こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
TOP ≫ CATEGORY ≫ アニメ・コミック
CATEGORY ≫ アニメ・コミック

「日出処の天子」は

マンガを実写化するのに、難しいのはキャストでしょうね。
アニメ化の声だって、難しい。
絵があると、それぞれ、読者にはイメージというものができてるでしょうから。

それでも俳優さん女優さんは、さすがプロ。
ちゃんとイメージを壊さないで演じたり、イメージが違ってもぴったりにしていたり。
伊藤潤二さんのホラーで、人を破滅させる超美少女「富江」は、菅野美穂さんが見事に演じていました。

名作と言われるマンガは、当たり前だけどファンが多くいる。
長くファンでいる人も多い。
そんな名作マンガのひとつ、山岸凉子さんの「日出処の天子」。

絶世の美少年で、超能力者の厩戸王子。
誰が演じたらいいだろう。
私は、厩戸王子は若い頃の美輪明宏さんがピッタリな気がしてます。
エキセントリックであり、菩薩のような笑みもできる。

魔少年の部分も、あの美輪さんならうまく出せるんじゃないでしょうか。
木の上からぶらーん、と、逆さになって敵の前に現れ、「私はもう疲れた」と言う。
「そなたの血を流して、おしまいにしよう」。
美輪さんがやったら、怖いでしょうね。

母親に恐れられ、母の愛を得られない王子は、徐々に女性全体に憎しみを持って行く。
「姉上はそなたを化け物だと言っている」と、叔父である相手に告げられ、傷つく。
それでもなお、どこかで人を愛したい。

愛されたい。
葛藤と苦悩。
そうしたあらゆる感情を伏せ、神のようにふるまう。
美女に化けるのも、着飾る。

政敵を葬って自分たちを守って行くためには、冷酷にならざるを得ない。
自分たちが生存するために。
美輪さんなら似合うでしょう。
相手役の毛人は、誰が良いかちょっとわからないんですが。


天使よりも美しい悪魔シレーヌ

「DEVIL MAN ~cry baby~」をネットフリックスで見ました。
おおっ、公開してる!
しかも、全部。
シーズン1ということは、この先も作るのかな?

テレビシリーズではない、前にアニメを見ましたが、良くできてました。
シレーヌ編でその先を見ていませんが。
今回のネットフリックスのシレーヌ編は、あれほど血みどろではありませんでした。

しかし、シレーヌは魅力的なキャラクターです。
いかにも私好み…、とわかってしまうようなキャラクターですが、本当に魅力的。
そんな甘いこと言ってる人間なんて、平気で切り刻みそうなキャラクターですけど。

彼女はデビルマンが許せない。
人間の分際で、愛するアモンを乗っ取るなんて!
彼女の前にいるのは、愛するアモンの姿をした人間。

憎い。
でもアモンとは繋がっていたい。
いや、この手で八つ裂きにするのが、シレーヌの愛。

デーモン族に愛なんてないはず。
しかし、デーモン族の愛し方というのを見せるのがシレーヌ編。
アモンとシレーヌ、そしてシレーヌとカイム。

デビルマンによって、自らの爪で体を貫かれるシレーヌ。
頭の翼は片方、デビルマンに引き千切られた。
ゼノンに助けを求めるも、やってきたデーモンはデビルマンの敵ではない。

落ちて行くシレーヌを見た、カイムはもう我慢できない。
デーモンの姿に戻り、シレーヌの前に現れる。
自分と合体して、デビルマンを倒せと言う。

血まみれのシレーヌは、あたしはもうすぐ死ぬのよと言う。
敵役が魅力的であればあるほど、物語は盛り上がる。
魅力的どころか、ここから先は、シレーヌが私の中では主役。

「血まみれでもシレーヌ、君は美しい」。
出ました、名セリフ!
そしてそれにふさわしい、シレーヌというキャラクター!

