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こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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最悪のシリアルキラーなのに『楽園に殺人は存在しない』「チャイルド44 森に消えた子供たち」

実在したシリアルキラー、アンドレイ・チカチーロをモデルにした映画です。
というか、原作アリ。
しかし、チカチーロは52人もの被害者が出るまで、捕まらなかった。

実に巧みに逃げたのか。
否。
それは、このような理由のためだった。

There is no murder in paradise.
楽園に殺人は存在しない。
(犯罪が存在するのは、腐った資本主義社会だけだ)。


1933年、スターリンがウクライナにもたらした食糧危機により、1日に2万5千人が餓死した。
この飢餓による虐殺「ポロドモール」で多くの子供が孤児になった。
1人の少年が青い闇の中、ベッドに横たわっている。
涙が流れる。

傍らのテーブルにあるのは、木製のコイン。
少年は意を決してそれを持ち、外に出る。
外では少年たちが1人の少年を囲み、蹴っていた。
少年はひっそりと、外に出る。

走る。
雪の積もっている森の道を、ひたすら走る。
軍人らしき男たちが、たき火をしている。

コインを見つめる少年に、「お父さんかい?」と声をかける男。
「死んだのか」。
「君、名前は?」

「…要らないから捨てた」。
少年は初めて、口をきいた。
するとその男性は言った。

「新しいのをやろう」。
「レオ。ライオンのことだ」。
少年が持っていたコインを、見つめる軍人。
その目に痛みが走る。


「チャイルド44 森に消えた子供たち」。


1945年、ベルリンの国会議事堂。
激しい銃撃戦になっていた。
「進め!進め!」
怒号が飛ぶ。

1人が撃たれる。
「ワシーリイ、撃つんだ!」
だがワシーリイと呼ばれた男は動けない。

「アレクセイ、援護しろ!」
レオという隊長がアレクセイに声をかけ、前に進む。
手榴弾が飛ぶ。
ドイツ兵が吹き飛ぶ。

「行くぞ!」
レオが走る。
「ワシーリイ何してる、早くしろ!」

国会議事堂は、占拠された。
ソ連兵たちが、階段に座ってタバコを吸っている。
赤い国旗を持って、やってくる男たち。

「君が来い」。
レオとアレクセイが呼ばれる。
「ソ連軍によるベルリン陥落」。
「良い写真になるぞ!」

だがアレクセイは略奪して、たくさん腕につけている時計を取れと言われる。
アレクセイはそれを拒否し、レオが国旗を持っててっぺんに登る。
空にはソ連軍の飛行機が次々、飛んできている。

レオ・デミドフ。
英雄として、新聞に写真が載った。
レオ。
あの少年の成長した姿だった。

1953年。
モスクワ。
今、レオはMGB(KGBの前身)のエリートとして働いている。

レオは、学校の美しい教師のライーサを妻にしていた。
一目惚れだった。
しかし、ベッドの中でライーサは冷めきった表情をしていた。

レオの仕事は、スパイの取り締まりだ。
突然、民家に押し入り、スパイ、反逆者の疑いがある者を連行する。
「獣医の家だ」。
「スパイめ、どこに逃げた」。

彼らはスパイ容疑の男を追って、ある農家にやってきた。
農家を銃を持ち、囲むMGBたち。
歌を歌いながら家から出てきた少女が、MGBの兵士たちに気付く。
「シー」という制止にもかかわらず、少女が「ママ!」と絶叫して家に戻った。

