こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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悪女の一瞬 「わるいやつら」

1980年の映画、「わるいやつら」。
これも、米倉涼子さんでドラマ化されましたね。
その時の米倉さんは、看護師の
本来は主役ではありません。

映画では、信一が主役。
片岡仁左衛門となる前の、片岡孝夫さんが演じています。
隆子は、松坂慶子さん。

彼女と組んで、信一をはめる弁護士の下見沢は藤田まことさんです。
それぞれの「悪」が描かれます。
最後に笑ったかに思えた、隆子と下見沢。

弁護士の榊は、どっちが上手だか。
お似合いの2人だよと、言う。
下見沢の犯罪を立証する手立てはない。

しかし、その2人も関係がもつれたか。
3年後。
信一の無期懲役が確定し、網走刑務所に送られることになった。
その船の中で刑事が新聞を見て、ぼやく。

「最近の男は情けなくなったな、フラれたぐらいで女を刺すなんて」。
「いやあ、それだけ女が強くなったんだよ」。
「見るかい?」

信一が見た新聞に載っていたのは、隆子が刺されたという記事だった。
有名デザイナーとのコラボのファッションショーを成功させて笑顔の隆子。
彼女のマネージャーに収まっていた下北沢だが、解雇されていた。

隆子に近づく下見沢。
その手に光るナイフを見た隆子の顔色が変わる。
逃げようとする隆子の背中に、下見沢がナイフを深々と刺す。

「やめろ!」と止めに入る男たち。
ナイフを振りかざし、取り押さえられてもなおも暴れる下見沢。
のけぞる隆子。
暴れる下見沢。

ストップモーション。
ファッションショーのための、華やかな音楽が流れ続ける。
これまでのことが画面に映っては消える。
それはまるで、信一の脳裏をよぎるこれまでの記憶のようなキャスティングクレジット。

チセ、梶芽衣子さん。
トヨ、宮下順子さん。
たつ子、藤真利子さん。
信一の妻の慶子、神崎愛さん。

刑事の井上は、緒形拳さん。
信一の担当弁護士の榊、渡瀬恒彦さん。
やっぱり、この辺り、渋くて良いです。
自分の仕事をきっちり、こなしている。

ここではトヨは、悪女の1人。
トヨは信一に殺されそうになり、実際に死んだと思われて遺棄されている。
ところが、息を吹き返して助かっていた。

雨の中、連行される信一。
向かい側には女性の被告が、護送車に乗せられている。
その時、連行されていたのはチセだった。

チセはちらりと信一を見ると、皮肉な笑みを浮かべて護送車に乗り込む。
その目は信一に対する思いなど、みじんも感じられない。
ただ、バカな男に付き合って、バカなことをした自分。
目の前の男など、もう見たくもないという顔だった。

女の保身と心変わりにため息をついた信一だが、次に目に入ってきたのはトヨだった。
この時のトヨの表情が、宮下順子さん、見事。
信一を見た途端、パッと顔が明るくなる。

口は半分、開き、その目でトヨが信一を愛しているのがわかる。
自分を殺した男なのに。
トヨは信一に、微笑みかける。
かつて、そうしていたように。

しかしそれはほんの一瞬。
一秒に満たないほどの一瞬。
次の瞬間、トヨの目は据わる。

「どうだ」。
「あたしを捨てたお前の今の身の上は、どうだ」。
「思い知ったか」。
「ざまをみろ」。

そう言わんばかりの不適な笑み。
憎しみ。
軽蔑。
どれとも取れる表情を浮かべる。

信一を小バカにしたように見ながら、トヨは護送車に乗っていく。
宮下順子さん、見事。
トヨという女性、信一に対する思いがこの一瞬でわかる。

裁判ではトヨは、信一は悪くないと泣く。
検事はトヨのことを、こんなにも被告を愛している。
そんな女性の証言が、信じられるでしょうかと言う。
この検事、蟹江敬三さん。

あのトヨの表情を見ていると、これが嘘泣きであるように思えます。
それと同時に、本音であるようにも思えます。
信一さんを、誰にも取られたくなかった…。

実に味わい深い。
トヨの表情だけでも、一見の価値があります。
米倉さんのトヨも良かったですが、こちらも素晴らしい。
野村芳太郎監督の「わるいやつら」、2時間十分楽しめます。


八丁の、堀に中村主水かな 「新・必殺仕置人」第1話

のさばる悪を何とする
天の裁きは待ってはおれぬ
この世の正義もあてにはならぬ
闇に裁いて仕置する
南無阿弥陀仏


「新・必殺仕置人」第1話。
前にも書きましたが、再見してみました。
やっぱりすごく、良くできてるんですよね。

みんな、若い。
若くて、ギラギラしている。
でも山崎努さんは、藤田さん、中村嘉津(草冠)雄さんは、ギラギラの中に、落ち着いた渋さが出て来ている。
若さと渋さの間の、ちょうどいいバランスの時期の作品じゃないでしょうか。

鮮やかな青い羽織を着たものが10名ほど、その座敷には座っていた。
両側に3人ずつ。
正面に2人、羽織を着ていない男がいる。

向かって右側に、いやに貫録と迫力を感じさせる老人がいる。
その横にいる男と、その男の奥にこちらには横顔を見せて座っている男が一人。
坊主頭の男が、つるん、と頭を撫でている。

彼らと向かい側、こちらから見ると背中しか見えないが羽織を着た男が2人。
左側の男に向かって、羽織を着た男が近づく。
すると、左側の男が口を開いた。

「それでは挙句を頂戴いたしまして、本日の興行を終わりたいと存じます」。
右側に座っている、老人。
彼が元締め、寅だ。

寅が筆を執り、すらすらと句を書く。
出席者に緊張が走る。
皆が正面を向いている中、坊主頭の男は斜め上を見ている。

いかにも「早くしろ」と言わんばかりの顔。
念仏の鉄。
江戸から脱出したはずの仕置人、念仏の鉄だ。
句が読み上げられる。

「八丁の~」。
「堀に中村、主水かな」。
鉄が顔を上げた。
きょとんとした顔をしている。

「八丁の、堀に中村主水かな」。
鉄が眉をひそめる。
何か思案している。

寅は無表情だ。
建物の表には「月例俳諧興行虎拾番会」とある。
戸が、すっと締められる。
野次馬が中をのぞきこもうと、首を伸ばしている。

「虎、万筆」。
奥から横顔だけ見せていた男が、前に進み出て来る。
死神。
寅の用心棒の、得体のしれない男だ。

「150両」という声がかかる。
「140両」。
135、130。
125、120、110。

「80」という声がかかる。
「ございませんか」。
「ございませんね」。
「よろしゅうございますね」。

寅が言う。
「ではこの命、80両で落札」。
「八丁堀、中村主水…」。
鉄がつぶやく。

町奉行所の前に、正八と言う若い男がいる。
正八は表で、鋳掛をやっている男に近づいた。
鋳掛屋は、己代松。

「出てきたよ」と、正八が言う。
「あれか」。
「あれだ」。

「おはようございます」。
挨拶した同心が、中村主水だ。
ちょろちょろと歩く。


奉行所の中から、与力の筑波が現れる。
「これより、市中見回りに出かけます」。
主水が筑波にそう言う。

「例の庄兵衛衛の一軒でございますが」。
「何かわかったか」。
「それが」。

「気にするな。そうだ中村。おぬし、なかなか評判がいいぞ」。
誉められて主水は、うれしそうになった。
「わしも鼻が高い」。

「このうえは筑波様の期待に応えるためにも…」。
主水は、情熱をもやすのだった
そして、主水は市中見回りに出かけた。
おていというすりが、己代松と目配せしている。

「ご苦労様です」と町の者が声をかける。
「うん」。
主水が行くと、さきほどのおていがやってきた。
指をなめ、いそいそと歩くおていに、主水が目を留めた。

おていは正八とすれ違いざま、見事に財布をすった。
すると同時に、おていは足早にかけ去る。
「おい!」
主水が追って来る。

正八に「おめえ!財布やられたぞ!」と叫ぶ。
「ええっ!」
主水は正八の手を引きながら、おていを追って来る。

おていの姿は、絵草紙屋の前で消えた。
主水が入って来る。
女ものの、下駄がある。

主水は座敷に進むと、用心深くふすまに手をかけ、開けた。
押入れの奥には、階段があった。
地下室がある。
主水が降りて来る。

階段の下にはおていと、己代松がいる。
たくさん、下がっている浮世絵をかき分け、主水が進む。
浮世絵が動き、両手で絵をかきわけて男が現れた。

坊主頭の男。
念仏の鉄。
鉄は主水をいたずらっ子のような目で見た

「しばらくだったな、八丁堀」。
にやりと笑った。
主水は視線を落とした。

「まだ生きてたのか」。
「裏の家業は続けてんのか」。
「うん」。

「おめえには会わなかったことにするぜ」。
主水は踵を返すと、その先の視線には己代松とおていがいた。
「ああ、いいんだいいんだ。俺の仲間だ」。

「ちょっとわけがあってな、おめえをここまで連れて来てもらったんだ」。
主水が鉄を見る
そして、目を伏せる。
「仲間、か」。

唇をなめる。
指を顔の前で振ると主水は「俺は、仕事はしねえぞ」と言った。
「おいおい、そうすんなり出てってもらっちゃ困るんだよ」。
「上にも仲間がいるぞ」。

絵草紙屋の店番をしているのは、先ほどの正八だった。
客が帰り、ちらりと正八がこちらを見た。
階段の上から、主水がそれを見ている。
鉄が階段の下に座る。

「イイか。驚くなよ」。
頭を掻き、仰向けに横たわる。
「昨日な。おめえの命がよ。80両で売れたんだよ」。
「なんだっておい?!」

「寅って男がいる。素性も何にもわからねえが、こいつが頼み人を見つけると、裏稼業の人間が集まってセリにかける」。
「最近はそういう仕掛けになってんだ」。
へへへっと主水は笑った
「からかっちゃいけねえぞ」。

