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警察官になってはいけない男です 「満願」第2夜「夜警」

ミステリースペシャル「満願」、第2夜「夜警」。
見逃したのを、再放送で見ることができました!
しかも夜中の1時過ぎ。
何で、この時間に再放送だったんでしょう。

すごい評判が良かったけど、その通りにすばらしいドラマでした。
ミステリー。
でもホラーに近い。
始まってからの、すべての演技が、伏線になっていた。

主人公・柳原は安田顕さん。
この人、すごい良い俳優さんですね。
バラエティーでは、めちゃくちゃ崩れる。

でもこの柳岡は終始、ダークな表情を崩さない。
凄みがある。
迫力でした。

川藤浩志は、馬場徹さん。
気弱な表情の影に凶暴さ、異常さが見え隠れしてます。
柳岡の疑惑に応えるような川藤の兄・隆博は吉沢悠さん。
この方もすごい迫力。

2人のシーンは終始、息をのむような緊張感でした。
この2人、人生の知らなくて良いつらさや汚さを見て来た疲労感をにじませて切ない。
弟の性格を一番良くわかっている、兄の隆博。
警察官なんてなってはいけない男だと言う。

大変なことになった。
弟が言葉を口にするたび、兄は苦労したのでしょう。
大きなことは高校時代と大学受験の時でしたが、子供の頃からもっと小さな問題を兄が解決させられてきたに違いない。

いつか、こういう性格がとんでもない事態を引き起こすという予感があったに違いない。
そして弟は、その責任を取る気がないことも。
警察官になってはいけない男。

そう言う性格の、自己犠牲とは程遠い弟の、賞賛に満ちた死。
絶対におかしい。
何か明らかにしなければならないことが、あるに違いない。
弟への愛情と、疑惑をにじませた兄の隆博。

川藤の警察官に向かない気弱さと、その気弱が呼ぶ危険を察知していた柳岡。
本当なら辞めさせたいところだが、前にそれで若手刑事を自殺にまで追い詰めている。
辞めさせるのは周りのためであり、本人のためでもあったんでしょう。
しかし、そんな気持ちとはかけ離れて、事は大人のイジメへと発展していった。

柳岡は、首を吊った三木の足元に歩いているカメを忘れられない。
つまり、三木への贖罪の気持ちが消えない。
だからもう、退職に追い込むようなことはできない。

柳岡はやり手の刑事だったのが、交番勤務になっている。
おそらく、三木の自殺の責任を問われたんでしょう。
この意味でももう、柳岡は若手を退職に追い込むことはできない。

川藤は、作業員が倒れたと報告した時に、異にうろたえていた。
いくら小心だからと言って、怖がり過ぎだった。
柳岡に違和感を残すに、それは十分なうろたえ方だった。

この異様な恐れ方。
兄の拳銃が好きだったという言葉。
しりぬぐいに至って、怖ろしい事実が浮かび上がって来る流れがすばらしかった。

川藤という青年は自分が警官であることで強く出られる相手には、威圧的になる。
作業員を狙った時に浮かべた笑みは、相手の生殺与奪を完全に握っている優越感と残酷さの笑み。
しかし、酔っ払いのケンカぐらいで、腰の拳銃に手が伸びるほど、小心者である。

彼が銃を好きなのは、肉体的精神的にかなわない相手にも自分が絶対に勝てる武器だからでしょう。
悪いことをしたと反省するのでも、すまないと思うのでもない。
怒られるのが怖いだけ。

だから、自分のミスを隠すために、すぐにばれるような嘘を言う。
川藤がうっかり撃ってしまった弾丸は、作業員の頭をかすめていた。
当たらなかったが、拳銃を返す時に1発足りないことはわかってしまう。

人を殺しそうになったことよりも、懲戒免職処分になり、責任を問われることを川藤は恐れた。
だから、殺す必要もない男を撃って、責任を逃れようとした。
この青年は、人の命を奪うことを何とも思わない利己的なほどであり、冷酷だった。
何かが完全に、人として欠けている。

警察官になってはいけない男。
こういうの、警察学校で出ないものでしょうかね。
前に、警察学校を辞めさせられた人のマンガを読んだことがありましたが、なかなかキツイものがありました。

柳岡は川藤に危ないものを感じながら、何もできなかった。
それが最悪の結果となってしまう。
川藤は人の命を奪い、自分も死亡する。

最後の柳岡の震えと笑いと涙。
あれはなくさなくて済んだかもしれない2人の人間の人生を奪ったのは、自分だという自覚から来ているのではないか。
兄の絶望は、結局、弟をまともに育てられなかった自分に向いている。
柳岡も今、兄と同じ貌をしている。

三木を死なせ、田原の夫を死なせ、川藤を死なせた。
川藤は確かに、警察官になってはいけない男だった。
だが、柳岡はというと、部下を警察官を辞めさせて死なせ、今度は警察官を辞めさせないで死なせた。

何度も出て来た言葉。
「警察官になってはいけない男」。
「警察官に向かない男」。

柳岡は、思ったに違いない。
それは自分だと。
こう思ったからこそ、柳岡は震え、涙し、嗤ったのではないか。

交番と反対の方向に、濡れながら歩いていく柳岡の背中。
彼は、このことを明らかにするでしょうか。
明らかにすれば、警察に非難は集中する。
美談の殉職者は、一転して凶悪なる犯罪者となる。

これで誰かが救われるだろうか。
しかし、黙っているべきなのだろうか。
いや、そもそも、警察上層部は本当にこの事実に気づいていないのだろうか。
もしかして…。

警察官になってはいけない男が自分と川藤なら、向いているのは誰なのか。
そんな人間は、もしかしていないのではないだろうか。
自分も、川藤が隣で威嚇射撃をしたかどうかも問題にしない同僚の梶井も、川藤も。
冒頭の「この交番にいたのは警察官に向かない男たちだった」と言っているのはこの伏線だった。

梶井も向かなかったのか?と、最初に思ったんですが。
川藤は、威嚇射撃してない。
梶井は、「川藤は5発撃ってない」って言わなかったわけですから、やっぱり向いているわけじゃないんでしょうね。

雨の中、濡れながら柳岡は歩いていく。
自分に傘をさす資格はない、と言わんばかりに。
まさに「weeping in the rain 雨に泣いてる…」。

彼はこの事実を背負って、警察官を続けるだろうか。
私は、あの雨に濡れながら歩く姿を見て、柳岡は警察を辞めるだろうと思いました。
自分は、警察官になってはいけない男だと思っているはずだから。
柳岡の心の内を、無言で、タバコを吸うだけで表現していた安田顕さん、見事。
推理が真相に近づいていることを感じて、指を細かく動かしているところもうまい。

思ったんですが、安田顕さんなんて、中村主水ができるかもしれませんね。
昼行燈と、殺し屋の顔、両方できる。
落差も十分。

俳優さんたちの演技。
演出。
ストーリー。

再放送ですが、見逃した私は本当に見られて良かったと思いました。
これは何度も繰り返して見たいドラマですね。
共依存っぽい田原夫妻の演技も、同僚警察官の梶井さんも良かったですよ!

どの人物にもリアリティーがありました。
こういう人いるな、こういうことあるな、って。
それが事件につながるから怖い。
実際の事件って、こうなのかもしれないというリアルさがありました。

全てが極上のミステリーであり、人間の怖さを表現したホラーでもありました。
そして、毎日、誠実にお仕事をしている現実の警察官のみなさん、本当にお疲れ様です。
ありがとうございます。


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