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心理分析だけじゃ計れないものってないですか
2018/07/21(Sat)
全部、ネタバレしてますので、ご注意を。

3人目の殺人者は、少年・日置武夫。
この少年を、柏原崇さんが演じています。
ドロップアウトした未成年を指導していた精神科医によって、洗脳された日置。
彼は次々、世の中のためにならないと判断した男を腕に仕込んだ鋭い刃物で殺害していく。

2人目の標的は、六本木でバーを経営する男。
若手実業家というのは表向きの顔で、裏の顔は薬物を売り、家出少女を食い物にする男だった。
男のマンションに侵入する日置。
そこには15歳の、家出してきた少女がいた。

ぽつん、と独りでテレビを見ている少女。
画面に映っているのは、おそらく、お笑い番組。
だが少女は、笑っていない。

少女の口元には黒く、あざができている。
口元に手をやると、端についている血が手についた。
殴られた跡。

この少女を演じているのが、広末涼子さんでした。
広末さんの演技がまた、とても繊細だった。
少女はガラス窓から侵入してきた日置に一瞬、驚く。

日置は口に手を当て、黙ってろというゼスチャーをする。
このシーンが、ツーショットがとても美しい。
少女がうなづくと、2階から男が降りて来る。

「なおみぃ」と声をかける。
それが少女の名前なのでしょう。
「黙ってろ」。
日置が隠れる。

男が少女の顎を手でつかみ、こちらを向かせる。
すでに足元が怪しく、薬をやっているようだった。
「痛かったか?」
少女の無言は、唯一の抵抗に見える。

「良い子にしてたらもう、殴ったりしないから」。
そう言って、男はテーブルの上の粉を吸い込む。
「すぐに気持ち良くなる」。

察するに少女は男の薬か、はたまた男そのものを拒絶して殴られたのでしょう。
男の手が少女の肩に回り、少女を包み込む。
少女の肩が、それを拒絶しているのがわかる。
その時、「後藤さん」という声がする。

日置が立っている。
男の目が狂暴な光を帯び、「なんだ、お前」とすごむ。
「すいませぇん」。

日置が袖から飛び出した鋭い刃物を、男の胸元にめり込ませる。
刃物を抜くと、血が噴き出る。
日置のジーンズでできたジャケットの袖口に、返り血が付く。
一目で、傷の深さがわかる。

男の目が虚空を見つめ、座り込むように倒れる。
少女が息をのむ。
日置が袖から、奇妙な道具をのぞかせる。
それは前に殺人をした時、一緒に居たバーのママの頭を叩いた道具だった。

この道具で頭のある個所を打撃すると、打撃された人間はその時の記憶をなくすという。
殺しはしないのだが、そんなことは少女にはわからない。
第一、たった今、目の前で日置は人を殺しているのだから。
少女が目を閉じる。

だが、日置は少女を打てない。
ドキン、ドキン、ドキン。
日置の胸の鼓動が聞こえて来る。
怪談の上からか、「アニキぃー」という声がする。

「アニキぃー、電話です」。
日置が逃げようとする。
「待って!」
少女が叫ぶ。

「私も、連れてって!」
一瞬、ためらった日置だが、少女の腕をつかむと窓から外に出る。
走る。

息が切れる。
立ち止まった日置は、少女を見ると「お前、家に帰れ!」と言う。
少女は応えない。

その様子から、おそらく、家庭環境に恵まれないことがわかる。
遊びたいから、とかではなく、居場所がないから出てきたのであろうことが。
そして、あの男に引っかかったのだと。

だが日置は「帰れ!}と言うと、ポケットから紙幣を取り出す。
くしゃくしゃの紙幣を少女の手に握らせると、「もう、ついてくんな!」と言って去って行く。
柵を飛び越え、日置は消える。

この後、日置は沙粧たちに逮捕されるわけですが、床にねじ伏せられた時に沙粧妙子を見るその目。
斜めから半ば閉じた瞼の陰から、のぞく視線。
その表情が美しい。
美しい、危険な獣のよう。

柏原崇さんを、私はこれで認識しました。
さて、日置からは全く供述が取れない。
沙粧妙子が彼の精神科医が誰なのか、追及するのに写真を見せていく。

彼の脳波は、梶浦の写真を見ても反応しない。
瞳孔も変わらない。
だが沙粧妙子が、「この娘」とあの少女の写真を見せる。

すると、日置の頭につながれた機械からつながる針が大きく動く。
高坂警部たちが、目を見張るほどに。
日置の表情自体は、変わらず無表情。
しかし、瞳孔は開き、明らかに変化が見られた。

