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沙粧。妙子。よろしくね。

あたし。
沙粧。
妙子。
よろしくね。

土曜日の深夜ドラマ「限界団地」が、おもしろい。
そこで、主演の佐野史郎さんの出演作に再び注目。
佐野さんというと「ずっとあなたが好きだった」のマザコン男・冬彦さんが超有名になってしまいました。
確かに冬彦さんはすごい。

その後の「誰にも言えない」の麻利夫もすごい。
しかし、他にも佐野さんでなくては、これは成立しないというドラマがあります。
というか、ほとんどそうかもしれない。
中でも強烈なのが、これです。

「沙粧妙子 最後の事件」。
暑い、暑い95年の夏のドラマでした。
前年の94年がまた、ものすごい猛暑でした。

93年が8月に長袖ジャケットを着ないと寒い夏だったんです。
涼しいんじゃなくて、寒い。
雨ばかりで、8月の終わりか9月の初めに1週間ぐらい晴れて、それで夏は終わりました。
野菜は高騰し、米騒動が起こりました。

昔ならこれで飢饉になったんでしょうね。
そんな夏の翌年、94年は2年分暑くなったと思ったぐらい、暑かった。
前年に夏を経験していないので、きつかったです。

その94年の次の年の95年。
この年の夏も、暑かった。
この時からですね。
夏が30度超えるのは当たり前、夜は25度以下にならない熱帯夜が続くようになったのは。

沙粧妙子の放送中も、猛暑の日々でした。
ドラマの終盤には、スポンサーの化粧品会社のCMが秋仕様になったんですが、冗談じゃないと思いました。
とてもとても、秋の装いなんて…って感じでした。

その猛暑の中、沙粧妙子を演じた浅野温子さん。
冷静で、落ち着いた妙子のクールな美貌。
常に長袖のダークスーツを身にまとい、汗一つかかない。
何といっても初回のタイトルが「笑わない女」というぐらい、愛想がない。

今でも覚えていますが、警部役の蟹江敬三さんとのツーショットのシーンがありました。
浅野さんは片方の足を一段高いところに乗せているように足を曲げて、腰に手を当てている。
仲の悪い2人は別々の方向を向いている。
そのポーズで静止する2人。

何気ないシーンですが、この2人のポーズ。
このポーズをカッコ良く見せるには、実はとてもキツイ姿勢を取らないとならなかったと思います。
沙粧妙子、彼女の周りだけ、温度が低いような印象。
実際はあの猛暑の中、大変だったと思います。

妙子は警視庁の肝いりで作られた、プロファイリングチームの一員。
選び抜かれたエリートが集められたチーム。
その中のリーダー格、梶浦圭吾は、IQ190近い天才。
妙子と梶浦は愛し合うようになる。

この頃、映画「羊たちの沈黙」で犯罪プロファイリングと言う言葉が知られるようになってきていました。
その著者が記したドキュメンタリー本に書いてあった言葉。
「深淵を覗き込むときは気を付けなければいけない。深淵もまた、こちらを見ているのだ」。

つまり、シリアルキラーの心を理解しようとする時、理解した時。
それはこちらも心に闇を持てたこととなる。
沙粧と梶浦の幸せな日は、長くは続かなかった。

梶浦圭吾はついに快楽殺人に目覚め、チームのもう1人の女性・京子を殺害。
沙粧の好きなバラの花を口に入れた死体を、沙粧へのメッセージを添えて贈ってしまった。
逮捕された梶浦は精神異常と判定され、不起訴の末、収監された。
梶浦は、その知能を駆使し、逃亡。

行方知れずになっていた。
そして、被害者がバラの花を口に入れられた殺人事件が起こる。
梶浦圭吾だ。
彼は、沙粧をこちら側に招いているのだ…。

その沙粧の相棒には、岩手県から来た新人刑事の松岡が選ばれた。
最初の松岡との邂逅で、沙粧が言ったセリフ。
「あたし。沙粧。妙子。よろしくね」。
ひとつひとつ、区切ったような、平坦な声で沙粧妙子は名乗った。

松岡優起夫は、柳葉敏郎さん。
素朴な、正義感の強い、人の良い新人刑事が似合ってました。
犯人とおぼしき男の妻に、尋問する沙粧。
彼を犯人と思っていないと言いながら、次々に鋭い質問をする沙粧妙子に妻はついに声を上げる。

