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ジロや どこにもいない犬 「山羊の羊の駱駝の」

大島弓子さんのマンガ。
「山羊の羊の駱駝の」。
この季節になると、思い出します。


主人公・雪子のモノローグから始まります。
11月末の日曜日。
今月分の小遣いをはたいて、映画のはしごをして外に出ると、まだほんのり明るい夕暮れだった。

「ああ、おもしろくない映画だった」。
「もう少し何とか、できなかったのだろーか」。
雪子は不機嫌だった。
街にはジングルベルが鳴り響いていた。

『あたしは暗くなるまで、そこいらを歩いてから帰ろうと思った』。
『あたしは夕暮れになると、下を見て歩き回る癖がある』。
そうして歩いている雪子は、ふと足を止めた。
『なんだあれ』。

腰までの長い髪。
天使の羽。
白い長いローブ。

その男性は、雪子に「よろしく」と言った。
「あ、こちらこそよろしく」。
雪子にそう返されて、男性は戸惑った。

「アフリカ難民のため、献金をお願いします」。
男性は、そう書かれた箱を持っていた。
あ、あたしの財布によろしくと言ったのか。

雪子は電車賃だけ残しておいた小銭を、募金箱に入れた。
その時だった。
「りんごん」。
「りんごん」。

『りんごん?』
「ありがとう!」
男性は笑顔になった。

その笑顔は天使様だった。
お金を入れる音は、天の鐘の音だった。
雪子は道ばたに座り込み、その天使様を観察し続けた。

『あ、店じまいだ』。
募金箱を下ろし、男性は背負っていた羽を下ろした。
『なある。それで後ろから見ると背負子のところは髪で隠れるわけだ』。
ローブはたくし上げて、歩きやすいようにして帰る。

ふと、雪子は気づいた。
「何時」?
「11時~!?」
雪子はそんなに長い時間、天使様を見ていたのだ。

『我が家には、防音壁の音楽室があります』。
『今ではあたしはピアノをやめているので、この部屋は今日のように門限を犯した時等の説教に使われるのです』。
『どんなに大きな声で怒っても、近所には聞こえない、というわけです』。

私がこの部屋を最後に使ったのは、10年前のことです。
近所の子供がつないであったうちの犬をいじめて、噛まれてケガをした時です。
その日、学校から帰ると、犬がいなくなっていました。
父が保健所に連れて行き、薬殺したのです。

それが父の体裁でした。
あたしは音楽室で、犬の鳴く一生分を泣きました。
それ以来、あたしは泣いていません。

説教が終わった時、雪子はうっかり小遣いの前借りを頼んでしまった。
さらに説教が伸び、寝たのは2時になった。
でも気分は最高。
雪子は翌日も学校の帰り、天使様を見に行こうと思った。

途中、10円玉でも落ちていれば、献金ができる。
そう思った雪子に、声をかけてきた男がいた。
「こういう者ですけど、助けてくれないかな」。
男は苦労しないで大金が入る、綺麗なバイトを紹介するという。

雪子は写真を撮られ、10万円をもらった。
そして走った。
「あの場所にいますように」。
「いました!」

天使様はいた。
「お待ちください、今、10万が行きます」。
そうだ。
お札は音がしないから、全部500円玉に替えよう!

雪子が募金箱に500円を入れると、りんごんという音が鳴り響いた。
ひゃあああっ、いい音!
「ありがとうございます」。
まだまだ、まだまだあるんです。お待ちください!

ごーんごーん、ごーん。
天使様の顔が、引きつって行く。
だが雪子は、最大限の笑顔になった。
あたしは合計200回、鐘を打ち鳴らした!

あたしは毎日、毎日、あの天使のうれしそうな顔を見たいと思いました。
あの顔を見れば、ご飯を食べなくても生きられるような気がしました。
そういうことで次の日も、雪子は天使様を見に行った。

天使様は雪子を覚えていた。
手を振ってくれた。
忘れらりょか。

雪子はうれしくて、犬が尾を振るように手を振り続けた。
またバイトをして、献金をしたい。
雪子は、あのバイトでもらった名刺に電話をした。

しかし電話中。
ずっと、ずっと電話は話し中だった。
なんだここ?と思ったが、雪子はもう電話する必要はなくなった。

あの時の記者が、向こうから雪子に会いに来たのだ。
雪子のグラビアは大評判になり、問い合わせが殺到したらしい。
また出てくれないかな、と男は言った。
そして、雪子のグラビアを見せた。

「これ!」
「約束が違うじゃない!」
「肩から上の写真で、胸から下は出さないって言ったのよあなた!」
「下着をはずすのは、その方が肩が綺麗に撮れるからって言ったのよあなたは!」

