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悪女の一瞬 「わるいやつら」

1980年の映画、「わるいやつら」。
これも、米倉涼子さんでドラマ化されましたね。
その時の米倉さんは、看護師の
本来は主役ではありません。

映画では、信一が主役。
片岡仁左衛門となる前の、片岡孝夫さんが演じています。
隆子は、松坂慶子さん。

彼女と組んで、信一をはめる弁護士の下見沢は藤田まことさんです。
それぞれの「悪」が描かれます。
最後に笑ったかに思えた、隆子と下見沢。

弁護士の榊は、どっちが上手だか。
お似合いの2人だよと、言う。
下見沢の犯罪を立証する手立てはない。

しかし、その2人も関係がもつれたか。
3年後。
信一の無期懲役が確定し、網走刑務所に送られることになった。
その船の中で刑事が新聞を見て、ぼやく。

「最近の男は情けなくなったな、フラれたぐらいで女を刺すなんて」。
「いやあ、それだけ女が強くなったんだよ」。
「見るかい?」

信一が見た新聞に載っていたのは、隆子が刺されたという記事だった。
有名デザイナーとのコラボのファッションショーを成功させて笑顔の隆子。
彼女のマネージャーに収まっていた下北沢だが、解雇されていた。

隆子に近づく下見沢。
その手に光るナイフを見た隆子の顔色が変わる。
逃げようとする隆子の背中に、下見沢がナイフを深々と刺す。

「やめろ!」と止めに入る男たち。
ナイフを振りかざし、取り押さえられてもなおも暴れる下見沢。
のけぞる隆子。
暴れる下見沢。

ストップモーション。
ファッションショーのための、華やかな音楽が流れ続ける。
これまでのことが画面に映っては消える。
それはまるで、信一の脳裏をよぎるこれまでの記憶のようなキャスティングクレジット。

チセ、梶芽衣子さん。
トヨ、宮下順子さん。
たつ子、藤真利子さん。
信一の妻の慶子、神崎愛さん。

刑事の井上は、緒形拳さん。
信一の担当弁護士の榊、渡瀬恒彦さん。
やっぱり、この辺り、渋くて良いです。
自分の仕事をきっちり、こなしている。

ここではトヨは、悪女の1人。
トヨは信一に殺されそうになり、実際に死んだと思われて遺棄されている。
ところが、息を吹き返して助かっていた。

雨の中、連行される信一。
向かい側には女性の被告が、護送車に乗せられている。
その時、連行されていたのはチセだった。

チセはちらりと信一を見ると、皮肉な笑みを浮かべて護送車に乗り込む。
その目は信一に対する思いなど、みじんも感じられない。
ただ、バカな男に付き合って、バカなことをした自分。
目の前の男など、もう見たくもないという顔だった。

女の保身と心変わりにため息をついた信一だが、次に目に入ってきたのはトヨだった。
この時のトヨの表情が、宮下順子さん、見事。
信一を見た途端、パッと顔が明るくなる。

口は半分、開き、その目でトヨが信一を愛しているのがわかる。
自分を殺した男なのに。
トヨは信一に、微笑みかける。
かつて、そうしていたように。

しかしそれはほんの一瞬。
一秒に満たないほどの一瞬。
次の瞬間、トヨの目は据わる。

「どうだ」。
「あたしを捨てたお前の今の身の上は、どうだ」。
「思い知ったか」。
「ざまをみろ」。

そう言わんばかりの不適な笑み。
憎しみ。
軽蔑。
どれとも取れる表情を浮かべる。

信一を小バカにしたように見ながら、トヨは護送車に乗っていく。
宮下順子さん、見事。
トヨという女性、信一に対する思いがこの一瞬でわかる。

裁判ではトヨは、信一は悪くないと泣く。
検事はトヨのことを、こんなにも被告を愛している。
そんな女性の証言が、信じられるでしょうかと言う。
この検事、蟹江敬三さん。

あのトヨの表情を見ていると、これが嘘泣きであるように思えます。
それと同時に、本音であるようにも思えます。
信一さんを、誰にも取られたくなかった…。

実に味わい深い。
トヨの表情だけでも、一見の価値があります。
米倉さんのトヨも良かったですが、こちらも素晴らしい。
野村芳太郎監督の「わるいやつら」、2時間十分楽しめます。


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