こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
2017年06月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年08月

♪五郎さんっ♪ ♪五郎さんっ♪

「孤独のグルメ」。
これ見ていると、やっぱり松重さんのリアクションがおもしろい。
食べている現場ではセリフはないんでしょうが、すごく良く表情が語っている!

そして、ゼスチャーがうまい!
腰が悪くなって入院した回では、味気ない食事に塩をかけたくなる。
この時、塩を振るゼスチャーなんて実にうまい。
おもしろいんですね。

ドラマ部分が終了した後に放送される「「ふらっとQUSUMI」。
原作者が実際の店を訪れて、食事をするコーナーです。
第2シーズンの第8話「墨田区両国の一人ちゃんこ鍋」。

この後の「ふらっとQUSUMI」のゲスト、上々颱風の白崎映美さん。
白崎映美さんは久住さんと共演したこともあり、この番組の大ファン。
語ります。

白崎さん「なんかほら、あの五郎さん。良いじゃないですか」。
久住さん「うんうんうん」。
「あの人、額のしわと眉間が、もう、ウマいってことを語ってる!」

久住さん「ここで?」と、眉間を示す。
「ここで!」
「ははははは」。
「何にも言わなくても、ここが美味しそうだなって!」

さらに、第2シーズンの第2話「中央区日本橋人形町の黒天丼」の時のBGMについて。
松重さんの五郎さんが食べている時、背後に流れる音楽が「五郎さん!」
「五郎さん!」「五郎さん!」と連呼。
♪五郎さんっ♪ ♪五郎さんっ♪ ♪五郎さんっ♪

白崎さん「くだらない!」と言いながら大笑い。
「忘れられないBGM!」
「おいしくて気持ちが盛り上がっちゃって、五郎さんって言ってんの?みたいな」。

すると久住さん「あれ俺なんですよ、俺の声!」
「あれ、俺の声なの」。
白崎さん「くだらない!最高!」
そして、「1人でおじさんがご飯食べてるだけなのに、宇宙的なスケール!」

久住さん「宇宙来た!?」
「うれしいですねえ…」。
原作者さんも松重さんの五郎さん、かなり気に入ってるみたいですねえ。

次のシーズンが松重さんでやるかどうかは、わかりません。
でもやっぱりこのドラマの良さは、企画もありますが、松重さんの力も大きいのではないでしょうか。
松重さんの良さが発揮されて、本当に良かった!
これ見た後に「深夜食堂」の松重さんを見ると、立ち方から歩き方までが全く違って、おもしろいです…。


『死』は『知』

養老孟司先生の研究所の営業部長は、まるさん。
スコティッシュフォールドの雄です。
この養老先生の猫についてのお話が、おもしろい。
去年、19歳の猫を見送った後、この先生の「死」についての言葉がとても沁みました。

猫について、完成された生き物と言う。
獲物を借る動物として、機能的に完成されている。
そして無駄がない。

過剰に寄ってこないし、かといっていなくなったらそれっきりということもない。
距離感が非常に良い。
上手に人を騙して、餌をもらって、好きなように生きている。

でもこちらのことを全然気にしていないかと言えば、そんなことはない。
判断がうまいんでしょう、と言う。
営業部長のまるさんは、餌を要求する時、養老先生のところに来る。
それはもう、朝でも夜でも。

起きないと、枕元の棚に乗っているメガネを落とす。
それでも起きないと、時計も落とす。
餌をもらうと、寝る。

先生より、自分の方が立場が上だと思っている。
餌をくれるためにいるとでも、思っているように。
猫はなぜ、こんな気ままが許されるのか。

「子供の性質を残す形でペット化していったのが、猫なんです」。
「犬は社会的な動物だから人間社会の中にも溶け込むことができる」。
しかし、猫は個別的な生き物。
「人にくっつけるとしたら、親子関係しかなかったんでしょう」。

養老先生のところで飼っていたお猿さんが、子猫を気に入ってしまって離さなかった。
見た目が大きな目をしていて、保護欲を掻き立てる。
そしてフワフワとして、触っていて気持ちが良かったんでしょうと言う。

猫は人間に飼われるうち、なかなか大人にならなくなってきた。
子離れしないように、人になつくようになってきた。
猫と言う動物は、いろんな意味で完成されている。

無駄がない。
眠りを邪魔されても、それでも猫は飼いやすいと、先生は言います。
「要求して来るものが、少ないからね」。

しかし、どんなに子供の時期が長くなろうと、命ある者。
寿命がある。
養老先生は、家で飼った猫はすべて庭に埋めているそうです。

まるさんの前にいたチロちゃんは、元日に死んだ。
前日の大みそか、寒い中、頑として外に出て行こうとした。
高齢だったから歩けなくて、ヨロヨロしていても、這って出ようとした。

仕方がないから、娘さんが毛布を敷いた箱に入れて出した。
それが最期だった。
静かに逝きたかったのでしょう、と養老先生。

「それに対して、悲しんだり嘆いたりするのは人間側の思いです」。
「『死』って実は『知』なんですよ」。
自分と交流がなく、思い入れがない人。
つまり赤の他人が死んでも、普通は痛くも痒くもないと先生はおっしゃる。

「名前と顔を知っている人が死んでも、『あの人、亡くなったのね』と思う程度です」。
「『死』に意味がついて来るのは、『二人称の死』だけです」。
「それ以外の死には、一見あるように見えて具体性がない」。