記者が見せたのは、雪子のヌードグラビアだった。
騒ぎで、雪子の両親が出てきた。
雪子のグラビアを見た父親は、雪子に家に入っているように言い渡した。
母親は泣いた。

「ごめんなさい、でもあれはあっちが約束違反を」。
「黙りなさい!」
父親は怒鳴った。
「なかったことにしよう」と、父親は言った。

「あれはお前ではない。お前に似た、どこかのあばずれだ」。
なある(ほど)…。
「学校に行きなさい」。

雪子は父親に言われたとおり、記者を無視して走った。
記者は追いかけてきて、学校にまで入ってきた。
そして生徒たちに、「奥杉雪子ってどんな子?」と聞いた。

「ここ、お嬢様学校でしょ?」
「BFはいるのかな?あの子のお父さん何してる人?」と聞いて回った。
教師たちからも家に問い合わせが来たが、父親は人違いだ迷惑していると言った。
雪子は記者を見ながら、思った。

敢然と無視されたのはあの記者ともう1人、あたしです。
あの写真が私でなかったら、私はどこにもおりません。
雪子の心は、真っ白になった。

どこにもいない犬。
犬(ジロ)や。
帰っておいで。
私の肩に帰っておいで。

雪子が天に手を伸ばす。
天からは、ジロの首輪と鎖が降りてきている。
まだ、幼い髪の短い雪子。

今、ロングヘアの雪子の横顔は、無表情だった。
あたしが夕方、決まって街を徘徊するのは、あたしが犬になるからです。
ジロはあの時、あたしの肩に帰って来たのです。

雪子に、陽差子というクラスメイトが声をかける。
「あたし、あの写真あなただと思うわ」。
「ねえ、どうして写真のせたの」。
「他言しないから教えて」。

雪子は言った。
「バイト料がほしいからよそれだけよ」。
すると陽差子は、「もうあなたがあんな雑誌に引っかからないようにお貸しするわ」と一万円を渡した。

雪子はうれしくて、躍り上がった。
「ありがとうっ!」
雪子はそれを、天使様に献金した。

記者は追いかけてきた。
雪子は、今日は追われているので手短にしますと、陽差子の一万円札を入れた。
追いかけて来た記者は、天使様にも聞いた。

「あの娘、もしかしたら相当の金額をここに入れたのと違いますか」。
「はい、いただきました」。
「彼女はそれを社会鍋に入れた」と、記者はメモした。

「で、あなたは彼女から誘われましたか」。
「誘うって何のことです」。
「そりゃその何ですよ、この頃の高校生は進んでますから」。

「いいえ、誘われません」。
「何度も誘われた」と、記者はメモした。
その様子をまた、陽差子が見ていた。

天使様は名前を聞かれて、「練馬ヒロシ」と名乗った。
「うそーぉ」と陽差子は思った。
名前も嘘っぽいが、やっていることも嘘っぽいと思った。

陽差子はヒロシを追うことにした。
一切の生活を放棄し、募金活動にささげた人の生活を見てやろうと思ったのだ。
献金活動を終えたヒロシは、電車に乗った。

そして、高級住宅街で降りた。
「億ションに入って行った?」
「あっ、あの部屋だ。髪型でわかるわ」。
ヒロシのシルエットが、窓に映っていた。

「女の人がいる」。
「ええええ」。
ヒロシは女性と、乾杯している。
「シャンペングラスで?」

乾杯してる~~~~!
何が清貧よ。
奥杉さんはね、奥杉さんは騙されているのよ!
陽差子は、心の中で絶叫した。

翌日。
陽差子はこのことを雪子に知らせようと、待っていた。
しかし、雪子は他のクラスメートに話しかけられていた。

雪子は、陽差子に話したことを彼女たちにも話していた。
そして、別のクラスメートもまた、困っていると思って雪子にお金を貸していた。
雪子は思った。

今まで、人見知りしていたけど。
なあんだ。
みんな、天使じゃないの。

陽差子はやっと、雪子に話かけることができた。
そして昨日、見たことを話した。
あなたのお金は、シャンペン代になっている。
陽差子は、そう言った。

しかし雪子は言った。
「ご忠告ありがとう。でも献金が何に使われようと、あんまり関係ないのよ」。
陽差子は、顔をしかめた。

関係ない?
あたしに献金詐欺の片棒を担がせておいて、関係ないですって?
雪子はまた、クラスメートに借りたお金を献金していた。

陽差子はそれを見ていた記者に、詰め寄った。
雪子のプライバシーを探るぐらいなら、献金詐欺を暴け。
それがジャーナリストでしょ、と陽差子は言った。

記者はむっとしたが、次の瞬間、それはおもしろい、と思った。
翌日、陽差子は雪子に、すぐにお金を返してくれと言った。
雪子は「悠長にも」働いたら返そうと思っていたので、どうしようと思った。

