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博打で殺す 第20話「負けて勝負」3/3

改めて見ると、本当に「必殺必中仕事屋稼業」は見事なドラマです。
この「負けて勝負」は、必殺のクライマックスの殺しのシーンがないんです。
当時見ていた人はいつ、殺しのシーンになるか待っていたでしょうね。

そしてそれがなくて終わったので、かなりビックリしたのでは。
しかし物足りないどころか、立派な必殺作品になっているのに二度ビックリしたのでは。
普通なら、半兵衛と伊三郎が向き合った時、殺しになるところです。
この当時の必殺は、まだまだ実験的な展開ができる、未知の領域があった時期なのですね。

「必殺」シリーズの中で、殺しがない回は3つかな。
これと、「からくり人」と「からくり人血風編」。
「からくり人」では緒形さんが、「血風編」では草笛さんが参加してる。

おもしろいなあ。
この3編、どれも傑作です。
「必殺」が苦手な人は、逆にこの3作は楽しめるんじゃないかと思います。


「負けて勝負」は、「博打で殺す」展開。
この異色の展開のターゲットは、津川雅彦さん。
若い頃の津川さん、色男。
お照は、二宮さよ子さん。

西洋博打、これはトランプのブリッジですね。
と言ったら、「ポーカーでしょ!」と指摘されました。
そうですね、ポーカーですね。
私はポーカーのルールを知らないので、描写が間違っている可能性は大です。

しかしこの博打のシーンは、ものすごくおもしろい。
心理戦として、名作だと思います。
「仕事屋」は仕事のシーンで良く、先が見えないどんでん返しがあります。
この時は、メインと思われた半兵衛が博打をしないところですね。

とどめを刺すのが、それまでほとんど存在感がなかった政吉であるところです。
この林さんが、ほんとーに!おもしろい。
大人の圧倒的な余裕で来るのが、津川さん。
それに対して、頭の悪い子供のようなのが林さんです。

これは侮ってしまう。
2人のやり取りは、実におもしろい。
その政吉に、右往左往していたおせい。
5千両の手形を書いて、ニッコリする。

草笛光子さんの、この笑顔がすごい。
この笑顔に、津川さんが「騙された!」って思うわけです。
そのぐらいのニッコリなんです。

これは、騙される。
おせいのこのニッコリがなかったら、伊三郎は引っかからなかったって笑顔なんです。
そして打って変わったような、政吉のニヤリ。

これに、いかさまのプロ、騙しのプロの伊三郎が完璧にやられるんです。
伊三郎がやられる手が、但馬屋を破滅させたのと同じ手というのもニクイ。
実は何にも持ってなかったというのが、良い。

津川さんの悪役と言うと、最期は奇声を上げてやられるのが見もの。
それまでが冷酷で、残酷で、カッコイイだけにそのやられっぷりが際立つ。
今回の伊三郎は、常識を行ってる人物だと思いました。

それでも、但馬屋をいかさまにはめて、破滅させてるところを見ると、かなりのワル。
半兵衛を酒で潰して、頭の弱そうな政吉を引っ張り込もうとするところも、かなり悪い。
だけど、あんまりひどいワルに見えない不思議なキャラクター。

売れなくても、今さら表看板の人形師を下ろせない意地がある。
人々に理解されなくても、ウケの良い人形は作りたくないプライドがある。
そこが半兵衛の共感を呼び、好感を感じさせるような面を見せるからでしょうか。

お照とグルになってはいますが、お照とは反対に伊三郎は冷めてる。
大和屋の主人の妾の子ではあるが、大和屋の子供ではない。
伊三郎を抱えていた母親は、男から男へ妾稼業で渡り歩くような女性だったのか。
それとも生活に困窮し、どうにもならなくて大和屋の世話になったのか。

何も語られませんが、母親の生き様が伊三郎に影を落としていることは間違いない。
更には自分も同じように、この場合はお照の世話にならないとやっていけなかった。
そのことも伊三郎の生き方に、だいぶ大きな影を落としていると思われます。
せめて気持ちの上で貸し借りなくするには、お照に儲けさせてやるしかなかったのかもしれません。