天使より美しいと言われる悪魔・シレーヌ。
危険で禍々しくて、美しい。
あの造形が、素晴らしい。
デザインが、デーモンとして秀逸です。

「バイオレンスジャック」ではシレーヌは一瞬で、あっさりジャックにやられて退場。
悲しい!
でも「デビルマンレディー」では、しっかり地獄でデビルマンと再会してて良かった。

シレーヌに加勢しようと飛び出したカイムが、デビルマンを傷つける。
その瞬間、シレーヌは悲鳴をあげ「アモーン!」と叫んでしまう。
哀しい。
さらには、カイムも哀しい。

その時、シレーヌは思う。
自分はアモンとつながっていたくて、戦っていたのかと。
こんな自分をシレーヌは、許せない。

醜い!
天使より美しいと言われる悪魔・シレーヌが醜い…。
自分の恋心が醜いと、シレーヌは打ちひしがれる。

ストイック過ぎる、シレーヌ。
潔癖過ぎる。
完璧過ぎる。
自分に厳し過ぎる!

シレーヌはメデューサに、自分を石にしろと叫ぶ。
石になったシレーヌを見たカイムは、俺に君の笑顔さえ見せてくれないのかと嘆く。
この辺り、私はデビルマンそっちのけです。

地獄で、美しい悪魔が石になっている。
その横には、獣が寄り添っている。
ずっとずっと、永遠に変わらない2体の悪魔…。
何て、哀しい。

この後、最終回でカイムが地上で肉体を得ることになる。
その時、シレーヌも同じだろうとカイムは探す。
するとシレーヌは、黒いシレーヌとして肉体を得ている。
「黒い!しかし美しい!」

シレーヌはどこまでも、美しいデーモン。
作者のインスピレーションも、シレーヌは掻き立てるんでしょうねえ。
彼女が絡むと、話がおもしろくなると思います。
かつての映画みたいな立ち位置ではない、このシレーヌを演じるのは誰が良いだろう…。



意味があるのは「二人称」の「死」 「四月怪談」

養老孟司先生は、「死」に意味があるのは「二人称」の「死」だけとおっしゃる。
赤の他人が死んでも、我がことのように悲しんだりしないと。
名前と顔を知っている程度の人が亡くなっても、「ああ、あの人、亡くなったんだ」と思うが嘆き悲しんだりしない。
一人称の「死」も、本人だから語れない。

「死」の悲しみは、その死んだ人とどれだけ親しかったかという思いなんです、と先生はおっしゃる。
先生は猫の死を悲しみましたが、猫の方は何とも思ってないかもしれないともおっしゃる。
この話は、「一人称の死」の話です。

人は自分のお葬式を想像して喜んだり悲しんだりするんだよと昔、言われました。
お葬式は、いろんなことが見えてくるんだよ、と。
突然、登校中の事故で死んでしまった初子。
事の重大さを実感することもできないまま。

だから、好きな人のところに言ってみる。
彼が自分のお葬式に来るのを想像して、ワクワクする。
どんな顔をするかと、期待する。

霊となった初子は奇々怪々な話をする夏山登のところに、「化けて」出てみる。
夏山には初子も、弦之丞も見えた。
普通の人と同じに見えた。

初子が死んだという知らせを受けた夏山が戻ると、初子がいない。
死んだなんて知らなくて、今、来てるよって言ったら怒られた。
幽霊話って、こういう状態なのでしょうか。

初子と弦之丞が、見える人には見えてしまっているところが、おかしい。
運転手さんには見えている。
タクシーの中で、運転手さんもお客さんも凍り付いている。
こちらもまた、幽霊話って、こういう状態なのでしょうか。

霊となった初子は空も飛べるし、何の制約もない。
行きたいところ、どこにでも行ける。
何でもできて、自由。
一見、とてもよく見える幽霊という状態。

でも物語が進むにつれ、初子は何でもできるようでいて何にもできないということがわかってくる。
やれそうでやれなかったことを初子はやってみる。
でもそういうものは生きて、肉体があるから意味があることだと弦之丞は言う。
本当にそうだった。

好きな人を前にしても、もうその人は自分とは関係のない世界にいるということもわかってくる。
それがわかったら戻れと弦之丞に言われる。
しかし、初子は戻ってきてしまった。

