こたつねこカフェ

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能力があってもなくても、さ 「四月怪談」

初子はテレポートすると、津田沼くんが委員長と一緒にお通夜から帰るところだった。
初子と対面した津田沼くんを見損ねた!
津田沼くーん!と初子は追いかけた。
委員長が足を止めた。

「どうしたの」。
「私ね、国下さんの顔見せられて命ってのが、とても頼りないものに思えてきたの」。
「私の命も、津田沼さんの命も、誰もしっかり命を留めておくことができないんだって…」。
「こんな他愛ないものの前に、何が『恥』だろうと思ったら…」。

委員長は津田沼くんの胸に額を押し付けた。
「ごめんなさい。しばらく、こうさせてください」。
津田沼くんの手が、委員長の肩に回った。

そうか…、そうだったのか…。
委員長は津田沼くんを好きだったのか。
津田沼さんも、あんなにしっかり彼女を受け止めている。

傷心の初子に弦之丞が、早く生き返れと言う。
だが、初子は泣いた。
今、生き返って何になる。
ピエロだ、ピエロ。

それを見て弦之丞は、初子に謝った。
早く生き返れと、急かして悪かった。
初子は一緒に歌おうと言った。

♪アヴィニョン橋の上で♪
♪踊ろよ、踊ろう♪
西洋の歌はわからないと言う弦之丞に、初子は私だって適当だと言った。
すると弦之丞は「おたいこ橋でも良いですか」と聞いた。

♪おたいこ橋の上♪
♪王様が通る♪
「お殿様も良いかな?」
♪お殿様も通る♪

♪お姫様も通る♪
2人は歌いながら、橋の上で踊った。
楽しく、歌って、踊った。
横を、タクシーが通った。

「お…、お客さん、見えませんでした?」
「今、高速のガードの上を白っぽい男女が踊りながら歩いていくのを…」。
「う…、運転手さん、悪いギャグはよしてください。夜中に…、ど、どうして、高速のガードレールの上を歩けるんです…」。
タクシーの中では、運転手もお客さんも蒼白だった。

初子と弦之丞は飛びながら、初子は子供の頃見た見事なレンゲ畑がこの辺だと言った。
作文にも書いたのだ。
今日は思い切り、寝転がろう。

しかしレンゲ畑は、団地の用地となっていた。
何もなかった。
初子は無言だった。

弦之丞は、君の住んでる街の駅付近は僕が生きていた頃、綺麗な小川のある森だったと言った。
僕らはそこで遊んだ。
今のビルや自転車置き場を見ると切なくなるけど、君たちにとっては生まれた時からあるものだ。

やっぱり愛しいのではないか。
今、駅付近が野原になったとしたら、君は自転車置き場を悼むよね。
初子はうなづいた。
ありがとう、心優しき時代劇さん。

「明るくなってる。戻ろう。出棺になる前に」。
「僕は君といた時、楽しかった」。
「私も楽しかったわ」。

棺の中に初子が横たわっている。
「さあ、行って。今度こそ、お別れだね」。
初子が振り向いた。

「良い一生を」。
弦之丞が手を振る。
初子は棺の中の自分を見た。

ターバンしてる。
頭ケガして、手術して、髪そられて丸々坊主の初子さん。
さようなら。

自分に別れを告げて、初子は戻って来た。
「どうしたの、戻ってきたりして」。
「生き返るの、やめた」。
喪服の人たちに、「出棺します」という声がかかった。

「どうしたんだ!早く戻って!」
「私、あなたの遺体見つけるの手伝ってあげる」。
「何をバカな!」
「僕は自分の体を発見したらためらいなく生き返るつもりだ。そうしたら君はどうする」。

「その時は君の遺体はもう、灰になっているんだぞ」。
「その時はね、昇天して空気に溶ける」。
棺に釘が打たれている。

「君ね、いかに霊がおもしろくないか、わかっただろう」。
「今ならまだ、棺の中から合図すれば誰かが気づく。焼かれてからでは取り返しがつかないんだよ」。
「わああ、出棺してしまった」。
「火葬場に行こう、テレポート」。

さようなら。
大勢の人たち。
さようなら。
津田沼さん。

夏山登。
友達。
ご両親さま。

さようなら。
16年間、私の、とりえなかった生活。
さようなら。
これからン10年間の私の、とりえのない生活。

弦之丞が泣いている。
「何で泣くの」。
「あなたの生き返らない心に、泣いているんです」。

「とりえって何ですか。とりえって、すなわちあなた自身ではありませんか」。
「飛べないことも、不可能のことも、冴えないことも、みんな、とりえなんじゃありませんか」。
「それでいいんなら、あたしの体、あげるから、あなたが私になれば良いわ」。

「早く行って。あの中に入ったらおしまいよ」。
「そんなこと。そんなことできません。そんな、霊道に反すること!」
「お願いです、お願いですから、あなたこそ生き返ってください」と弦之丞が言う。