お春にちょっかいをかけたのも、最初は遊びだったと思います。
それがお春が毅然と拒絶したところから、様子が違って来たのでは。
もしかしたら、母親はお春と似ていたのかもしれません。
逆に正反対だったから、惹かれたのかもしれません。

「仕事」で勝負した半兵衛は、気が付かないうちにお春でも勝負していた。
自分が顧みなかったうちに、お春に自分が捨てられるかもしれない状態になっていた。
何だかんだ言って、半兵衛の生活の芯にはお春がいる。

だからお春が伊三郎の家にやって来た時、半兵衛は声もなく、人形を握りしめる。
まさに、裁判の時を待つ気分だったに違いない。
結果、人形の首を切り落として、半兵衛の中で伊三郎は死んだ。
伊三郎とは再会と勝負を約束しましたが、伊三郎が戻ったところで半兵衛は2度と会うことはないでしょう。

上方へ行った伊三郎は、どうなったんでしょうね。
いかさまをやり続けたんでしょうか。
やがていつか、ばれて命を落とす。

それとも、お春のような女性を見つけて、まじめに人形で生きていく。
どれも当てはまるような気がします。
それだけ、津川さんの演じた伊三郎は、つかみどころがなかったのかもしれません。


「仕事人」の殺し屋たちは、プロフェッショナルのカッコよさがある。
「仕置人」もプロのカッコよさ、ストイックさ、そして怖さと凄みがある。
そして、哀しみと寂しさがある。

「仕事屋稼業」の半兵衛と政吉は、素人から始まっている。
だからこれに凄みというより、頼りなさを感じる。
それだけに人の好さと必死さがある。
さらに、ダメダメな博打好きらしい情けなさと、そしてかわいらしさがある。

今回の半兵衛とお春、最終回を見た後だとこれも伏線だと思えます。
こういう経緯を経ているから、最終回の2人に胸が痛くなる。
「仕事屋」は23話あたりから、半兵衛、政吉、お春、そしておせいに人生が重くのしかかって来ます。
そういうところでも、この20話は後半の快作かもしれません。


テーブルを囲んでいる津川さん、緒形さん、林さん。
草笛さんと二宮さんはお元気ですが、3人ともいなくなってしまった。
久々に見て、やっぱりおもしろい!とうなると同時に、とてもとても寂しくなってしまいました。
津川さんのご冥福をお祈りいたします。


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Comment

鳶辰と伊三郎
編集
後味の良さで伊三郎かな、必殺の津川さんは。
個人的には「相棒」の元法務大臣の僧侶役が今後どうしていくのか?
が気になりますね。色々な伏線があっただけに。

また、ちゃーすけさんの記事を読んでて、無性に「ザ・ハングマン」での林隆三さん演じるブラックが見たくなりました。あれも良かったなあ。
2018年08月21日(Tue) 00:58
地味JAM尊さん
編集
>地味JAM尊さん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>後味の良さで伊三郎かな、必殺の津川さんは。

異例の展開ながら、スッキリした終わり方になりました。

>個人的には「相棒」の元法務大臣の僧侶役が今後どうしていくのか?
>が気になりますね。色々な伏線があっただけに。

続きが見たかった。
雛子さんもいるし。

>また、ちゃーすけさんの記事を読んでて、無性に「ザ・ハングマン」での林隆三さん演じるブラックが見たくなりました。あれも良かったなあ。

「ハングマン」好きでしたよ!
見たいです。
70年代や80年代の初めごろのアクションもの、たまにすごく見たくなります。

「大追跡」とか「大都会Part2」とか、日本テレビの火曜日だったかな?
あの枠の番組とか、懐かしくてたまにすごく見たくなります。

コメントありがとうございました。
2018年08月21日(Tue) 22:17
No title
編集
>若い頃の津川さん、色男。
このエピソード直後辺りからタヌキ化したのですよね、津川さん。
「必殺」シリーズで緒形さんと絡んだと言えば
「仕掛人」15話「人殺し人助け」も凄かったです。
新興仕掛人グループのリーダー松十郎役でしたが色気のある悪役ぶりで
半衛門グループを追い詰めるのが印象的。
2018年08月22日(Wed) 06:23
巨炎さん
編集
>巨炎さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