二人称の死?
「『一人称の死』は、本人にはわからない」。
死んだ本人が悲しくても、嘆いていても、それはこちらにはもうわからない、確かに。
養老先生風に言うと「死の悲しみは、死んだ者とどれだけ親しかったかという思い」なんですね。

つまり「ペットの死の悲しみは、その動物とどれだけ親しかったかという人間側の思いです」。
「猫の方は、何とも思っていないかもしれない」。
「『だって毎日寝ているじゃない。ただ、目が覚めないだけだよ』って思っているかもしれない」。
「永遠の眠り、って言いますからね」。

『死』って実は『知』。
『死』に意味がついて来るのは、『二人称の死』だけ。
ペットの死の悲しみは、その動物とどれだけ親しかったかという人間側の思い。

このことを読んだ自分は、明らかに読まなかった前とは違いました。
悲しいこと、自分にとってはこの上なく悲しいこと。
でも、そういうことなんだ、と。
それも含めて、悲しい。

この上なく、悲しい。
でもこのことを知っているといないのとでは、違う。
いろんなものに対する理解と、許容が違ってくる。
去年、この言葉は私の心に沁み込みました。

お茶の福袋

1年前まで完全にコーヒーばかり飲んでいました。
しかも、エスプレッソをマグカップで。
それが去年の6月末からは、紅茶ばかり飲むようになりました。

朝、1杯。
午前中と午後に1杯ずつ。
夜に1杯。
よせばいいのに、10時頃に1杯。

さすがに、睡眠を妨げる。
1日5杯飲んでいる。
飲み過ぎ。

そしてちょっと前、カフェイン中毒で亡くなった方のニュースを聞いてゾッとしました。
私も1年前まで、エナジードリンク飲んでいましたから。
要するに眠かった。
疲れてたんだね…。

でも今、やっぱり紅茶が好きです。
ルピシアに、お茶の福袋というものがありまして、夏と年末年始、年2回販売されるんですね。
夏はアイスティーに良いお茶が入っているとのことで、今回、手を出してみました。
松、竹、梅とあって、紅茶はノンフレーバードティーとフレーバードティーの福袋があります。

紅茶だけではなく、緑茶やウーロン茶、ノンカフェインのお茶も入ったバラエティの福袋もある。
ノンカフェインのお茶だけの種類の福袋も、あります。
これがさらに、リーフか、ティーバッグかを選ぶことができます。
今回、私が選んだのは紅茶の竹3という種類の福袋。

2017年、ルピシア夏の福袋、フレーバードティー。
リーフです。
中身は以下、ネタバレです。
値段は通常、50gで売られている値段です。

クッキー 730円
ネプチューン 610円
アルフォンソマンゴー 610円

いちご 510円
ダルマ 770円
ロゼロワイヤル 730円

巨峰 560円
マスカットダージリン 870円
カシス&ブルーベリー 730円

紅子 610円
アプリコット 510円
ローズダージリン 870円

オレンジジンジャー 790円
アップル 710円
アールグレイ 610円
パラダイス 670円

全部で16袋入ってました。
5400円で、倍以上の値段の紅茶が入ってました。
現在、紅子をアイスとホットで飲んでみました。

そしてもう一つ。
竹2という種類の福袋。
2017年ルピシア夏の福袋、ノンフレーバードティー。
こちらもリーフです。

ダージリンセカンドフラッシュ 900円
アッサム・カルカッタ・オークション 790円
セイロンディンブーラ~モンスーンの恵み~ 610円

ナムリンアッパー 2500円
ティーブレイク 560円
ベルエポック 710円

ディクサムブロークン 610円
ニルギリ・ブロークン 540円
スリランカ~光り輝く島~ 670円

ディンブラ 680円
ユニオンジャック 650円
キームンコウチャトッキュウ 670円
オレンジバレー 1900円

全部で13袋入ってました。
でもこちら、緑のラベルの「ナムリンアッパー」と「オレンジバレー」のお値段にビックリ。
ノンフレーバードティーの福袋が人気と聞きましたが、こういうお茶が入っているからなんですね。
こちらも、お値段の倍のお茶が入ってます。

普段、自分ではなかなか買わない種類もあって、うれしい。
ノンフレーバードティーは欲しくなって、店頭で予約してきました。
現在、アイスとホットで「スリランカ~モンスーンの恵み~」と「ニルギリ・ブロークン」をホットで飲んでみました。

昨日、1日移動と来客の応対などで時間に追われていました。
食事も朝、ホットサンドを1枚食べたきり。
家事も終わらせて、お風呂も入ってやっと座って落ち着けたのが夜の10時。
お茶飲みたくて、飲みたくて、この時間に飲んだら眠れなくなるのはわかっていたけど、やっぱり飲みました。

ちゃんと眠くなりました。
だから寝ましたけど、夜中の2時過ぎに目が覚めて、4時まで眠れませんでした…。
やっぱり、夜はデカフェにしよう…。

あるいは幻 「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」

伊藤潤二の猫日記 よん&むー。
ホラーマンガ家・伊藤潤二さんの飼い猫との日々を描いた愛猫マンガ。
タッチがホラーなので、落差に笑わずにいられない。

第3話では、猫じゃらしを使って遊ぶ光景が、まるで何かを攻撃しているかのように描かれてます。
ホラーマンガの本領発揮は第5話「よんはやっぱり変な顔」。
締め切り間際の徹夜で、頭がもうろうとしたJ。
顔を洗おうとして廊下に出て、「はっ!」とする。

