こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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メリークリスマス アンド アイラブユー 「山羊の羊の駱駝の」

すごく印象的な話で、この季節になると思い出していました。
なのに、タイトルがわからない。
「ロングロングケーキ」の中に収録されているのを見つけました。
「山羊の羊の駱駝の」というタイトルでした。

大島弓子のマンガは、とても繊細な絵で描かれてます。
猫を擬人化して、というか、猫が自分を人間だと思っている。
だからそういう姿で、出て来る。
でも、頭の上には猫の耳がある。

いかにも少女マンガという絵柄で、メルヘンぽく見える。
しかし、大島弓子の描く世界は実はとてもシビア。
4分の1世紀前の片思いの少女にそっくりの女子高校生に出会う「たそがれは逢魔の時間」。
だが妻には恋人がいて、その少女は女子高生売春をしていた。

大恋愛の末、一緒になった夫婦。
だが夫は倦怠感を感じ、会社に気になる女性ができていた。
そんな時、妻が階段から落ちる。
お腹に子供がいたことに気付かなかった妻は、流産。

これをきっかけに、妻は精神のバランスを崩していく。
叫び、笑い、泣き、空中に向かって話しかける。
死んだのは娘だと言って、名前を付ける。
そしてダリアの帯を作って、喪服に締めるという「ダリアの帯」。

山岸涼子がこんな話を描いたら、肌に突き刺さるような痛さを感じるものになるでしょう。
きっと、心理も、起きている現象も怖ろしく描く。
大島弓子の、ほわほわとした絵だから夢物語のように読める。
だけど「大島弓子って背筋が凍るような話があるよね」と言った人がいるように、実は怖いんです。

この話も、とてもシビアで切なくて、哀しい。
厳格な父。
しかしこの父は本当の意味で、雪子に厳格な躾をしているのではない。

教育評論家で、次期市長候補。
雪子はその父にふさわしい、娘でなくてはならない。
おそらく、小さな雪子にとって心のよりどころだった犬・ジロ。

そのジロが近所の子を噛んだということで、父は雪子に知らせるまでもなく薬殺した。
どうしてジロが噛んだのか、ジロの言い分も聞かず。
それが父の体裁だと、雪子は言っている。

この時、雪子は父を愛することをやめたのでしょう。
雪子は泣くのをやめてしまった。
子供らしく振舞うのを、やめたのでしょう。

父の前で、母の前で、感情を出すのをやめたのかもしれません。
父に対する信頼もなくしてしまった。
「敢然と無視されたのはあの記者ともう1人、あたしです」。

「あの写真が私でなかったら、私はどこにもおりません」。
雪子は父に、無視され続けていると思っている。
記者はその時だけだけど、雪子はずっと無視されていると思っているんですね。

自分を無視しなかったのは、犬だけ。
ジロだけ。
だから、雪子は呼びかける。

どこにもいない犬。
どこにもいない私。
たった一人の理解者。

ジロよ、帰っておいで。
私の肩に帰っておいで。
ジロは帰ってきてくれた。
だから私は夕方になると、街を徘徊する。

家に帰りたくないんじゃない。
私は、ジロと一緒に歩いているのだ。
そう考えると雪子のこの言葉は、とても痛々しい。

こんな時、雪子は献金活動をしている天使様に出会う。
自分の電車賃を入れた音は、荘厳な鐘の音だった。
「ありがとう」の笑顔は、天使だった。

雪子はそれをもう一度経験したくて、そこに通い始める。
お金を箱に入れ続ける。
そのために妙な雑誌の編集者に引っかかり、クラスメートから借金をしまくる。
でも雪子は止められない。

ここでこの話が雪子のモノローグで占められていたところに、陽差子というクラスメートが入って来る。
陽差子は忠告するが、雪子は献金がどう使われようと関心がない。
雪子は、ボランティアに協力しているのではないのですから。
彼女は、他で得られなかった自分の幸福感のためにやっているのですから。

でもそんなことは、陽差子にはわからない。
だから陽差子は、怒る。
詐欺に加担させないでくれと思って、お金を返してくれと言う。

しかしそうやって献金をしていた雪子には、わかってくる。
ジロは雪子に何かしたい、何かしたいと思っていたことが。
それはジロが、犬が自分にくれる無償の愛。

本来なら、雪子の父母がくれるはずのもの。
それをジロはくれていたのだと。
これが自分を幸せにしていたのだと。

ジロはそれで、幸せだったのだと。
自分もまた、そうなのだということ。
人を幸せにできる、そして自分は幸せに感じる。

それができる。
私にはわかりました。
わかった私はやっと、言えます。

メリークリスマス。
メリークリスマス。
ありがとう。
アイラブユーと。

天使様の羽は、雪子にも生えた。
その雪子に気が付いたのは、陽差子。
お金を返して…というのは当たり前だと思うけど、陽差子は雪子を追い詰めてしまった自覚がある。

無償の愛は、自分にはまだできない。
だからクリスマスソングは歌えない。
それでもいつかきっと、できる時が来る。

できるようになりたい。
そうしたら、言いたい。
ジロが雪子に何かを残したように、雪子も陽差子に何かを残した。

メリークリスマス。
メリークリスマス。
ありがとう。
アイラブユーと。

シビアな話です。
しかし静かに、でも確実に希望を残して、このクリスマスの季節の話は終わります。
あたし、私と一人称が変わりますが、それさえもこの不安定な少女にはふさわしい。
大島弓子、すごいです。



