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中村家がひとり 菅井きんさん

迫力ある、怖いおばあさんを演じる女優さん。
すぐ思い出すのは3人です。

優しいおばあさん役というと、原ひで子さん、草村礼子さんとかですね。
今、凛としたおばあさん役なら、草笛光子さんです。
草笛さんの姿勢の良さ、エレガントさ、品の良さはまさに「ミスマープル」。
八千草薫さんも、そんな感じでしょうか。


さて、怖いおばあさんというと、1人は、原泉さん。
「横溝正史シリーズ」で警部が原さんのことを「俺、あのばあさん苦手なんだよ」と言いました。
子供の頃、ああいう怖いおばあさんがいた世代なんですね。
身内じゃなくても、近所にいた。

あの警部さんが昭和初期の生まれぐらいだとすると、明治生まれ。
もしかすると、幕末。
肝の座り方、根性が違ってしまうんですね。

「ヤヌスの鏡」というマンガで、ヒロインの祖母の怖いお祖母さんが言ってます。
「今の若いものは臆病になっているが、私が若い頃は人が死ぬのは日常茶飯事だった」。
「私の祖父は戊辰戦争で。夫は大東亜戦争で。大勢殺したものです」。

これに20代の男性は後になり、冷静になったら「あんなばあさんに」「何怯えたんだ」と自嘲する。
しかし、このお祖母さんはすごい迫力で押してくるんですね。
この役をやるなら、原泉さんがピッタリだと思いました。
実際にドラマ化した時は、初井言榮さんが演じました。

この方が私が思い出す、2人目の怖いおばあさんを演じる女優さんです。
「ヤヌスの鏡」で初井さんはヒロインの裕美が多重人格者になるきっかけを作った、虐待に近い育て方をした祖母を演じました。
実際にはとても優しい方で、孫の裕美に対しての折檻シーンがなかなかできなかったらしいですね。
「天空の城ラピュタ」では、海賊の女傑・ドーラ役の声でした。

そして3人目が、菅井きんさんです。
原さんが亡くなり、初井さんが亡くなった時。
ああ、もう菅井さんしかいらっしゃらなくなってしまった、と思いました。

菅井さんが出演したCMで、おもしろいのがありました。
確か、相手は高見千佳さん。
お嫁さん役の高見さんが、お味噌汁を飲みながら言います。
「お母様の作るお味噌汁は、本当においしくて」。

すると菅井さん。
つーんとした態度で「千佳さん、それ、永谷園のお味噌汁」。
高見さん、ニッコリ笑って「知ってましたわ」。

カーン(ゴングの音)。
テロップ「今日は引き分け」。
菅井さんのキャラクターあってのCMです。
「嫁の勝ちじゃないの?」の声が多かったようですが、そこは菅井さんに敬意を称して。

怖いお姑さんが印象に残ってしまいますが、「太陽にほえろ」ではジーパン刑事のお母様。
刑事になった息子を支える、優しく、芯が強い母親。
「おみやさん」では渡瀬恒彦さんに対して「坊ちゃま」と世話を焼く、まるで母親のような乳母役でした。

女優になると言った時、お父様は反対されたそうです。
「女優とは美しい女性がなるもの」と言って。
菅井さんはそれだけじゃないと言ったそうですが。

実際に菅井さんは、ヒロイン女優は変わっても、ずっとずっと活躍し続けました。
「家なき子」では、安達祐実さんを抱きしめてやりたくてもできない。
突き放すしかない。
そんな心の揺れ動きを見せてくれました。

安達祐実さんのすずが、菅井さんを追いかけて来る感動のシーン。
それが「おばあちゃーん」ではなくて「ババアー!」
菅井さんにふさわしいシーンのようで笑ってしまうような、泣いてしまうような。
「必殺」では絶対に欠かせない、中村せんですが、あまりにありすぎてこれ!と絞れない。

「必殺商売人」の最終回、りつが死産した子供の葬列。
せんがいる。
そして、主水がいる。

主水は仲間の仇を討って帰宅したら、せんが「どこに行っていたのです!」と言う。
「りつが…」。
作品中、ずっと懐妊したりつと、りつ第一にしたせんに圧迫されながら主水は暮らしていた。

それは笑いと同時に、悲劇でもあった。
主水本人だけではなく、商売人仲間の元夫婦2人も主水には複雑な思いを抱く。
仕置人が子供の親になるなんて…。
子供のために用意された布に手をやろうとして、主水は手を止める。

そして、手を見る。
たった今、仕置きをしてきた自分。
その手に、見えない血がついているように。
まるで、自分の手は無垢な子供に触れる資格がないように。

そして最終回。
生まれてこなかった子供に、自分の罪深さと、決して幸せにはなれない、なってはいけない自分を思う。
その巻き添えにした子供と、せんとりつのことも。
主水は、子供も、せんもりつも、自分の罪を背負ったかのように感じたに違いない。

