アニメのデビルマンについて、何度か記事を書いていました。
原作のデビルマンには、衝撃を受けました。
やっぱりそういう人が多いらしく、「最凶トラウマ最終回」という本ではトップで扱われていました。
高校生の時の同級生がすごいファン?で、彼女が私にデビルマンを読めと言ったんです。
もしかしたら、彼女がくれた本だったかもしれません。
試験期間中に読んだもんだから、もー、テストにならなかった。
なぜ、これを読めと?!と言ったら、トラウマを共有したかったとかひどいこと言ってました。
もー。
ほんと、もー、もー言って、牛になっちゃう。
そのぐらい、もー!って言いたくなる感じでした。
さて、今、原作の「デビルマン」を扱った本で、「世界の終わりと始まりに」という本が家にあります。
これ、何で家にあるのか、ちょっと記憶がないんですが…、誰かからもらったっぽいです。
永井豪さんの作品について、本人にインタビューして語ってもらってる本です。
まず宗教学者の中沢新一さんが序文で、「デビルマン」について書いています。
それによると手塚治虫さんの「鉄腕アトム」は人間と機械の共存、民主主義の理想。
「デビルマン」は、「アトム」の対極の作品だそうです。
少年たちに初めてむき出しの暴力と、善良な民主主義の幻想を嘲笑う世界を見せた衝撃の作品。
「デビルマン」前は、邪悪な存在は正義の主人公に粉砕される存在だった。
または正義の前に改心し、ともに戦う存在だった。
しかし「デビルマン」では、悪魔は悪魔のままだった。
「デビルマン」は、邪悪を行動原理として動く存在であり続けた。
デーモン族というのは、そういう存在だった。
彼らデーモン族は、生物と合体してその特長を取り込み、変化(へんげ)していく。
常に戦い、勝利して相手を乗っ取ることでしか、存在できない。
愛とか情とか、そういうものはデーモンが生きていくうえで必要ない、関係ない。
力しか意味がない。
そう、原作のデーモンの怖いところは、まさにここだと私は思うんです。
自分を愛し、保護してくれた家族。
愛する者。
彼らが外見だけを残して、中身は違うものになっている。
それがある日、自分に対して牙をむく。
牙をむかれた方はただ、その事実を信じられず、絶望する。
そして、愛する者を自らの手で消滅させるか。
自分に対する一片の情も感じられずに、かつて愛した者に食われるか。
どちらかしか残っていない。
そのどちらにしても、自分には絶望と悲しみだけしか残らない。
だからデーモンは怖い。
この残酷な絶望の選択を突きつけて来るデーモンは、恐怖の存在です。
実際に原作の中で、ママが怖いというエピソードがあったはず。
友達がすごく後味が悪くて、嫌だと言っていた、その通りのエピソードがありました。
さて中沢先生は、「デビルマン」にはある「邪悪」への共感、理解があると思った。
ここが、非常に興味深い。
それは破壊神である「ゴジラ」が殺される時、「ゴジラ死なないで!」と思った気持ちに似ているそうです。
あれほどの破壊と恐怖をもたらしたにも関わらず。
邪悪は徹底して排除し、滅ぼすべきという西洋の思考。
「悪」と「善」。
天使と悪魔がパッキリ、分かれている西洋の思考。
それは自分たちとは、全く別の存在である。
対して、日本、アジアの思考はそうではない。
善も悪も、自分たちの中にある。
その通りに「デビルマン」には「ゴジラ」同様、西洋の正義とは異なる、日本人的な思考があると先生は主張します。
「悪」の「デーモン」は、自分たちの中にこそ存在する。
つまりデーモンと戦うことは、自分たちの中にある悪と戦うことだ。
「デビルマン」とは、壮大なドラマに見えて、実は自分たちの内なる邪悪と戦う話だった。
そう、中沢先生は書いています。
「デビルマン」ではついに自分たちの中の「デーモン」が、「美樹」を殺してしまう。
「美樹」を失ったデビルマンは、人間を焼き尽くす。
デーモンたちは殺戮をしていき、デビルマンももう、人間を守らない。
こうして、人類は滅亡する。
「美樹」とは、何だったのか。
愛、慈悲、善良さ。
その象徴が、美樹であった。
少なくとも、デビルマンにとってはそうだった。
「デビルマン」の人間たちは、自分たちの手でその、「美樹」を殺した。
世界は滅びるべくして滅びた。
現実でも、自分たちはたくさんの「美樹ちゃん」を失いかけていると中沢先生は、おっしゃいます。
「プチ・デーモン」たちがたくさん、いる。
自分が「プチ・デーモン」であるという自覚のないまま、彼らは「美樹ちゃん」を殺していく。
そうしていけばやがて、デビルマンは「プチ・デーモン」を焼き尽くすだろう。
「美樹」を殺して世界は滅びるだろう。
「デビルマン」とは、予言のような作品だとおっしゃってます。
宗教学者の中沢先生が、こんな解釈を展開する作品。
うーん、「デビルマン」って深い!
