ジョン・カサベティス監督「グロリア」。
主演ジーナ・ローランズ。
1980年の作品。


グロリアと言う、みるからにあばずれの中年女がアパートに住んでいる。
彼女は、隣の部屋にコーヒーを借りに行く。
隣にいるのは、グロリアの友人の一家。
会計士のジャックと言う男の一家だ。

グロリアは元・マフィアのボスの情婦だった。
ジャックは末息子・フィルに、聖書だと言って手帳を託した。
さらにグロリアの友人は、フィルをグロリアに預ける。

子供は嫌いと言うグロリア。
あんたの子供は、中でもとりわけ嫌いと言う。
だがジャック一家の部屋は爆発し、皆殺しにされてしまう。

たった一人の生存者であるフィルを連れたグロリアは、騒然とするアパートを脱出する。
フィルを狙うマフィア、警察。
四方から追われる身となったグロリアはフィルの手を引いて、実家に帰る。

全くグロリアになつかず、可愛げのないフィル。
平凡な家庭にも結婚にも子供にも縁のないグロリアは、子供だって大嫌い。
ましてや生意気なフィルなんか、もっと嫌いだ。

グロリアはフィルを見離したくなる。
しかし見離せない。
生意気な口を利くとはいえ、フィルはまだ子供。
そして家族全員を殺されているのだ。

フィルは、グロリアの家から出て行ってしまう。
しかしフィルは新聞記事で、自分の家族が殺されたことを知った。
どこにも行けないと悟ったフィルは、グロリアの元へ戻ってくる。

やがて、マフィアはグロリアの存在に気付いた。
フィルを寄こせと言う、昔の仲間に向かってグロリアは拳銃をぶっ放す。
地下鉄、バス、タクシーを駆使し、グロリアはフィルの手を引いて逃げる。
そして、グロリアとフィルに心の交流が生まれ始める。

フィルを連れてホテルを出たグロリアは、ピッツバーグに行くと言う。
その途中、墓地に寄ったグロリアは、死んだ人の魂は同じところに集うとフィルに教える。
ピッツバーグ行きの電車を待つ間、グロリアとフィルが入ったレストランにマフィアがやって来た。

グロリアはマフィアたちと渡り合い、フィルを連れて逃げる。
しかしグロリアは自分が元マフィアのボスの情婦で、前科持ちであることから警察にも頼れない。
フィルのことを考えたら、自分と一緒にはいない方が良いのではないかと思い始める。
だがもう、フィルはグロリアから離れなくなっていた。

ところがグロリアとフィルは、ケンカになってしまう。
グロリアがバーにいる間に行方不明になったフィルを探し、グロリアはタクシーを使う。
そしてフィルがマフィアに捕らえられたことを知る。
グロリアはマフィアのアジトから、フィルを奪還する。

その夜、グロリアはフィルと語る。
グロリアはフィルに託された「聖書」が手帳であり、マフィアはそれを狙っていることを知った。
翌日、グロリアはボスのタンジーニに連絡を取る。

フィルには3時間経って、自分が戻らない時はピッツバーグに行くように言ってお金を渡した。
グロリアは、タンジーニのアジトに向かう。
手帳は会計士であったジャックが、マフィアの金の流れを記してあったものだった。

ジャックはその情報を、警察に流していた。
だから家族全員、殺したのだとタンジーニは言った。
グロリアは手帳を渡すから、フィルは助けてほしいと言う。

元々フィルは何も知らないし、マフィアの殺しの現場も見ていない。
そう言ってグロリアは、手帳を置いて出て行く。
帰りのエレベーター。
上からグロリアめがけて、銃弾が降って来る。

フィルはグロリアを待っていた。
だが3時間経っても、グロリアは来なかった。
仕方なくフィルは、ピッツバーグに向かう。

途中、墓地に寄ったフィルは見知らぬ墓に向かって、グロリアのことを祈る。
そこにタクシーが到着する。
中から降りてきたのは、老婦人だった。
老婦人が近づいて来る。

フィルは気づいた。
グロリアだ!
フィルが駆け寄る。
グロリアが両手を広げ、フィルを抱きしめる。



グロリアは、ジーナ・ローランズ。
これがだらしなさそうな、しかも、中年。
スタイリッシュな女ギャングじゃないですよ。

かつては凄みのある美人だったんでしょう。
でも今は、生活が、体にも顔にも出ている。
「鬼龍院花子の生涯」で、侠客の鬼政の女房を演じる岩下志麻さんが、鬼政の仲代さんに聞いたそうです。
この鬼政の女房って、どういう女だったんでしょうね?