鉄は起き上がった
「冗談で、こんな真似ができるかい」。
鉄は頭を掻きながら起き上がる。
「来いよ!」

手招きをして、階段の下の地下室に主水を呼ぶ。
主水の耳元に口を寄せると、鉄はささやく
「おめえに知らせたと寅にわかりゃ、俺たちだってただじゃすまねえんだ」。

「昔馴染みに狙われてることを教えてやろうと、連中に頼んでおめえをここまで連れて来てもらったんだ」。
「俺を狙ってるのはどんな野郎だ」。
「わかんねえ」。

「競り落とした野郎の顔を見たはずだぞ」。
「面ぁ見たってどこの誰だかわからねえ」。
「第一、セリに出て来るのは一人だけっだ」。

「他のことまでわかりゃしねえ」。
おていが言った
「ま、逃げるんだね」。
「それしかないよ」。

己代松も言う。
「一人や二人、叩き殺したところでまたやってくる」。
「いったん、セリに落ちた上は頼み人が死ぬか、取り下げない限り、終わりにやならねえんだよ」。

主水は目を閉じた。
「心当たりねえのか?金摘んでまでおめえを殺してえと、死ぬほど憎んでる奴がいるはずだ」。
主水が探るような目をする。

しかし主水は首を振った。
「いやあ、まるで見当がつかねえな」。
その頃、料理屋の一室に、筑波が女といた。

筑波は言う。
「すべて手は打ってある。中村主水は間もなく死ぬ」。
「約束は果たしたことになる。うれしくはないのか」。
だが、そのお兼という美しい女は無表情だった。

鉄は、主水に言う。
「牢屋同心が定町周りとは、えれえ出世じゃねえか」。
「とんだ、怪我の功名でな」。
「あらあ、めっぽう風の強い晩だった」。

「俺はちょうどその日、泊まり番でな」。
伝馬町の老屋敷。
風の音で雨戸がうるさくて、主水は寝付けなかった。
それでもいつか、ことりと眠りに落ちたらしい。

眠っている主水のの背後で、置いてある刀が持ち上げられた。
誰かが刀を持って、引き込んでいく。
「誰だ」。

主水が気配で目を覚まし、振り向く。
囚人服の男が襲い掛かって来る。
「庄兵衛!」
2人は、もみ合いになる。

「うわああああ」。
庄兵衛は謝って、自分で自分を刺してしまった。
この男は矢切の庄兵衛といって、与力の筑波がお縄にした悪党だった。
島送りになるはずだった。

牢破りを未然に防いだということで、主水は筑波に目をかけられた。
「それで定町周りにご出世か。めでてえ話だ」。
鉄の口調は、皮肉に満ちていた。

主水は黙っていた。
「何考えてんだ」。
鉄は豆を食べていた。

主水が鉄の隣に座る。
「俺は昔な、赤井剣之介って男と組んで、仕事をしていた…」。
「どうしたんだ、その男は」。

主水は答えなかった。
「死んだのか」。
主水はすぐには答えられなかった。

「うん」。
そう言うと、子供のようにうなづいた。
主水は刀を持ち、顎を乗せていた。

脳裏をよぎる剣之介の、無残な最期。
「俺は剣之介のことを忘れていた」。
「剣之介だけじゃねえ」。

「野垂れ死にしてった昔の仲間を」。
「俺の手にかけて死んでった連中のことも」。
「俺はみんな忘れてた」。
主水の声が、悲壮さを増して行く。

「この稼業にいったん手を染めたら、幸せなんてものはつかめっこねえ」。
ぎゅっと、主水の手に力がこもる。
「来るなら来てみやがれ、たたっ殺してやる!」

主水が立ち上がった。
「ま、俺が生き延びられていたら、そのときゃまた仲間に入れてもらうぜ」。
鉄の肩をポンと叩いて、主水は出て行く。
「気をつけろよ」。

鉄は豆を食べ続ける。
足元には、たくさんの豆の皮があった。
その中からまだ、豆が入っているものを拾い、ふっ、ふっと息を吹きかける。
豆を拾い、鉄は食べる。

「ただいま帰りました」。
「おかえりなさいませ、婿殿」。
「あなた、これを見てくださいな」。

せんとりつの機嫌が良い。
「これはまた豪勢な、鯛の活造りですな」。
主水が万引きを捕まえた大店から届けられたのだ。

今度は、着物が欲しいとねだるせんとりつ。
だが主水は、そんなことはできないと言ってしまう。
途端に、せんとりつは機嫌を損ねてしまった。

わんわんわんと声がする。
主水は台所に降りると、戸を開けた。
犬が入って来る。

主水は鯛を手に、犬にやる。
「どうだあ、うまいか」。
奥に引き込もうとすると、犬の悲鳴が響いた。
犬はだらりと舌を出し、絶命していた。

主水は犬の喉に手をやると、鯛の皿を見る。
犬を抱いて、戸の外に出て行く。
キャンキャンキャンと子犬が鳴きながら走ってきた。

落ちている鯛の皿に近寄った子犬を主水は「食うな、食っちゃいかんぞお」と止めた。
そして、動かない母犬を撫でる。
クンクンと鳴いている子犬を抱く。
自分の身代わりだ…。


前半の鉄と主水の再会。
鉄のキャラクターは前のまま、しかし年月が経っていることが伺える。
主水にもいろんなことがあった。

「仕業人」で剣之介とお歌の仇を討って、去って行った主水。
主水は、剣之介の無残な最期に自分を重ねて見ていた。
このまま続けていたら、同じような、いや、もっと悲惨な最期が待っている。
それを、主水は思い知った。

主水が斬った相手は、剣之介とお歌の仇であり、自分たちを追及して来る男であった。
しかし、個人的に恨みがあったわけではない。
殺しの依頼があったわけではない。
だが、2人は殺し合わなければ収まらなかった。

それは殺し屋と、それを探って来るもの。
仲間の仇と、義理の親の仇同士であること。
そのほかに、武士の意地。
死に場所を求めている男を、斬ってやることでもあった。

この時、主水はこの稼業には割り切れないものが付きまとってしまうことも思い知った。
自分が居場所をつかんだと思った、この世界。
そんなものは、どこにもなかった。
絶望した主水は、自分を慕う捨三も顧みなかった。

そうして主水は、自分が捨てたはずの同心の日常に戻って行ったのだ。
牢見回りから、定町まわりに復帰して、すっかり主水は普通の同心になっていた。
そこに、闇の世界はとんでもない形で主水に手を伸ばしてきた。

忘れていた。
そうだ、自分に普通の幸せなんてありっこないんだ。
またしても、思い知らされた主水。

しかし、そんな主水の悲しみと諦めは、上役の陰謀が発覚すると吹き飛んでしまう。
主水は自分を見る筑波の目を手で遮り、嫌そうに目をそむける。
そして、宣言。
「私はこれから徹頭徹尾、手抜きで行きます!」

主水の、表の世界との決別宣言。
「仕事なんか、しやしません」。
…言ってみたいですねー。
「薄ボンヤリの、昼行灯で結構です」。

主水はお兼の下駄の鼻緒の側で、筑波の背中を撫でた。
ものすごい形相で振り返った筑波が、お兼の下駄を振り払う。
下駄が飛んでいく。

「あ、また放っちまったんですか。言ったでしょう、さっきも。大事にしてくださいよ」。
主水は再び、下駄を拾いに行った。
ここの軽快さが、主水の爆発の期待へつながる演出。

主水が下駄を揃えた時、振り向いた筑波が刀を抜いて斬りかかって来た。
筑波の刃から身を交わすと、主水が真横に刀を振る。
筑波を斬る。

その圧倒的な剣技。
中村主水だ。
裏稼業に完全に戻った、中村主水だ。
座り込んだ筑波を、真正面から真上から斬る。

筑波に騙され、愛する男を殺した男の妾にされ、大金を取られたお兼。
この恨み、誰も晴らせない。
そういう者のために、自分はあるのだ。
このために裏稼業は、自分を再び追ってきたのだ。

覚悟を決め、自分の運命を知った主水のすごみ。
庄兵衛の金に、沸き立つおてい、正八、己代松。
主水の顔に、怒りが広がって行く。

このために。
こんなもののために!
鉄だけが、そんな主水の表情に気付いている。

一つだけの残った金の入ったカメを、だから鉄も放り投げる。
「おうよ」。
そう言いながら、手に一枚小判を握っているところが、鉄。
鋭くそれを見つけて、抑えるところが主水。

冷静になった己代松が、そうかもしれねえや。俺みてえに生まれた時から運のない奴は、ほどほどが一番だ」と言う。
次回はこの己代松が、どうしてそんなことを言うのかがわかる話。
あれほどの大金を水に沈めた主水が、筑波の葬儀の香典をくすねる。