松岡は警察の前で、たたずむ少女に気が付く。
「あの子」。
少女は、日置の事件の切り抜きを持っていた。
あの時、日置が助けた少女だった。

今は家にいると言う。
それも本当かどうかはわからなかったが。
日置に会いたい。
だが沙粧妙子は、冷たく言う。

あなたは生まれて初めて、人が殺されるところ目の前で見た。
動悸がしただろう。
その時、現れた日置にその動悸が起きたと勘違いしただけ。
動悸を恋と間違えただけ。

日置は人を殺している。
長く拘留されるだろう。
あなたのためにならない、忘れなさい。

その夜、松岡は婚約者の理恵にこの話をする。
人が人を好きになるって、どういうことだろう。
沙粧さん、クールだった。

理恵は、犯人もその子を好きになったのねと言った。
そしてそれは、つり橋の論理だと言った。
揺れるつり橋を男女が渡って行く。
その揺れと落ちるのではないかと言う不安で、ドキドキする。

するとそのドキドキは、ともに渡った相手に向かう。
相手にときめいたような気がして、2人は恋に落ちるのだと言う。
しかしそれは本当の恋ではないと。
だけどそうなのだろうか。

人を好きになるって、その時のシチュエーション、気持ち、相手が好みかどうか。
いろんな原因が混ざって、それで好きになるのはどのパターンでも同じなのではないか。
松岡は考える。
自分と理恵の時は、どうだっただろうか。

結局、日置からは何の供述も引き出せないまま、拘束期間は終わる。
日置は拘置所に移されるため、護送車に乗せられる。
沙粧妙子と、松岡と、警官が2名が乗り込む。

パトカーが先導する。
護送車の中に乗り込んだ日置は、沙粧妙子を見てうっすら笑ったようにさえ見えた。
車が走り出す。

セミが激しく鳴いている。
残暑の日差し。
その時だった。
小さな声が聞こえてきた。

声は「待ってえ!」と言っていた。
日置がハッと顔を上げる。
後部のガラス窓を見る。

うつむいた。
表情が変わる。
その変化を見た沙粧妙子も、松岡も日置を凝視する。

夏の傾いた日差しの中、少女が走って来る。
辺りは狂ったように、セミの声がこだましていた。
少女が走るアスファルトの熱が、立ち上って来るようなオレンジ色の景色。
日置は再び、ガラス窓を見る。

少女は涙を浮かべながら、ひたすらに護送車を追って来る。
信号が赤になった。
車が止まる。

必死の少女が、護送車の後ろの窓に追いすがる。
飛びつくように、金網をつかむ。
ついに日置がたまらずに、動く。
窓に駆け寄る。

手錠をつけたままの手を、金網に掛ける。
そこには、泣きじゃくっている少女の顔があった。
日置が向かい合う。

2人が見つめ合う。
日置の顔が泣きそうになった。
「おい、やめろ日置!やめろ!」

警官が日置を連れ戻そうとする。
「日置!」
「やめろ!」
「戻るんだ!」

金網と分厚いガラスに阻まれながら、2人は見つめ合う。
日置の目からも、涙がこぼれた。
「外へ回れ!」

警官が1人、外に出て行く。
しがみついている少女を引きはがそうとする。
「離れなさい!」
「いやあああ」。

少女が叫ぶ。
だが警官は、少女の手を金網からはずした。
倒れるような形になった少女を警官は、受け止める。
信号が青に変わる。

護送車が走り出す。
道路に座り込んだ少女の肩をぽん、と叩いて、警官はパトカーに戻った。
少女は子供のように座り込み、泣いている。

窓には日置が見えた。
少女は目を見開き、涙をこぼしながら日置を見つめていた。
遠ざかって行く少女を見ながら、日置は窓に貼りついていた。
2人の距離が離れていく。

護送車の中、日置が崩れ落ちた。
ひざまずき、号泣していた。
嗚咽が響く。
そこに冷酷に笑う、少年連続殺人犯・日置はいなかった。

見ていた松岡が沙粧に言う。
「人を好きになるって」。
「心理分析だけじゃ計れないものってないですか」。

だが沙粧は顔を背けると、一言。
「極限状況の出会いで生まれた恋愛は、長続きしないの」。
松岡が顔をしかめ、首をかしげる。


このシーン、沙粧妙子の中でも名シーンですね。
「待ってええ」に合わせて流れるメインテーマ。
ドラマチックな、緊張感のある切ないメロディ。
氷のように心を閉ざした日置が、人間に戻る瞬間。

鉄のように固められた日置の洗脳を崩した、たった一人の少女。
この後、日置は素直に供述を始める。
決して、自分のことは日置はしゃべらないと向山は言ったが、日置はしゃべる。

沙粧の言う、まやかしの恋愛が日置を崩した。
北村朝美に妙子は言った。
「本当にあなたを愛してくれる人に出会ってたら、あなた、こんなことにならなかった」と。

日置を本当に愛してくれる人がいたら、日置は殺人者にはならなかった。
少女との出会いが、この前にあったなら。
柏原崇さんと、広末涼子さんの世界。
素晴らしかったです。


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