あんたが一番、犯人だと思ってんじゃないの!
泣き叫ぶ妻を見て、松岡は言う。
「沙粧さん、あんた、ひどい人だ」。

しかし沙粧は顔色一つ変えずに、応える。
「そうぉ?」
後のスペシャル版で蟹江さんの高坂警部が、言います。

「沙粧。かわいそうな女だ」。
「頭が、良すぎるんだよ」。
「もう、梶浦も池波もいない。お前と付き合える人間は、もういないんだよ」。

捜査課の嫌われ者の沙粧の冷たいプロファイリングに、ついていけないものを感じながらも松岡は沙粧とともに捜査を進めていく。
クールで切れ者の沙粧妙子だが、梶浦の幻を見た時は豹変する。
怯え、うろたえ、「消えて!」と本を投げつけながら叫ぶ。
処方された安定剤を服用するその姿は、弱々しい。

まだ、梶浦が「こちら側」にいて、沙粧と恋人だった時。
妙子は梶浦の腕の中、頭を梶浦の胸に預けている。
この時の妙子の、幸せそうな表情。
梶浦への思慕があふれ、それはカワイイ女の顔。

沙粧妙子はクールである反面、梶浦に対してはものすごく動揺する。
つまり梶浦に対しては一途な思いを捨てきれない女性なのです。
強さと弱さ。
かわいげのなさと、かわいらしさ。

相反するものを持っている沙粧妙子は、実に魅力的なキャラクターなんです。
そういうふうに作っているにしても、とても魅力的。
捜査課の嫌われ者の沙粧の冷たいプロファイリングに、ついていけないものを感じていた松岡は、沙粧の違った面を見て行くことになる。
そして、沙粧とともに捜査を進めていく。

沙粧妙子は、浅野温子さんのベストワークじゃないかと私は、思っています。
「抱きしめたい!」のキュートさも良いんですが、沙粧妙子は浅野さんじゃないとああはならなかったでしょう。
演出家の河毛俊作さんが、とにかく浅野さんをスタイリッシュに見せようと思ったと言っていた記憶があります。
それは大成功でした。

しかし、沙粧妙子を火曜だったか、水曜だったかの夜9時や10時にやっていたって今にしたらすごいです。
後に「アンフェア」というドラマを見ましたが、私はこれ、沙粧妙子をやりたいように思いました。
昔のドラマを見ている者の悪い癖とは思いながら、私はアンフェアには全然のれませんでした。

今はなかなか、ドラマを作るのが難しいですね。
いろんなところの、規制が厳しいんでしょう。
こんな時代に沙粧妙子のような作品は、ちょっと無理…。

浅野さんの沙粧妙子が素晴らしいのは、もちろんですが、このドラマは他の出演者も素晴らしい。
そしてそして、特筆すべきは池波宗一役と、佐野史郎さん。
妙子は浅野さんでなければできないが、池波は佐野さんでなかったら成立しない。

叩き上げの警部で、プロファイリングなるものを認めない警部の高坂を演じるのは蟹江敬三さん。
妙子は高坂を小バカにし、高坂も妙子を嫌う。
時に部下に対して鉄拳を振り上げることもある高坂だが、誰よりも部下を思っている男でもある。

高坂と行動を共にするのは、金田明夫さん。
そして素晴らしいのはまた、犯人役です。
香取慎吾さんの谷口は、これはアイドルが演じるような役なのだろうかと思いました。

国生さゆりさんも潔癖さゆえに、ちょっと踏み外したところを利用された哀しく怖い女を演じています。
今は良く、業の深そうな犯人役を演じる国生さんですが、この役はその原点のような気がします。
広末涼子ちゃんと柏原崇くんが、これがまたすごく良い。

忘れてはいけない、忘れられないのはスペシャル版の犯人。
中谷美紀さんは当時、これで完全に一皮むけた。
これからはいろんな役をやっていけるだろうと、評価されていたのを覚えています。

そして、草なぎ剛さん。
これは、この役を良く引き受けたなと思うような犯人。
アイドルとしては一番、避けたいような役じゃないかと思うんですが。
この時から非凡な才能を見せていたんですね。

どんなものがこの役に必要か、求められているか、的確に判断し、表現している。
後に注目するまで、まるで草なぎさんに興味がなかった私がこの役は覚えていましたから。
こういう、出演者に隙がないドラマって見たいですね。

沙粧妙子の第1話のタイトルは「笑わない女」でした。
最終回のタイトルが「最後に笑う女」。
1回ぐらい見逃しても良いと思うようなドラマもあるけど、これは絶対に見逃したくなかった。
先が読めませんでしたから。

これ、原作がないオリジナルのドラマなんですね。
原作がない、一から製作するドラマ。
そういうので、おもしろいドラマをまた、見てみたいと思います。


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