廊下には椅子の足より大きな、なめくじがいたのであった!
ヌメー。
そのヌメヌメ、ヌラヌラした質感。
長く尾を引く影と、触覚。

「ひょ~っ!」と悲鳴上げたJ。
しかし、それはよく見ると、長く伸びた「よん」の寝姿であった。
『な…、なんだ、「よん」か…。でっかいナメクジに見えた…』。
『俺も相当、疲れてるな…』。

ピクリと耳がJの方を向き、フワーっと大きくあくびをした「よん」。
(すごい、こういう顔になる、猫のあくびは)。
むにゃむにゃと手をなめだし、ペロペロペロと大股を開いて肢をなめる。
(ちゃんとお尻の穴まで描写…まっ)。

「いい気な奴。人が徹夜してるってのに」と言ってJは廊下を歩いていく。
すると、スタスタスタスタと、よんが歩いて来る。
その目がギラリと輝く。
「!?」

次の瞬間、Jの横をシュルシュルシュルシュルと通って行ったのは!
背中に「ドクロ」の模様をつけた、異形の蛇。
ツチノコであった!

「出た!ツチノコだ!」
「A子、ツチノコだ!」
「早く捕まえろ!」

「何言ってるの、あれは『よん』だよ」。
眠い目をこすりながら廊下を見たA子は言った。
「な…、なんだと。はっ。またしても幻覚」。
「にゃあああ」と、よんが鳴いた。

顔を洗うJを横で見ているのは、むー。
ブクニャンという声に、「よかった。むーは、やっぱり『むー』だ」。
「お前はおっとりしてて可愛いね」と、抱き上げる。

ゴロゴロ言っていた「むー」だが、突然、カッと目を見開くと、ガブッ。
Jの指に思い切り、噛みついた。
「まあ、『むー』は猫らしい可愛さがあるから許す…。本気で噛むが」。

「問題はやはり、『よん』だ。あれは本当に猫なのか?」
そっとテレビのある部屋をのぞく。
すると、背中に3つの丸い模様があるおっさんが、座っている。
「だ…、誰だ!?あのおっさん」。

「あっ…」。
次の瞬間、おっさんは「よん」になった。
Jは、疲れているのだ。

必要なのは、癒しだ。
すると、背後で声がする。
「ニャー」。
「よん…」。

突然、よんがJの膝に飛び乗った。
クルン、と腹を見せる。
「な…、なんだ。どういう風の吹き回しだ…」。
Jの額に、汗がにじんでくる。

ブルン、ブルン、ブルン。
よんの顔と、ブルン、ブルン、ブルン、という音。
Jのよんを凝視する目にも、それは響いて来る。
(ほとんど、ホラー)。

『奇妙な時間が流れた』。
『そう…、それは例えるなら、「そういうムード」だった』。
ブルン、ブルン、ブルン。

音を立てている「よん」に、Jは小指を差し出す。
「よん」が口を開ける。
(うわあ、本当に猫の口元ってこんな感じ)。

舌がのぞく。
Jの指が接近する。
チュボッ。
音を立て、よんがJの小指を口にした。

チュッチュッ、チュッチュッ。
よんがJの指をかかえ、赤ん坊のように吸っている。
『それは初めてのチュッチュだった…。今までA子にしかしなかったチュッチュ…』。
『よんのザラつく舌が私の疲れた小指を熱く包み込み…』。

『まるで鼓動のように静かに…、そして熱く!』
『しかし…、それはあるいは幻なのかもしれなかった…』。
(…、なんだこれ…笑)。

よんちゃんの鼻。
その周りのヒゲと、ヒゲが生えている皮膚というか、毛の部分の描写、見事です。
舌といい、毛といい、リアルです。

体温があります。
息までかかって来そうなリアルさ。
猫に指をなめられた時の感触が、蘇ってきます。

うれしいはず。
待ちに待った瞬間のはずのJは、目を閉じ、あきらめたような表情。
まるで、女性に逃げられたような、傷心のようなシーンなのが、おかしい…。

いやいや、伊藤潤二さんの発想ってすごい。
描写もすごいですが、発想もぶっ飛んでます。
よんは確かに白い猫だけど、ナメクジに見える?

ツチノコになる?
おじさんに見えることが、あるのだろうか。
確かに、おじさんっぽい時もありますけど…。

そういえば、映像化された作品もありますね。
中でも、よくこんな発想するな、と思うような作品が映像化されているそうです。
どんな作品になっているのか、その映像が気になりだしました。

私がマンガを読み始めた頃、ホラーマンガと言ったら楳図かずおさんでした。
当時はホラーとは言わずに、「恐怖コミックス」「怪奇コミックス」と書いてあった気がします。
近所の友達がマンガたくさん持ってたんですが、楳図かずおさんのマンガもいっぱい持ってた。

良く借りたものですが、机の上に置いてるのも怖かった。
顔の半分に、グロテスクなもう一つの顔ができていたり。
夜ごとに庭にあるお墓から、ゾンビのようになった娘がやってきたり。

借りておいて、家にあって怖くないの?とか失礼なこと聞いてました。
何で怖いの?って言われましたが。
大人になって、本人を見た時は別の驚きがありました。
その後、メルヘンチックな家を作ってそれにも驚きました。

「まことちゃん」というギャグマンガがヒットした頃には、「怖いマンガも描いているのですね」なんて言われたそうです。
私たちが楳図さんのマンガに怖がりながらも魅了されたように、伊藤潤二さんも人を惹きつけているのでしょう。
その非凡な画力、表現力はこの愛猫マンガにも十分、生かされているのです…。
また描いてほしいものです。


不穏な猫マンガ 「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」

ちょっと前ですが、Eテレで、伊藤潤二というマンガ家の特集をやっていました。
ホラーを描いていて、ひとつの絵が完成されるまでを追っていましたが、その緻密さ。
こだわりと出来栄えのすばらしさに、思わず見入ってしまいました。
虫が嫌いな私には、自分で描いていて、おぞましくならないのかなあと言うぐらいの緻密さでした。

その伊藤さんが描いた、猫マンガ。
「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」。
表紙があの緻密なタッチの猫。
しかし、ホラー風味!