何にもない16年だったし、これからも何もないだろう。
だから、さようならで良いと言う初子に、弦之丞は泣く。
何と、自分の価値をわかっていないのだろう。
生きてるだけで、それは十分価値のあることなのだと。

弦之丞だって生き返って何か、壮大なことをする気持ちはない。
ただ、生きたい。
ここ、リアルだなあと思いました。

弦之丞の飛べないことも、不可能のことも、冴えないことも、みんなとりえなんじゃありませんかという言葉に初子は、少し傷つく。
でもそれは、ありのままでいいと言ってる。
最後に母も、そして夏山も、そう言ってくれる。

特別な人生じゃなくて、良い。
すばらしい才能がなくて、良い。
生きてくれてるだけで、意味がある。

だから弦之丞は、肉体を探すことをやめられない。
しかし斜めになってしまっている思春期の初子は言う。
「あたしの体、あげるからあなたが私になれば良いわ」と。

「そんな、霊道に反すること!」ではなくて、初子に人生はすばらしいと気づいてほしい弦之丞。
そんな斜めに構えた初子が一気に変わるのは、母の叫び。
おそらく、いつもは冷静な母の理性が吹っ飛んだ叫びを聞いて初子は驚く。
初子ちゃん、初子ちゃんと母が叫ぶ。

連れて帰る、連れて帰る。
大切な人を送る時って、本当にこういう気持ちでしょう。
母親の叫びに、胸が痛くなります。

そして理性的に自分を抑えているであろう、父親。
この時、初子にはわかったと思います。
自分が生きているだけで良いということ。
生きているだけで、人生には意味があると言うこと。

そこに夏山登のレンゲ。
この3人がいて、初子が生き返る時間が与えられた!
その時、初子は弦之丞も連れて生き返った。
初子の中で、弦之丞が生きている。

何でもないことへの感動は、初子のものでもあるが、弦之丞の喜びでもある。
初子の死を前にして、クラスの子たちも変わったはず。
何でもない日常って大切。
誰の命って大切。

映画「復活の日」でラスト、生きて戻って来た草刈正雄さんがつぶやきました。
「ライフ、イズ、ビューティフル」。
生きてるってことがもう、意味があること。
それが自体、奇跡なんだと。

この作品を読むと、そう思わされます。
インベーダーゲームが出て来るので、その頃、1978年頃の作品だと思いました。
そこはさすがに時代を感じますが、その他のところでは古いと感じません。

知らなかったのですが、映画にもなっているみたいですね。
「戦後最大のラブストーリー」が入るところが少女マンガといえば少女マンガ。
しかし大島弓子の作品って、絵柄に抵抗がなければ男女問わないと思います。

さて、養老孟司先生は猫の死を悲しみました。
でも、猫の方は何とも思ってないかもしれないとおっしゃる。
だって猫って機能的にも無駄がない、実に良くできた生物だから。
そして、猫はこんな風に思ってるかも、とおっしゃる。

『だって毎日寝てたじゃないか。ただ、目が覚めないだけだよ』って。
「永遠の眠りって言いますからね」。
…それ聞いた自分は救われるような。
いや、やっぱり、切ないなあ。


能力があってもなくても、さ 「四月怪談」

初子はテレポートすると、津田沼くんが委員長と一緒にお通夜から帰るところだった。
初子と対面した津田沼くんを見損ねた!
津田沼くーん!と初子は追いかけた。
委員長が足を止めた。

「どうしたの」。
「私ね、国下さんの顔見せられて命ってのが、とても頼りないものに思えてきたの」。
「私の命も、津田沼さんの命も、誰もしっかり命を留めておくことができないんだって…」。
「こんな他愛ないものの前に、何が『恥』だろうと思ったら…」。

委員長は津田沼くんの胸に額を押し付けた。
「ごめんなさい。しばらく、こうさせてください」。
津田沼くんの手が、委員長の肩に回った。

そうか…、そうだったのか…。
委員長は津田沼くんを好きだったのか。
津田沼さんも、あんなにしっかり彼女を受け止めている。

傷心の初子に弦之丞が、早く生き返れと言う。
だが、初子は泣いた。
今、生き返って何になる。
ピエロだ、ピエロ。

それを見て弦之丞は、初子に謝った。
早く生き返れと、急かして悪かった。
初子は一緒に歌おうと言った。

♪アヴィニョン橋の上で♪
♪踊ろよ、踊ろう♪
西洋の歌はわからないと言う弦之丞に、初子は私だって適当だと言った。
すると弦之丞は「おたいこ橋でも良いですか」と聞いた。