「世界の終わりと始まりに」は、東京百科出版。
2003年10月発行。
定価・税抜き1400円です。
スポンサーサイト
Comment
タイトルは『デビルマン』(原作漫画)の中で、僕が一番好きな台詞です。
デビルマンとの死闘の果て、瀕死のシレーヌの前に現れたカイムの名台詞。
悪魔がみせる己を捨てた無私の愛…。
恐怖と猜疑と憎悪の果てに、殺し合いを続けた原作漫画終盤の人間たちよりも、はるかに“人間らしかった”カイムの言葉…もう、これは愛の告白ですよね。
僕が初めて原作漫画を読んだのは、まだ10代前半…すでに知っていたアニメ版とのあまりの違いにまずは驚き、おぞましさを感じつつも、しかし、作品の放つ凄まじさに目を離すことが出来なかったのを今でも覚えています。
作画?伏線?展開?全ては永井豪先生の狂熱と後先無用の勢いの前には関係なし!
今、読み返せば描いて欲しかった部分もある…矛盾も稚拙もあるでしょう。
でも加筆されたり、派生していったその後の『デビルマン』は観る気はしないな…。
完全でも完璧でもない、作者一世一代の“狂熱の証(あかし)”だからこそ、何時までも胸に残っているのだと思うので…。
そういえば、同じ永井豪先生の描かれた短編漫画『ススムちゃん大ショック!!」も衝撃的でしたねぇ…。
ある日、ある時、大人たちが何の躊躇もなく子供たちを殺しだす…!
理由など分からない…ただ、大人と子供の間あった“何かが”切れた、壊れてしまった…!
何の救いも見いだせない残酷なラストに、ススムちゃんだけでなく、読んでいた僕も大ショックでした…。
永井豪、恐るべし…!
それでは、また…。
こんにちは。
コメントありがとうございます。
>タイトルは『デビルマン』(原作漫画)の中で、僕が一番好きな台詞です。
>デビルマンとの死闘の果て、瀕死のシレーヌの前に現れたカイムの名台詞。
>悪魔がみせる己を捨てた無私の愛…。
>恐怖と猜疑と憎悪の果てに、殺し合いを続けた原作漫画終盤の人間たちよりも、はるかに“人間らしかった”カイムの言葉…もう、これは愛の告白ですよね。
これ、このセリフ、私も好きです。
デーモン族は戦って相手を吸収して、生きていく。
力だけが全てで、愛だの情だのは必要がない。
しかし、シレーヌに対してカイムだけは自分を犠牲にする。
羽根ももぎ取られたシレーヌがカイムの申し出に対して「なぜ?あたしはもうすぐ死ぬのよ」って言いますよね。
それでもカイムが言う。
カイムはシレーヌに勝利の笑顔を与えたい。
「血まみれでもシレーヌ、君は美しい」。
ここはシレーヌとカイムが主役になってます。
それで私、シレーヌがすごく好きなんです。
ものすごく綺麗なデザインですよね。
もちろん、ものすごく怖いデーモンで、人間なんか八つ裂きなんでしょうが。
デザインも綺麗だし、あの気性はドラマになります。
>僕が初めて原作漫画を読んだのは、まだ10代前半…すでに知っていたアニメ版とのあまりの違いにまずは驚き、おぞましさを感じつつも、しかし、作品の放つ凄まじさに目を離すことが出来なかったのを今でも覚えています。
ものすごい残酷で、私もアニメとの違いにショックを受けました。
>作画?伏線?展開?全ては永井豪先生の狂熱と後先無用の勢いの前には関係なし!
何て言うか、もう勢いがありますよね。
80年代になって永井先生がトランス状態で描き上げた感じとおっしゃってましたが、納得です。
>今、読み返せば描いて欲しかった部分もある…矛盾も稚拙もあるでしょう。
>でも加筆されたり、派生していったその後の『デビルマン』は観る気はしないな…。
>完全でも完璧でもない、作者一世一代の“狂熱の証(あかし)”だからこそ、何時までも胸に残っているのだと思うので…。
今読むと確かに昔のマンガなんですが、私もそれを補って余りあるエネルギーを感じます。
これもまた教えてもらったんですが、「デビルマン」世界が他にあるというので見てみました。
「バイオレンスジャック」は描かなければならないと思って描いたので、これは正式な後日談なんでしょうね。
なので理解できるんですが、他のパラレルワールドは正直、腑に落ちなくて。
勝手に私の中での「デビルマン」はアニメと、原作の「デビルマン」と「バイオレンスジャック」で終わりにしました。
>そういえば、同じ永井豪先生の描かれた短編漫画『ススムちゃん大ショック!!」も衝撃的でしたねぇ…。
あれ、生理的に嫌だって言う人がいました。
わかります、あの絵であの展開が何とも嫌な感じで。
>ある日、ある時、大人たちが何の躊躇もなく子供たちを殺しだす…!
>理由など分からない…ただ、大人と子供の間あった“何かが”切れた、壊れてしまった…!
>何の救いも見いだせない残酷なラストに、ススムちゃんだけでなく、読んでいた僕も大ショックでした…。
現在ならともかく、あの当時はものすごい衝撃だったと思います。
しかも理由がない。
ただ本能が変わった、ということで。
「ススムちゃん大ショック!」じゃないって、ギャグマンガみたいなタイトルでとんでもない…と思いましたよ。
でもあれ、やっぱりあの世界では人類は滅亡しますよね。
>永井豪、恐るべし…!
この頃の永井先生の活躍は神がかり的なものがありますね。
有名なマンガ家さんには、そういう状態の時がありますが、永井先生もまたすごい。
コメントありがとうございました。