ここが中村主水。
だから中村主水。
そして寅の会で、頼み人が死亡したために主水の一件が取り下げられたのをしらっと聞いている鉄。
この2人、本当に良いコンビ。

濃密な展開がこの後の回も続きます。
2話の己代松の生い立ちも泣かせます。
自分が好きなのは、3話ですが。

己代松のピンチに、控えていた主水。
もう、カッコよすぎです。
主水にも己代松にも礼を言う鉄。

ニヤニヤする鉄に「そうだよぅ!」と言う己代松。
己代松は鉄のために、あばら折っててそれで仕事をしくじったんですけどね。
この辺り、何ていうか、ものすごいカッコいいアウトローを描いていると思います。
演出に加えて、俳優の個性がそれを支えている。

だから必殺って、根強くファンがいるんでしょうね。
表に死神がいるのを見た鉄が、主水が見つからないように気を遣う。
この後、ちゃっかり袖の下をくれない商人に「ちゃんと金は戻ってきてるな?」と何度も念を押してしまう。

気付いた旦那が、金を包んで主水に渡す。
渋い顔でみっともねえから、何度も言わすなと言いながら受け取る主水。
あんなにカッコいい主水が。
このギャップの自然さが、中村主水の魅力なんですよねえ。

さて、筑波の葬儀。
自分が斬った男に神妙な顔で、手を合わせる主水。
筑波の陰謀も、悪事も、主水しか知らない…。
…うーん、やっぱりこれ、見始めると止まらないおもしろさです。


「今度の仕事は煙詰めだ」 新・必殺仕置人 第5話

少し前になりますが、将棋にすごく注目が集まりましたね。
必殺には、将棋を扱ったお話がいくつかあります。
それも印象に残る話でした。

「新・必殺仕置人」第5話、「王手無用」。

正八の絵草子屋に、三番町の疋田兵庫という旗本がやってくる。
将棋の本を真剣に立ち読みしていたので、正八はいくつか将棋の本を紹介する。
すると疋田は本を持って、後で代金は取りに来るように命じた。

「困ります、うちは現金商売なんですよ」と言う正八だが、兵庫は自分を信用しないのかと言い、ついには旗本を愚弄するかと脅して、2朱の支払いをせずに戻ってしまった。
正八ともめている時、おていが兵庫にぶつかった。
見事、財布をすったおていに、自分は代金だけもらえればいいと飛びついた正八だったが、おていいわく、「大げさな財布」の割りには中身は代金にも満たなかった。

屋敷に戻った兵庫の元に、女の将棋士・初津が訪ねてきた。
「来たか!」と喜ぶ疋田は、同じ旗本の小出と横地、神尾も呼べと言う。
日も落ちて、疋田は女将棋士の初津と将棋を打っていたが、負けてしまう。
「詰みでございます」と言われ、「もう一番!」と言うが、「無駄でございます」と言われてしまう。

「大駒を落とせばまだしも、平手ではとても将棋にはなりませぬ。今夜はこれにて失礼します」と言う初津。
兵庫は「聞こえんのか!もう一番、させと申しておる!」と食い下がる。
自分の駒を片付け始めてしまった初津に兵庫は逆上し、初津を刺してしまった。
悲鳴をあげる初津を、旗本たちは次々刺す。

翌朝、河原に初津の死体があがった。
「相当やられている、これはかなりの恨みだな」と、主水は見た。
ふと見ると、初津は何か握っている。

手を開いてみると、将棋の駒をにぎりしめていた。
「将棋との駒と女か。こりゃまた妙な取り合わせだ」と主水は言った。
女の素性さえあがれば、後は居眠りしてても犯人はあがると見た主水だが、女の遺体を確認しに来て、「初津!」と駆け寄った男に、大きな態度で出てしまった。

だがそれは将軍にも将棋の指南をする伊藤宗看(棋士4段・伊藤果)だった。
主水は上司から怒られ、必ず下手人をあげるように言い渡された。
殺された初津は、正式な一門ではないが、宗看の弟子だったのだ。

寅の会。
三番町の疋田兵庫の仕置きが、かけられた。
他の3人も付け加えられた。

「旗本か…」。
「付け句が3人もあったんじゃねえ…」と仕置人たちが渋る中、鉄は「おもしろそうじゃありませんか。やりがいがある」と意欲を示した。
その結果、鉄が40両で落札してきた。

しかし主水は、奉行所の表の仕事で兵庫を追いかけている。
それを知っている鉄は、今度の仕事は主水を外す、と言った。
主水は、表の仕事で手柄を立てる必要がある。

だから、裏の仕事より表の仕事を優先するだろう。
主水が兵庫たちを捕縛してしまうと、仕事がフイになるからだ。
そのため、今度は主水を出し抜く、と鉄は言った。
主水が怒るぞ、と言う己代松に鉄は「あのやろうが2足の草鞋を履く以上、これからも起こることだ」と言った。

正八は絵草子の恨みもあって、兵庫はとんでもなく悪い奴だと報告した。
兵庫たちの一派はとにかく評判の悪い乱暴者で、岡場所でもしたい放題だった。
彼らの狼藉に女郎たちが逃げ惑う中、1人ずつ、順番にやっつける、と鉄は言った。

一方、岡っ引きの銀次の的確な捜査支持にも関わらず、主水の捜査は難航した。
主水の仕事の重要さは中村家にも伝わり、出世への道と勘違いしたせんとりつの主水への態度が変わった。
ますますプレッシャーを感じる主水だった。

岡場所で朝帰りする兵庫たちを見た己代松は、鍋を叩いて中にいる鉄に合図する。
朝湯の為、銭湯に寄り、湯船の中で大きな態度をしている神尾に鉄が近づく。
「だんな、夕べはだいぶお楽しみで?だいぶ凝ってますよ、この辺りが」。

神尾、ご機嫌で鉄に背中を触らせていた。
背中を指でたどった鉄の指に、グッと力が入る。
鉄は、湯船の中、背骨を外した。
湯船の中に、神尾が沈んでいく。

一方、主水は宗看の屋敷に行く。
初津の殺された当日の行動がつかめないため、宗看の弟子に質問した主水だが、これと言った情報は得られなかった。
そして主水は宗看の奥の座敷に、虎がいるのを見た。

主水は鉄の家に行く。
宗看の屋敷に虎がいたことで、鉄を問い詰めた。
寝っ転がって煙管をふかしていた鉄は、主水に喉を締め上げられる。

鉄は、虎がどんな暮らしをしているかは死神しか知らないと言う。
「それを探ろうとして、殺された奴はいるがな」。
喉を締め上げられた鉄は咳き込みながら、「なあ、八丁堀、おめえ早くこの一件から足抜け!奉行所の手柄なんかいつだって…」と言う。

「…俺、外しやがったな」。
「ああ、外した」と鉄が答える。
「なぜだ。なぜ外した」。
「それを話したら掟破りだ。おめえも俺も殺されるぜ」。

鉄がそう答えた途端、患者がやってきた。
主水はこっそり、鉄の家を出て行く。
鉄もこっそり、出て行く主水をうかがっていた。

湯屋で、神尾が背骨を折られて死んでいた。
そのことを兵庫たちに教えた小普請組の老人は、兵庫たちを叱咤した。
悪い行いが重なれば、いずれこういうことになると言ったはずだ。
目付けも動いているし、これ以上、かばえない。

身を慎み、当分の間、自宅にて謹慎しろと言い渡す。
叱られた兵庫たちは、今度は町の飯屋で酒を飲み、荒れていた。
周りの客も、店の娘も怖ろしそうに遠ざかっていた。

その中に、鉄と己代松がいた。
刀を抜いた兵庫に、中にいた者は逃げ惑う。
兵庫は「こら、坊主!」と鉄に目をつけて、刀を向けた。

危険を感じて、パッと壁際まで下がる鉄と己代松。
みなが怯えるのを見て、満足した兵庫は刀を収めてまた飲み始めた。
飯屋の裏に来た己代松は、2間の距離を測って目印をつけていた。

そこに兵庫の仲間の小出が、路地裏に用足しに来た。
上から、己代松が狙いをつける。
己代松は、屋根の上から小出を撃った。
発射音に驚いた飯屋の者たちと、兵庫と横地が出てくる。

路地裏では、小出が倒れている。
「小出!相手は誰だ!」と、兵庫は倒れている小出をゆする。
反応しない小出を見た兵庫は、「医者呼んだか?医者呼べ!」と叫ぶ。
怖ろしそうに立ち尽くす横地の背後に、今度は鉄が近づく。

野次馬の中、鉄は誰にも気づかれないよう、すばやく横地の背骨を外す。
声もなく、横地は目を剥いた。
「ちくしょう、小出もやられたぞ」と言った兵庫の背中に、横地が倒れ掛かる。
「横地!?」

横地も死んでいることを知った兵庫は恐怖に駆られ、「どけ!」と野次馬をかきわけて逃げ帰った。
走っていく兵庫を、死神が見ていた。
主水は初津が握っていた将棋の駒の持ち主を、調べていた。
その中に、疋田兵庫の名があった。

主水が調べている最中、捕り方たちが飛んでいく。
「何だ?」と外に出た主水は、旗本が2人殺されたと聞かされる。
現場に行った主水は、「えらい騒ぎですな。鉄砲でやられましたか」と言う。