ジロや どこにもいない犬 「山羊の羊の駱駝の」

大島弓子さんのマンガ。
「山羊の羊の駱駝の」。
この季節になると、思い出します。


主人公・雪子のモノローグから始まります。
11月末の日曜日。
今月分の小遣いをはたいて、映画のはしごをして外に出ると、まだほんのり明るい夕暮れだった。

「ああ、おもしろくない映画だった」。
「もう少し何とか、できなかったのだろーか」。
雪子は不機嫌だった。
街にはジングルベルが鳴り響いていた。

『あたしは暗くなるまで、そこいらを歩いてから帰ろうと思った』。
『あたしは夕暮れになると、下を見て歩き回る癖がある』。
そうして歩いている雪子は、ふと足を止めた。
『なんだあれ』。

腰までの長い髪。
天使の羽。
白い長いローブ。

その男性は、雪子に「よろしく」と言った。
「あ、こちらこそよろしく」。
雪子にそう返されて、男性は戸惑った。

「アフリカ難民のため、献金をお願いします」。
男性は、そう書かれた箱を持っていた。
あ、あたしの財布によろしくと言ったのか。

雪子は電車賃だけ残しておいた小銭を、募金箱に入れた。
その時だった。
「りんごん」。
「りんごん」。

『りんごん?』
「ありがとう!」
男性は笑顔になった。

その笑顔は天使様だった。
お金を入れる音は、天の鐘の音だった。
雪子は道ばたに座り込み、その天使様を観察し続けた。

『あ、店じまいだ』。
募金箱を下ろし、男性は背負っていた羽を下ろした。
『なある。それで後ろから見ると背負子のところは髪で隠れるわけだ』。
ローブはたくし上げて、歩きやすいようにして帰る。

ふと、雪子は気づいた。
「何時」?
「11時~!?」
雪子はそんなに長い時間、天使様を見ていたのだ。

『我が家には、防音壁の音楽室があります』。
『今ではあたしはピアノをやめているので、この部屋は今日のように門限を犯した時等の説教に使われるのです』。
『どんなに大きな声で怒っても、近所には聞こえない、というわけです』。

私がこの部屋を最後に使ったのは、10年前のことです。
近所の子供がつないであったうちの犬をいじめて、噛まれてケガをした時です。
その日、学校から帰ると、犬がいなくなっていました。
父が保健所に連れて行き、薬殺したのです。

それが父の体裁でした。
あたしは音楽室で、犬の鳴く一生分を泣きました。
それ以来、あたしは泣いていません。

説教が終わった時、雪子はうっかり小遣いの前借りを頼んでしまった。
さらに説教が伸び、寝たのは2時になった。
でも気分は最高。
雪子は翌日も学校の帰り、天使様を見に行こうと思った。

途中、10円玉でも落ちていれば、献金ができる。
そう思った雪子に、声をかけてきた男がいた。
「こういう者ですけど、助けてくれないかな」。
男は苦労しないで大金が入る、綺麗なバイトを紹介するという。

雪子は写真を撮られ、10万円をもらった。
そして走った。
「あの場所にいますように」。
「いました!」

天使様はいた。
「お待ちください、今、10万が行きます」。
そうだ。
お札は音がしないから、全部500円玉に替えよう!

雪子が募金箱に500円を入れると、りんごんという音が鳴り響いた。
ひゃあああっ、いい音!
「ありがとうございます」。
まだまだ、まだまだあるんです。お待ちください!

ごーんごーん、ごーん。
天使様の顔が、引きつって行く。
だが雪子は、最大限の笑顔になった。
あたしは合計200回、鐘を打ち鳴らした!

あたしは毎日、毎日、あの天使のうれしそうな顔を見たいと思いました。
あの顔を見れば、ご飯を食べなくても生きられるような気がしました。
そういうことで次の日も、雪子は天使様を見に行った。

天使様は雪子を覚えていた。
手を振ってくれた。
忘れらりょか。

雪子はうれしくて、犬が尾を振るように手を振り続けた。
またバイトをして、献金をしたい。
雪子は、あのバイトでもらった名刺に電話をした。

しかし電話中。
ずっと、ずっと電話は話し中だった。
なんだここ?と思ったが、雪子はもう電話する必要はなくなった。

あの時の記者が、向こうから雪子に会いに来たのだ。
雪子のグラビアは大評判になり、問い合わせが殺到したらしい。
また出てくれないかな、と男は言った。
そして、雪子のグラビアを見せた。

「これ!」
「約束が違うじゃない!」
「肩から上の写真で、胸から下は出さないって言ったのよあなた!」
「下着をはずすのは、その方が肩が綺麗に撮れるからって言ったのよあなたは!」

記者が見せたのは、雪子のヌードグラビアだった。
騒ぎで、雪子の両親が出てきた。
雪子のグラビアを見た父親は、雪子に家に入っているように言い渡した。
母親は泣いた。

「ごめんなさい、でもあれはあっちが約束違反を」。
「黙りなさい!」
父親は怒鳴った。
「なかったことにしよう」と、父親は言った。

「あれはお前ではない。お前に似た、どこかのあばずれだ」。
なある(ほど)…。
「学校に行きなさい」。

雪子は父親に言われたとおり、記者を無視して走った。
記者は追いかけてきて、学校にまで入ってきた。
そして生徒たちに、「奥杉雪子ってどんな子?」と聞いた。

「ここ、お嬢様学校でしょ?」
「BFはいるのかな?あの子のお父さん何してる人?」と聞いて回った。
教師たちからも家に問い合わせが来たが、父親は人違いだ迷惑していると言った。
雪子は記者を見ながら、思った。

