからドイツ人が、英語話してたのか。
そんなくだらない突っ込みしないと、気が滅入ってしかたないけど、すごい映画だと思います。
唯一の救いは、ブルーノとシュムエルの固く結ばれた手です。


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2017.03.08 / Top↑
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