すると、上司は「鉄砲じゃない!」と言う。
「は?」
「竹だ!」

「竹?」
「ああ、そうだ。竹鉄砲だ」。
「竹鉄砲…」。

正八の地下室では、「今夜は表歩けないよ、捕り方だらけだ」と正八が言っていた。
表では、捕り方たちが走り回っている。
町方は、きりきり舞いだと鉄は笑う。

己代松は、主水は手柄をほしがっていると言った。
いざとなったら、自分たちを売るかもしれない。
すると、鉄は言う。

「奴が売ったら俺が殺す」。
「それだけのことだ」。
解散して帰ろうとした時、誰かが階段を下りてくる。

思わず鉄と己代松が隠れる。
頭を隠していた鉄の背中を「おい」と言って、蹴飛ばしたのは主水だった。
「お、おうっ、しばらくだったな」。
「そんなに俺のツラ、見たくねえか」。

「え!」
「いや~、びっくりした~」。
「全然わかんなかった。ごめん」。

鉄はそう言って、壁際のイスに座った。
笑う鉄をよそに、次に主水は鉄の横にしゃがんでいた正八を「正八!」と言って引っ張り出した。
鉄と正八と鉄を並んで座らせると、主水は鉄の前に顔を突き出しながら、「おめえら、ずいぶん派手にやってくれたな」と言った。

「え?やってくれたって何を?」と鉄はとぼける。
正八と顔を見合わせる鉄。
今度は主水は階段の裏に隠れていた己代松を「松!」と言って、引っ張り出した。

主水は「残るのはただ1人、三番町の疋田兵庫か」と聞いた。
「追いかけていたのは同じ男とは、皮肉なもんだ」。
すると己代松は、「捕まえたらどうだ」と言った。

だが相手が旗本では、町方には手が出ないのだ。
上手く行ったとしても、初津は無礼討ちということになれば、大した罪にもならない。
将棋処の宗看もそれがわかっていた。
だから、寅のところに依頼したんだろう。

それを聞いた鉄がつぶやく。
「将棋どころ?」
主水は言う。

「伊藤宗看ってのは、ただもんじゃねえぞ。町のもんが言ってるだろう、あいつは鬼だ、鬼宗看だって」。
主水は、「ほい」と鉄の前に手を出す。
「分け前いくらだ」と聞く主水に、「…金は、…ない」と鉄がボソッと答える。

「ねえ?」
「ねえ」。
鉄がボソッと「前金、みんなで分けちまった」と言う。

「そうか、それじゃしょうがねえなあ」と手を引っ込めた主水だが、正八を引きずり出し、放り投げる。
「行って来い、てめえら!疋田の屋敷へ!屋敷の周りは町方のもんがうろうろしてるぞ」。
「町方?!」

正八も鉄も己代松も、一気に起き上がる。
「何だ、おめえら、何にも知らねえのか」。
当分の間、兵庫の屋敷は町方が守ることになった。
それを聞いた鉄は、頭を抱えてしまった。

翌日、主水たちが守る兵庫の屋敷に、本屋の掛け取りだと言って正八がやってきた。
屋敷に入る正八に、主水は足をかけ、正八は派手に転んだ。
主水の横で起き上がりながら、正八は「あのね、あれからみんな気にしてね」とささやく。

「やっぱり旦那外すのはまずいんじゃないかって」。
「分け前のことはさ、鉄つぁん、後で考えてるっていうからさ。頼むよぉ」。
それを聞いて主水は、「おい、通してやれ」と言い、下っ引きたちは正八に道を空けてやった。

詰め将棋をしている兵庫は正八をじろりと見ると、代金を廊下に放り投げた。
正八は「ありがとうございます」と、小銭を拾いながら言う。
そして、自分のところは、麻布の将棋どころにも本を納めていると話し出した。
宗看先生とも顔なじみにしてもらっている。

そう言って、正八は一枚の紙を取り出した。
「今度作った奇想天外の煙詰め」。
「ご存知ですか?盤の上の将棋の駒が一手進むごとに、煙のように消えていく奇想天外煙詰め」。

正八は兵庫に紙を見せると「どう?旦那さんだったらこんなの、すらすらと?」と聞いた。
だが兵庫はもう、正八の言葉を聞いていなかった。
煙詰めに夢中になった兵庫は、夜も将棋盤と向かい合い、他のことは何も気に留めずひたすら考え込んでいた。

おていは正八の家で、「ほんとに来るのお?」と言っていた。
「来るよ、絶対来るよ」。
鉄は「バカに自信があるな」と言った。

正八は「うん。あのね。将棋狂いってのはそういうもんなの。詰め将棋が解けないとさ、二晩でも三晩でも眠れないの」。
「解けるまで気が休まんないの。だから絶対来る」と答えた。
その時、誰かが来た。
兵庫だ!

しかし、店にいる正八の正面に現れたのは、死神だった。
思わず正八は顔を伏せ、後ろにいた鉄に応対させる。
死神は「今夜中にカタをつけてもらう。虎がそう言っている」と告げて戻った。

おていは「あたし、帰る。死神に殺されるの、嫌だもん」と言った。
「待て!」
その時、駆け足の音が響いた。
あわてておていと鉄が隠れると、戸が開いて、兵庫が顔を出した。

「この図に間違いがないか」。
聞いた兵庫は、正八が「間違いなんかございません」と答えると、「どうしても解けん」と紙を出した。
情けない顔をして、紙を正八の目の前に広げると、「答えを言え」と言う。

「答えを言え!」
「これは答えがないんです」。
「ない?ないはずはない!答えを言え!」
兵庫は、正八の胸倉をつかんだ。

「ないものはないんです」。
「ある!ある!」
「言え!言ってくれ。答えを教えてくれ、これ、このとおりだ」。

兵庫は泣きそうになりながら、頭を下げて哀願し始めた。
「宗看先生が近所までお稽古に来ているので、宗看先生が答えを教えてくださいます」。
その言葉に興奮した兵庫は、「どこだ!どこだ!案内せい!」と迫る。

正八は、兵庫を荒れ寺に連れて行った。
荒れ寺を前に兵庫は「おい、どこへ行く!」といぶかしんだ。
だが、寺の中で宗看が将棋盤を前にしているのを見る。
将棋を打つ音がする。

「疋田兵庫どのか」。
聞かれた兵庫は、「…はい」と言って座る。
「煙詰め!」

兵庫は、身を乗り出して息を呑み、盤を見つめる。
駒が、次々消えていく。
『この煙詰めは、宝暦5年、宗看の弟に看寿より完成されたが、幕府はそのあまりの精妙さに恐怖を抱き、看寿に閉門を言いつけたという。
人間の知恵の限界に挑んだ煙詰めは、その後2百年の長きにおいて、一人としてこれを作りうるものがいなかった』。

宗看と兵庫のいる、その影で鉄がバキバキと指を鳴らす。
障子に己代松の影が映り、己代松がそっと障子を開けて中を見る。
鉄の指が鳴る。

次々消えていく盤の上の駒。
最後の4駒。
3駒。
紙と見比べる兵庫。

最後の2つになった時、宗看が「このぎょくは、あなたの命だ」と言って立ち上がる。
夢から覚めたように兵庫は「何?」とボンヤリして言った。
宗看が出て行く。
その後姿に兵庫が、「先生、今一度!今一度だけ!」と声をかける。

宗看が去った後、兵庫は将棋盤の前に座り始める。
駒を並べた時、ハッと気配に気づく。
「何奴だ!」
2本の指を立てた鉄が迫っていく。

「何奴だ!」
兵庫は斬りかかるが、鉄は押さえつけ、障子の前に連れて行く。
主水の影が映る。
「疋田さん、あんたを守るのが私の役目だ。だがちょっとあんたは、やりすぎたみたいだな。…死んでもらうぜ」。

その言葉が終わると、障子から刀が突き出され、兵庫に刺さる。
鉄が手を離す。
主水が顔を出す。
障子が閉まる。

翌朝、屋敷の中では、兵庫の切腹している姿が発見された。
「さすが直参の旗本。立派な最期だ」という声がする。
「腹を切ったか」と主水の上司が言う。
主水が「もはや逃れぬものと覚悟したようで」と答える。

「女将棋さしを殺したのもこの男か」。
「はっ、確かな証拠がございます、間違いございません」。
「そうか、貴様も一つ手柄を落としたな」。

「ツイてない時は何やってもダメですね」。
「まだ旗本殺しが未解決だ!今度はそっちに全力を尽くせ!」と言って上司は出て行く。
「はい」と返事をした主水の後ろで、旗本たちが囁く。

「死んでよかったな」。
「俺も疋田さんが死んでくれて、ホッとしたよ」。
「そうでなくとも旗本の評判が悪かったからな」。
「これでよかったんだ…、これで」。

鉄と鍋を突付きながら、主水が聞く。
「あの初津ってのは、宗看の一体、何だったんだ」。
「旦那もにぶいね、たかが女弟子にあんな高い銭使うかよ」。
「そうか、それじゃおめえ、あれは宗看のこれだったのか」と主水が小指を立てる。

「だから寅に頼んだのよ、50両の大枚を使ってな」。
「なるほど」と納得した主水だが、「おい、後金はちゃんと出たんだろうな」と聞く。
「出た」と鉄が言う。
「一人頭10両だったな」と言う主水に鉄は、「お前5両だ」と言う。

「ええ!」
「今度の仕事は煙詰めだ」。
「1人ずつ順繰りに消してって、おまえさんがやったのは最後の詰めだけだ。5両でも多すぎるくれえだ」。
鉄は紙に包んだ5両を置く。

それを取りながら、主水は「こりゃねえだろ、おい」と抗議した。
しかし鉄は「これはねえだろって、おい、おめえ、障子の間から、おまえは刀突き出しただけじゃねえか!」
「あんなもんはバカでもできる!」と小声だが強い口調で言った。

後ろの客と従業員をチラッと気にした主水に、鉄は立ち上がると、「どうもごちそうさん、うまかったあ、今日のふぐ!」と言った。
さっさと下りていくと、「勘定頼むぜ」と言って出て行く。
残された主水は「ちくしょう」とつぶやき、鍋をつつく。

「なんだこりゃあ」。
主水は、菜っ葉をつまみあげる。
「あの野郎、菜っ葉だけ残してきやがった!
「…やっぱ、あんこうにするんだったな」と、ぼやく。


4話が軽快に見せながらも、平家の末裔、血筋を守る村、代々続く人身売買…というものすごく重い話。
今回は、仕置人たちのやりとりがとことんおもしろい「王手無用」。
この緩急のつけ方、当時のスタッフさん、見事です。

悪役も最高!
菅貫太郎さんって、ほんと、バカ殿とか、バカ旗本演じたら世界で一番。
誉め言葉ですよ、もう、最高。
目が狂ってるんです、目が!