♪おたいこ橋の上♪
♪王様が通る♪
「お殿様も良いかな?」
♪お殿様も通る♪

♪お姫様も通る♪
2人は歌いながら、橋の上で踊った。
楽しく、歌って、踊った。
横を、タクシーが通った。

「お…、お客さん、見えませんでした?」
「今、高速のガードの上を白っぽい男女が踊りながら歩いていくのを…」。
「う…、運転手さん、悪いギャグはよしてください。夜中に…、ど、どうして、高速のガードレールの上を歩けるんです…」。
タクシーの中では、運転手もお客さんも蒼白だった。

初子と弦之丞は飛びながら、初子は子供の頃見た見事なレンゲ畑がこの辺だと言った。
作文にも書いたのだ。
今日は思い切り、寝転がろう。

しかしレンゲ畑は、団地の用地となっていた。
何もなかった。
初子は無言だった。

弦之丞は、君の住んでる街の駅付近は僕が生きていた頃、綺麗な小川のある森だったと言った。
僕らはそこで遊んだ。
今のビルや自転車置き場を見ると切なくなるけど、君たちにとっては生まれた時からあるものだ。

やっぱり愛しいのではないか。
今、駅付近が野原になったとしたら、君は自転車置き場を悼むよね。
初子はうなづいた。
ありがとう、心優しき時代劇さん。

「明るくなってる。戻ろう。出棺になる前に」。
「僕は君といた時、楽しかった」。
「私も楽しかったわ」。

棺の中に初子が横たわっている。
「さあ、行って。今度こそ、お別れだね」。
初子が振り向いた。

「良い一生を」。
弦之丞が手を振る。
初子は棺の中の自分を見た。

ターバンしてる。
頭ケガして、手術して、髪そられて丸々坊主の初子さん。
さようなら。

自分に別れを告げて、初子は戻って来た。
「どうしたの、戻ってきたりして」。
「生き返るの、やめた」。
喪服の人たちに、「出棺します」という声がかかった。

「どうしたんだ!早く戻って!」
「私、あなたの遺体見つけるの手伝ってあげる」。
「何をバカな!」
「僕は自分の体を発見したらためらいなく生き返るつもりだ。そうしたら君はどうする」。

「その時は君の遺体はもう、灰になっているんだぞ」。
「その時はね、昇天して空気に溶ける」。
棺に釘が打たれている。

「君ね、いかに霊がおもしろくないか、わかっただろう」。
「今ならまだ、棺の中から合図すれば誰かが気づく。焼かれてからでは取り返しがつかないんだよ」。
「わああ、出棺してしまった」。
「火葬場に行こう、テレポート」。

さようなら。
大勢の人たち。
さようなら。
津田沼さん。

夏山登。
友達。
ご両親さま。

さようなら。
16年間、私の、とりえなかった生活。
さようなら。
これからン10年間の私の、とりえのない生活。

弦之丞が泣いている。
「何で泣くの」。
「あなたの生き返らない心に、泣いているんです」。

「とりえって何ですか。とりえって、すなわちあなた自身ではありませんか」。
「飛べないことも、不可能のことも、冴えないことも、みんな、とりえなんじゃありませんか」。
「それでいいんなら、あたしの体、あげるから、あなたが私になれば良いわ」。

「早く行って。あの中に入ったらおしまいよ」。
「そんなこと。そんなことできません。そんな、霊道に反すること!」
「お願いです、お願いですから、あなたこそ生き返ってください」と弦之丞が言う。