母親はあの日以来、雪子と話さない。
お小遣いの前借は、無理だ。
雪子の目に、母の財布が入ってきた。

4千円入っていた。
とりあえず、2千円抜いた。
そして陽差子に返した。

分割と言われた陽差子は、早くあの汚らしい献金詐欺から手を引きたいと思った。
雪子は別なバイトを探したが、、短時間で稼げる仕事はなかった。
だからまた、母親の財布から拝借するしかなかった。
雪子がお風呂から上がると、母の雪子を見る目が変わっていた。

翌日、学校では早めに始まったバーゲンセールの話で盛り上がっていた。
話はクリスマスには、ホテルでディナーパーティーをしようかという方向に進んだ。
うんと着飾って。
だがそれには、2万円と言うお金がいる。

ドレス代もかかるだろう。
1人がボソッと言った。
「貸したお金って、翌日ぐらいに返って来るもんだと思ってたわ」。
「あたしもよ!」と、1人が声を上げた。

「ええー!」
「ここに居る人全員、奥杉さんにお金貸してるの?」
「でも返してなんて、鬼みたいに言えないわよね」。

「ふん」と、陽差子は言った。
「アタシは返してもらったわよ、全額!」
…返してもらった?
みんなが、顔を見合わせた。

雪子が登校してきた。
みんなで言えば、こわくない!
雪子に向かって、みんなが叫ぶ。
「あたしたち、お金がいるの、お願い今すぐ返してほしいの!」

雪子は、呆然とした。
「月曜まで待って」と、雪子は言った。
陽差子にはまた、2千円持って行った。

「ああ、いらないわ。もういいのよ、あたしには!」
「え?」
『これ以上、イライラしたくないのよ。残りの分もう良いわ。あなたにあげるわよ』と、陽差子は思っていた。

『あたしは今年は誰にもプレゼント買わない』。
『ディナーパーティーもしない』。
『それでいいのよ!』

雪子が帰宅すると、母の財布には紙テープが貼ってあった。
母は、雪子を疑っている。
だが、自分の財布に入っていた金額も疑っているのだ。

財布を開ければ、紙テープが切れる。
家には、母と雪子しかない。
雪子は考えた末、ついに財布ごと持って行った。
だがお金は、全然足りない。

雪子は、街を歩いた。
土曜の夕方は人は多いが、お金を落とす人はいない。
強盗するにも、銀行は閉まっている。

雪子が帰ると、母の別の財布が置いてあった。
母はそこから、目をそらさなかった。
翌日の日曜日。

母は一晩中、眠らずに、財布を見張っていたしい。
目が赤かった。
雪子は、朝からお金を拾いに行った。
足は疲れ、お腹はすき、やがて暗くなってくる。

明日は月曜日。
「雪だ…」。
見上げた雪子の上に、雪が降ってきた。

雪の夜の中、座り込んでいる雪子に天使様が話しかけてきた。
「どうしました」。
「何か、心配事でも?」
「何でもないんです」と、雪子は答えた。

「今日は、献金できなくて」。
「あなたにはもう、一生分いただきました」と天使様は言った。
「ほんとに何にもないんなら、もうすぐ、最終の電車ですよ。早くお家にお帰りなさい」。

「はい」。
しかし雪子は帰らない。
帰れないのだ。

すると天使様はくるりと踵を返し、雪子の前にやってきた。
「何かお忘れ物でも」と聞く雪子に、天使様は「はい、あなたを」と言った。
「僕とおいでなさい。食べ物ぐらいには、ありつけますよ」。

「え?」
「僕の寄り合いの場所にです」。
うそ…。
行きます!

マッチ売りの少女じゃないけど、これは幻覚であたし、朝、ここで冷たくなってるんじゃないだろうか。
雪が、たくさん降って来た。
あたしはそれでもいいと、思っていた。
もう、こっちの世界に帰って来なくたっていいと。

どこをどう通って着いたのか、覚えてなかった。
フッと、全体が明るくなった。
マンションだった。

わー、ヒロシのおなりーと、声が上がった。
女性が「お待ちかねのヒロシちゃん!」と、そこにいた人たちから、からかわれていた。
大勢の人がいた。

「いらっしゃい、あれ?お連れさん?」と、その女性が言った。
「うちのお得意様なんだ。何かあったかいもの作ってやっても良いかな」。
その女性は雪子を「まあー、冷たい!電気毛布でくるんであげましょう」と言った。