うつむいて歩くせん。
うつむくことも許されない主水。
ここで主水は初めて、もしかしたら、せんと同じ悲しみを共有した存在を感じたかもしれません。

だからか、次の「仕事人」からは、主水とせんとりつの関係が変わったように見えます。
何だかんだ言って、左遷された先で仲良く暮らしているような。
シリーズの性格が変わったと言われたらそうなんですが。

何が寂しいって、中村家にりつさんしかいなくなったのが寂しい。
想像もしたくない。
あの家に一人、りつさんがいるなんて。

これが歳を取る、ということでしょうか。
歳を取る寂しさ。
切なさというものなのでしょうか。

暑くてたまらないですが、今が4時半前に暗くなる季節じゃなくて良かった。
菅井きんさんの訃報を聞いて、夕闇が早かったらもう、寂しくてたまらないことでしょう。
長い間、ありがとうございました。
菅井きんさんのご冥福をお祈りします。


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Comment

自分の部屋の扉の内側に
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パチンコ「必殺仕事人Ⅲ」の販促品?だった特大サイズのポスターが貼ってあります。上部に菅井さん、下部に藤田さんが配されており、なかなか気に入ってるんですが、キャプションが「ムコ殿っ‼しっかりお仕事なさってください!」(・・・もう少し、作品世界に寄り添ったセリフ「~なさいませ‼」とかにしてほしかったですが。)星になってしまったお二人ですが、貼りっぱなしでいることでご冥福をお祈りします。
2018年08月31日(Fri) 00:36
地味JAM尊さん
編集
>地味JAM尊さん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>自分の部屋の扉の内側に
>パチンコ「必殺仕事人Ⅲ」の販促品?だった特大サイズのポスターが貼ってあります。

あっ、良いですね~!

>上部に菅井さん、下部に藤田さんが配されており、なかなか気に入ってるんですが、キャプションが「ムコ殿っ‼しっかりお仕事なさってください!」(・・・もう少し、作品世界に寄り添ったセリフ「~なさいませ‼」とかにしてほしかったですが。)

そこはやっぱり、必殺シリーズを良く見ている人だと、主水やせんが言いそうな言葉がわかってしまうんですよね。

>星になってしまったお二人ですが、貼りっぱなしでいることでご冥福をお祈りします。

藤田さんも菅井さんもお喜びでしょう。
お二人の演じた主水とせんは、ずっとずっと、生き続けますね。

コメントありがとうございました。
2018年09月03日(Mon) 22:10
編集
こんにちは…おじゃまします。
菅井きんさん、初井言榮さん、原泉さん、北林谷栄さん、ミヤコ蝶々さん、清川虹子さん…今も忘れられない“老け役女優”の皆さん。
作品(ドラマ)を構成する単純な記号やパーツでは、決して終わらない深みを与える存在感を魅せて、感じさせてくれましたよね。
今、僕が思い出せる印象的な“老け役女優”といえば、樹木希林さんと市原悦子さんくらいかなぁ…。

記事でも取り上げられていた『毒牙に噛まれた商売人』(『必殺商売人』最終回)
「子供ってのは可愛いもんだ…」
劇中、殺し屋たちの探索の手が伸びる中、立ち寄った秀英尼の寺、傍らで寝息を立てている子供たちを見て、主水は思わずそう呟く…。
思い浮かべるのは、生まれた我が子を抱いて、嬉しそうにあやしているせんとりつの姿…。
やがて、闇の世界での暗闘を終え、帰ってきた主水が見たものは、眠り続けるりつと悲痛に泣き伏すせんの姿。そして、あまりにも短い命を終えた我が子…。
「うん、まるまる太ってやがってね。女の子なんだ…」
江戸を離れるおせいから「赤ちゃんはお元気ですか」尋ねられ、穏やかにそう答えた主水…。
おせいとの別れ際についた小さな嘘…“悲しみの上書き”はしたくなかったのか、それとも…。
「面白かったなぁ…」とはまた違う、切なさとやるせなさの感慨を胸に残してくれた最終回でしたね。

それでは、また…。





2018年09月05日(Wed) 15:13
“老け役女優”の皆さんと“夢ん中”
編集
※前回、誤ってメールアドレス欄にタイトルを入れたまま送信してしまいました。
改めて、ほぼ同内容ですがコメント送信させて頂きます。
コメントが重なりますがお許しください。
先のコメントは削除して頂いて結構です。