敢然と無視されたのはあの記者ともう1人、あたしです。
あの写真が私でなかったら、私はどこにもおりません。
雪子の心は、真っ白になった。

どこにもいない犬。
犬(ジロ)や。
帰っておいで。
私の肩に帰っておいで。

雪子が天に手を伸ばす。
天からは、ジロの首輪と鎖が降りてきている。
まだ、幼い髪の短い雪子。

今、ロングヘアの雪子の横顔は、無表情だった。
あたしが夕方、決まって街を徘徊するのは、あたしが犬になるからです。
ジロはあの時、あたしの肩に帰って来たのです。

雪子に、陽差子というクラスメイトが声をかける。
「あたし、あの写真あなただと思うわ」。
「ねえ、どうして写真のせたの」。
「他言しないから教えて」。

雪子は言った。
「バイト料がほしいからよそれだけよ」。
すると陽差子は、「もうあなたがあんな雑誌に引っかからないようにお貸しするわ」と一万円を渡した。

雪子はうれしくて、躍り上がった。
「ありがとうっ!」
雪子はそれを、天使様に献金した。

記者は追いかけてきた。
雪子は、今日は追われているので手短にしますと、陽差子の一万円札を入れた。
追いかけて来た記者は、天使様にも聞いた。

「あの娘、もしかしたら相当の金額をここに入れたのと違いますか」。
「はい、いただきました」。
「彼女はそれを社会鍋に入れた」と、記者はメモした。

「で、あなたは彼女から誘われましたか」。
「誘うって何のことです」。
「そりゃその何ですよ、この頃の高校生は進んでますから」。

「いいえ、誘われません」。
「何度も誘われた」と、記者はメモした。
その様子をまた、陽差子が見ていた。

天使様は名前を聞かれて、「練馬ヒロシ」と名乗った。
「うそーぉ」と陽差子は思った。
名前も嘘っぽいが、やっていることも嘘っぽいと思った。

陽差子はヒロシを追うことにした。
一切の生活を放棄し、募金活動にささげた人の生活を見てやろうと思ったのだ。
献金活動を終えたヒロシは、電車に乗った。

そして、高級住宅街で降りた。
「億ションに入って行った?」
「あっ、あの部屋だ。髪型でわかるわ」。
ヒロシのシルエットが、窓に映っていた。

「女の人がいる」。
「ええええ」。
ヒロシは女性と、乾杯している。
「シャンペングラスで?」

乾杯してる~~~~!
何が清貧よ。
奥杉さんはね、奥杉さんは騙されているのよ!
陽差子は、心の中で絶叫した。

翌日。
陽差子はこのことを雪子に知らせようと、待っていた。
しかし、雪子は他のクラスメートに話しかけられていた。

雪子は、陽差子に話したことを彼女たちにも話していた。
そして、別のクラスメートもまた、困っていると思って雪子にお金を貸していた。
雪子は思った。

今まで、人見知りしていたけど。
なあんだ。
みんな、天使じゃないの。

陽差子はやっと、雪子に話かけることができた。
そして昨日、見たことを話した。
あなたのお金は、シャンペン代になっている。
陽差子は、そう言った。

しかし雪子は言った。
「ご忠告ありがとう。でも献金が何に使われようと、あんまり関係ないのよ」。
陽差子は、顔をしかめた。

関係ない?
あたしに献金詐欺の片棒を担がせておいて、関係ないですって?
雪子はまた、クラスメートに借りたお金を献金していた。

陽差子はそれを見ていた記者に、詰め寄った。
雪子のプライバシーを探るぐらいなら、献金詐欺を暴け。
それがジャーナリストでしょ、と陽差子は言った。

記者はむっとしたが、次の瞬間、それはおもしろい、と思った。
翌日、陽差子は雪子に、すぐにお金を返してくれと言った。
雪子は「悠長にも」働いたら返そうと思っていたので、どうしようと思った。

母親はあの日以来、雪子と話さない。
お小遣いの前借は、無理だ。
雪子の目に、母の財布が入ってきた。

4千円入っていた。
とりあえず、2千円抜いた。
そして陽差子に返した。

分割と言われた陽差子は、早くあの汚らしい献金詐欺から手を引きたいと思った。
雪子は別なバイトを探したが、、短時間で稼げる仕事はなかった。
だからまた、母親の財布から拝借するしかなかった。
雪子がお風呂から上がると、母の雪子を見る目が変わっていた。

翌日、学校では早めに始まったバーゲンセールの話で盛り上がっていた。
話はクリスマスには、ホテルでディナーパーティーをしようかという方向に進んだ。
うんと着飾って。
だがそれには、2万円と言うお金がいる。