何もそこまでしなくても、って程の斬り殺し方。
無役の旗本のうっぷんを、これで晴らしてるんじゃないのってぐらいの斬り殺し方。
居酒屋で旗本同士で話してる時、「先祖伝来の借金を抱えて、たったの5百石だ。お役目一つ頂戴するわけじゃない」って言ってます。

おていが冒頭で兵庫からすった財布も、中身なかった。
初津が来た時、酒持って来いって言うと、屋敷の小間使いのおじいさんに「伊勢屋はダメだ、あそこはもう3年も払ってないから貸してくれない」と言われる。
居酒屋で兵庫は、「武士の魂をどうしてくれるか~!」と言って、刀を抜いてる。

徳田新之助と違って、本当の貧乏旗本なんだ!
あんな風に優雅じゃない、これが本当の貧乏旗本の姿なんだ?!
それで、すごく荒れてるわけです。

すごい迷惑なんだけど、どこか憎めない。
何かコミカル。
「仕事屋稼業」では、菅貫太郎さんは2回出演。

1回目では、許婚と間もなく結婚するっていうジュディ・オングを連れ込み、引っぱたいて手篭めにする。
そこを奥方に見つかっても、俺悪くないも~ん、女が悪いんだも~んって感じの最低ぶりでした。
さらに世継ぎができたと言って子供を奪い取るわ、だんなさんを殺すわ…。

ほんとに本領発揮してました。
まだまだ素人っぽい仕事屋・政吉を馬に乗って追い、鞭をふるって、最後は半兵衛にやられる。
完璧!なバカ殿でした。

2回目は、悪女に道を狂わされて使い捨てにされる、博打打ち。
潜入した半兵衛に、かつての自分を見る。
同じように狂わされると思った半兵衛を嫉妬の余り殺すかに見えたが、逃げてくれと訴える。

自分のようになるな、と。
それでも自分はもう抜けられないと言い、最後は悪女の策謀によって用済みと殺される。
とても哀しく切ない悪党だった。

「仕業人」では、市原悦子さんにたかって生きているしょうがないヒモ。
でしたが、根っからの悪党にはバッサリやられる。
市原さんが悲鳴をあげて、そして主水に仕事を依頼する。

どこかいいとこがあったんだろうな、と思わせる調子のいい小悪党ぶりが哀しかった。
仕業人たちにも「どこか憎めない奴だった」と言われる。
今回は鉄を見て「何奴!」と怯えるところが、「仕置人」1話で鉄に仕置きされる奉行を思い出しました。

本当にうまい俳優さんです。
ああ、今、いらっしゃったら…。
つくづく、残念です。

さて、鉄と己代松、旗本2人を居酒屋の路地で殺した後、正八の地下室にいる。
それで、何してるかと言うと、絵草子を刷る道具使って、何か刷ってるんですね。
鉄の家にある衝立の文字みたいなの、作ってる。

それで、出来上がった紙を見せると、己代松が「ああ!」とその出来に声をあげる。
「どうだ正八、いいだろう!」と見せる鉄ちゃん。
でも正八は、「この商売甘く見ちゃいけないよ」と言って、破いちゃう。
ガッカリした2人。

鉄は「明日も仕事だ早く寝ましょう」と、何だか健全なこと言って解散。
…と思ったら主水が登場。
この時の鉄のとぼけっぷりが、ほんとにおかしい。

己代松が主水は自分たちを裏切るかもって言う。
まだ、イマイチ、主水に信用がないらしい。
鉄はさらっと、そしたら殺すだけって言う。
この辺りに、かえって妙な信頼関係を感じましたね。

そんな会話の後なのに、鉄ちゃん、怒りの主水から逃げ回る。
主水が、「松!」って呼ぶと一緒になって「松!」って呼んで怒ってる。
しかも、引っ張り出した己代松を主水の方に放り投げて。
調子いい。

ここで、怒ってる主水と対峙したくなくて、鉄は絵草子刷り始めるし、己代松は一緒になって手伝ってるし。
主水は主水で、正八に紙ぶつけて、正八が「あっ!もうヤ!」ってすねて壁際に引っ込んじゃう。
「分け前いくらだ」と聞く主水に、「…金は、…ない」って鉄が答えると、主水が正八を引きずり出し、放り投げる。

その時の体勢が座ってる己代松、己代松の膝に鉄、その鉄の背中に正八って…。
主水に「行って来い、てめえら!疋田の屋敷へ!屋敷の周りは町方のもんがうろうろしてるぞ」と言われて、「町方?!」って一気に跳ね起きる。
「行ってみろ、おっかねえぞ」って、主水もすねて、ふんぞり返ってる。
「行って来いよ、これからすぐ。銭もらっちまったんだろう、行って来いよ」。

困りきっちゃった鉄がキレてみんなに「行って来いよ!」。
「行って来いよばかやろう」って、正八に紙を投げつけちゃう。
正ちゃん、踏んだり蹴ったり。
さらに鼻をかんでいる己代松の頭をこずいて、「行って来いよ!」。

その後、正八が来て囁くけど、鉄も困っちゃったんでしょうね。
いや、主水って彼ら仕置人には仕置きを遂行する上で、ものすごく重要な存在です。
それを再確認。

兵庫の仕置きは、鉄との連携プレー。
これがまた、プロ同士、鮮やかな手口なんですね。
息もピッタリ、安定感。

だけど、最後は5両。
しかもその理由に、今度は主水がケチつけられないでお願い。
「仕置人」を思わせる、鉄と鍋をつつく主水。

ちゃっかりした鉄。
菜っ葉を前に後悔する主水。
…こんな、仲間とのやりとりする主水、「仕事人」の後の方ではなかなか見られませんよね。

やっぱり、鉄の存在は大きい。
鉄と主水の仲良しケンカも見応え、あり。
仕置きは主水が最後で、鉄と己代松が中盤という、ちょっと変則的な回。
それもまた、おもしろい、徹底した娯楽編と言える回では。

宗看先生は、本当の4段の伊藤果さんの出演。
詰将棋作家としても知られ、『詰め将棋の鬼』と呼ばれることもある方だそうです。
この煙詰めは、本当の話。

幕府はそのあまりの精妙さに恐怖を抱き、閉門を言いつけた…、って相当な戦略家と見られたんでしょうね。
その後2百年の長きにおいて、一人としてこれを作りうるものがいなかった。
ここもまた、すごい。

宗看先生は、主水の言うように、指し将棋、詰め将棋ともに優れ、「鬼宗看」と呼ばれたそうです。
御城将棋では、18勝6敗1持将棋と、圧倒的に強かったとか。
「象戯作物」(俗称:「将棋無双」)は、詰め将棋史上の傑作と言われているそうです。

残っている「中将棊作物」の中には2000手を超えると推定される図もあり、いまだ解かれていないものも多いとか。
江戸の将棋文化の、最大の謎の一つになっているんだそうです。
弟の看寿さんもすごかったらしいです。
「仕置人」世界もすごいけど、この事実もまた、すごい回です。



ネッシーだ

「深海展」は、国立科学博物館で開催中ですが、常設館も見どころがたくさん。
「はやぶさ」が持ち帰った、「イトカワ」の微粒子も見ることができます。
そしてこれは、フタバスズキリュウ。
ネッシー!