仲代さんは映画「用心棒」で、ヤクザの女房を演じた山田五十鈴さんのことを思い出した。
あの女房は、女郎屋の女将だった。
元は女郎だろう。
そう言うと、岩下さんは納得した。

グロリアはおそらく、元は娼婦。
そして、マフィアのボスの情婦となっていた。
タバコの吸い方が、いかにもあばずれ。

料理はまるっきり、できない。
焦がしちゃって、フライパンごと捨ててる。
しかし、これが衝撃的にカッコいい!

中村主水は、風采の上がらない中年男。
しかし、裏の仕事をする中村主水はものすごくカッコいい。
だが、だらしなさそうな中年女性がカッコいいと言う映画は、かつて見たことがなかった!
グロリアがカッコいいと言うのは、衝撃でした。

マフィアのボスの情婦であったグロリアは、どちらかというとマフィア側に立っているはず。
さらにグロリアは子供が嫌い、フィルみたいな子供はもっと嫌い。
マフィアの怖さも知っているグロリアが、子どもを連れて逃げる理由はないはず。
では、なぜ。

無残に家族を殺され、たった一人で放り出された子供。
それを寄ってたかって、マフィアの大の男たちが追って来る。
この状況がただ、グロリアの奥底にある庇護欲、正義感が許せないと言う。

正義感だなんて、グロリアは否定するだろうけど。
放置するなんて。
この子の家族を殺したマフィアに、一枚嚙むなんてできないわよ。

ショルダーバッグを肩にかけ、タイトスカートの足を広げて拳銃を構える。
昔の仲間に向けて、撃って来る。
そのまなざし、睨み。
子連れの虎が一番怖いというが、それはまさにグロリア。

グロリアにフィルを預けたいと言う、グロリアの友人の女性もおそらく元は娼婦。
しかし、生き方は全く違ったんだと思います。
マフィアのボスの情婦であったけれど、グロリアは自分の力で生きてきた女。
自分の身は自分で守ってきたと、構える拳銃、睨む目力が言っている。

「レオン」を見た時、「ああ、これは『グロリア』だ」と思いました。
フィルが女の子に、グロリアが男になった。
だけど、中年女性のハードボイルド映画ってすごい衝撃的だった。

カッコよかった。
当時の日本では、考えられないものでした。
女性、しかも中年がハードボイルドしちゃう。

ハリウッドってやっぱり、懐が深いんだなあと思いました。
本当に多種多様なんだな。
個性豊かなんだ、と感心しました。

ラスト、グロリアは生還する。
そしてフィルに微笑む。
優しい、優しい笑顔。
おそらく、グロリアの人生で初めて見せる母性の笑顔。

監督はジョン・カサヴェデス。
グロリア役のジーナ・ローランズの旦那さん。
いや~、ここまで中年女性さらけ出させてカッコよく作るって、監督、惚れぬいてるでしょ!

「グロリア」は、シャロン・ストーン主演でリメイクされています。
「氷の微笑」の悪女キャサリンが非常に魅力的だったので、期待できる映画だったんですけどね。
ジーナとは違った、カッコいいグロリアにできたと思うのに、…な映画で残念でした。

ちょっと前に放送された市原悦子さんが刑事・乙女を演じたシリーズの最終作が、グロリア風味でした。
悪くはなかったけど、グロリアが生きるような話になってなかったと思いました。
日本でグロリアをやるなら、私はぜひ、余貴美子さんにやってほしいです。


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2017.07.17 / Top↑
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