猫の顔が怖い。
特に怖いのが、向かって左側の猫。
よんちゃんと言うそうです。

猫だけじゃない。
主人公のJくん、伊藤潤二先生の顔も怖い。
婚約者、のちの奥さんになるA子さんも、常に白目をむいている。

でも表紙をめくった後のカラーページの、2匹の猫はかわいい。
伊藤先生の愛情が感じられます。
日記は、JくんとA子さんが新築の家にやってくる。
そしてA子さんが実家から「よん」という猫を連れて来ると言ったところから、始まります。

第1話「むー登場」。
Jは新居を購入した。
貼りたての白い壁紙。

ピカピカの床。
かぐわしい新築の香り。
そしてこの新居には、Jの婚約者A子がいる。

しかしまもなく、宅配便が届く。
キャットタワーだった。
「キャッ…、キャットタワー?なんでそんなもの、買ったんだ?」
「何言ってんの?千葉の実家から『よん』を連れて来るって話したじゃん」。

Jは、「よん」という猫を思い出します。
A子の実家に行った時、そういえばそこにいた。
『よん…。そうだ、あれは数か月前、A子の実家へ初めて行った時のこと』。

『そこに、「よん」はいた」。
Jを見る、よん。
その目の周りは黒く縁どられ、陰影が禍々しい。

『それは誰が言ったか…』。
「呪い顔の猫…』。
(いや、あなたが言ったんでしょ)。

『あの呪い顔の猫が…』。
『この家に来るだと?!』
『認めん、認めん…』
「認めんぞ~!」

叫んだJは、次のコマでは、キコキコキコとドライバーを回し、キャットタワーを作っているのであった。
さらにA子は、よんが一人だけじゃ寂しいと思うと言って、もう1匹飼うと言う。
新居の壁を、テカテカした爪とぎ防止シートで覆って行ったJは思う。

『な、何…。もう1匹猫を飼うだと…?!』
『1匹ならまだしも、2匹も飼うというのか…』。
『認めん…、認めん…』。
「認めんぞ~!」

叫んだJは、次のページではA子を乗せて、初めて行く場所へのドライブに神経を使っていたのでした。
そして家に来た「むー」ちゃん。
ホラーマンガ家の母親とA子が、「かわいい」「かわいい」とあやす。
ゴロゴロゴロと喉を鳴らす「むー」。

Jの目が大きく見開かれ、目が充血し、血管が浮き上がっていく。
その血管が、中心に向かって行く。
中心には、猫のマークが!

「か…、貸せっ!」
叫び、突然、猫を2人から奪うJ。
パックリと口を開き、むき出しになった歯が糸を引いている。
狂気に満ちて目で猫を見ると、「お…、お前」。

「食べちゃうぞ~っ!」
そして「チューッ!」と叫び、猫の顔を口で吸い始める。
部屋の真ん中で猫を抱えて、回転しながら「食べちゃうぞ~っ!」と叫ぶJ。
誰も止められない。

そしてついに「やってくる…」。
「もうすぐ、やって来る」。
「あいつが我が家に…」。

「数時間後には我が家へやって来る…」。
「あの呪い顔の猫『よん』が…」。
ということで、第2話は「よん襲来」。

A子が帰宅。
部屋で、キャリーケースを開ける。
Jくんは廊下からこっそり、それを見ている。

暗い部屋。
ギイイイイと音がする。
キャリーケースの闇の中、目が光っている。

「ヌー」。
首が伸び、出てきたのは、ホラー顔の猫「よん」。
(これ、猫飼ってる人にはわかるんじゃないですか。猫が首を伸ばしたところ)。

その背中の模様を見て、Jは「あっ!!」と叫ぶ。
「よんの背中に…、ドクロの模様がっ」。
「の…、呪われている…」。
「やはり呪いの猫だ」。

「呪いの猫がやって来た」。
「我が家に呪がやって来た!」
(いや、ただの模様)。

頭を抱え、ムンクの悲鳴のポーズで走り出すJ。
その背後には、大きなよんの呪いの顔。
しかしその夜、A子が泣きながらやってくる。

「よんが…、よんが…」。
J「よ…、よんがどうしたのだ?」
「呪っているのか?」
(そんなわけないと思います!)