ドレス代もかかるだろう。
1人がボソッと言った。
「貸したお金って、翌日ぐらいに返って来るもんだと思ってたわ」。
「あたしもよ!」と、1人が声を上げた。

「ええー!」
「ここに居る人全員、奥杉さんにお金貸してるの?」
「でも返してなんて、鬼みたいに言えないわよね」。

「ふん」と、陽差子は言った。
「アタシは返してもらったわよ、全額!」
…返してもらった?
みんなが、顔を見合わせた。

雪子が登校してきた。
みんなで言えば、こわくない!
雪子に向かって、みんなが叫ぶ。
「あたしたち、お金がいるの、お願い今すぐ返してほしいの!」

雪子は、呆然とした。
「月曜まで待って」と、雪子は言った。
陽差子にはまた、2千円持って行った。

「ああ、いらないわ。もういいのよ、あたしには!」
「え?」
『これ以上、イライラしたくないのよ。残りの分もう良いわ。あなたにあげるわよ』と、陽差子は思っていた。

『あたしは今年は誰にもプレゼント買わない』。
『ディナーパーティーもしない』。
『それでいいのよ!』

雪子が帰宅すると、母の財布には紙テープが貼ってあった。
母は、雪子を疑っている。
だが、自分の財布に入っていた金額も疑っているのだ。

財布を開ければ、紙テープが切れる。
家には、母と雪子しかない。
雪子は考えた末、ついに財布ごと持って行った。
だがお金は、全然足りない。

雪子は、街を歩いた。
土曜の夕方は人は多いが、お金を落とす人はいない。
強盗するにも、銀行は閉まっている。

雪子が帰ると、母の別の財布が置いてあった。
母はそこから、目をそらさなかった。
翌日の日曜日。

母は一晩中、眠らずに、財布を見張っていたしい。
目が赤かった。
雪子は、朝からお金を拾いに行った。
足は疲れ、お腹はすき、やがて暗くなってくる。

明日は月曜日。
「雪だ…」。
見上げた雪子の上に、雪が降ってきた。

雪の夜の中、座り込んでいる雪子に天使様が話しかけてきた。
「どうしました」。
「何か、心配事でも?」
「何でもないんです」と、雪子は答えた。

「今日は、献金できなくて」。
「あなたにはもう、一生分いただきました」と天使様は言った。
「ほんとに何にもないんなら、もうすぐ、最終の電車ですよ。早くお家にお帰りなさい」。

「はい」。
しかし雪子は帰らない。
帰れないのだ。

すると天使様はくるりと踵を返し、雪子の前にやってきた。
「何かお忘れ物でも」と聞く雪子に、天使様は「はい、あなたを」と言った。
「僕とおいでなさい。食べ物ぐらいには、ありつけますよ」。

「え?」
「僕の寄り合いの場所にです」。
うそ…。
行きます!

マッチ売りの少女じゃないけど、これは幻覚であたし、朝、ここで冷たくなってるんじゃないだろうか。
雪が、たくさん降って来た。
あたしはそれでもいいと、思っていた。
もう、こっちの世界に帰って来なくたっていいと。

どこをどう通って着いたのか、覚えてなかった。
フッと、全体が明るくなった。
マンションだった。

わー、ヒロシのおなりーと、声が上がった。
女性が「お待ちかねのヒロシちゃん!」と、そこにいた人たちから、からかわれていた。
大勢の人がいた。

「いらっしゃい、あれ?お連れさん?」と、その女性が言った。
「うちのお得意様なんだ。何かあったかいもの作ってやっても良いかな」。
その女性は雪子を「まあー、冷たい!電気毛布でくるんであげましょう」と言った。

雪子の前に「どうぞ!俺の特製リゾットだよ」と、料理が出てきた。
「これ差し入れ」とワインを持った男性がやってきた。
「雪だ、仕事は止め、止め!」と言っていた。

どうやらこのマンションは、毛布をかけてくれた女性の家らしい。
天使様の恋人かな、と雪子は思った。
誰かがヒロシに「お前の集めた金は今頃、ラクダの背に乗ってポックリポックリ難民の方角に向かってる」と言った。

天使様は笑っていた。
アフリカへ行くのは、果たして駱駝で行くのかな。
雪子は、そんなことを考えていた。

誰かがワインを飲ませたので、雪子はトリップしていた。
そこはいつの間にか、音楽室になっていた、
雪子は父母、そしてクラスのみんなにワインを注いでいる夢を見ていた。

犬と言うのは、いつもいつも人に何かをしてあげたい
してあげたい
してあげたいと思っている動物らしい
あたしにはそれがよおくわかりました

メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス

記者は、編集長に電話をしていた。
雪子の父親が教育評論家で、市長候補ナンバーワンだと突き止めたのだ。
そして夕べ、雪子はイカサマボランティアの乱痴気パーティーにいたと報告していた。

月曜日、雪子は学校に来ていない。
生徒たちから金を巻き上げて、雪子はイカサマ師に貢いでいた。
総額62万円。
みんな、金が帰って来ないので騒ぎだしていた。

編集長はそれをすべて聞くと、明日の発売の雑誌に載せるつもりだった。
そうして、雑誌は出てしまった。
雑誌を見たヒロシは「あ、俺の写真だ」と言って本を読んだ。

雪子の献金は、そんなことをして集めた金だったのかと思った。
だがもう、お金は送ってしまった後だった。
もう返してやれない。

それにしても。
雪子は、月曜の朝に帰って行った。
今日は火曜日なのに、どこで何をしているのか。

雪子は雪の中、お金を探して歩いていたのだった。
目が、かすんできた。
あったかいところで休もうと、思った。
雪子が座った椅子の横に、カバンがあった。

え?
まさか、神様
くださるんですか?
…と雪子は思った。

手を伸ばし、かばんを持って走った。
記者が、それを撮影している。
雪子がかばんを開けると、百万円が入っていた。
「ああ、めまいがする!」

しっかりしろ、しっかり。
これならみんなに返せる。
すぐ学校へ行こう。
雪子は、お金を分けた。

これは、クラスの人に返す分。
これはお母さんに返す分。
そして残りは。
天使様のところに寄って差し上げて行こう!