焼き場に入ってしまった棺を見て、初子も弦之丞もあわてた。
遺体が焼かれてしまったら、どちらが生き返るにしても、もう戻れない。
何とかして時間を稼がないと。

その時、夏山登が走って来る。
「その棺、開けてください!」
手にたくさんのレンゲの花を持っていた。

「これ、持たせたいんです」。
「一番好きな花って、文集にも書いてた」。
「書いてある場所まで行ったら、なかったからその向こうまで行ってむしってきたんだぜ、国下!」

初子は驚いた。
レンゲ!
「今、鍵を閉めてしまったところなんです。そちらでお焼香してください」。
「ちょっと開けてくれるだけでいいんですよ。国下はこれ、ほしいんじゃないかと思うんですよね!」

その時だった。
「あけてーっっ!」
絶叫が聞こえた。
「あけてーっ、あけてーっ。だしてちょうだいー!」

初子の母が叫んでいた。
お母様?!
なんつうすごい声。
理性がない。

初子の母親が絶叫する。
「連れて帰る、連れて帰る!」
「初子を出して、初子を家に連れて帰るーっ!」

「連れて帰る、連れて帰る!」
「初子は生き返ってる!」
「だして、だして、だしてーっ!」

父親が頭を下げ「すみません。もう一度あけて確認させてやってください」と言った。
「こういう方は一度棺を開けて確認しても、また閉める時、同じことを繰り返すんですよ」。
「強行手段で火葬しちまいますと、その後一生、助けてやれなかったという後悔にさいなまれるし」。
「よく言ってあげてください。絶対これきりにしてくれって」。

棺が開く!?
父親は母に言った。
「いいね。もう一度、お棺を見せてくれるそうだ。それを見て、納得したらちゃんと送ってあげるんだ。いいね」。
「は、はやくあけて。は、はやく!」

焼き場のドアが開く。
「初子ちゃん!」
「初子ちゃん!」
母が泣きながら、棺に駆け寄る。

「国下!レンゲだよ!」
夏山がレンゲを初子の手に持たせる。
その時だった。

固く閉じていた初子の手が開く。
レンゲを持つ。
「おばさん!」
夏山が叫ぶ。

初子の目が開いた。
母は凝視していた。
父も凝視していた。
次の瞬間、どよめきが起きた。

うわあっと声が上がった。
奇跡だ、奇跡だ!
そうよ、夏山登。
あたしはレンゲがほしかったのよ。

あたしはそれ受け取ろうとして、しっかりつかんでいた岩井弦之丞を引き連れて。
2人一緒に遺体の中に帰ってしまったの。
もう、夢中でね。

「弦之丞!」
「一緒に生きよう!」
かくてあたしは生き返った

このことをみんなに話して笑われるだけだから、夏山にだけ、話すことにした。
夏山は最初、変な顔をしていたけどそのうちに納得した。
私は時々、自分でも不思議な態度を取る。
男の子みたいな態度取ったり。

もうひとつは私がものすごく、歴史に強くなったこと。
教科書に書いてあることは絶対まちがいだと不思議なくらい、自信持って言ってるんだ。
ほんとに見てきたように、断固として言えるもんね。

それに私は優しくなった。
テルテル坊主を「やめて」と抱きしめる初子。
「吊るすなんて、しかも雨の日に」。

何を見ても何をしても、奇妙に新鮮に感じるし。
見慣れた街並みを見ても、うれしい。
コップを持ち上げて水を飲んでも、うれしい。

右足の次に左足を出して交互に動かして歩くと言う動作にも、感動してる。
インベーダーゲームできること。
運動の後の疲労感。
食べた時のおいしさ。

見てよ、葉っぱが濃くなってだんだん夏が来る。
夏が来たら、海にも行こう。
麦わらかぶって、森に行こう。
草を踏む音が、するだろう。

花瓶を割っても「割れたわー」と、感動している。
母親はこういう私を見て、「死ぬよりはいい」と言って頭をなでてくれます。
お母様。
私はあの理性ゼロのお姿を見てから、お母様をちょっぴり見直しているんです。

時々そういう自分をあほみたいと思って見てる自分に気が付いて、支離滅裂です。
「おーい、夏山殿」と初子が夏山に声をかける。
「殿は少し古いんじゃない?」

クラスのみんなが葬式のレンゲの一件を、戦後最大のラブストーリーだともてはやしたからではないのですが。
私は前よりずっと、夏山登を好意的に見るようになりました。
「見える?」と夏山が聞く。

「あの桜の木の上に、ぼんやり教室を眺めている霊がいるよ」。
「髪をみつあみにした女の子だな」。
「…何にも見えないみたい」。

「うーん、あんたに霊を見る能力があるなんて思ったのは、間違いだったなあ」。
「能力がないのは嫌い?」
自分でもどきっとするほど、素直に物を言うよね。
ドキッとするよ。

「国下さんは国下さんだろ。能力があってもなくてもさ」。
「わあ、僕の考えと同じだよ」。
「僕?」
ま、いいや。

桜の木の上、女の子がこちらを見ている…。
♪お殿様が通る♪
♪お姫様も通る♪
歌声が響く。


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