フタバスズキリュウ

ちゃんと全体が見えてませんね。
首のところもわかりにくいし。
大きいんですよ、これでも目いっぱい、壁のところまで下がって撮りました…って、言い訳。

ネッシーは、プレシオサウルス。
これはプレシオサウルス上科エラスモサウルス科だそうです。
1968年の発見から新種と認められるまで、38年かかったとか。
宇宙ではない地球上にはまだまだ、人類が把握していないことはたくさんあるんですねー。


土曜の夜のお供

土曜日の夜は、明日もお休みということで、心に余裕があります。
その土曜日のこの時間につけているテレビ番組が、スマステーション。
特集がアニメだったり、洋楽だったり、文房具だったり。
良い情報番組です。

これが土曜日のこの、まった~りと送る時間に見るのにピッタリなんですよ。
すごく、熱心に見ていたわけじゃない。
毎週、待ちに待っている…というわけじゃない。

でも、チャンネルを合わせる。
もしくは、そのままにしていると始まる。
気が付くと、これが習慣になっていたんです。
この番組が始まると、ああ、土曜日の夜だなー!って実感する。

夜にお茶なんか飲んじゃいけないけど、金曜日や土曜日の夜ならオッケー。
本当は夜に食べちゃいけないんだけど、金曜日や土曜日の夜ならオッケー(?)
ポットを温め、お湯をさらに沸かし、茶葉を計ってポットに入れる。

時間が経ったら、今度は用意しておいた別のポットにお茶を入れる。
思い切って買ったカップにお茶を淹れる。
コジーでポットを覆って、お茶が冷めないようにして、用意した焼き菓子をいただく。

飲める人ならこれ、おつまみを用意して、ビールとかワインとかお酒なんでしょうね。
この時間。
ああ、今週もこんな時間が持てて本当に良かった。
そう思える時間です。

この時間のお供だった、スマステーション。
終わってしまった。
今回で最終回だった。
最終回も特別なことはなく、いつもの通りに進行して行きました。

違ったのは、冒頭、いつもバッグにしている東京タワー。
東京タワーが、スマステカラーになってました!
これ、完全に東京タワーの気遣いでしょうね。
粋だなあ、東京タワー!

香取慎吾君の目が、うるんでいたように見えました。
私も「だから東京タワー、好きよ!」って言ってしまいました。
スカイツリーができても、やっぱり東京タワーよ!
ギャオスが巣を作るのは、やっぱり東京タワーでなくては!

放送終了するまで、東京タワーはスマステカラーでした。
イイね、東京タワー!
そして、最後の最後に香取さんが大下さんと話す時間ができました。
小林克也さんも参加して、このメンバー好きだなあ。

それでこの最終回が、699回だったんですね。
700回で、いったん終わるのが良かったのに!
9月の土曜日だって、あと1回あるんだし。

見てきた視聴者として、すごく残念。
視聴者の気持ち、置いてきぼりにされた気分です。
地上波じゃなくても、どこかでスマステやったら私は見ると思うなあ。

番組の中で香取さんが言ってましたが、草なぎさんと稲垣吾郎さんからメールが来ていたそうです(稲垣さんからはなかったですね、ごめんなさい)。
出てましたもんね。
応援してますよー。

そうそう、ブラタモリ見ながら夕飯食べたり、夕飯後のお茶飲んだりしてました。
これもブラブラするタモリさんの邪魔にならないナレーションが、良いと思います。
金曜日の夜は、ぷっすま見て、「あー、今週も終わったぞー!」「明日から休みだー!」ってノビノビ。

香取さん、最終回に見せた顔は、男っぽい、大人の男の顔してました。
いろんなことを経験して、人ができていくとしたら、香取さんはまさに今、ひとつ、顔を作ったところじゃないかな。
最後に香取さんの言葉が聞けて、すごく良かった。

人生、不本意なことが時には起きる。
そういう経験をした人で今、彼らを応援したいと思う人も多いのでは。
草なぎさんはドラマでこれまで培った演技を全開にして、すごみを見せてくれましたね。

稲垣さんもすごく、良い顔してる。
「ゴロウデラックス」も、おもしろいのね。
そうか、番組が木曜日、金曜日、土曜日、週末とリンクしていくんだ。

みんな、自分の意思を持っている表情をしています。
今日の香取さんもだけど、自分の言葉で語っている。
みんな、これからですね。
そして正式に、ファンサイトが立ち上がったんですね。

これからの彼らを応援していきたいと、本当に思いました。
スマステ、土曜の夜ののんびりのお供、ありがとうございました。
でもやっぱり寂しいよー!
それでもって、ああ、ほら、夜にお茶飲むから寝ないし…。


深海展

上野の国立博物館で開催中の「深海展」。

   くまなまこ

深海展、夏休みシーズンには、ものすごく混んでいるという評判でした。
チケットを買うのに長蛇の列。
入場制限だったとか。

自分が行った時は平日だったので、それほどではなかったんですが、それでもやっぱり混んでました。
フラッシュを焚かなければ、写真撮影OKでした。
ただ、新種と思われる、新発見された深海生物は撮影NGでした。

深海生物は、幻想的に発光するものが多いですね。
展示されている生物は発光することはありませんが、泳いでいる様子はスクリーンで確認できます。
光る遺伝子を利用して光る花も、展示されていました。
ホタルイカを見た時は、おいしそうって思ってしまいました…。
「へんな生き物」という本に出ている生物も、いくつか見ることができました。

「ダイオウグソクムシ」はイギリスで5年間、餌をやらなくても生存していたそうです。
何のために絶食させたのか。
おそらく研究のためでしょうが、ご飯あげてください。
深海展は、10月6日まで!

俺たちは初めから一蓮托生なんだ 「暗闇仕留人」第26話

第26話、「拐かされて候」。


露天でおきんが怪しげな「ギヤマン」とガラスを売っている横で、浪人の筧弾正がガマの油を売っている。
そこに雨が降ってくる。
人はすぐに引き上げて行く。
おきんが店をたたみ、弾正にそっと傘をさしかける。

「ついてないね、お互いに」。
「こりゃどうも」。
「今夜は雪になっちゃうよ」。
「これはかたじけない」。

おきんと弾正は連れ添って帰ると、雨は雪に変わっていく。
弾正の家では娘のおさきが、食事の支度をして待っていた。
その時、屑伝と言われる目明しがやってきて、弾正に借金の返済を迫った。
屑伝は火消しでありながら金貸しをしている松五郎の手先になって、おさきを妾に差し出させようとしていた。

その松五郎が、おさきに執心なのだ。
弾正は屑伝を追い返そうとして刀を抜き、もみ合いになる。
屑伝は今日のところはおさきの顔を立てて帰るが、明日は駕籠で迎えに来ると言って帰った。
だが翌朝、おさきは何者かに誘拐された。

迎えに来た屑伝は、弾正の元に投げ込まれたという誘拐文を読んだが、信用しない。
番所まで弾正を屑伝が連れて行き、主水が応対に出る。
誘拐には身代金が付き物だが、弾正に金があるはずはない。
屑伝は主水を番屋の外に呼び出し、これは弾正の芝居だと言う。

弾正の妻は長患いの末、去年の秋なくなったが、薬代を松五郎に借りていた。
それが利子が重なって、百両にもなった。
主水は貸す方も貸す方だと言うが、松五郎はおさきを妾に差し出せば百両は棒引きにしてやると言っているのだ。
だからこれはおさきを差し出したくない弾正の狂言誘拐だと、屑伝は言う。

その頃、おさきはおきんの家で、役者に変装させられていた。
おきんは男伊達が売りのはずの火消しなのに、高利貸しをしている松五郎が、そもそも気に入らない。
だから、松五郎におさきを渡したくない。
御上を騙すことになるのだから、おさきは父も自分もお咎めがあるのではないかと怖がるが、その時、おきんの家の戸の方で気配がした。

おきんがあわてて「ユキさま」と言って、後姿のおさきに抱きつく。
訪ねて来たのは、大吉だった。
うっとりとしたおきんを、息を詰めて戸の陰から大吉が見ている。
だが大吉に気づいたおきんが「何だ、お前かぁ!」と声を出す。

おきんと大吉は貢と主水に、事の次第を話していた。
大吉はおきんが役者とねんごろになっているのかと驚いたと言い、おきんは笑う。
だが主水は、おさきの面倒をいつまで見るのかと聞いた。

おきんはほとぼりの冷めた頃、江戸から逃がしてやるつもりだと言うが、主水は「ばかやろう!世の中そんなに甘かねえぞ」と叱咤する。
主水が言うには、おきんはおさきを拐かした、れっきとしたお尋ね者だと言う。
「危ない橋渡りやがって」と主水は怒り、大吉も人助けなんか柄じゃないと言った。

貢も、余計なおせっかいだったと言った。
だが、おきんは人が良い弾正が好きだと言う。
おきんは自分ひとりでもやると言って、走っていく。

夜、おきんの家でおさきが寝ようとしていた時、表の戸が激しく叩かれる。
「誰だい」とおきんが出て行くと、弾正が飛び込んでくる。
屑伝に後をつけられたと言う。
「早く!」

おきんが弾正とおさきを匿う。
家に近づいてくる屑伝を、おきんが息を詰めて見ていた時、「屑伝の」と主水が声をかけた。
「中村様」。
なぜ主水が見回りからはずれている、この辺にいるのか。

主水は見回りの途中で気になる奴を見つけて、ここに来たと言う。
それを聞いた屑伝が、それはどちらに行ったか聞くと、主水は適当に答える。
すると屑伝は、言われた方へ走っていく。

屑伝がいなくなると主水がおきんに「おきん。早く寝るんだ」と、戸越しに声をかける。
「八丁堀…」と、おきんが微笑む。
「おやすみ」。

松五郎の家で、屑伝は、「おさきはすぐにあぶりだせる」と言っていた。
しかし、気になることがひとつ。
おさきがかどわかされた一件は中村と言う同心が担当なのだが、とそこまで屑伝は言うと、松五郎に耳打ちする。
それを聞いた松五郎は、今さらその昼行灯が弾正に手を貸しているとは思えないが、それがあんな場所にあの時間にいたことが気になる。

とりあえず、主水が邪魔にならないように手を打つと、松五郎は屑伝に約束した。
弾正を引っ張って吐かせるという手があるが、それは最後の手段だ。
松五郎は親思いの優しい、身も心も無垢なままのおさきがほしいのだ。
おさきの純粋さを失わせるような真似は、極力避けたい。