焼き場に入ってしまった棺を見て、初子も弦之丞もあわてた。
遺体が焼かれてしまったら、どちらが生き返るにしても、もう戻れない。
何とかして時間を稼がないと。

その時、夏山登が走って来る。
「その棺、開けてください!」
手にたくさんのレンゲの花を持っていた。

「これ、持たせたいんです」。
「一番好きな花って、文集にも書いてた」。
「書いてある場所まで行ったら、なかったからその向こうまで行ってむしってきたんだぜ、国下!」

初子は驚いた。
レンゲ!
「今、鍵を閉めてしまったところなんです。そちらでお焼香してください」。
「ちょっと開けてくれるだけでいいんですよ。国下はこれ、ほしいんじゃないかと思うんですよね!」

その時だった。
「あけてーっっ!」
絶叫が聞こえた。
「あけてーっ、あけてーっ。だしてちょうだいー!」

初子の母が叫んでいた。
お母様?!
なんつうすごい声。
理性がない。

初子の母親が絶叫する。
「連れて帰る、連れて帰る!」
「初子を出して、初子を家に連れて帰るーっ!」

「連れて帰る、連れて帰る!」
「初子は生き返ってる!」
「だして、だして、だしてーっ!」

父親が頭を下げ「すみません。もう一度あけて確認させてやってください」と言った。
「こういう方は一度棺を開けて確認しても、また閉める時、同じことを繰り返すんですよ」。
「強行手段で火葬しちまいますと、その後一生、助けてやれなかったという後悔にさいなまれるし」。
「よく言ってあげてください。絶対これきりにしてくれって」。

棺が開く!?
父親は母に言った。
「いいね。もう一度、お棺を見せてくれるそうだ。それを見て、納得したらちゃんと送ってあげるんだ。いいね」。
「は、はやくあけて。は、はやく!」

焼き場のドアが開く。
「初子ちゃん!」
「初子ちゃん!」
母が泣きながら、棺に駆け寄る。

「国下!レンゲだよ!」
夏山がレンゲを初子の手に持たせる。
その時だった。

固く閉じていた初子の手が開く。
レンゲを持つ。
「おばさん!」
夏山が叫ぶ。

初子の目が開いた。
母は凝視していた。
父も凝視していた。
次の瞬間、どよめきが起きた。

うわあっと声が上がった。
奇跡だ、奇跡だ!
そうよ、夏山登。
あたしはレンゲがほしかったのよ。

あたしはそれ受け取ろうとして、しっかりつかんでいた岩井弦之丞を引き連れて。
2人一緒に遺体の中に帰ってしまったの。
もう、夢中でね。

「弦之丞!」
「一緒に生きよう!」
かくてあたしは生き返った

このことをみんなに話して笑われるだけだから、夏山にだけ、話すことにした。
夏山は最初、変な顔をしていたけどそのうちに納得した。
私は時々、自分でも不思議な態度を取る。
男の子みたいな態度取ったり。

もうひとつは私がものすごく、歴史に強くなったこと。
教科書に書いてあることは絶対まちがいだと不思議なくらい、自信持って言ってるんだ。
ほんとに見てきたように、断固として言えるもんね。

それに私は優しくなった。
テルテル坊主を「やめて」と抱きしめる初子。
「吊るすなんて、しかも雨の日に」。

何を見ても何をしても、奇妙に新鮮に感じるし。
見慣れた街並みを見ても、うれしい。
コップを持ち上げて水を飲んでも、うれしい。

右足の次に左足を出して交互に動かして歩くと言う動作にも、感動してる。
インベーダーゲームできること。
運動の後の疲労感。
食べた時のおいしさ。

見てよ、葉っぱが濃くなってだんだん夏が来る。
夏が来たら、海にも行こう。
麦わらかぶって、森に行こう。
草を踏む音が、するだろう。

花瓶を割っても「割れたわー」と、感動している。
母親はこういう私を見て、「死ぬよりはいい」と言って頭をなでてくれます。
お母様。
私はあの理性ゼロのお姿を見てから、お母様をちょっぴり見直しているんです。

時々そういう自分をあほみたいと思って見てる自分に気が付いて、支離滅裂です。
「おーい、夏山殿」と初子が夏山に声をかける。
「殿は少し古いんじゃない?」

クラスのみんなが葬式のレンゲの一件を、戦後最大のラブストーリーだともてはやしたからではないのですが。
私は前よりずっと、夏山登を好意的に見るようになりました。
「見える?」と夏山が聞く。