雪子の前に「どうぞ!俺の特製リゾットだよ」と、料理が出てきた。
「これ差し入れ」とワインを持った男性がやってきた。
「雪だ、仕事は止め、止め!」と言っていた。

どうやらこのマンションは、毛布をかけてくれた女性の家らしい。
天使様の恋人かな、と雪子は思った。
誰かがヒロシに「お前の集めた金は今頃、ラクダの背に乗ってポックリポックリ難民の方角に向かってる」と言った。

天使様は笑っていた。
アフリカへ行くのは、果たして駱駝で行くのかな。
雪子は、そんなことを考えていた。

誰かがワインを飲ませたので、雪子はトリップしていた。
そこはいつの間にか、音楽室になっていた、
雪子は父母、そしてクラスのみんなにワインを注いでいる夢を見ていた。

犬と言うのは、いつもいつも人に何かをしてあげたい
してあげたい
してあげたいと思っている動物らしい
あたしにはそれがよおくわかりました

メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス

記者は、編集長に電話をしていた。
雪子の父親が教育評論家で、市長候補ナンバーワンだと突き止めたのだ。
そして夕べ、雪子はイカサマボランティアの乱痴気パーティーにいたと報告していた。

月曜日、雪子は学校に来ていない。
生徒たちから金を巻き上げて、雪子はイカサマ師に貢いでいた。
総額62万円。
みんな、金が帰って来ないので騒ぎだしていた。

編集長はそれをすべて聞くと、明日の発売の雑誌に載せるつもりだった。
そうして、雑誌は出てしまった。
雑誌を見たヒロシは「あ、俺の写真だ」と言って本を読んだ。

雪子の献金は、そんなことをして集めた金だったのかと思った。
だがもう、お金は送ってしまった後だった。
もう返してやれない。

それにしても。
雪子は、月曜の朝に帰って行った。
今日は火曜日なのに、どこで何をしているのか。

雪子は雪の中、お金を探して歩いていたのだった。
目が、かすんできた。
あったかいところで休もうと、思った。
雪子が座った椅子の横に、カバンがあった。

え?
まさか、神様
くださるんですか?
…と雪子は思った。

手を伸ばし、かばんを持って走った。
記者が、それを撮影している。
雪子がかばんを開けると、百万円が入っていた。
「ああ、めまいがする!」

しっかりしろ、しっかり。
これならみんなに返せる。
すぐ学校へ行こう。
雪子は、お金を分けた。

これは、クラスの人に返す分。
これはお母さんに返す分。
そして残りは。
天使様のところに寄って差し上げて行こう!

カメラのシャッターは、雪子を追って切られ続けている。
天使様は、こちらに向かって走って来る雪子に気が付いた。
「あっ、あの子だ」。
「あっ、こっちへ来る」。

「手に札束?」
「札束」。
「今度は何の?!」
雪子は天使様に抱き着いた。

「ありがとう」。
天使様はそう言って、雪子を抱きとめた。
「え?」
雪子は眠っていた。

警官の笛の音。
シャッターの音。
人のざわめき。

救急車のサイレンの音。
天使様によりかかりながら、雪子は思った。
ジングルベルが聞こえていた。

雪子が目を覚ましたのは、病院だった。
父親は警察に呼ばれていた。
私が置き引きをやったので、それで。

あれは神様が下さったお金では、なかったようです。
それは全額持ち主に返されました。
クラスメートの借金も、父が払ったそうです。

父は各顧問を辞職し、市長選出馬を断念しました。
天使様も取り調べられましたが、詐欺の証拠はなく、すぐに釈放されたそうです。
しかし週刊誌に写真入りで詐欺と歌われては、募金活動はできず。
天使様は仲間のカンパで、アメリカに行って同じことをやると言って旅立っていきました。

あたしの罰はと言いますと、どうやら薬殺は免れ、北国への島流しとなりました。
気分を出してお船で、父の知り合いのお寺に3年の修行に出る私とジロ。
あたしは考えました。

宗派は違ってもあの天使様と同じことをやれると。
それ、すなわち托鉢であります。
「しかしだれも、とおらないわ…」。

「うわあ、幻想的」と言う声がする。
ビルの上から、イルミネーションが見える。
雪子のクラスメートたちが、ホテルでディナーパーティーをやっていた。
みんな、着飾っている。

メリークリスマス!
「では、お席にご案内いたします」という声がした。
だが、陽差子は動かなかった。

「あたし、帰る」。
「陽差子、どうしたの」。
「何で、嘘。これから始まるのに」。

だが陽差子は、外に出た。
天使の羽をもがれたから、クリスマスソングは歌えない
陽差子は、思った。

だけど来年には新しい羽も、はえてこよう
来年でダメなら再来年
再来年でダメならその次の年
5年でダメなら10年後

やっぱりあたしクリスマスソング歌いたい
メリークリスマス
アンドアイラブユー

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