「よんが全然、ご飯を食べなくて元気がなくなっちゃったから、今夜は私の部屋で看病するね」。
(ああっ、かわいそう)。
A子が部屋に行くと、キャットタワーの箱の中、よんちゃんが寝ている。
元気がない。

「よんちゃん…」。
「よんちゃん…」。
A子が泣いている。
(ああ…、わかる)。

伊藤先生の絵は、元気のない「よん」を的確に描写してます。
よんが、好きなんですね。
突然、見知らぬ家に連れて来られて、よんは極度のストレスを感じ、まいってしまった。
でもA子の看病で、よんは元気を取り戻します。

3日ほどすると、「よん」は「むー」とも仲良しになります。
後姿のA子にJが「何をしているのだい?」と、声をかけます。
すると白目のA子が振り向き、「チュッチュだよ」。
「おっぱいの代わりだよ、これでもまだ1歳だからね」。

見ると、よんが、A子の指をチュポ、チュポと吸っています。
『その頃、私は気づいていた…』。
『よんは呪い顔なのではなく…』。
『単に変な顔の猫なのだと…』。

『変な顔だが、それはそれで可愛いのだと…』。
(でも写真の猫「よん」は、かわいい。「変な顔」というのは、伊藤先生の愛情表現でしょう)。
はあ、はあ、はあ。

Jの目が血走って来る。
息遣いが荒くなる。
「か…、貸せっ!」

Jは叫ぶと、A子からよんを奪い取る。
血走った目。
陰影が付いた顔で、Jは叫ぶ。
「チュッチュしろ!」

「さあ、俺にもチュッチュしろ!」
そう言って、指をよんに差し出す。
だが…。

よんは、ズルッと腕から逃げる。
白目をむいたA子が笑う。
「フフフ…」。
「チュッチュは私にしか、しないんだよ…」。

「グググググ」。
歯ぎしりし、目を剥きだしたJくん。
よんを扉の向こうから、未練たっぷりに見る。
『変な家に連れてこられたにゃー」と、よんは思う…。


ホラータッチの絵。
描写!
展開は、ホラー。

だが中身は、猫日記!
それも愛情たっぷりの猫日記。
爆笑です。
私はうっかり、電車の中でこれを見て、危ない人になってしまいました。

最初の「Jくん」「なんだい、A子」からして、ホラー。
「Jくんは犬派?猫派?」に、「フフフ、そうだな、どちらかと言えば、ハムスター派かな」。
(どっちも言ってないじゃないですか)。

「私は犬も好きだけど、やっぱり猫派だな」。
「ランラン」と歌いながら、でも顔はホラーのA子。
「…」と沈黙しながら、Jは思う。

「…俺は本当は犬派さ。なぜなら犬は人間の友…。犬はけなげで涙を誘うからな…」。
それを言うのに、なぜ、黒目が上に張り付くほど上目遣いになって、充血しているのか。
セリフがなければ、これが愛猫マンガだとは誰も思わない…。
す、すばらしい…。

こんな、私ごときの文章、表現力では伝えきれない。
猫好きも、そうでない方にもおススメ。
ぜひ、ご一読を!


よん&むー

「声が大きいよ!」  翔べ!必殺うらごろし 第4話

第4話、「生きてる娘が死んだ自分を見た!」
なぜか急にすごく見たくなって「うらごろし」。
もうすぐ夏だから?!


夜中に目を覚ました若と正十は先生がいないのに気がつき、探し始める。
先生は木の葉の水をすくい、上ってくる太陽を見ている。
油問屋・百舌屋の娘、うめは病にかかっており、今日も女中のたつが付き添って医者に行っていた。

だいぶ良くなっているとのたつの報告に、後妻であるくには喜ぶが、うめはそれを浮かない表情で聞いていた。
くにはうめに転地治療を勧めるが、うめは首を縦に振らない。
早く良くなって、百舌屋の身代を継いでくれないと困るとくには言う。
たつが自分の故郷に行くことを勧め、榛名山の麓にむかったうめだが、途中発作を起こしてしまう。

通りがかった先生たちが気づき、正十は胸を患っているのに気づき飛びのいてしまう。
だが、若は伝染るのを気にする正十が止めるのも無視し、うめを背負ってたつの家まで連れて行く。
先生は、おばさんがどうしたの?と指摘するほど、うめを凝視していた。

若はたつの家に到着し、泊まっていってくれと言うたつに仲間が待っているからと去っていく。
うめは言われた通りの薬を服用して寝ていたが、世中、水音と壁を流れる血を見る。
恐ろしさにうめが起き上がると、真っ赤に染まった障子の影からもう1人の自分がフラフラと現れる。

「あなたは何の為に現れるの?私に死を告げに?それなら知っています」。
もう1人のうめは、悲しそうな顔をしてじっとこちらを見ている。
「どうせ、間もなく私は死んでしまうのです。それを告げたいなら、もう来ないで。お願い、そんな怖ろしい姿を見せないで」。

先生は宿場町に足を止めると、旗を地面に突き刺し、災いが起こると言う。
正十は金になると喜ぶが、おばさんはたしなめる。
気になったおばさんは、先生の売り込みに町に声をかけて回る。

百舌屋の前に来たおばさんに、使用人がお嬢さんの病…と言いかけたが、くには療養に出しているのだからと取り合わない。
先生は百舌屋にやはり、何かあると言う。
病とは違う、災いが。

先生とおばさんと正十がいるところに、おねむがやってくる。
正十はおねむの札を百舌屋に売りつけることを考える。
そして、正平と名乗って油職人として、百舌屋に入り込む。

札を売り込みに来た正十だが、くにと一緒にいた医師の宗丹は、目の前で迷信だと札を破り捨てた。
売れたかと聞きに来たおねむを水茶屋に連れ込んだ正十は、そこで、くにと宗丹が逢引をしているのを目撃する。
不審に思った正十は、宗丹がくにに渡した薬を表から木の枝を使って、くすねてくる。
その夜、うめは父親が庭で苦しそうに倒れたことを思い出す。

正十は先生の下へ走り、くすねてきた薬を見せる。
しかし、先生は夜の中、走っていく。
うめがフラフラとさまよっていた。

その頃、百舌屋ではうめが金を数えながら、番頭の紋兵エに、主人が自分につらく当たったことを思い出して話していた。
来月には紋兵エにも暖簾わけをしてやると、くには言った。
そこにうめが行方不明になったと言って、たつが駆け込んでくる。
うめは、おとっつぁんと言っていたと聞き、くにの顔色が変わる。