カメラのシャッターは、雪子を追って切られ続けている。
天使様は、こちらに向かって走って来る雪子に気が付いた。
「あっ、あの子だ」。
「あっ、こっちへ来る」。

「手に札束?」
「札束」。
「今度は何の?!」
雪子は天使様に抱き着いた。

「ありがとう」。
天使様はそう言って、雪子を抱きとめた。
「え?」
雪子は眠っていた。

警官の笛の音。
シャッターの音。
人のざわめき。

救急車のサイレンの音。
天使様によりかかりながら、雪子は思った。
ジングルベルが聞こえていた。

雪子が目を覚ましたのは、病院だった。
父親は警察に呼ばれていた。
私が置き引きをやったので、それで。

あれは神様が下さったお金では、なかったようです。
それは全額持ち主に返されました。
クラスメートの借金も、父が払ったそうです。

父は各顧問を辞職し、市長選出馬を断念しました。
天使様も取り調べられましたが、詐欺の証拠はなく、すぐに釈放されたそうです。
しかし週刊誌に写真入りで詐欺と歌われては、募金活動はできず。
天使様は仲間のカンパで、アメリカに行って同じことをやると言って旅立っていきました。

あたしの罰はと言いますと、どうやら薬殺は免れ、北国への島流しとなりました。
気分を出してお船で、父の知り合いのお寺に3年の修行に出る私とジロ。
あたしは考えました。

宗派は違ってもあの天使様と同じことをやれると。
それ、すなわち托鉢であります。
「しかしだれも、とおらないわ…」。

「うわあ、幻想的」と言う声がする。
ビルの上から、イルミネーションが見える。
雪子のクラスメートたちが、ホテルでディナーパーティーをやっていた。
みんな、着飾っている。

メリークリスマス!
「では、お席にご案内いたします」という声がした。
だが、陽差子は動かなかった。

「あたし、帰る」。
「陽差子、どうしたの」。
「何で、嘘。これから始まるのに」。

だが陽差子は、外に出た。
天使の羽をもがれたから、クリスマスソングは歌えない
陽差子は、思った。

だけど来年には新しい羽も、はえてこよう
来年でダメなら再来年
再来年でダメならその次の年
5年でダメなら10年後

やっぱりあたしクリスマスソング歌いたい
メリークリスマス
アンドアイラブユー

あるいは幻 「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」

伊藤潤二の猫日記 よん&むー。
ホラーマンガ家・伊藤潤二さんの飼い猫との日々を描いた愛猫マンガ。
タッチがホラーなので、落差に笑わずにいられない。

第3話では、猫じゃらしを使って遊ぶ光景が、まるで何かを攻撃しているかのように描かれてます。
ホラーマンガの本領発揮は第5話「よんはやっぱり変な顔」。
締め切り間際の徹夜で、頭がもうろうとしたJ。
顔を洗おうとして廊下に出て、「はっ!」とする。

廊下には椅子の足より大きな、なめくじがいたのであった!
ヌメー。
そのヌメヌメ、ヌラヌラした質感。
長く尾を引く影と、触覚。

「ひょ~っ!」と悲鳴上げたJ。
しかし、それはよく見ると、長く伸びた「よん」の寝姿であった。
『な…、なんだ、「よん」か…。でっかいナメクジに見えた…』。
『俺も相当、疲れてるな…』。

ピクリと耳がJの方を向き、フワーっと大きくあくびをした「よん」。
(すごい、こういう顔になる、猫のあくびは)。
むにゃむにゃと手をなめだし、ペロペロペロと大股を開いて肢をなめる。
(ちゃんとお尻の穴まで描写…まっ)。

「いい気な奴。人が徹夜してるってのに」と言ってJは廊下を歩いていく。
すると、スタスタスタスタと、よんが歩いて来る。
その目がギラリと輝く。
「!?」

次の瞬間、Jの横をシュルシュルシュルシュルと通って行ったのは!
背中に「ドクロ」の模様をつけた、異形の蛇。
ツチノコであった!

「出た!ツチノコだ!」
「A子、ツチノコだ!」
「早く捕まえろ!」

「何言ってるの、あれは『よん』だよ」。
眠い目をこすりながら廊下を見たA子は言った。
「な…、なんだと。はっ。またしても幻覚」。
「にゃあああ」と、よんが鳴いた。

顔を洗うJを横で見ているのは、むー。
ブクニャンという声に、「よかった。むーは、やっぱり『むー』だ」。
「お前はおっとりしてて可愛いね」と、抱き上げる。

ゴロゴロ言っていた「むー」だが、突然、カッと目を見開くと、ガブッ。
Jの指に思い切り、噛みついた。
「まあ、『むー』は猫らしい可愛さがあるから許す…。本気で噛むが」。

「問題はやはり、『よん』だ。あれは本当に猫なのか?」
そっとテレビのある部屋をのぞく。
すると、背中に3つの丸い模様があるおっさんが、座っている。
「だ…、誰だ!?あのおっさん」。