「あの桜の木の上に、ぼんやり教室を眺めている霊がいるよ」。
「髪をみつあみにした女の子だな」。
「…何にも見えないみたい」。

「うーん、あんたに霊を見る能力があるなんて思ったのは、間違いだったなあ」。
「能力がないのは嫌い?」
自分でもどきっとするほど、素直に物を言うよね。
ドキッとするよ。

「国下さんは国下さんだろ。能力があってもなくてもさ」。
「わあ、僕の考えと同じだよ」。
「僕?」
ま、いいや。

桜の木の上、女の子がこちらを見ている…。
♪お殿様が通る♪
♪お姫様も通る♪
歌声が響く。


しんでしまいましたの 「四月怪談」

大島弓子さんの「四月怪談」。
「背筋が寒くなるような話」と言った人がいました。
ホワホワしたタッチの絵だからそんなには感じないけど、確かに怖い話かもしれません。


「なあんて気持ちいいんでしょ!」
宙に浮かぶ少女・初子。
気圧も重力も風速も温度もまったくゼロって感じ。

そう、ゼロって言うのはこういうのを言うんだわ。
漂うって感じね。
きっと私は夢冷めやらぬ、非常に心地良い状態にあるのよ。
でももうすぐこの心地良い状態も、母親のあの身もふたもない起こし方によって壊されてしまうのよ。

現実に呼び覚ますのなら、もう少し現実の良さを表現して起こしてほしいわ。
たとえば香ばしいコーヒーの湯気をふうっとそばに寄せて。
おはよ、おいしいコーヒーが冷めてしまうから起きなさいとかさ。

『初子』
『初子ちゃん』
あの呼び方はまだ余裕のある時の呼び方だ。
まだ少し、寝ていられる。

もう少し、この自由な夢の中に居られるってわけ。
落っこってみよう。
何しろ夢だから。

初子は川に落ちた。
わー、流される。
あーっ、おもしろかった。
いつもは泳ぐ夢はトイレに行きたい時見るんだけど、トイレには別に行きたくないな。

さあて、次は何をしよう。
すると、声がした。
「ねえ、肉体の細胞が元気なうちに生き返った方が良いよ」。
「えっ」。

「わっ!」
初子の前に、髪の長い青年がいた。
「全身…、それ、何色っていうの。金…、じゃないし」。
「銀…、じゃないし、飴色って言うの」。

「夢に出て来るにしても、なんちゅう風変わりな風体」。
その青年は言った。
「生きている時は男子でした。でも今は霊だから、性別なんてどうでもいいのです」。
「あなたとは享年が同じぐらいだから、申すのですが」。

「悪いことは言わない。生き返りなさい」。
「自分の体のそばに行って、合体すればいいのです」。
「やだあ。そんなことしたら、目が覚めちゃうじゃない」。
「これは夢ではないのです。現実です。あなたは先程、死んだのです」。

「わあ、おもしろそう!そういうの大好き。んで?これからあなたと天国へ行ってみるわけ?」
「どうもわかってないようだな。今、あなたは肉体を離れた霊なのですって」。
「だから天国へ行きましょうよ」。
「天国も地獄もありませんよ。あるのは融合と消滅だけです」。

「すご、夢の中で死後説が聞ける!」
「困ったな。じゃあこれが夢でないことを証明します。こっちへ来て」。
「あなたの遺体です」。

何で頭に包帯巻いてんの?
わあ、自分も両親も、おじさんもおあさんもはっきりいる。
すごい夢!
こんな夢、初めてだわ。

「じゃあなたが家で眠るまでの1日を、僕に説明してごらんなさい。昨日、学校へ行くところから」。
「はい、いつものようにインスタントコーヒーを飲んで、8時に家を出て」。
昨日は通りがかりの家の雪柳が満開だったのよね。
あんまり綺麗だったので、あたしは小枝を一本もらうことにしたの。

1本もらって住宅街を抜けて、いつものビルの工事現場の下を通り。
学校に着いて…。
「学校に着いたら、その雪柳はどうしました?」

「飾ったんじゃない?机に」。
「どういう風に?空き瓶とか空き缶とかに?そんなもの、教室に置いてある?」
「き、きっと胸のポケットに入れたのよ。机じゃなくて胸のポケットに」。

「それを見て友達は何か言いましたか?花を見て、何か」。
「何も言わないわけないでしょう。それだけ綺麗な雪柳持っていたのなら」。
…何て言ったのかしら?