うめは父親の墓にいた。
おとっつぁんと泣きながら、うめは父の墓を掘り返し始める。
先生がそれを見ていた。

くには、うめは自分が毒を飲まされていることを知っていたとうろたえていた。
しかも、父親が毒殺されたことも知っていたのではないか。
1年かけて病人にしたのに、今、おうめに訴え出られたら何もかも水の泡だとくには叫ぶ。

父の骨にすがって泣くうめを見た先生は、うめの手を取り、霊視を始める。
もうじき太陽が昇る。
うめの心は開かれるだろう。
あなたは何を見た?と先生は放心状態のうめに問う。

雪の中、うめが苦しみもだえ、叫んでいた。
「私に死を告げに?そどうせ、間もなく私は死んでしまうのです」。
気絶して横たわるうめ。
先生は駆けつけたおばさんと若に、影の病だ、と言った。

これにかかった者はまもなく、死ぬ。
うめも父親と同じく、微量の毒を盛られ続け、死ぬのだ。
この子は毒と知って飲んでいる。

だが、うめはほっといてくれと言う。
死のうが生きようが勝手でしょう、と言ううめの言葉を聞いたおばさんは言う。
「勝手!そんな言い方がありますか」。
「死に掛けている人は助けたい。近しい人が死ねば悲しい!それが人間同士じゃないの?」

だが、うめは、「私の為に、誰も悲しまない」と言った。
「私が死ねば、喜ぶ人ばかり。だから私、早く死にたいんです」。
それを聞いた先生は、うめに言う。
「それは嘘だ。あんたは本当は死を恐れているんだ。その怖れが影の病だ。本当は生きたいんだ」。

うめは紙に包んだお金を渡し、これで私が死んだ後の後生でも祈ってくださいと言った。
それを聞いた若は怒った。
「さっきから聞いてりゃ、死ぬ、死ぬって!俺の弟はな、6つの時、労咳で死んだ!死にたくないって泣いても、助ける術もなかったんだ。そのつらさ、悲しさがてめえにわかるか!」

先生が必死に、激昂する若を羽交い絞めにして止める。
「それをてめえは助かるんじゃねえか!先生も助けたいって言ってるじゃねえか!それを何だ。思い上がるな!命の大切さを身にしみろ!」
若、お前が殴ったら相手が壊れちまうと先生は言うが、若は頭に来たと言う。

うめは、だって早く死にたい、おとっつぁんやおっかさんに会いたいと叫んで泣く。
「かわいそうに1人で耐えて来たんだね。つらかったろうよ。でも死んじゃいけない。あの世のご両親だって、こんな若いあんたが行ったら悲しむよ」。
おばさんはそう言って、うめを抱きしめる。
若はそれを見つめている。

「でも、私本当に治るんですか?」
先生は「毒は抜ける。影の病もあんたに生き残ろうとする気力がある限り治せる。金貰った以上は責任持って治す」と言った。
だけど、うめは怖い。

仮にも親だから、くにを訴えるのも怖い。
若は、うめに家出を勧める。
何もかも捨ててしまえ。

先生はうめが渡されている薬をなめてみたが、たちまち悶絶してしまう。
いつも草や木ばかり口にしているので、利いてしまうのだろうとおばさんは言う。
だが、うめが姿を消した。
うめは、百舌屋に戻ってしまったのだ。

くには、うめが戻ったと聞いて笑いを浮かべた。
早いところ、かたをつけてしまった方が良さそうだ。
宗丹は、薬を大量に飲ませるんだなと言った。

うめにくには優しそうに微笑み、良く帰ってきてくれたと言った。
女中のたつを下がらせ、宗丹がうめを診る。
うめの額に手を当てた宗丹は、熱があるので、今日は薬を多めに飲んだ方がいいと言うが、うめは拒絶する。
この薬でおとっつぁんも…、と言う、うめを押さえつけ、宗丹は薬を飲ませようとする。

宗丹を跳ね飛ばしたうめだが、諦めたように立ち上がり、「薬をください」と言った。
「さあ」と宗丹が薬を渡す。
うめは一気に飲み干した。

薬を飲んだうめの手が、湯飲みを落とす。
うめが動かなくなる。
宗丹と、くにが部屋を出て行く。

百舌屋に正十が探りを入れに来る。
もがいたうめが戸を倒して、縁側に倒れこむ。
助け起こそうとした正十だが、見つかりそうになり、部屋の奥に隠れる。

かけてきたくにと宗丹を見て、縁側のうめは笑った。
ふらふらしながら、くにと宗丹の元へ歩いてくる。
怯えた2人だが、うめは目の前で倒れた。

紋兵エと使用人の岩吉が、うめを墓に連れてきた。
うめは生きたい、殺さないでと叫ぶ。
紋兵エは五体バラバラにして、方々の墓に埋めろ、そうすればばれないと命令していた。

正十がうめが殺されたことを知らせに来た。
どこにいると聞かれて、墓場だと叫ぶ。
先生たちが急ぐ。
墓場の土の上、枯葉の上には鮮血が点々と続いていた。

正十が埋まっていたうめを見つける。
何で、何でうちになんて戻ったんだよ…、と若が嘆く。
「ひどい、ひどすぎる」とおばさんが崩れ落ちる。

「これだったんだ。あの子の、影の病はこれだったんだ。あの子は殺される自分を見ていた」。
「死ぬ覚悟だったあの子の心は、この殺される瞬間の悲しみや恨みを先に映し出していたんだな…」。
先生がつぶやく。

