豪の豪は実は業 「世界の終わりと始まりに」

さて、永井先生は「デビルマン」で人類を滅亡させたことがずっと、心に引っかかっていたそうです。
それで世界が再び復興する話を描かなければいけない、と思った。
こうして描かれたのが、「バイオレンスジャック」。

無秩序な世界で力による戦いが起き、やがて秩序ができていく。
描きながら、これは人類の歴史だな、と思ったそうです。
考えたら「デビルマン」は戦争だな、と思った。
明は何にもそんな気はないのに戦いに巻き込まれ、最前線に立ってしまう。

「バイオレンスジャック」は結局、「デビルマン」世界とつながった。
この「バイオレンスジャック」の最後に永井先生は、「ジャックは何者だろう」と考えた。
「誰なんだろう」。
「ジャックが誰だったら、納得できるだろう」。

そして本当に最後に、「デビルマンだ!」と「気付い」た。
自分でも、興奮したそうです。
「バイオレンスジャック」には、暴力のシーンがたくさん出て来る。

永井先生自身は一番やってはいけないことは、人を力で抑え込むことだと思っているそうです。
正義の基準はわからないけど、自分の中の悪の基準はハッキリしている。
人を絶対的に、支配すること。

これは一番やってはいけないことだと、永井先生は思っている。
また、自分が一番やられたくないことだとも、思っている。
だから「バイオレンスジャック」では、自分が思う悪を徹底して描いた。
スティーブンキングがすごい怖がりで、自分が怖いと思ったことを描いているのと似ています。

編集さんには「何で登場人物をここまで虐げるんですか?」って、言われたそうですけど。
人間と言うのは暴力的な側面や、衝動を持っているが、それを他人に向けてはならない。
そうでなければ相手に痛い思いをさせ、相手も自分も傷つく。
こういうことを子供の時に学べれば、被害者も加害者も減っていくのではと思っているそうです。

でも永井先生は暴力のシーンは描いていて、すごく疲れる。
ギャグマンガは疲れないし、善の存在を描いている時は疲れない。
「デビルマン」や「手天童子」を描いていると、体が痛くなるそうです。

「手天童子」に至っては、悪夢を見た。
スタッフもみんな、同じような悪夢を見たそうです。
クリエイターですから、そういう気持ちが周りに伝染するのかもしれませんね。

そういえば面白い話も書いてあって、永井先生が前世がわかるという人と会った時のこと。
この時、この方が永井先生のことを宗教家だったと告げたんですね。
何度か転生しているけど、転生するたびに宗教家だったと。

中世オーストリアで、神父だったこともあると告げた。
でもこのことは、あんまり知らなくて良いと言う。
その時、永井先生の頭にポーンと、大きな木が浮かんだ。

するとその方が「あなたは神父なのに、自殺した」と言う。
だから「あの木で自殺したんだな」と思った。
「どうして自殺したんですか」と聞くと、「つらい時代でしたから」。

それで、もしかしたら自分は魔女狩りをしていたんじゃないかと思った。
「デビルマン」のシーンが、頭に浮かんだ。
牧村夫妻を殺した人たちは、宗教家のような恰好をしていた。。

意図して描いたわけじゃなかった。
でもこれは…、自分の経験を描いたのか…?と思ったそうです。
おもしろい話ですね。

話は「キューティーハニー」に、及びます。
あれは男の子向けに描いたが、女の子に人気が出た。
この理由は何だろう?

やっぱり、女の子の変身願望を満たしたんじゃないか。
それから「女の子はおとなしくしてなさい」と言う、当時まだあった風潮に反発したんじゃないか。
永井先生はこんな風に、分析しています。

80年代に、マドンナが出てきた。
それまではセクシーと言うと、プレイボーイのグラビアみたいに男性からの一方的な視点だった。
でもマドンナのセクシーさは、女性が主導する女性が魅力的であろうとするものだった。
永井先生としたら、キューティーハニーで考えていたものが、ついに出たと言う感じでしょうか。

ずいぶん怒られたけど、ヌードは永井先生としては絵的に綺麗であれば良いと思っていた。
だから「デビルマン」のシレーヌは怪物でも美しさがあり、美を見いだせるようにしたかった。
人間とは全く違う形でも。

シレーヌ、私はすごい好きなデザインです。
美しいけど、とても怖く危険な存在。
すばらしいデザインです。

永井先生は自分のエロティシズムは、健全なエロティシズムだと思っています。
エロティシズムが発散されない社会は、まずいと思う。
ヌードやエロティシズムを過度に取り締まっている社会は、犯罪が少ないか?
否、陰惨な犯罪が多いと思うと永井先生は考えています。

永井豪の豪は、実は業なんじゃないかってインタビュアーに指摘されています。
自分の作品では、まず破滅がある。
そこから再生されると、自らの作品を分析しています。
おもしろい分析だと思います。