覚えていない。
全然、覚えていないわ。
何一つ。

「実際、起こらなかったことだからですよ」。
「あなたは雪柳を持って、登校しなかった」。
「あなたは花の枝を折って、住宅街を出て、工事現場の下まで来た時」。
「落下物にあって、死んだのです」。

「ですから、工事現場から後の記憶は一切なくて当然なのです」。
「…そういえば。工事中の下を通った時、頭で何か割れるような音がしたわ」。
「次、こっちを見て」。
「現場検証。白墨の跡があなたが倒れた跡です」。

雪柳が落ちていた。
夢にしてはつじつまが合い過ぎる。
すると、私は本当に…。
死んだ…?

するとあなたは本当の。
「おばけーっ!」
「あなたと同質のものです」。
「ただ違うところは、あなたにはまだ肉体がそこにあるってこと」。

「僕は自分の肉体を探している霊だ、ということ」。
「ね、先ほどから言ってるでしょ。肉体があるうちに生き返りなさい」。
「そんなに簡単に生き返れるものなの」。
「まだ肉体が十分、使えるんだから」。

だとしたら、もう少し遊ばなくちゃ!
初子は飛んでいく。
見ると、飛んでいる人がいっぱいいた。
自分も同じだと思うと、怖くない。

青年が何か言っている。
刻一刻、肉体の細胞が死滅していくわけだから、時間が経てば経つほど、生き返るのにエネルギーがいるようになる。
今ならすんなり帰れるが、明日になればもっとたくさんのエネルギーが必要になる。
それからあんまり上昇すると、大気中に溶けてしまうから。

くれぐれも迷わないように。
それから、テレポートもできます。
これを聞いた初子は、憧れの角のお屋敷の中にテレポートしてみた。
フワフワの天蓋付きのベッド。

初子は喜んだが、浮かんでいる方がずっと良かった。
そこで初子は気づいた。
片思いの津田沼くんのもとへ、テレポートするべきだ。

そう思った瞬間、初子の目の前に津田沼くんがいた。
初子は真っ赤になったが、津田沼くんには初子は見えていなかった。
其れに気づいた初子は、津田沼に抱き着いてみた。
津田沼さん、私死んでしまいましたの。