仕方なく、兵士たちは家に入る。
ドアをけ破る。
「ママ!」
「動くな!」

中では夫婦が姉妹を抱きしめて、恐怖に立ちすくんでいた。
隊長であるレオが入って来る。
「見当たりません」と部下が報告する。

「アナトリイ・ブロスキイを知ってるな?」
「いません」。
「この家にいると言う情報をつかんできたんだが」。

外を見ると、草原の中、走って行く男がいる。
「ユーリ!ニコライ!あそこだ」。
「ブロスキイ!」

呼ばれた男は立ち止まった。
服を脱ぎ、天を仰ぐ。
「撃ってくれ」。

「手は頭の上だ」。
「殺せ!」
男は襲い掛かってきた。

MGBの兵士が銃を発射し、仲間を呼ぶ。
「殺せ!」
押さえつけたが、ブロスキイは兵士の腰のナイフを取り、自分の腹を刺した。

兵士2人が走って来る。
「ニコライ、抑えろ!」
「とんでもない奴だ」。

農家の前で、兵士たちに囲まれた夫は、「お願いです、家族を殺さないでください」と哀願していた。
「うるさい、黙れ!」
夫が膝まづかされた。

「お願い、助けて!」
妻が叫ぶ。
「お願い」と妻が振り向いた瞬間、ワシーリイが頭を撃ち抜いた。

ブロスキイが「やめろお!」と絶叫する。
夫が、両脇を抑えられる。
ワシーリイが夫に向かって、銃を向ける。

「ワシーリイ!」
それを見たレオが叫ぶ。
「や、やめろ」。
兵士に抑えられながらも、グロスキイが走って来る。

ワシーリイが背後から、あっさりと夫の頭を撃ち抜いた。
子供2人は震えながら、泣いている。
「おい、ワシーリイ!」
レオが空に向けて、銃を撃った。

ワシーリイが振り向く。
「お前、何をしている」。
レオの声に怒りを感じたワシーリイはうろたえた。

姉妹は手を取り合って、泣いている。
「何、って…」。
「見せしめですよ」。
「教えてるんです」。

「何だと?」
「奴ら、裏切り者だ」。
「同じ道を歩まないように教訓を」。

「何を言ってる?」
「学ばせてやったんです」。
次の瞬間、レオは思い切り、ワシーリイを殴った。
ワシーリイが勢いよく吹っ飛び、うずくまる。

「教訓だと?」
レオはワシーリイの襟首をつかみ、立たせた。
「学ばせてやっただと?」
「お前から何を学ぶっていうんだ?!」

「臆病者のくせに!子供だぞ!」
「まだ子供なんだ!」
「ふざけたことを抜かすな!」

「レオ」とアレクセイが呼ぶ。
「子供は関係ない!」
「レオ」。
アレクセイが止める。

「こいつを連れてけ。顔を見ると殺したくなる」。
「何をしている?子供を中に入れてやれ」。
アレクセイが子供たちを「行こう。大丈夫だから」と連れて行く。
グロスキイの悲鳴も聞こえて来る。

少女2人を前に、レオが「近くに親戚がいるか」と聞く。
長女は泣いていたが、次女は魂が抜けたように押し黙っていた。
レオは部屋の隅からトランクを取り出し、2人のものと思われる人形を入れてやる。
彼が涙をぬぐっているのを、アレクセイが見ている。

レオが帰宅した。
何かに耐えられないように、キッチンで料理しているライーサを、背後から抱きしめる。
すると一瞬、ライーサが何かに耐える表情をする。

少年が、列車のレールの上にスプーンを乗せている。
列車が通過し、スプーンが平らになるのを見て、少年は笑った。
男が近づいて来る。
「コインで試したこと、ある?」

男の顔は見えない。
「この方が楽しいよ」。
男はポケットからコインを出した。
「やってみせてあげよう」。

「向こうにもっといい場所がある」。
少年は男の言葉を信じた。
男と並んで歩いていく。
「名前は?」

夜中、レオの家のドアがノックされる。
妻のライーサが、不安そうな声でレオを起こす。
「誰か来たわ」。
レオは夜中、呼び出されてMGBへ向かう。

「悲惨な事故が起きた」。
上官が話し始める。
「アレクセイの息子が、列車に轢かれた」。

少年の遺体が、ベッドに置かれている。
遺体が持ち上げられ、背中が見える。
背中に走る、赤いT字の大きな傷跡。

「列車事故、…ですか?」
「君とアレクセイは、同じ部隊にいた戦友と聞いている」。
「そうです」。

「アレクセイは優秀な捜査官だ。我々は彼を守りたい」。
「すみません、話が今一つ見えないのですが」。
「守るとは?」

「悲しみで混乱しているのだろう。息子は殺されたと言っている」。
「だが同志スターリンが言うように、殺人は資本主義の病だ」。
「党への批判ととられかねない。君ならどうすべきかわかるだろう」。
「この件は、担当部署に回したら…」。

上司はレオの発言を遮った。
「君以上の適任は、いないと思う」。
「彼のためだ。親友なら『助けて』やれ」。


最初に書いたように、これは実在したシリアルキラー、アンドレイ・チカチーロがモデルです。
この犯人の所業が実におぞましい。
書くのも嫌。

無残な少年の…。
明らかに殺されて、…。
…不自然に遺体が切り取られている。
にも関わらず、殺人事件として認められないのです。

これは事故死だと言う。
見た者は誰もが、事故死ではないと確信しながら、犯人を捜そうとはしない。
できない。
誰もやらない。

スターリン政権下のソ連。
連続殺人などは、腐った資本主義社会の犯罪。
この世の楽園である共産主義国家・ソ連ではそんな犯罪はあり得ない。
だが44人もの子供が、行方不明になっているのだ。

ついにレオの親友のアレクセイの息子が、死体となって発見された。
これが普通なら、犯人探しと逮捕のミステリー作品になるところ。
だが、これは殺人だとは言えない。

真相を追うレオは、やがて、何と、国家に対する反逆の疑いをかけられるのです!
そんなバカな!
しかしこれは、当時のソ連ではあったことらしい。

当時のソ連では殺人事件など、ないとスターリンが「決めている」。
スターリンが決めたことに異を唱える人間は、反逆者なのだ。
それが戦争の英雄であっても。

MGB局員としてスパイ、反逆者を取り締まる立場だったレオ。
それが国家から敵にされなければならなくなる。
しかし、それでもレオはこの連続殺人犯を追い詰めようとする。

食糧不足、圧倒的に物が不足している社会。
そして当時、密告社会であるソ連では、自分が生きるためには何でもする。
人を犠牲にしても、それはしかたないことなのだ。

今の日本に生きている者からすると、とんでもなく息苦しい社会が描かれます。
子供を殺害するシーンが出て来なくて、本当に良かった。
それがあったらもう、見られない…。

稀代のシリアルキラーを逮捕するまでのミステリーであると同時に、国家とは何か。
そこが人間の命を大切にしない世界なら、そこで生きる人間はどうしたら良いのか。
これはスターリン政権下のソ連を舞台にした、シリアルキラーを題材にしながらも、そういうことを考えさせられる映画なのです。

「スターリン大元帥は、子供の安全をお望みです」。
学校教師であるライーサが、子供たちにそう、言う。
今もどこかの国で、起きていそうな話であります。


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