こんにちは、おじゃまします。
菅井きんさん、初井言榮さん、原泉さん、北林谷栄さん、ミヤコ蝶々さん、清川虹子さん…今も忘れられない“老け役女優”の皆さん。
それぞれに放つ強烈な個性と、作品を壊さない味わい深さ…忘れられません。
今、僕が思いつく現役の“老け役女優”といえば、樹木希林さんと市原悦子さんかなぁ…。

記事で取り上げられていた『毒牙に噛まれた商売人』
殺し屋たちの追及が続く中、秀英尼の寺で、寝息を立てている子供たちを見て、主水は呟く。
「子供ってのは可愛いもんだ…」
思い浮かぶのは、生まれた我が子を笑顔であやしているせんとりつの姿…。

やがて、闇の世界での暗闘を終えて帰宅した主水が見たものは、眠り続けるりつと、悲痛に泣き伏すせんの姿、そして、短い命を終えた我が子…。

江戸を離れるおせいから「赤ちゃんはお元気ですか」と訪ねられ、主水は穏やかに言葉を返す。
「うん、丸々太ってやがってね。女の子なんだ…」
主水とおせい、失った痛みと苦しみをお互い胸に刻んだまま別れていく…。
最後についた“小さな嘘”は、悲しみの上書きをしたくなかった主水の意地か、おせいへの気遣いだったのか…。
胸を熱くさせた『解散無用』とはまた違う、しんみりと余韻が胸を衝く最終回でしたね。

それでは、また…。


2018年09月09日(Sun) 15:57
キラさん
編集
>キラさん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>前回、誤ってメールアドレス欄にタイトルを入れたまま送信してしまいました。

大丈夫ですよ~。

>改めて、ほぼ同内容ですがコメント送信させて頂きます。

ありがとうございます。

>コメントが重なりますがお許しください。
>先のコメントは削除して頂いて結構です。

いえいえ、大丈夫ですよ。
素敵なコメントですし…。
キラさんが削除したいということでしたら、削除します。

>菅井きんさん、初井言榮さん、原泉さん、北林谷栄さん、ミヤコ蝶々さん、清川虹子さん…今も忘れられない“老け役女優”の皆さん。
>それぞれに放つ強烈な個性と、作品を壊さない味わい深さ…忘れられません。
>今、僕が思いつく現役の“老け役女優”といえば、樹木希林さんと市原悦子さんかなぁ…。

決して、前には出ないんですが、彼女たちがいなければ話に深みが出ない。
どの方も悪役やらせると、本当に怖い。
しかし、優しいおばあちゃん役もぴったりで…。

>記事で取り上げられていた『毒牙に噛まれた商売人』
>殺し屋たちの追及が続く中、秀英尼の寺で、寝息を立てている子供たちを見て、主水は呟く。
>「子供ってのは可愛いもんだ…」
>思い浮かぶのは、生まれた我が子を笑顔であやしているせんとりつの姿…。

「商売人」の主水は、自分が子供を持つことに対する恐れや罪を意識していますね。
シリーズをこの縦糸が結んでいる。
剣さばきが凄みを増しているから余計、その表と裏の顔のコントラストが際立つ。

>やがて、闇の世界での暗闘を終えて帰宅した主水が見たものは、眠り続けるりつと、悲痛に泣き伏すせんの姿、そして、短い命を終えた我が子…。

この結末を用意するところが、すごいです…。

>江戸を離れるおせいから「赤ちゃんはお元気ですか」と訪ねられ、主水は穏やかに言葉を返す。
>「うん、丸々太ってやがってね。女の子なんだ…」
>主水とおせい、失った痛みと苦しみをお互い胸に刻んだまま別れていく…。

この言葉が実につらい。
剣を振るう男の子でなく、りつやせんに似た、ちょっと厄介な、でも自分の裏の顔を知ることがない女の子が良い。
どこかで主水は、そう思っていなかったでしょうか。

>最後についた“小さな嘘”は、悲しみの上書きをしたくなかった主水の意地か、おせいへの気遣いだったのか…。

おせいへの優しさ、そして自分のかなわない夢だと思いました。
仕置人であっても、普通の幸せを手に入れられるとおせいに思ってほしかった。
希望を持って旅立ってほしかった。
自分も、そうであってほしかった。

>胸を熱くさせた『解散無用』とはまた違う、しんみりと余韻が胸を衝く最終回でしたね。

仕置人が主水の人生の「夏」であれば、「商売人」は秋でしたね。
強烈な夏の終わりを思わせた「新・仕置人」の最終回。
静かに、沁み通るように、しかし確実に全てが変わっていく「商売人」。
これを最後に正八もいなくなりますから…。

コメントありがとうございました。
2018年09月09日(Sun) 19:03












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