>>若い頃の津川さん、色男。
>このエピソード直後辺りからタヌキ化したのですよね、津川さん。

た、タヌキ化!
…確かに。

>「必殺」シリーズで緒形さんと絡んだと言えば
>「仕掛人」15話「人殺し人助け」も凄かったです。

世のため人のためにならない者の仕掛けしか引き受けない半右エ門。
それに対し、私利私欲、理屈の通らない仕掛けも引き受ける松十郎一味。
ワルでした。

>新興仕掛人グループのリーダー松十郎役でしたが色気のある悪役ぶりで
>半衛門グループを追い詰めるのが印象的。

一時は半右エ門たちは身動きが取れなくなった。
しかし、形勢逆転。
その後の津川さんの命乞いがすごかった。

俺が悪かった、二度とやらない、もうしません、だから命だけは助けて!
ほんとだ、ほんとにもうやらない!
初めてリアルタイムで見た人は、びっくりしたでしょうねえ。
でも必死な時って、あんなものかもしれないと思ったり。
津川さんはほんと、楽しませてくれました。

コメントありがとうございました。
2018年08月25日(Sat) 17:45
勝って負け、負けて勝ち…
編集
ちゃーすけさん、お久しぶりです。

>>だからお春が伊三郎の家にやって来た時、半兵衛は声もなく、人形を握りしめる。
政吉、おせいとの連係プレーによって、伊三郎を見事に仕留めた半兵衛ですが、
この時の半兵衛は「負けて」しまった訳です
(お春の心を持って行かれていた)。

博打打ちとしての半兵衛は駆け引きといかさまでは勝ちましたが、
なおざりにしていたお春の心の隙をつかれていた、と言う意味では
伊三郎に負けていました。

逆に伊三郎はそれと意識する事は無かったのですが、駆け引きといかさま
の読みあいではおせい・半兵衛・政吉には一敗地に塗れましたが、
半兵衛の掛けがえのない宝物の隙をついた、と言う意味では勝利を収めました。

また、表と裏の峻別を半兵衛・政吉の二人に説いた事のあるおせいも、
この話では見事にバクチの魔性に囚われて、表でどうにもならないから
二人に依頼を出す、と言う最終回の崩壊を予感させる始まりからスタート
したりもしています。
2018年08月26日(Sun) 02:49
別スレ6124さん
編集
>別スレ6124さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

>>だからお春が伊三郎の家にやって来た時、半兵衛は声もなく、人形を握りしめる。
>政吉、おせいとの連係プレーによって、伊三郎を見事に仕留めた半兵衛ですが、
>この時の半兵衛は「負けて」しまった訳です
>(お春の心を持って行かれていた)。

まさか、でしたよね。
犬を拾ってくれた人がいた。
素敵な人だった。
これが伊三郎だった、ちゃんと話を聞いていなかった。

>博打打ちとしての半兵衛は駆け引きといかさまでは勝ちましたが、
>なおざりにしていたお春の心の隙をつかれていた、と言う意味では
>伊三郎に負けていました。

あの時の半兵衛の衝撃。

>逆に伊三郎はそれと意識する事は無かったのですが、駆け引きといかさま
>の読みあいではおせい・半兵衛・政吉には一敗地に塗れましたが、
>半兵衛の掛けがえのない宝物の隙をついた、と言う意味では勝利を収めました。

うん、そうですね、半兵衛のあの時の心のつぶやきは「俺は負けてた…」かもしれません。

>また、表と裏の峻別を半兵衛・政吉の二人に説いた事のあるおせいも、
>この話では見事にバクチの魔性に囚われて、表でどうにもならないから
>二人に依頼を出す、と言う最終回の崩壊を予感させる始まりからスタート
>したりもしています。

くやしいー!って叫んでしまってますからね。
いつも冷静に判断するおせいさんが、自分のことは冷静になれない。
なるほど、ここも最終回への伏線になってますね。

だから「負けて勝負」なんでしょう。
みんな、この時、勝っていたようで負けてる。

コメントありがとうございました。
2018年08月26日(Sun) 14:29












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