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この爪なんて この爪なんて♪

こんにちは…おじゃまします。
『バイオレンスジャック』と『デビルマン』の世界が繋がった…。
個人的には「あぁ…う~ん」と思ってしまったのですけどね。
あくまでも『バイオレンスジャック』には“独立した存在”として終わってほしかったので…。
ただ『デビルマン』という作品の強烈なパワーは、豪先生と『ジャック』を引き寄せ、変えてしまうほどのモノだった…。
心身に変調を来してしまうほどに、自分の作り上げた世界へのめり込んでいく…凄まじいですね…本当に。

それと、シレーヌのデザイン(ビジュアル)僕も好きですねぇ…。
特に本来なら背中にあってもいい大きな翼を、顔に持ってきたのが良い!翼が、凶と妖と美の“象徴”として絶妙に映えてます。
シレーヌがデビルマンに“象徴”ともいえる顔の翼を引きちぎられる残酷なシーン…。
“象徴”を失い、顔を朱に染めているからこそ、あのカイムの「血まみれでも、きみは美しい」の台詞が、より深い意味を持つ…なんて言うのはちょっと考え過ぎかな?(笑)

こうやって、シレーヌのことでコメントを書いていると、中島みゆきの『やまねこ』の歌詞をふと思い出します。
“やまねこ”なんですけどね…でも、僕の中ではイメージが重なります。

♪傷つけるための爪だけが 抜けない棘(とげ)のように光る 天からもらった贈り物が この爪だけなんて この爪なんて♪(やまねこ/中島みゆき)

それでは、また…。



キラさん

>キラさん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>『バイオレンスジャック』と『デビルマン』の世界が繋がった…。
>個人的には「あぁ…う~ん」と思ってしまったのですけどね。
>あくまでも『バイオレンスジャック』には“独立した存在”として終わってほしかったので…。

なるほど。
リアルで作品を読んでいた人は、この展開にビックリしたでしょうね。
デビルマンとつながって喜んだ人もいれば、「ええー、デビルマンなの?」って思った人もいたんでしょうね。

>ただ『デビルマン』という作品の強烈なパワーは、豪先生と『ジャック』を引き寄せ、変えてしまうほどのモノだった…。

永井先生も勢いで描き上げたけど、ずーっと人類もデーモンも、デビルマンも死なせてしまったことが引っかかっていたんですね。

>心身に変調を来してしまうほどに、自分の作り上げた世界へのめり込んでいく…凄まじいですね…本当に。

周りのアシスタントさんの精神にもすごい、影響があるみたいですしね。
みんな同じような夢を見るとか。
ちょっと耐えられないかも…。

>それと、シレーヌのデザイン(ビジュアル)僕も好きですねぇ…。

これ、すごいですよね!
良いデザインですよねえ…。

>特に本来なら背中にあってもいい大きな翼を、顔に持ってきたのが良い!翼が、凶と妖と美の“象徴”として絶妙に映えてます。

そう、そうですね!
背中にあるのは、天使。
シレーヌは頭、顔の横に大きな翼があり、それで飛ぶ。
禍々しいのに、美しい。

>シレーヌがデビルマンに“象徴”ともいえる顔の翼を引きちぎられる残酷なシーン…。

あれ、残酷ですねー!
確かに人間の女性とは違う、油断していると八つ裂きにされるのはわかりますが、女性の、しかも美しい顔に足をかけて引きちぎっている。
お腹には自分が飛ばした手も刺さっているし…。
永井先生、ここまでやるか、と。

>“象徴”を失い、顔を朱に染めているからこそ、あのカイムの「血まみれでも、きみは美しい」の台詞が、より深い意味を持つ…なんて言うのはちょっと考え過ぎかな?(笑)

いえ、わかります。
流血する顔を手で押さえながら、「なぜ?あたしはもう死ぬのよ?」って。
美しい顔が半分、翼とともに引きちぎられて血まみれになっても、カイムの気持ちが変わらない。

>こうやって、シレーヌのことでコメントを書いていると、中島みゆきの『やまねこ』の歌詞をふと思い出します。
>“やまねこ”なんですけどね…でも、僕の中ではイメージが重なります。
>♪傷つけるための爪だけが 抜けない棘(とげ)のように光る 天からもらった贈り物が この爪だけなんて この爪なんて♪(やまねこ/中島みゆき)

おおっ、ピッタリじゃないですか!
シレーヌってすごくストイックなんですよね。
だから「バイオレンスジャック」で、シレーヌがあっさりだったのに「え!」って思ってしまいました。
シレーヌは誰が演じたらしっくりくるのかなあと考えたことがあります。

コメントありがとうございました。
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ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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