翌日、奉行所でさっそく、主水は与力の名島に呼ばれた。
名島は主水に、おさき誘拐の解決の目処が立っていないことを理由に反省しろと言って、10日間のお役御免を言い渡す。
それを聞いた主水は薄笑いを浮かべ、首を振る。

おさきの誘拐は公開捜査となり、おさきの人相書きが町中に貼られることとなった。
それに対し、弾正が百両の借金を返済していないことから、弾正も尾行と見張りをつけられる。
その頃、おきんの家では妙心尼が経を上げていた。
貢と大吉が、棺おけをかついで外に出る。

外には屑伝たちがいるが、妙心尼は「なりませぬ!御仏のお通りです。お下がりなさい」と一喝する。
屑伝たちが道を空けると、貢と大吉が棺おけを車に載せる。
大吉が車を引き、おきんと貢と妙心尼が長屋を離れていく。
屑伝の手下が1人、車の後をずっとつけてくる。

池のほとりを歩き、おきんが立ち止まって、最後尾にいる貢に何か言うと、貢は列を離れていく。
おきんが振り返り、振り返り、道を行く。
するとついていく屑伝の手下を、背後から貢が手ぬぐいで締めた。

大吉の家についた妙心尼たちは、おさきを棺おけから出してやる。
おさきが深く頭を下げると、大吉は何か暖かいものを作ってやった方がと、提案し、おさきが着替える。
それを大吉が見ている。
おきんが気づいて大吉を引っ込ませると、妙心尼はおさきを連れて寺に入る。

主水と貢も来て、大吉とおきんと話をする。
暗い家の中で大吉が貢に「やったのか」と聞く。
「ああ、顔を見られたからな。だから」。
主水が「こうなったら、おめえ、やってもやらなくても同じことだ。そのうち、屑伝は俺たち4人のことをしつこく追い込んでくるぞ」と言う。

屑伝の後ろには松五郎がおり、その松五郎は北多町の鬼与力・名島帯刀と繋がっている。
主水をお役御免にしたということで、「足元に火がついたな」と主水が言うと、おきんが「あたいが悪いんだよ」と言う。
「ようし、こうなったら!」と、おきんが立ち上がった。
大吉が「おきん、どうするんだ?」と聞くとおきんは「決まってるよ!自分でまいた種だ。自分で刈るよ!」と言う。

出て行こうとするおきんを大吉が呼び止めようとした時、主水が引き戻す。
「何すんだよう!ほっといておくれよ!」
「おきん!」
おきんは主水に引っぱたかれ、悲鳴をあげる。

もはやおきん1人、ガタガタしたって始まらないと言われ、おきんは頬を押さえて座る。
貢に、「俺たちは初めから一蓮托生なんだ」と言われ、思わずおきんは泣き始めた。
「泣くな!」
主水はおきんの顔を上げて怒鳴る。

松五郎のところに、屑伝が報告に行く。
名島も来ていた。
その頃、弾正は古物商に、刀を売りに来ていた。

弾正の刀は無名だが名刀で、祖先が伊達政宗より拝領した刀だと言う。
こえrは、どんなことがあっても手放すまいと思っていた宝だ。
しかしそれを手放す決意をした弾正に、古物商の男も「ほかならぬ筧様の刀だから」と小判を4枚出した。

古物商の前に、屑伝と手下が来ていた。
小判を取り上げられそうになった弾正は逃げ、蕎麦屋の店先でおきんに出会うと「もういい。ここまでで精一杯。あんたに会えたのは地獄に仏だ」と言う。
そしておさきに先ほどの4両を渡して、「自分に構わず秋田へ落ち延びろと行ってくれ」と言うと、「わしはもう、疲れました!」と表に来ている屑伝たちを睨んだ。

弾正の、亡くなった妻の父が、秋田の横手で居酒屋を営んでいるのだ。
「奉行所に連れて行ってもらおうか!」と言った弾正を、屑伝たちは連行して行った。
何事かと見ていた蕎麦屋の客たちも、屑伝に睨みを利かされると、こそこそと見ない振りをした。

おさきは夕方、寺で落ち葉を集めて燃やしていた。
大吉がそれを見ていると、おきんがやってくる。
おきんはおさきを探すと、弾正から預かってきた財布を渡す。

屑伝がつきまとっているので、弾正はここまで来られないと言うと、おさきは大金を不思議がる。
その夜、弾正は松五郎の屋敷で、叩きの拷問を受けていた。
だが元は槍一筋の武家だっただけに、弾正は屑伝も汗をかくほど責めても一口も口を利かない。

同じ夜、おきんはおさきと一緒に秋田まで行こうかと言った。
だがおさきは、父と一緒でなければ行かないと言う。
松五郎から借りた薬代は、5両だった。

人の良い弾正は利子の仕組みも知らず、借金はたちまち膨れ上がった。
近頃では弾正は、自分の命で支払うと言っていたのだ。
一体、父に何があったのかと、おさきは不安がり、外に行こうとするが、おきんは「お願いだからここにいておくれ」とすがる。

翌朝、江戸のゴミ捨て場にゴミを捨てに来た男たちが、弾正の死体を見つけた。
弾正が死んだのを知って、名島は松五郎と屑伝を怒った。
責めが過ぎたのではないと言い訳する松五郎に、名島は言う。

弾正が惜しかったのではない。
中村主水への手がかりを失ったのが、惜しいのだ。
屑伝はそれに関しては必ずつかむと、約束した。

大吉の家に、妙心尼が駆け込んできた。
弾正を心配し、また自分が行けば誰も不幸な目にあうことはないと思ったのだろう。
おさきは書き置きを置いて、松五郎の元へ行ってしまったのだ。
小判はもう、自分には必要のないものだから置いて行くとあった。

主水が仕留人たちに、今朝、弾正の死体がゴミ捨て場に捨ててあったことを話す。
おきんが松五郎の家から駕籠が出て、根岸の御殿に着いたのを突き止めてきた。
町火消しの親方が、あんな御殿を持っていること自体が驚きだ。

おきんが話している最中、主水が弾正の財布に「4両、入ってるな」と言う。
「決まった!」とおきんが叫んで行こうとするところを、主水が押さえつけて、部屋に引きずり込む。
早くおさきを助けたいと焦るおきんに主水は「おめえに命がけで頼みてえことがあるんだ」と言った。

名島が歩いていく先に、粋な遊び女風に装ったおきんが「お殿様」と声をかける。
耳打ちすると、名島は「何?松五郎が?」と聞く。
「そうなんですよ。あたしはね、聞いちゃったんですよ。旦那は知りすぎた人物だから、御老中に話して、甲府の山猿たちの仲間入りをさせたほうがいいだろう、って」。
「わしを甲府勤番に?おのれ、下郎め!」

おきんはホホホと笑って「下郎に気を許したお殿様がいけないのさ」と言う。
松五郎は急ぐ。
夕闇に照らされて、松五郎の屋敷から駕籠が出て行く。

門の前で主水が財布を出し、貢と大吉が1両ずつ取っていく。
それぞれに散っていく。
名島が歩いてくる。
主水が待っている。

「名島様、何か事件ですか」。
「何でもない!」と、名島は憤然とした様子で答える。
主水は密かに刀を抜いて、背後に隠す。

「事件ならば、わたくしめにもお言いつけください」。
「しつこい奴だな!帰れ!」
名島がそう言った途端、主水が名島を刺す。

刺された名島が倒れる際に、門の戸が開く。
名島がそのまま、門の向こうに倒れる。
主水が門から離れ、あくびをする。

そっと庭に通じる松五郎の屋敷の戸が開き、大吉が庭に入ってくる。
座敷に忍び寄ると、黒ずくめの貢も現れる。
松五郎が屑伝に「ご苦労様」と、小判を渡している。

部屋の戸が開き、おさきが弾正に会わせてくれと言って、座っている。
屑伝がおさきを松五郎の元に、「親分さんとよぅく相談するんだよ」と言って連れて、自分は出て行く。
まず、杯をと、松五郎がおさきの手を取る。

「あっ、いや!」
おさきが逃げようとするのを、松五郎が抑える。
隣の部屋で屑伝と用心棒が「へっ」と言って、酒を飲みながら笑っている。
その時、胡桃がすり合わされる音がする。

「何だ?」
屑伝と用心棒が立ち上がり、廊下に出る。
暗い廊下の先に、名島が座っている。

「名島様あ」。
名島が倒れると、背後に大吉の胡桃をすり合わせる手が見える。
大吉の影が、ゆっくりと現れる。
灯りに照らされて、大吉の顔が見える。

「貴様、何者だ」と用心棒が刀を構える。
屑伝が逃げる。
大吉が砕いた胡桃を、用心棒に投げつける。
用心棒が思わず、顔を覆う。

大吉が用心棒に飛び掛ると、刀を受け止める。
もう一度切りかかろうとした用心棒の心臓を、つかむ。
用心棒が倒れると、屑伝が十手を手に廊下を逃げていく。
大吉が胡桃を投げる。

屑伝が胡桃を踏んで、転んだ。
大吉は屑伝の足を引きずっていき、押さえつけると十手を持つ手を左手で押さえる。
右手を構え、屑伝の心臓をつかむ。
屑伝が動かなくなると、大吉は懐から下駄を出し、庭からそっと出て行く。