「あっ…」。
次の瞬間、おっさんは「よん」になった。
Jは、疲れているのだ。

必要なのは、癒しだ。
すると、背後で声がする。
「ニャー」。
「よん…」。

突然、よんがJの膝に飛び乗った。
クルン、と腹を見せる。
「な…、なんだ。どういう風の吹き回しだ…」。
Jの額に、汗がにじんでくる。

ブルン、ブルン、ブルン。
よんの顔と、ブルン、ブルン、ブルン、という音。
Jのよんを凝視する目にも、それは響いて来る。
(ほとんど、ホラー)。

『奇妙な時間が流れた』。
『そう…、それは例えるなら、「そういうムード」だった』。
ブルン、ブルン、ブルン。

音を立てている「よん」に、Jは小指を差し出す。
「よん」が口を開ける。
(うわあ、本当に猫の口元ってこんな感じ)。

舌がのぞく。
Jの指が接近する。
チュボッ。
音を立て、よんがJの小指を口にした。

チュッチュッ、チュッチュッ。
よんがJの指をかかえ、赤ん坊のように吸っている。
『それは初めてのチュッチュだった…。今までA子にしかしなかったチュッチュ…』。
『よんのザラつく舌が私の疲れた小指を熱く包み込み…』。

『まるで鼓動のように静かに…、そして熱く!』
『しかし…、それはあるいは幻なのかもしれなかった…』。
(…、なんだこれ…笑)。

よんちゃんの鼻。
その周りのヒゲと、ヒゲが生えている皮膚というか、毛の部分の描写、見事です。
舌といい、毛といい、リアルです。

体温があります。
息までかかって来そうなリアルさ。
猫に指をなめられた時の感触が、蘇ってきます。

うれしいはず。
待ちに待った瞬間のはずのJは、目を閉じ、あきらめたような表情。
まるで、女性に逃げられたような、傷心のようなシーンなのが、おかしい…。

いやいや、伊藤潤二さんの発想ってすごい。
描写もすごいですが、発想もぶっ飛んでます。
よんは確かに白い猫だけど、ナメクジに見える?

ツチノコになる?
おじさんに見えることが、あるのだろうか。
確かに、おじさんっぽい時もありますけど…。

そういえば、映像化された作品もありますね。
中でも、よくこんな発想するな、と思うような作品が映像化されているそうです。
どんな作品になっているのか、その映像が気になりだしました。

私がマンガを読み始めた頃、ホラーマンガと言ったら楳図かずおさんでした。
当時はホラーとは言わずに、「恐怖コミックス」「怪奇コミックス」と書いてあった気がします。
近所の友達がマンガたくさん持ってたんですが、楳図かずおさんのマンガもいっぱい持ってた。

良く借りたものですが、机の上に置いてるのも怖かった。
顔の半分に、グロテスクなもう一つの顔ができていたり。
夜ごとに庭にあるお墓から、ゾンビのようになった娘がやってきたり。

借りておいて、家にあって怖くないの?とか失礼なこと聞いてました。
何で怖いの?って言われましたが。
大人になって、本人を見た時は別の驚きがありました。
その後、メルヘンチックな家を作ってそれにも驚きました。

「まことちゃん」というギャグマンガがヒットした頃には、「怖いマンガも描いているのですね」なんて言われたそうです。
私たちが楳図さんのマンガに怖がりながらも魅了されたように、伊藤潤二さんも人を惹きつけているのでしょう。
その非凡な画力、表現力はこの愛猫マンガにも十分、生かされているのです…。
また描いてほしいものです。


不穏な猫マンガ 「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」

ちょっと前ですが、Eテレで、伊藤潤二というマンガ家の特集をやっていました。
ホラーを描いていて、ひとつの絵が完成されるまでを追っていましたが、その緻密さ。
こだわりと出来栄えのすばらしさに、思わず見入ってしまいました。
虫が嫌いな私には、自分で描いていて、おぞましくならないのかなあと言うぐらいの緻密さでした。

その伊藤さんが描いた、猫マンガ。
「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」。
表紙があの緻密なタッチの猫。
しかし、ホラー風味!

猫の顔が怖い。
特に怖いのが、向かって左側の猫。
よんちゃんと言うそうです。

猫だけじゃない。
主人公のJくん、伊藤潤二先生の顔も怖い。
婚約者、のちの奥さんになるA子さんも、常に白目をむいている。

でも表紙をめくった後のカラーページの、2匹の猫はかわいい。
伊藤先生の愛情が感じられます。
日記は、JくんとA子さんが新築の家にやってくる。
そしてA子さんが実家から「よん」という猫を連れて来ると言ったところから、始まります。

第1話「むー登場」。
Jは新居を購入した。
貼りたての白い壁紙。

ピカピカの床。
かぐわしい新築の香り。
そしてこの新居には、Jの婚約者A子がいる。

しかしまもなく、宅配便が届く。
キャットタワーだった。
「キャッ…、キャットタワー?なんでそんなもの、買ったんだ?」
「何言ってんの?千葉の実家から『よん』を連れて来るって話したじゃん」。

