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親愛なるクラリス、子羊の悲鳴は止んだかね… 「羊たちの沈黙」

久しぶりに昨夜、「羊たちの沈黙」を見ました。
映画をきっかけに、FBIのプロファイリングの本が話題になりました。
この本もすごかった。

人間ってグロテスクな、猟奇的なものに対する興味があるんですね。
自分もです。
この本もヒットしました。
私も借りて読みました。

写真が掲載されていて、さすがにカラーではありませんでした。
白黒でしたが、「うわ、真っ黒…」ってつぶやいてしまうような写真でした。
第2作が出版されて、そっちにはカラー写真が出ていたらしいです。
見た後輩が「真っ赤…」って言うので、それでもう読むのをやめました。

最初の本を読んだ時、最初の第1章がグロテスクで食欲が失せました。
映画も、映画館で見た時は、観賞後、食欲がありませんでした。
あれからもっと過激な映像、シチュエーションが出たんですね。
本も読み進めるうち、普通に読むようになりました。

でも内容は第1章と同じ、いやもっと猟奇的なんです。
慣れました。
慣れたんですね。
人間って、オソロシイ。

「羊たちの沈黙」はアカデミー賞も、とりました。
「えー、こんなサイコホラーが?」という感想の人もいました。
でも今見ると、これはサイコホラーではありますが、立派な名作なんですね。

主人公のFBI捜査官の研修中のクラリスは、服役中の人喰いレクター博士に自分のことを語る。
レクターがそれと引き換えに、上院議員の娘を誘拐している連続殺人犯について教えると言ったから。
クラリスは、警官であった父親を強盗に殺された。

父1人、娘1人だったクラリスは孤児となった。
そして、母親の従姉妹の牧場に預けられた。
だがある夜、異様な声で目を覚ます。

その声は、殺される羊たちの悲鳴だった。
…夜中にそんな声を聞くとか、考えただけで嫌なシチュエーションです。
それはトラウマになる。

クラリスは羊たちを救おうと、ドアを開けた。
「でも誰も逃げないの」。
クラリスは子羊を1頭、抱えて逃げた。

せめてこの1頭だけは、助けようと思った。
だが重くて、寒くて、どこを走っているのかわからなくなった。
そして捕まった。

牧場主は激怒し、クラリスは施設に行った。
「今でも夢を見る?」
「ええ」。

「今でも羊の悲鳴で目を覚ます?」
「ええ」。
「キャサリンを救えたら、羊たちの悲鳴は止むと思うか?」
「わからないわ」。

これがタイトルなんですね。
「羊たちの沈黙」。
不気味にして、秀逸なタイトルです。

私には羊が何の象徴か、わからなかったんですが、後に教えてもらいました。
羊は全ての人間の罪を背負って、自己を犠牲にする象徴だと。
助けられなかった羊。
その代わりに、警官となった自分はキャサリンを救う。

救えたら、羊たちは沈黙してくれるか。
人の罪は、消えるのか。
これ以上ない、人間の闇・罪と言える猟奇連続殺人犯人。

レクター博士は、いろんなところでヒントをくれている。
上院議員に向かって「そのスーツは大変結構」。
これは犯人の目的を知った後だと、あっ、というセリフになる。

そして、脱走を決意したレクターの注文した最後の夕食は「血の滴るようなラム」。
羊。
その夕食を置いたテーブルには、クラリスが羊を抱いている絵がある。
羊。

ここは、とても象徴的なシーンだったのですね。
ヒントを小出しにしているのは、人の痛みをなめて楽しむレクターの性格。
そして、これを自分で解決することによってクラリスが過去を克服できるのがわかっているからでしょう。

この後が「ぎゃああああ」というシーンだったので、最初に見た時は、全然わかりませんでした。
ですがこのレクターが警官の死体を飾ったことも、実はヒントだったんですね。
クラリスが最初に被害者の家に行った時、猫が出て来るんです。
被害者の部屋には、猫の置物があった。

つまり、普通の生活を送っていた普通の娘だったということがわかる。
犯人の残虐さ、事件の惨たらしさを感じさせる。
そしてクラリスは見事、キャサリンを救ってバッファロービルを射殺した。

ここ、原作だと訓練中のクラリスは教官に言われてるんです。
1分間に何回も引き金を引けるようにしておけ、と。
最後のバッファロービルとの対決で、瞬間に何度も撃てたのはこの訓練が生きたんですね。

この時、キャサリンは犯人の飼っていた犬を抱きしめていた。
「犬がかわいくなったのかね?」と言っていた人がいました。
「犯人の犬なのに」。

犬に罪はない。
実際、かわいい犬だった。
キャサリンは猫も飼っていたみたいだし、動物は好きなんでしょう。
そもそも、足の悪いふりをした犯人を手伝おうとして拉致されたんですから、優しい娘。

でもこの場合は、恐怖から生還して、この世に帰って来たようなもの。
生きているもの。
呼吸して、温かい体温のあるものから手が離せなかったんだと思います。

FBI学校の卒業式、クラリスに電話が来る。
「親愛なるクラリス、子羊の悲鳴は止んだかね?」
警官2名を殺し、救急車の乗員を全員殺し、旅行者を殺して服を奪った逃げたレクターだった。
おそらく、もう彼は捕まらない。

強度のファザーコンプレックスを抱えているクラリスに、レクターは何かシンパシーを感じたんでしょう。
なぜかわかりませんが。
彼は謎過ぎる。

この映画は「新たな古典」になりました。
突入する時の演出には、アッと言いました。
まさか、FBIは無人の家で、クラリスがバッファロービルの方に行っていたとは。
この後、いくつかの映画やドラマで、この演出が使われるようになりましたね。

クラリスは、幼いころから抱えていたトラウマを乗り越えた。
つまりこれは、サイコホラーであり、父親を殺された少女が過去を克服する話だったのです。
それを名優アンソニー・ギデンズ・ホプキンス、ジュディ・フォスターが演じるんです。
アカデミー賞にふさわしい、名作です。

ジュディ・フォスターが知的なのは、もちろん。
やはりすごいのは、知性と上品さと狂気を混在させているアンソニー・ホプキンスです。
精神科医のチルトン先生、レクターが一番軽蔑するタイプですね。
後を追ってゆっくり歩いて行きましたが、逃げられないでしょうね。

すごい殺し方したんだろうと思って、映画は終わる。
人ごみに消えていくレクター。
その後を現地の人たちが普通に、歩いていく。
日常と非日常を混在させた、余韻あるラスト。



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