傍らには真っ赤な椿が咲いている。
正十も、悲しそうに見ている。
おばさん、若が何かを決意する。

百舌屋では仕事が終わり、紋兵エが火の後始末を確認していた。
誰もいなくなった部屋に、道具の立てる音が響く。
「誰だ!誰かいるのかい!」
道具が音を立てている。

見に来た紋兵エに向けて、おばさんが突然むしろを放り投げて立ち上がる。
うろたえた紋兵エの背後から、おばさんが匕首を突き立てる。
悲鳴をあげた紋兵エ。
「声が大きいよ!」

おばさんは紋兵エを刺したまま、言う。
「静かに地獄へ行きな」。
匕首を抜くと、紋兵エが崩れ落ちる。
おばさんが見下ろして笑みを浮かべる。

先生は若に、墓で若と正十に奴らが戻ってくると言った。
影の病に怯えたあの子に怯え、殺人者はまたここに戻ってくる、と。
先生には見えたのだ。
その言葉を合図に、先生と若、正十が散る。

あの子が死んだのをはっきり見ないと安心できない、と、くにが言いながら宗丹を連れてくる。
生霊とか死霊とか、そんなものがあってたまるか!と吐き捨てる宗丹。
死んで土の下だ、と言う宗丹と怯えるくにだが、その時、先生の声が響く。

「影だ!お前たちの罪の影だ!」
「お前たちの罪を赦そうとしたあの子を!せっかく生きようとしたあの子を!」
宗丹が誰だと叫ぶ。
旗が揚がり、飛んできて2人の前に刺さった。

悲鳴をあげて、くにが逃げる。
宗丹を振り上げ、人形のように振り回して先生は投げた。
地面に激突した宗丹は、口から血を流して絶命した。
腰を抜かしたくにに、先生は旗を突き刺した。

岩吉は若に捕まっていた。
若は岩吉を殴り飛ばし、倒れた岩吉に向けて大きな石を振り下ろした。
怯えながら、岩吉は絶命した。

翌日、正十は先生の後を歩きながら、わからないなあと言っていた。
影の病があるとして、どうしてもそれは避けられなかったのか、と。
「避けてやれなかった」と、先生は言う。

あの子の言うとおり、後生しか弔ってやれなかった。
自分は未熟だと言う先生に、正十は大声で先生は未熟だ!と言い、先生はうるさい!と答える。
「でも仇をとってやったじゃない」と、おねむが言う。

「それはそうだ、」と正十が言う。
落ち込んでいる風の若に、おばさんが「行こう、若」と声をかける。
若は立ち上がり、歩き出す。



これは、ドッペルゲンガー現象を扱った回なんですね。
ドッペルゲンガー。
ナレーションは、「ゲーテ、モーパッサン、芥川龍之介、泉鏡花が体験者だという」と言ってます。

はい、いつかも書きましたが、有名な話らしいですね。
「江戸時代の随筆には、影の病として書かれている。未来がなぜ、見えるのか」。
「この怖ろしい疑問にいまだ科学は答えを出していない」と続きます。

解説にもあるように、冒頭、うめが鳩を蹴散らしているのが、彼女の鬱屈とした内面を表していると思います。
うめという少女が、もう1人の自分の怖ろしい姿を目撃する。
壁という壁から血が流れてきて、もう1人の自分の背景も真っ赤。
これ、未来の自分だったという…、怖い。

それで、若の過去が少し出てきます。
弟が労咳で死んでいること、生きたがったのに為すすべもなかったこと。
だから若は正十が伝染ると避けたのに、放置しておけなかったこと。

おばさんの言葉も、今の方がずっと心に響く。
「死に掛けている人は助けたい。近しい人が死ねば悲しい!それが人間同士じゃないの?」
殺し屋の口から出る言葉としては変なのかもしれませんが、外道ではない殺し屋だから言える言葉でもあります。
人間じゃなくても、そうですよね。

だが、うめは、「私の為に、誰も悲しまない」と言う。
「私が死ねば、喜ぶ人ばかり。だから私、早く死にたいんです」。
遺品整理業をやっている人が、「そんな風に考えている人っていますけど、本人が思っている以上に泣く人はいるんですよ」って言ってました。
赤の他人、近所の住人でも、話も聞いてやれなかったと悔やむ人はいる、と。

うめは「早く死にたい、おとっつぁんやおっかさんに会いたい」と言う。
でも先生の、「それは嘘だ。あんたは本当は死を恐れているんだ」っていうのも事実だと思うんです。
うめはただ、現実がつらいんですね。
優しい両親がいた時に戻りたい。

本人は本人で、すごくつらくて、もう目の前の死しか考えられないのかもしれません。
ですが、愛する者を見送るしかなかった若の怒りもわかります。
解説にありますが、毒と知って飲んでいるうめの、これは自殺なんですね。

察したおばさんが、「かわいそうに1人で耐えて来たんだね。つらかったろうよ。でも死んじゃいけない。あの世のご両親だって、こんな若いあんたが行ったら悲しむよ」とあの声で言うから泣ける。
それがあの結末ですから。