Jは、「よん」という猫を思い出します。
A子の実家に行った時、そういえばそこにいた。
『よん…。そうだ、あれは数か月前、A子の実家へ初めて行った時のこと』。

『そこに、「よん」はいた」。
Jを見る、よん。
その目の周りは黒く縁どられ、陰影が禍々しい。

『それは誰が言ったか…』。
「呪い顔の猫…』。
(いや、あなたが言ったんでしょ)。

『あの呪い顔の猫が…』。
『この家に来るだと?!』
『認めん、認めん…』
「認めんぞ~!」

叫んだJは、次のコマでは、キコキコキコとドライバーを回し、キャットタワーを作っているのであった。
さらにA子は、よんが一人だけじゃ寂しいと思うと言って、もう1匹飼うと言う。
新居の壁を、テカテカした爪とぎ防止シートで覆って行ったJは思う。

『な、何…。もう1匹猫を飼うだと…?!』
『1匹ならまだしも、2匹も飼うというのか…』。
『認めん…、認めん…』。
「認めんぞ~!」

叫んだJは、次のページではA子を乗せて、初めて行く場所へのドライブに神経を使っていたのでした。
そして家に来た「むー」ちゃん。
ホラーマンガ家の母親とA子が、「かわいい」「かわいい」とあやす。
ゴロゴロゴロと喉を鳴らす「むー」。

Jの目が大きく見開かれ、目が充血し、血管が浮き上がっていく。
その血管が、中心に向かって行く。
中心には、猫のマークが!

「か…、貸せっ!」
叫び、突然、猫を2人から奪うJ。
パックリと口を開き、むき出しになった歯が糸を引いている。
狂気に満ちて目で猫を見ると、「お…、お前」。

「食べちゃうぞ~っ!」
そして「チューッ!」と叫び、猫の顔を口で吸い始める。
部屋の真ん中で猫を抱えて、回転しながら「食べちゃうぞ~っ!」と叫ぶJ。
誰も止められない。

そしてついに「やってくる…」。
「もうすぐ、やって来る」。
「あいつが我が家に…」。

「数時間後には我が家へやって来る…」。
「あの呪い顔の猫『よん』が…」。
ということで、第2話は「よん襲来」。

A子が帰宅。
部屋で、キャリーケースを開ける。
Jくんは廊下からこっそり、それを見ている。

暗い部屋。
ギイイイイと音がする。
キャリーケースの闇の中、目が光っている。

「ヌー」。
首が伸び、出てきたのは、ホラー顔の猫「よん」。
(これ、猫飼ってる人にはわかるんじゃないですか。猫が首を伸ばしたところ)。

その背中の模様を見て、Jは「あっ!!」と叫ぶ。
「よんの背中に…、ドクロの模様がっ」。
「の…、呪われている…」。
「やはり呪いの猫だ」。

「呪いの猫がやって来た」。
「我が家に呪がやって来た!」
(いや、ただの模様)。

頭を抱え、ムンクの悲鳴のポーズで走り出すJ。
その背後には、大きなよんの呪いの顔。
しかしその夜、A子が泣きながらやってくる。

「よんが…、よんが…」。
J「よ…、よんがどうしたのだ?」
「呪っているのか?」
(そんなわけないと思います!)

「よんが全然、ご飯を食べなくて元気がなくなっちゃったから、今夜は私の部屋で看病するね」。
(ああっ、かわいそう)。
A子が部屋に行くと、キャットタワーの箱の中、よんちゃんが寝ている。
元気がない。

「よんちゃん…」。
「よんちゃん…」。
A子が泣いている。
(ああ…、わかる)。

伊藤先生の絵は、元気のない「よん」を的確に描写してます。
よんが、好きなんですね。
突然、見知らぬ家に連れて来られて、よんは極度のストレスを感じ、まいってしまった。
でもA子の看病で、よんは元気を取り戻します。

3日ほどすると、「よん」は「むー」とも仲良しになります。
後姿のA子にJが「何をしているのだい?」と、声をかけます。
すると白目のA子が振り向き、「チュッチュだよ」。
「おっぱいの代わりだよ、これでもまだ1歳だからね」。

見ると、よんが、A子の指をチュポ、チュポと吸っています。
『その頃、私は気づいていた…』。
『よんは呪い顔なのではなく…』。
『単に変な顔の猫なのだと…』。

『変な顔だが、それはそれで可愛いのだと…』。
(でも写真の猫「よん」は、かわいい。「変な顔」というのは、伊藤先生の愛情表現でしょう)。
はあ、はあ、はあ。

Jの目が血走って来る。
息遣いが荒くなる。
「か…、貸せっ!」

Jは叫ぶと、A子からよんを奪い取る。
血走った目。
陰影が付いた顔で、Jは叫ぶ。
「チュッチュしろ!」

「さあ、俺にもチュッチュしろ!」
そう言って、指をよんに差し出す。
だが…。

よんは、ズルッと腕から逃げる。
白目をむいたA子が笑う。
「フフフ…」。
「チュッチュは私にしか、しないんだよ…」。

「グググググ」。
歯ぎしりし、目を剥きだしたJくん。
よんを扉の向こうから、未練たっぷりに見る。
『変な家に連れてこられたにゃー」と、よんは思う…。


ホラータッチの絵。
描写!
展開は、ホラー。

だが中身は、猫日記!
それも愛情たっぷりの猫日記。
爆笑です。
私はうっかり、電車の中でこれを見て、危ない人になってしまいました。

最初の「Jくん」「なんだい、A子」からして、ホラー。
「Jくんは犬派?猫派?」に、「フフフ、そうだな、どちらかと言えば、ハムスター派かな」。
(どっちも言ってないじゃないですか)。

「私は犬も好きだけど、やっぱり猫派だな」。
「ランラン」と歌いながら、でも顔はホラーのA子。
「…」と沈黙しながら、Jは思う。

「…俺は本当は犬派さ。なぜなら犬は人間の友…。犬はけなげで涙を誘うからな…」。
それを言うのに、なぜ、黒目が上に張り付くほど上目遣いになって、充血しているのか。
セリフがなければ、これが愛猫マンガだとは誰も思わない…。
す、すばらしい…。

こんな、私ごときの文章、表現力では伝えきれない。
猫好きも、そうでない方にもおススメ。
ぜひ、ご一読を!