あなたは涙を流してくれるでしょうか。
津田沼さん、私、中1の時からあなたの姿を追いかけてましたの。
毎日、あなたを見るために学校へ行ってたぐらい。

津田沼さん、津田沼さん。
私、あなたの目好き。
陸上部で練習してる姿好き。
なんて、告白もできる。

津田沼くんは、何か、今日は調子悪い…と思っていた。
その途端、津田沼くんはおならをした。
う、嘘でしょう…。
「腹が…、こりゃだめだ」。

津田沼さんはトイレになんて、行っちゃだめだ!
その時、電話が鳴った。
「あ、今、家に誰もいねーんだ。はーい」。
津田沼さんはズボンも下ろしたまま、電話に出た。

初子はショックを受けていた。
「はい、あ、委員長?」
「国下初子さんが亡くなりました」。
「え?あの前の列の?」

そうです、知っていてくださいましたか。
「ほんとに?」
「告別式は明日。今夜、お通夜なのです。私、委員とあなた副委員長は出なければと思うのです」。

津田沼さんが家に来る!
片づけなきゃ!
しかし、初子は何一つ、触れることができない。

うろたえていると、玄関が開いた。
「初子ちゃんが帰って来ましたよ」。
「すいません、祭壇はこちらです」。

ひえー、祭壇?!
誰も皆、かなしそうではないな。
事務的に動いている。

ああ、津田沼さんは私を見て何て言うだろう。
どんな表情をするだろう。
泣いてくれたりしたら、何て素敵。
早く、早く、7時にならないかなあ」。

そうだ、津田沼さんにあんなに接近できたんだから、スターにも!
しかし、初子は弾き飛ばされた。
そこにあの青年がいて、初子を受け止めてくれた。

人気者にはファンの霊もたくさんいて、跳ね返されたのだと言う。
あの中にはあなたのように生き返れる余裕のある霊もおりましたんです。
でも自由さに惹かれて、こちら側に留まってしまった。
今はああやってひっついていられますが、1年も同じことをっやっていると、はた、と気が付く。

僕たちと言うのは、何でもできるようで、その実、何もできないものだ、ということ。
わかるわ、自分の部屋の片付けもできないんですもの。
だから、あなたは生き返ってください。

しかし初子は、その前に見られなかったバラ族というものの映画が上映されている映画館に入ってみた。
そこで、卒倒しかかった。
では、本物はもっと美しいのか。
そこでまた、初子は卒倒した。

青年は教えた。
ああいものは、肉体を離れてみると、すこしもおもしろくない。
人間の三大欲なんて僕らにとって何ら、必要のないもの。

初子はインベーダーゲームもやりたかったが、霊なので人がやるのは見られるが自分ではできなかった。
「僕はほんと、生き返りたいです」。
「…あのさあ、自分の遺体を探してるって言ってたわね。遭難でもしたの」。

「ええ、台風で川の氾濫にあって」。
「台風?いつ?」
「かれこれ、100年も前でしたか」。

「そ、その間、ずっと自分の遺体を探し続けて…」。
「ええ、でもこの頃はもっぱら、生き返れる霊で遊んでいるのを探して、体に戻ることを勧めるのに大忙しなのですけどね」。
「霊って、どのぐらいまで存在できるの」。
「3代分ぐらいあるんじゃないですか?3代祟るって言うでしょう」。

「だからあと、100年は探せるわけです」。
「100年も経っていたら今見つけたって、遺体はその…」。
「どこか、奇跡でも起きて冷凍にでもなっていたら、蘇生可能かもしれないでしょう」。
えらいロマンチストの霊だ。

何か生き返ったらやりたいことはないのか。
聞かれた初子は、思い出した。
夏山登。

何かというと、奇々怪々な話を持ち出す名物男。
あいつのところに行ってやろう。
そして生き返ったら、あなたの目の前に出たのに、あなたは私が見えなかったじゃないのと言ってやろう。

興奮してきた、生き返る張り合いが出てきた!
何であれ、生き返る意欲になれば良し、と青年は言う。
2人は夏山の部屋にテレポートした。

すると、帰って来た夏山が初子と青年をを見て「あれーっ、あんたらどっから入って来たの!」と大声を出した。
「み、見えるの?」
「国下さんだろ、あんた。友達?そっちの人」。

青年は夏山に、挨拶した。
初子はわからないようにそっと入ってきて、驚かせようと思ったと言った。
夏山は「この窓、すごい音するんだぜ。音を立てないように開けるのは並大抵じゃないよ」と言った。

「まあ、いいや、そういう悪戯は嫌いじゃないよ」。
初子は青年を従兄弟だと紹介した。
青年は「岩井弦之丞です」と名乗った。
下から登ー!と夏山を呼ぶ声がした。

「悪い、ちょっと待ってて」。
同級生からの電話だった
「国下さんが死んだって?」

「冗談じゃないよ、彼女、今、おれんちに来てるんだぜ」。
「夏山くん、こんな時によしてよ!」
登校中、落ちてきた鉄骨に当たって、病院に行ったが亡くなったと、同級生は知らせた。

「あの、絶対壊れそうもない初子がさあ…信じ、信じられないわよね」。
「人間ってさ、人間って、ものすごい奇跡みたいな均衡の元に動いていられるんだね…」。
夏山は黙っていた。

「うん…」と返事した。
部屋に戻ると、夏山が出した座布団だけがあった。
ポツンと2つ。
それには誰も乗っていなかった。