うらごろしは死者の声を聞いて仇を討つというのが基本ですけど、あんまりひどい。
何もあんな殺し方しなくたってー!
だからか、先生の殺しがすごい。

もう、人形ですよ。
ぶんぶん振り回して投げて、ここ、笑うところでしたか?ってぐらい。
まあ、笑いも必要でしょうか。
くにだって女性だけど容赦しない。

おばさんの殺しは凄みを増してきました。
まるで子供を叱るように、「声が大きいよ!」
言い聞かせるように、「静かに地獄へ行きな」。
若は石を振り下ろすというリアルさ。

笑いといえば、正十のパートは笑えます。
何ですか、潜入する時の偽名「正平」って。
もう、正十と正八と正平が混ざってしまった。
ついにおねむ相手に思いを遂げた正十の、おねむのリアクションにショックを受ける様もおかしい…。

自然のものばかり食している先生が、毒を口にして動けなくなるのも、何か納得でおかしい。
体に悪いものには、敏感なんですね~。
それに対して、おばさんも若も正十もあんまり心配してないのも、納得でおかしい。

ラスト、悔いる先生。
茶化す正十。
ぼけーっとしているようで、的確なことを言ってくれるおねむ。

本当は誰よりも生きてほしかったうめを思って座り込む若。
若に声をかけて、前進をうながすおばさん。
言われていることですが、孤独で心の傷を持った人が集まって、まるで家族みたいな、うらごろし一行です。


本田さん目線で「長七郎江戸日記」

今、時代劇専門チャンネルで「長七郎江戸日記」も見ています。
「必殺」のDVDを貸した友達が「長七郎江戸日記」を見て「映像が違う…」と言いました。
「画面がのっぺりしているなって思ったんだけど、そうじゃない。必殺の映像がすごかったんだね!」

それはもう、表と裏の顔を持つ者たちを描いている物語の特性からして、光と影のコントラストが鋭い映像を作ったんだとは思いますが。
必殺の映像って、やっぱり凝ってるんだと思いました。
長七郎は長七郎で、好きですけどね。
時代劇の良さが入ってるシリーズですし。

そこで、若い時の本田博太郎さんを見つけました。
第115話「殺しの配達人」。
「仕舞人」の直次郎の後だと思うんですけどね。

御広敷役人・小谷宇兵衛を、本田さんが演じます。
彼は身分の低い無役の御家人の家から、旗本の家に婿に来た。
そのため、奥方は宇兵衛を蔑み、体に触れるのも拒否する。
しかし自分は役者と出会い茶屋で、遊んでいる。

宇兵衛は家に帰る前に芸者のところに寄り、飲んで帰るのが、わずかな癒しの時間。
ある日、宇兵衛はふと、「奥方は長生きしそうだ。誰か殺してくれたら良いのに」と愚痴った。
すると、「引き受け候」という文が投げ込まれる。
その通りに、出会い茶屋で奥方が殺された。

本気で殺したいと思ったわけではないと言う宇兵衛だが、罠は張り巡らされていた。
大奥に「この包みを届けば何とかしてやる」と奥方殺害の実行犯の男に言われ、届けた包みは爆発。
中臈と、その腰元が死んでしまう。
それを知った宇兵衛は、その場で切腹して果てた。

中臈とともに亡くなった腰元は、長七郎が居候している弁当屋の牛さんの姪っ子だった。
牛さんのそばで暮らして、牛さんの面倒を見てあげる、と言っていた矢先だった。
急な雨で雨宿りしていた長七郎は、同じく雨宿りした宇兵衛と面識があった。

武家の奥方が、出会い茶屋で殺された事件。
そしてその夫である宇兵衛が届けた包みによる、大奥の爆発事件。
長七郎は、疑問に思った。

それは将軍に再び寵愛を受けるために、ライバルが邪魔な局と、その兄の勘定奉行の策略だったことがわかる、。
勘定奉行は、妹の大奥での寵愛を武器に出世を企んでいた。
そのためには将軍の寵愛を受ける中臈が、邪魔だった。

この2人による罠に宇兵衛は、はまったのだった。
怒る長七郎は、彼らを成敗する。
…というお話。

本田さんは、後には「剣客商売」の「その日の三冬」の勘助といった複雑な役を演じます。
同じ被害者でも勘助は、「一体、彼はどうしたら良かったんだろう?」
「なぜ、こんなことになってしまうのだろう?」
見た人が深く、考えてしまうような役でした。

ここではまだ、妙な言い方ですが典型的な被害者。
クライマックスへの盛り立て役です。
それでも好青年ぶりは、とても好感が持てます。

こんな人を切腹に追い込むなんて、ひどいなあ…と思わせます。
もうちょっと待てば、助かったんじゃないか。
そんな風に思うところがまた、かわいそう。

この話、意外にもたくさん被害者が出ます。
宇兵衛の奥方、宇兵衛のアリバイを証言する下女、お中臈、牛さんの姪っ子の腰元、宇兵衛。
上様の御寵愛を受け、世継ぎを…という大きな野望が絡むからとはいえ、結構な数。
この手の時代劇であんまり被害者が出ると「被害が広がる前に助けてやってー!」って言いたくなります。

牛さんこと高品格さんは、姪っ子が殺されて、ガックリ。
そこに火野正平たちが俺たちを実の子供だと思って良いよ、なんて言って慰めに来る。
すると牛さんは「こんな出来の悪い子供なんて!」と怒る。
皆は、いつもの牛さんになったと笑って、終わり。

でも、一番ひどい目に遭いっぱなしだったのは宇兵衛。
その宇兵衛こと、本田さんのことは誰も悼んであげてない。
私にはそこが一番、かわいそうで泣けたのでした。
本田さん目線の視聴でした。