座敷では、おさきが松五郎に追い詰められようとしていた。
松五郎がおさきを捕まえた時、ふと気配がした。
「誰だ!」と言って、松五郎が振り向く。
廊下に面した障子を見て、松五郎は灯りを吹き消す。

暗闇の中、障子に黒い影が映り、歩いていく。
ピンという音がして、矢立から針が出る。
ザザザと音がして、障子が破けていく。

戸が開くと、松五郎が針を見てハッとする。
貢は矢立を持ったまま、近づいていく。
松五郎が逃げようとするが、黒ずくめの貢が押さえつける。
組み伏せると、こめかみを一気に刺し貫く。

松五郎が悶絶する。
おさきが逃げる。
貢が無表情に針を抜き、おさきを見て、消えていく。

廊下に出たおさきに、屑伝の死体の前におきんが張ってくる。
「おさきちゃん」と手招きをし、おさきを連れて夜道を走っていく。
必死に走っていく2人を見た主水が、反対方向に歩いていく。
木枯しが吹いていた。



まず、おきんと弾正のお仕事シーンが映り、おきんが弾正を良く思っていることがわかる。
弾正に好感を持てなくては、この話、おきんが弾正とおさきに肩入れする意味がない。
そしておきんがおさきを匿ったことで、主水が怒る。
「危ない橋渡りやがって」。

それに対しておきんは声を低くして、「八丁堀よう。じゃあ、あんた、危ない橋渡ってないとでも言うのかい?」と言う。
「てやんでえ。散々、泥水飲んできたくせに、奇麗事言うんじゃねえや」。
なかなか、ドスがきいてます。

しかし、主水だって言う。
「おきん。俺たちはな、絶対に足は残さねえ。お尋ね者になったり、目明しに付け狙われたりしたら、その時から俺たちの仕事は成り立たなくなるんだ」。
確かにその通り。
「仕置人」の最初の頃は、全然平気な感じでやってましたけどね。

大吉も言う。
「それは八丁堀の言う通りだぜ。けちな人助けなんざ、俺たちの柄じゃねえよ」。
これはいつも言っていること。

「じゃあ、あたいのやったことが間違ってるって言うの?貢。あんたどうなんだい?」
やっぱり、貢が最後にものを言う。
すると貢も「まあ、余計なおせっかいだったんじゃないのかい?おきんさん」と言う。

「そう!貢までそんな風に?」
この時のおきんの声は、主水や大吉に対する声と、ちょっと違う。
ちょっとだけ、女性らしく優しい。
貢がフェミニストだから、おきんも貢に対しては態度が柔らかいのかな。

だけど、貢にまで賛成してもらえなくて、おきんはショック。
でも貢は言ってくれる。
「しかし、やっちまったことはしょうがないじゃないか。まさか、そのおさきさんという娘。今さらキバをむいている狼どもの前に放り出すわけに行くまい」。

貢にそう言われて、おきんは「ね?ね!ね!」と元気になる。
そこで貢はさらに「八丁堀だって石屋だって、そう思ってるんじゃないのかい?」と言う。
本当は、主水だって、大吉だって、助けてやりたいと思っているのが、貢にはわかっている。
そこを言えちゃうのが、貢。

大吉は「それは俺だって」と、口ごもる。
だが主水は「あの屑伝って奴はヒルみてえな奴だ。奴に一度、しっぽをつかまれたら、ずるずるっと俺たちは芋づる式にな」と警戒している。
ここでおきんが、「あたい…、あの弾正さんが好きなんだよ」と言う。

主水がちらりと貢を見る。
それは恋愛感情なのか…と一瞬思うが、そうじゃない。
「虫一匹殺せないような弱虫なんだ、あの人。周りの人に気遣って、優しくて、優しくて損ばっかりしていて。その為に百石取りの家禄までなくしちまったんだよ」。

人として、好きで放置できないということ。
主水たちを背に、おきんは言う。
「もういいよ。いいよ!あんたたちがやらないんだったら、あたし1人だってやってやる!」
おきんの暴走に、気持ちだけはわかる仕留人3兄弟は顔を見合わせる。

屑伝が、現れた主水を不審に思い、松五郎に報告。
すると松五郎は「あの昼行灯の無駄飯食らいのと言われている、馬面さんかい?」と言う。
名島がいるから同心には詳しいんだけど、この主水の知られ方がおかしい。
結構、有名なのかも。

しかしこれで主水は、10日間、お役御免になってしまう。
それを聞いて、同心たちがちょっと笑いながら噂している。
主水は、「あっ、そう…」と納得した様子。

お役御免になった主水が、自宅で障子の張替えをやっている。
もちろん、主水はせんとりつに、何の失態をやったのか責められる。
でも今回は本当に身に覚えはなく、理不尽極まることだと言った。

すると、せんが役所では主水を無駄飯食らいとバカにしていると話すんですね。
しかし、主水は笑って「まだ他にもありますよ。昼行灯ね。無駄飯食らいの昼行灯。うちへ帰れば種無しかぼちゃか。あーあ、今年もいよいよ押し迫ってまいりましたな」とせんべいをかじる。
笑っちゃう。
もう、達観してる、しちゃうよね。

今回は妙心尼まで協力しての、おさきを長屋から脱出させる。
ここで今回は「なりませぬ!」が出る。
なかなか、尼僧としてはビシッと言う時は言う。
しかし、庭掃除するおさきを見つめる大吉に向かって、「こちの人~ん」と言う声は甘くなまめかしいんです。

そして、主水がお役御免になり、おさきを寺に預けた後、仕留人たちは大吉の家に集まって話す。
主水をお役御免にしたということは、喉笛に匕首をつきたてられているようなものと言う。
「足元に火がついたな」と主水が言うと、おきんがさすがに「あたいが悪いんだよ」と言う。
「あたいがおっちょこちょいだから、こんなことになったんだ…」と。

大吉も貢も、まずそうな顔はしている。
するとおきんが立ち上がる。
大吉が「おきん、どうするんだ?」と聞くとおきん、「決まってるよ!自分でまいた種だ。自分で刈るよ!」と言う。
「おめえまさか」。

出て行こうとするおきんを大吉が呼び止めようとした時、今度は主水がおきんを乱暴に引き戻す。
「何すんだよう!ほっといておくれよ!」と叫ぶおきんに、主水は「おきん」と言って引っぱたく。
おきんは、悲鳴をあげる。

「てめえ1人、ガタガタしたって始まらねえんだ」。
主水の迫力、凄み。
そして主水は、貢と大吉を見る。
言葉は厳しいけど、みんながそのつもりなのがわかる。

「そうだよ。八丁堀の言うとおりだ」と、貢が言う。
こういう時は、物腰の柔らかい貢だな。
「俺たちはな、初めから一蓮托生なんだ。降りかかった火の粉は、みんなで消さなきゃならないはずだぜ」。
そう言って、貢は頬を押さえているおきんの横に座る。

3話で大吉が「俺たちはな、一蓮托生なんだ」と協力を求めるのに対して、「俺は断るよ。自分でまいた種は自分で刈り取るんだな」と冷た~く断った貢が嘘のよう。
さらに「それに相手が屑伝だろうが、松五郎だろうが、鬼の帯刀だろうが!やるときゃ、みんなでやるんだ。それまではじっと息を殺して待つんだ。相手の出方をな」と言う。
貢の優しい言葉に、思わずおきんは泣いちゃう。

「泣くな!」
今度は主水が、おきんの顔を上げて怒鳴る。
怒鳴るけど、それは一蓮托生を覚悟しているから泣くな!と言う意味。

この他にも主水は、おきんの家に迫って行く屑伝をさりげなくかわしてやってる。
口ではいろいろ言うけど、主水は優しい。
仲間は絶対、助けてやる主水の魅力的なシーン。
わかったおきんが「おやすみ」と笑う。

しかし、貢も変わりましたね。
貢の口から「一蓮托生」という言葉が出るほど、すっかり、裏稼業の人になりましたね。
今回は仕留めの前に1人、絞め殺している。
「顔を見られたからな」とアッサリ言うところが、殺し屋。

おさきが松五郎の所に向かったのを知ったおきんがわめいている最中、大吉が持って来た財布を囲んで、主水も貢も輪になってる。
「何やってんだよ!早く行かないとおさきちゃん、間に合わないじゃないか!」と、おきんはわめいてる。
でも3人は全然、気にしないで、財布を見る。

すると主水が「4両、入ってるな」と言う。
貢が「ほお」と言う。
3人はおきんがわめいているのに、別世界にいる。

今回は大吉が用心棒と屑伝、2人を始末。
名島は主水。
家の廊下まで連れてこられて、座らされていたらしい。
頭に来ているから、屋敷近くに主水がいる不審さにも気づかないらしい。

貢は黒ずくめで現れる。
おさきとは、顔見知りですからこうしたんでしょうが、このスタイル、良かった。
もっと見たかった。

障子を矢立の針で破っていく。
すると、その穴から、怯えた松五郎が見える。
松五郎のこめかみを刺して行く、見ていてこれは痛い、痛い仕置き。

おきんがおさきと走っていくのを、主水が黙って見て、反対方向に歩いていく。
秋田まで、おさきは行くのだろう。
しかし、最愛の父はもう、いない。

そして最終回を前に、前回同様、仕留人たちの仲の良さが楽しい。
全てを知っていて女性たちを見送る主水に、木枯しが吹く。
音楽と共に、どこか物悲しいラストシーン。