よん&むー

豪の豪は実は業 「世界の終わりと始まりに」

さて、永井先生は「デビルマン」で人類を滅亡させたことがずっと、心に引っかかっていたそうです。
それで世界が再び復興する話を描かなければいけない、と思った。
こうして描かれたのが、「バイオレンスジャック」。

無秩序な世界で力による戦いが起き、やがて秩序ができていく。
描きながら、これは人類の歴史だな、と思ったそうです。
考えたら「デビルマン」は戦争だな、と思った。
明は何にもそんな気はないのに戦いに巻き込まれ、最前線に立ってしまう。

「バイオレンスジャック」は結局、「デビルマン」世界とつながった。
この「バイオレンスジャック」の最後に永井先生は、「ジャックは何者だろう」と考えた。
「誰なんだろう」。
「ジャックが誰だったら、納得できるだろう」。

そして本当に最後に、「デビルマンだ!」と「気付い」た。
自分でも、興奮したそうです。
「バイオレンスジャック」には、暴力のシーンがたくさん出て来る。

永井先生自身は一番やってはいけないことは、人を力で抑え込むことだと思っているそうです。
正義の基準はわからないけど、自分の中の悪の基準はハッキリしている。
人を絶対的に、支配すること。

これは一番やってはいけないことだと、永井先生は思っている。
また、自分が一番やられたくないことだとも、思っている。
だから「バイオレンスジャック」では、自分が思う悪を徹底して描いた。
スティーブンキングがすごい怖がりで、自分が怖いと思ったことを描いているのと似ています。

編集さんには「何で登場人物をここまで虐げるんですか?」って、言われたそうですけど。
人間と言うのは暴力的な側面や、衝動を持っているが、それを他人に向けてはならない。
そうでなければ相手に痛い思いをさせ、相手も自分も傷つく。
こういうことを子供の時に学べれば、被害者も加害者も減っていくのではと思っているそうです。

でも永井先生は暴力のシーンは描いていて、すごく疲れる。
ギャグマンガは疲れないし、善の存在を描いている時は疲れない。
「デビルマン」や「手天童子」を描いていると、体が痛くなるそうです。

「手天童子」に至っては、悪夢を見た。
スタッフもみんな、同じような悪夢を見たそうです。
クリエイターですから、そういう気持ちが周りに伝染するのかもしれませんね。

そういえば面白い話も書いてあって、永井先生が前世がわかるという人と会った時のこと。
この時、この方が永井先生のことを宗教家だったと告げたんですね。
何度か転生しているけど、転生するたびに宗教家だったと。

中世オーストリアで、神父だったこともあると告げた。
でもこのことは、あんまり知らなくて良いと言う。
その時、永井先生の頭にポーンと、大きな木が浮かんだ。

するとその方が「あなたは神父なのに、自殺した」と言う。
だから「あの木で自殺したんだな」と思った。
「どうして自殺したんですか」と聞くと、「つらい時代でしたから」。

それで、もしかしたら自分は魔女狩りをしていたんじゃないかと思った。
「デビルマン」のシーンが、頭に浮かんだ。
牧村夫妻を殺した人たちは、宗教家のような恰好をしていた。。

意図して描いたわけじゃなかった。
でもこれは…、自分の経験を描いたのか…?と思ったそうです。
おもしろい話ですね。

話は「キューティーハニー」に、及びます。
あれは男の子向けに描いたが、女の子に人気が出た。
この理由は何だろう?

やっぱり、女の子の変身願望を満たしたんじゃないか。
それから「女の子はおとなしくしてなさい」と言う、当時まだあった風潮に反発したんじゃないか。
永井先生はこんな風に、分析しています。

80年代に、マドンナが出てきた。
それまではセクシーと言うと、プレイボーイのグラビアみたいに男性からの一方的な視点だった。
でもマドンナのセクシーさは、女性が主導する女性が魅力的であろうとするものだった。
永井先生としたら、キューティーハニーで考えていたものが、ついに出たと言う感じでしょうか。

ずいぶん怒られたけど、ヌードは永井先生としては絵的に綺麗であれば良いと思っていた。
だから「デビルマン」のシレーヌは怪物でも美しさがあり、美を見いだせるようにしたかった。
人間とは全く違う形でも。

シレーヌ、私はすごい好きなデザインです。
美しいけど、とても怖く危険な存在。
すばらしいデザインです。

永井先生は自分のエロティシズムは、健全なエロティシズムだと思っています。
エロティシズムが発散されない社会は、まずいと思う。
ヌードやエロティシズムを過度に取り締まっている社会は、犯罪が少ないか?
否、陰惨な犯罪が多いと思うと永井先生は考えています。

永井豪の豪は、実は業なんじゃないかってインタビュアーに指摘されています。
自分の作品では、まず破滅がある。
そこから再生されると、自らの作品を分析しています。
おもしろい分析だと思います。